シニアとSOHO

 セミナーなどの講師を頼まれると、たいていはレジメと呼ぶ「講演内容の目次」を事前に用意するのが常なのだが、ことSOHOとなると集まってくる人たちの顔ぶれを見ながら機転を利かせた話をしなくてはならない。
 講演などを頼まれるとたいていは「先生」とか呼ばれるのだが、「社長」と呼ばれる以上に気恥ずかしく、そのうえ「私の話が役にたつのかしら」と事前事後にわたって考えてしまったりすることも多々あって、精神的には案外つらい仕事である。
 とはいえ、私のつたない経験も何かのお役にたつならばと、各地でしゃべりまわっているが、人の前にたつということは非常に勇気がいる。
 聴衆を前にして話すということは、究極のインタラクティブ・アクションであり、自らがメディアとして発信しているという実感と責任を感じる。

 さて、10月7日は板橋区役所でSOHOのセミナーをさせていただいた。
 50名ほどの参加者の半数以上が主婦、1割くらいが男性で、最近シニアと呼ばれる熟年層が目立った。
 半数がパソコンを所有して電子メールを使うことができるものの、ホームページは持っていない。
 残りの半数はインターネットどころか、パソコンもまだ持っていないという人たちだった。
 用意したレジメは、SOHOの実態と心得のような内容だったのだが、集まってくださった方たちは正直なところそれ以前の方たちばかりだった。
 重ねて書くが、聴衆は私よりずっと年上で、両親といってもいいほどの方たちが大半を占めている。
 そこでなにかをアドバイスするということは、責任重大も責任重大なことだ。

 一番困ってしまう質問は「私は何をやったらいいのでしょう」という質問だ。
「インターネットでいろいろなホームページを見たり、先人の方たちのサイトを見ては……」なんていうアドバイスはシニアの方たちには通用しない。インターネット接続以前の問題なんだから。
「働きに行くのはちょっとたいへんだけれど、家で何かやりたい」という人はシニアの方たちのみならず、主婦の方たちにも多く、そうした労働力をうまく組織化できれば1億総内職産業が成り立つのではないかと思うくらい、各地でお会いする方々が同様な質問を投げかけられるのである。
「SOHOと内職を一緒にしてもらっては困る」というプロ意識が強い人たちがいる一方で、「SOHOでもなんでもいいから、自宅でなにかやりたい」という内職予備軍がたくさんいる。
 そしてそうした内職予備軍の人たちの多くは自分で起業するほどのモチベーションも体力も根性もなく、「だれか私に手を差し伸べて」という感じなのだ。

 どんな人に対しても、現在の私ができるアドバイスは「ともかく動いてみること」でしかない。
 悩んだり、考えたりしていても、動かないことには何も進まない。
「自分に自信がないんです」という人も少なくないが、人間誰だって100%完全完璧な人などいるわけはないのだから、いまできることをがんばって、そうした自分を自分で励ましていくしかない。
 そうしてひとつひとつ、何かできたら、それを自信として、次のステップへ進む。
 失敗したら……泣いても、悔やんでも、がまんして、寝る。
 どんなにつらいことがあっても明日はやってくるし、世界は回っている。
 自分ひとりがすべてではないと思えば、自信のありなしなんてたいしたことはないのだから。

   なんてことを書いていながら、私自身も日々悶々としていたりする。
 誰かにすがることができたら楽だろうなあとも思う。
 もうやめちゃいたいなあ、と思うときに「先生の講演を聴いて元気がでました」なんていうメールが届く。
 元気が出るのは実はこっちなのだ。
 でも「先生」はやめてね。私はそんなに偉くないんだから

 




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