カレとカノジョの空間

 渋谷の街はただでさえ若者が多いのだけれど、クリスマス・シーズンとあって、デパートなどはもっぱらカップルばかりである。
 夕方、東急本店に出かけたところ、1階にあるグッチやフェラガモはカレシ連れの女の子で溢れかえっていた。
 私の場合はクリスマスはたいてい仕事で忙しくて、カップルでちゃらちゃらしているような時間があったためしがない。あるいはちょっと時間があったときはアメリカのホストファミリーと過ごしていたこともあり、いずれにせよ、クリスマス・ディナーとか、クリスマスのスウィート・ホテルとか、そういう体験は残念ながらない。
 もともと鎌倉生まれで、お正月の大混雑や夏の花火大会、秋の行楽シーズンや七五三と、イベントがあるたびに人がわさわさ集まるという現象が嫌い。混雑が嫌い。イベントの特別メニューが嫌い。そういうことに大騒ぎをするオトコ(がいるとしたら)も嫌い。
 高校生のころはケーキ屋さんでアルバイトしていたために、クリスマスの夜は残ったケーキをもらって帰ったことが唯一クリスマスらしきことで、もちろん親からはクリスマスどころかお年玉さえもらったことはない。
 よって、オトナになった今もクリスマスはたいてい社内でケーキなどを食べて仕事をがんばり、正月はじんわりとひとりで過ごすことが多い。
 なんでわざわざ混んでいるところに出かけていって、ふだんよりも高いものを注文するのか気が知れないが、叶姉妹に言わせれば「お金はラブレター」なのだそうだから愛情も金銭で測れる(と思っている人たちがいる)のかもしれない。
 出典は忘れてしまったが、女性が男性からクリスマスにプレゼントしてもらいたい金額は平均6万円とか。
 ちなみに、片割れが10億円の価値があるという叶姉妹、男性をホテルの部屋に誘うときにはバラの花を入り口からベッドまで敷き詰めるのが作戦だそうだ。

 私は自分自身で買い物をするときに高価なものほど悩まない(1000円以下はめちゃくちゃ悩む)というタイプゆえに、いただきものも高価だからありがたいかというと案外そうではなかったりもする。高価なものは素直に「嬉しい」と思うよりもなんだか気づまりになってしまうし、「うーん。これを買ってくれるくらいならパソコンのほうが・・・」なんて計算をしてしまう。
 もっとも「クリスマス・プレゼントにパソコンが欲しい」と言うようでは女性としてはエレガントさのかけらもない。やはりここは「ブルガリのブレスレット」とか言うのがいいのかしらん。「1000万円くらいのでいいわ」なんて。

 デパートのブランドもの売り場を歩いているカップルは、どう見ても女性のほうが男性をひっぱりまわしているように見えるのだけれど、男性のほうはそれで楽しいのだろうか。
 そういえば、米国版のマリクレール(雑誌)だったと思うのだが、2人の男性記者が「100万円あげるからつきあってくれない?」と女性と過ごすという企画レポートが載っていたことがある。
 ひとりは「ビーチリゾートで(同じベッドで)1週間過ごす」という提案をして、失恋したばかりの女性とまんまと旅に行くのだが、旅行中彼女は毎日不機嫌で「ただ旅行したかっただけ」とふてくされ、「ロマンスがあるかも」と期待していた記者はぐさぐさに傷つく。
 もうひとりは「高級ブランドのファッションで変身したい」という女性をゲットして、1日中あちこちのブティックをひっぱりまわされ、ロマンスどころか「もう2度と嫌」と言って、ほうほうのていで逃げ帰るのである。
 結論としては「大金をちらつかせればオンナはいくらでもひっかかるが、それでひっかかるオンナとマトモなロマンスなど生まれない」ということであった。
 クリスマスの夜に大金をはたいて買える愛はどんな愛なんだろう。なんて、ちょっとヒガミっぽいかな。まあ、どんな愛でもないよりはいいよね




 




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