国際詐欺団からのラブレター

 かれこれ数ヶ月くらい前になるが、アフリカのある国から封書が届いた。
「私は実は軍に従事しているのだが、アメリカドルで2億ドルの隠し金を持っている。しかし、政治的なことからこの金を国内で使うことができないので、海外のベンチャー企業に協力してもらえないかと考えた。
 わが国に子会社を設立してもらえば、そこに資本金として金を入れる。無事に金を持ち出すことができれば、手数料として25%をあげよう」

 私は2億ドルの25%と聞いて喜……ぶわけがない。うちには分不相応な金額すぎて、大笑いした。
 さらに文面によれば、
「会社設立は全部こちらで行う。これは危険はまったくないということを100%保証する。
 あなたはただ、わが国に来て、会社設立のために約1週間から10日間滞在してもらうだけでいい」とあった。
 いったいなんでうちにこんな手紙が届くのだろうと思って封書を見ると、JETRO(日本貿易振興会)のスタンプがある。

 JETROでは海外進出に興味ある企業に、いろいろなインフォメーションを提供してくれるサービスがあって、私の会社はとてもじゃないけれどそんな大企業ではないのに登録をさせてもらっているために、JETROが発行している冊子などに混じって、ときどき「アメリカ●●州の工場誘致に興味ありませんか」とか「●●国では投資家を募集しています」とかいうニュースレターが届く。
 今回もそのひとつであろうと思うが、それにしてもなんだかいかにもあやしい手紙だ。
 南アフリカの軍人……。

「あのさぁ、だれか、夏休みをとって、アフリカに行きたい人、いない?
 アフリカに10日くらいいるだけで、ボーナス2億円くらい貰えるかもしれないよー」
 社内で声をかけたものの誰も候補者なし。(いないよなあ)
「じゃあさぁ、私、ちょっと休みもらっていい? 会社の景気も悪いしさぁ」なんて言ってみたのだが、皆にとめられた。
 そりゃそうだ。あまりにもあやしすぎるハナシである。

 9月29日付け朝日新聞によれば、ナイジェリアを拠点とした国際詐欺団で、国際刑事警察機構(ICPO)による全世界の被害総額は10億ドル以上であるという。
 この詐欺団は数百あり、養成学校もあるそうだ。
 政府や中央銀行関係者の名を語った偽造の公共文書や新聞記事などを送付して信用させ、送金手数料やわいろ、税金などの名目で「前渡金」を要求させるのが典型的な手口なのだそうだが、なかには間に受けてのこのこ出かけていって誘拐されたうえに、身代金まで要求されたバ……、いや、気の毒な被害者もいる。

 記事によれば、被害者は私のもらったものと同じ内容であったらしい。
 南アフリカに到着後3日間、手厚いもてなしを受けたのち、ホテルに乱入してきた4人の男に拳銃をつきつけられて拉致され、家族が数百万円の身代金を振り込んだのち開放されたという。
 くわばら、くわばら。
「経済的に苦しかったのでつい……」というコメント、泣かせるじゃないですか。

 これまでたくさん反故にしてきた「海外誘致」とか「国際投資」とかいうニュースレターもその一環であったかもしれないが、幸か不幸か、時間も資金もないので関わりたくとも関わらずにきた。
 零細企業の経営者となると、一般人とは違った「勧誘」がたくさんあるのだが、国際的な詐欺団までラブコールしてくるとは思わなかった。
 まあ、そんなわけで私も国際詐欺団のリストに入れてもらったらしいのである。

 




ドネーションボックス

ドネーションボックスの
説明はこちらです。
 
ご意見・ご感想 淳子通信表紙にもどる A-Girl 表紙にもどる