女性が本当に憩うか? 誕生ヴィーナスフォート

 新橋から「ゆりかもめ」で20〜30分ほど、料金にして片道370円の「青海」(あおみ、と読む)駅に降りたったところに、「女性のためのテーマパーク」と銘うった商業施設ヴィーナスフォートがある。
 延べ床面積4万4千140平方メートルに、約140のブティックやレストランがある。
 そのひとつである「SOUL TRAIN」というライブハウスのオープニング・パーティーにお招きを受け、ガリガリ2号改め「あべポチ」(命名:パパイヤ鈴木)と行ったのだった。

 「SOUL TRAIN」は水着で有名な三愛という会社がはじめて経営するライブハウスで、アメリカの本家本元のお墨付き世界一号店だそうで、ソウルフルな音楽好きな人ならばたまらないのではないかと思う。
 店のつくりも往年のディスコ風、店員もなんとなく往年の水っぽさがあり、たぶん「往年の」と感じるのは私がその世代であるからで、若い人たちにはきっと新鮮に映るのではないかとも思うが、はたしてゆりかもめに往復720円かけて(あるいは往復1時間を費やして)電車でやってくる人が何人いるか。あるいは、アルコールをあきらめて、デートコースとして混雑極まりないレインボーブリッジをドライブがてらやってくるのであろうか。それとも新橋あたりから気前のいいところを見せて、5000円ほどタクシー代を奮発するのであろうか。とにかく、なんだか遠いので、オシリの重い私はちょっと心配になる。
 しかし、ゆりかもめの無駄にぐるりと走る回遊コースも、観光だと思えばそれなりに楽しいからいいか。

 ダークスーツのおじさまたちと三愛関係者と思しき(スーパー顧客かもしれない)女性が多いなか、「ぱっ」と人目をひくアフロヘア! なんとなんと、パパイヤ鈴木さんがいたのだ!
「きゃーっ、ファンなんですぅ!!!」
 なぜか私とあべポチ嬢が同時に叫び、駆け寄ってしまった。
 そしてまだお客も少ないということで、私たちはパパイヤさんとレコード会社の担当である近藤正臣似の中原ニヒルさん(命名:パパイヤ鈴木)というナイスなおふたりと同席して、すっかり合コン気分になった。
「来てよかったですねえ」とあべポチ嬢はホホを上気させてつぶやいた。
 久々の独身男性がふたりもいて、しかもひとりはあの、パパイヤ鈴木さんなんだから!

 ところで「パパイヤ鈴木」といえば、私の認知では教育テレビの「まちかどドレミ」という番組のピーポさん役、または深夜テレビ朝日だったかCXだったかでやっている「JAPAN FAT BOYS」に出ているスターである。
 ピーポさんは歌って踊れる不思議なおにいさん。JFBはタレントの石塚某と太め女優による「体重100キロ以上」のダンストリオで、レストランで食べるだけ食べて、お礼代わりにダンスをして煙にまくというコーナーで登場していた。いやいや、すばらしい才能とキャラクターである。
 一方、あべポチ嬢の「パパイヤ鈴木」像は違っているようで、「オヤジダンサーズ」または「数年前にサザンのCMで、ハダカの女の人の上で踊っていた(?)」スターなのだそうだ。

 まあ、どっちでもいい。
 私もマイコちゃん、おっと違った、あべポチも、パパイヤさんのふわふわやわらかいアフロヘアなんかを触ったりして、すっかり舞い上がった。
 そして盛り上がった勢いでパパイヤさんがマイコちゃんにつけた芸名が「ポチ」なのだ。
「名字はなに? アベ? じゃあ、アベポチだな」
 あべポチ本人は少々不服そうだったが、命名者がパパイヤさんとあって、納得したようである。
「でも、『あべ』はひらがなで『ポチ』をカタカナにしてください。一応名字と名前ということで」
 ということで、マイコ改めがりがり2号改めあべポチとなった次第。

 ライブハウスはさておいて、ヴィーナスフォートはどうかというと、「いろいろな店があって、おもしろいものもあるけれど、また来たいと思わせるものがなにもない」というのが感想だ。
「週刊ダイヤモンド」という雑誌の記事によれば、「ファイナルファンタジー」というゲームで大成功した宮本雅史氏が「東京中で一番きれいな街」をつくり「20代〜30代のシングル女性がロマンチックな風景のなかに溶け込み、夕焼けを見ながら佇んでいる」ことをイメージしたのだという。
 しかし、ガングロのコギャル言葉を借りれば、「オトコのオマエに言われたくねーよ」のひとことだ。
 いや、思いつきはいいよ。きれいな街づくりもいいよ。
 でも、宮本氏が雑誌のなかで「いまや物販だけでは人は呼べない。商業施設に魅力があれば人は来るという考え方も古い」と言い「ターゲットに合ったモノさえあれば、売り上げは自ずとついてくる」と語っているわけだが、その結果がこれなのか?

 20代〜30代がロマンチックに過ごすという割りにはレストランは、ラーメンやに回転寿司に、コンビニカフェ、飲茶というチープ感覚。
 ブランドものも代官山あたりにあるショップばかりで、わざわざ青海くんだりまで行くだけの魅力があるとは思えない。
 商店街はどう見てもラスベガスのシーザースパレスの二番煎じであるが、シーザーズパレスにある大掛かりなロボット・シアターがあるとないとでは大違いで、「横浜ラーメン博物館」のほうがまだ顧客のハートをとらえると思う。
 地階の「サンウォーク フロア」においてはどう考えても夜流行ると思われるライブハウスの隣りがキッズ用品で、一番目立つ場所がださい家具屋だ。
 唯一魅力ある品揃えの書籍雑貨店は、サービスゾーン(佐川急便とリフォームショップと、なぜかフットケアサロン)とスポーツ用品コーナーに挟まれており、家族にもっとも利用されるであろうペットコーナーはキッズコーナーと離れ、はずれのはずれにある。
 いったい、どうしたらこのような構成が考えられるのだろうか。
 結局は不動産屋的インフラ的「場所貸し」的施設になっていて、コンテンツもポリシーもない。

 それでも隣りにはTOYOTAのショールームがあるし、近くに観覧車もあるし、それなりに人は来るかもしれない。
 でも、ここには魅力あるセレクトショップも、ブランドのアウトレットもないし、ロマンチックな気分どころか「お祭り気分」さえない。
 宮本氏の言うものがコンセプトであるとしたら、出店者とのギャップがあまりにもはなはだしい。

 「日本ではじめて上陸」とか書いてあるワゴンショップで台湾製のビニールのブックカバー(なかに色水が入っている)を買ったあべポチは「もう2度と来ることはないかもしれないから」といって、迷っていた2種類を両方買った。
「2度と来なくはないよ。ここはイベントとか、そういうことで『やむなく』来ることになるよ」と私。

 「コンテンツで儲かった会社はない」とずっとずっとずっと言われ続けてきて、「そんなことはない」と言って雨後のタケノコのように登場したベンチャー企業が次々と倒産して、「ほーら、やはり儲かるのはインフラさ」と、オジサンたちは信じている、と思う。
 でも、モノが溢れ、情報が溢れた現在、付け焼き刃的な宣伝では化けの皮はすぐに剥がれる。
 本当に売れるものには「ハート」がなくちゃいけない。
 ただ宣伝をして、見かけだけきれいに並べただけでは生き残ってはいけないと、どうしてわからないのだろうか。

 「SOUL TRAIN」は毎晩24:00まで活きのいいソウルを聴かせてくれるらしい。
 ヴィーナスフォートに適切なコンテンツかどうかはなんともいえないが、ソウル・マインドでファンのハートをとらえてほしいものである。
 ところで、すっかりお友達になったピーボさん、じゃなかった、パパイヤ鈴木さんは8月28日に渋谷のクラブエイジアでライブをするそうだ。
 ヴィーナスフォートには「2度と行かないでしょうね」と言っていたあべポチも、「絶対に行きます!」とはりきっている。
 そうそう。パパイヤ鈴木さんご自身が作っている「オヤジダンサーズ」のホームページがあるらしいので、ファンの方は探してみてね。

 





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