
「伊藤さんはどこで英語を習ったの?」とよく聞かれるのだけれど、私はマトモに英語を習ったことがなくて、だからいたっていいかげんなのだ。
とりあえず「通じる」という程度で、自分では「チャネリング会話」とか言っているけれど、想像力が語学力を上まわっていて、なんとか通じている。
本当はビジネスをする上でも、知的な、洗練された会話ができるようにしたほうがいいとはわかっているけれど、学校に行く時間もないし、もはや実践あるのみで、当たって砕けろ精神で突っ走っている。
その程度の語学力のくせに、海外では何回か講演というものをやっていて、その多くがアニメとかマンガ関係の内容で、特にアニメに詳しいわけでもないので本意ではないものの、新しい日本文化を紹介するという点では避けて通れない話題だし、そうしたカルチャーを語る人もまだ多くはないので、あちこちで「ニュートラルな日本情報」を心がけて発表している。
今回はMITのプログラムで、日本のティーン(女の子)のポップカルチャーとして、マンガ(とアニメ)とガジェットについて話す機会をもらった。
そもそものきっかけは、2年前にピッツバーグで開催されたウエアラブル・コンピュータの学会に遡る。
アトラクションとして「ガジェット・コーナー」という「ちょっとした自慢のもの」を紹介するコーナーがあって、そこでオリンパスのEyeTrekとVoiceTrek、そしてそれらを使った「コブラ」の試作DVDを紹介したのだ。
このDVDは、オーサリング・カンパニーのU氏が上司の承諾をもらって創ってくれたもので、印刷物のマンガをスキャニングして、そのコマがアニメのシーンのインデックスになるという凝ったつくりで、試作といえどもよくできている。
オリンパスのEyeTrekというのは眼鏡型のディスプレーなのだが、これで見ると「コブラ」のアニメがよりカッコイイし、そのうえ寺沢自作の3次元作品がいくつか入っているので、見ごたえ充分な「作品」になっている。
言ってみれば私はそうした試作を実行する手はずを整えているだけで、私自身は何もやっているわけではないのだけれど、いろいろな人たちがびっくりするほど着目してくれた。
そして「MITでプレゼンテーションをやれ!」とかいう話になって、やっつけでレジメをつくって「マンガとアニメの相違について」というワークショップをやった。
そのときに参加してくれた学生がレポートを書いてくれたらしく、それがまわりまわって今回の話になったというわけである。
チャンスというか、縁というか、おもしろいね。
今回は、日本やアジアに留学をする人たちを対象としたプログラム委員会があり、そこが主催するイベントということで、どんな内容にするか、実際かなり悩んだ。
おまけに年末は地獄のように忙しくて、さすがの私も泣きたいような荒んだ日々を過ごしていて、時間の余裕も心の余裕もないまま突入するハメになってしまった。
しかし、神様は見捨てていなかった。
土壇場になって、松田さんという優秀な翻訳者の女性を遣わしてくれて、彼女のおかげで私のスピーチ原稿はすばらしくブラッシュアップされた。(大感謝!)
コーディネーターのロビンとは面識もなく、メールでやりとりをしているだけなので、勝手がわからないので「とにかくやっちゃえ」という感じ。
学会的な論文を書こうと思ったのだが、どうももっと「軽い」ような感じ。しかも40分くらいということなので「まあ、楽勝かな」と少々たかをくくっていたのだが、原稿がぎりぎりまで書けなかったこともあり、松田さんの翻訳文が前日の夜、メールで入るという、ヒヤヒヤする綱渡り状態である。
それでもやっちゃうんだから、私ってスゴイわ、と思う。
400名は入るという会場は、左右にプロジェクターがある大教室で、あまりに広いのでびっくりした。
ロビンは(年齢は聞かなかったけれど)とても若くて、キュートな女性で(多分20代後半?)、佐賀県の高校で英語の先生をやっていたことがあるそうで、日本語も少しわかるし、とにかく明るくて、美人だった。
彼女の主な仕事は、日本やアジアに留学生を送ることで、年間100名ほどのうち半数くらいが日本に行くのだという。
MITから日本の企業や大学に留学するには、成績が上位にあることと、最低2年以上、日本語を学んでいなくてはいけないという条件があり、エリート中のエリートを対象としているのだそうだ。
そこまで聞いて「ひえーっ、そんなエリートに私が!?」と、少々すくむ思いだったが、実際には見たところごく普通の学生(MITのオタクとして普通、という意味だけれど)で、半数くらいがアジア系だ。前回メディアラボでやったときに来た学生がまた来てくれたりして、ちょっと嬉しい気分にもなった。
スピーチもなんとか通じ、途中何度か笑ってもらえたところもあり、一応ツボは押さえることができた。
講演やスピーチをするとき、単純な話ではみんな眠ってしまう。そこで「いかに笑いととるか」という、吉本の芸人みたいな小技が重要で、途中「そろそろダルくなってきたかな」というときに、笑えることを1発言うのがコツ。これは日本も海外も共通する。
質疑応答では「日本の女の子のことはわかったけれど、男の子たちはどうしているの?」という質問があったり、研究者とおぼしき熟年女性がホログラムとアニメについての質問をしてくれたり、日本から送ったぶ厚い少女マンガに驚いてくれたり、何人かには「おもしろかった」と言ってもらえた。
よかった、よかった。
とはいえ、ちゃんとした大学で、ちゃんとした英語のスピーチははじめてなので(以前ドイツの大学でやったときは「政治的な理由があるから」といわれて、日本語→ドイツ語→英語と、同時通訳が2人ついた)、終わったあとにどっと緊張感がこみあげてきた。
私のスピーチのあとは教室を移動して「パーフェクト・ブルー」というアニメの上映会があった。
「このプログラムは成功だった?」とロビンに聞いたら、「とても成功だった!」と答えてもらって、ホッと胸をなでおろした。
実は、原稿もさることながら、今回はパソコンのアダプターを日本に忘れ、荒木さんにFEDEXで送ってもらうという荒業もあり(荒木さんにももうほんとうに大感謝)、またまた会場では私のノートパソコン(Let'sNote)はコネクトできない(とは思っていたんだけど)ためロビンのパソコンを持ってきてもらったらパスワードがわからなくなるし、FDにコピーしようとしたら画像をがんがん貼っていたので「容量が足りない」とか言われて半分しかプレゼンできなかったし…などなど、ちょっとしたトラブルがないわけではなかったのだ。
「ビデオ店に勤める友人が薦めたから選んだ」とロビンは言っていたが、上映後「あんなに暴力的なシーンがあるなんてショックだった。それに女性の乱暴されるシーンとか…。本当にショック…」と、やや後悔しているようだった。
確かに脚本はよくできていて、飽きさせない演出である。
アイドルから女優になろうとしている女の子が「脱皮」することに悩み、そこにストーカーが出現したり、彼女の悪口を言う人や「脱アイドル」させようとしている人たちが次々に殺されていったり、話が「火曜サスペンスドラマ」的展開。最後は殺人犯は思いもよらない「2重人格者」であったことが判明する、という話。しかし、なんでわざわざアニメにする必要があるんだろうかと、私は思った。実写のほうがもっと面白くなりそうなのに。
「東京の景色とか、すごくリアリティがあったけれど、あれは写真?」とロビンが聞いたくらい、背景などは詳細まで描かれていて、それだけに「日本ローカル」が強調されているように感じる。ならばやはり実写のほうが世界に持って出やすいのに。
「話がごちゃごちゃしてた。アニメって、もっとアクションやスピード感があると思っていたんだけど」と見ていたひとりが言っていた。
今回の私の講演は別のページで紹介するけれど「日本」というものを切り取るときに、どこを、どうやって切るとるかというのはたいへん難しい。
私が好きなアニメはなにかと聞かれて、あまりアニメに詳しくないこともあって「ラスカル」や日本人の原体験ともいえる「鉄腕アトム」と言ってしまった。同行の日本人青年は「エヴァンゲリオン」と言っていたので「なるほどな」と、年齢差を激しく感じた。
でも、改めて考えると、なんだろう。
アニメとして完成されているものは、やはり「宇宙戦艦ヤマト」じゃないかしら。
スピードがあって、元気があって、アクション満載であって。
そういう「健全」なもののほうが私は好きなのだけれど、アニメ自体サブカルチャーとして見たほうがいいとしたら…どうなのかなあ…。やっぱり「ジャングル大帝レオ」を持って、ディズニーと比べてほしいよなあ。
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