
いま、シアトルの空港で乗り継ぎの便を待っている。
シアトルに来たのは26歳のときで、その後は1回くらいは乗り継ぎで来たかもしれない。曇りということもあるけれど、空気が山水画の色をしていて、なんとなく「Twin Peaks」を思い出した。
目の前には「CINNABON」というシナモンロールの専門店があって、いい匂いを醸し出している。直径10センチ近い、甘ーいパンに、これまた甘ーい砂糖衣とかシナモンがたっぷりかかっていて、空港のおいしいものベストテンを選べといわれたら絶対に私はこれを推薦したいと思うのだが、なにしろ甘いし、ベタベタするし、大きいしで、勇気が試される。
今回はデンバーでもう1回トランジットがあるし、シーザーサラダにしておこうかな、なんて思いながらも心が動く。ところで、私は海外に何回くらい来ているんだろう。
アメリカにはたぶん、20回くらいは来ているだろうし、そのほか、イギリス、スペイン、ドイツ、ベルギー、フランス、エジプト、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ミクロネシア、ニューカレドニア、タヒチ、バハマ、オーストラリア、韓国、台湾、香港と、まあ、そんなところかな。トランジットでモスクワというのも0.1ポイントくらい入れてみたりして。「なんでそんなに海外に行くの?」と聞かれることがあるが、仕事、というよりも「息をしに出る」というほうが正しいかもしれない。
それとももしかしたら「海外に出るために仕事をしている」のかもしれない。
ふつう「海外旅行に行く」といったらちょっとしたイベントで、なんだかわくわくしたりするものだけれど、だんだんそうしたわくわく感もなくなってきて、「ちょっと行ってくるわ」という感じ。
1年に1回、人間ドックに入るような気分で飛行機に乗る。
「枕が変わると眠れない」という人がいるけれど、私は枕が違うとよく眠れる。外国ほど熟睡できるところはない、といっても、ふだんはふだんで爆睡はしているのだけれど、なんとなく生活感のないホテルは落ち着くのだ。旅支度のポイントは荷物を軽く、小さくまとめることにつきるのだが、私はふだんから荷物とモノが多い。捨てられない、整理整頓下手の天才なのだ。
そこでまず、服。軽くてコンパクトなものにする。
基本的に、文明国では買えないものはない、と思って多少のことは目をつぶる。(実は買えそうで買えなかったりすることのほうが多い)
が、私の経験では、アメリカや香港は特に、猛暑の夏の室内は地獄のように寒いし、極寒の室内は芽が出るほどに暖かい。だからあまり季節にはこだわらず、温度調節ができるように、薄ものをたくさん用意して、タマネギのように重ね着をする。
乾燥している国(アメリカなど)はパンツや靴下は夜洗って干しておけば翌日には乾いているので楽。(と思って少ない数しか用意しないで痛い目にあったこともある)
荷物や資料などがあまりに多いときは送ってしまう。が、そうなるとバーゲンなどで安いと思って買っても意味がないので、買い物も必然的にセーブできる(といいながら、なんだかんだくだらないものを買ってしまう)シアトルの空港では、オフ会の仲間のためにインディアンのお守りをおみやげに買った。着いたばかりだが、リーズナブルな金額と「軽い」「かさばらない」というのがおみやげのポイント。10人以上に配ることを考えると、申し訳ないけれどひとりひとりのことは考えてはいられない。来る前に催促されちゃったからなあ。ふだんお世話になっている方たちなので、ここは「気持ち」ということで。
社員のほうはもう「いつものこと」なのでたぶん期待もしていないと思うし、そもそもおみやげなんて持つ余裕はない。日本から出るときにすでに、リバーサルフィルム用カメラ、デジタルカメラ、APS用カメラ、ノートパソコン+予備バッテリー、モバイルギア(社内でなにか書きたくなったとき用)と、機材だけでもぜんぜんコンパクトじゃない。
今回はビデオを持ってこなかったけれど、これにデジタルビデオが加わることもある。
もちろん、これらにコードだの、電池だの、フィルムだの、周辺のものが加わる。
ノートパソコンがあるのになぜモバギが必要かといえば、乾電池で8時間動くということがなによりおりこうさんであるからだし(CEマシンを買おうと思ったが、いろいろ比べてみて、私が使っているモバギのほうが便利らしいという結論に達した)、カメラも1台では足りないのだ。
カメラについては、もしかしたらデジタルカメラ1台ですませることができるかもしれないけれど、メモリーカードだのバッテリーだの考えると、簡単なカメラを持っているほうがなにかとあとあと整理が楽なような気がしている。
それだけでも女手には余る量。デジタルライフはちっとも便利ではない。
仕事でもなければこんなものを持ち歩きたくはないが、いつ、どこで、どんなネタがあるかわからないので、編集者を志すものとしてはカメラは必携だ。現にシアトルの空港ではたまげたものを発見した。
野球帽に「くま」とひらがなで書いてあるのだ。おまけに「あし」とか「かな」とか「刀」「猫」なんていうのもあって、マジメに売られている。
よくよく見れば「くま」はCAL(カリフォルニア大学バークレー校)のマスコットで、そのほかのものもいろいろな大学に由来しているものではないかと類推される。あるいはもしかしたら大学のスポーツに関係しているかもしれない。
しかしおかしい。
あんまりおかしいのでひとつ買って帰ろうかと思ったが、約20ドルもするのでやめた。野球帽に2500円は高いような気がした。それも「くま」じゃあ、日本じゃかぶれないだろう。さて、いまはラスベガスへ向かう機中だ。
デンバーでは2時間くらい待つはずだったのが、1つ前のに乗れたのだ。ばんざい。
ところが、よく考えたら、荷物は通常の便に乗るだろうから、やっぱり空港で1時間待たなきゃいけない。頭がいいようでいて抜けているんだなあ。
でも、デンバーなんかで時間をつぶすよりはラスベガスのほうがいい。空港にもスロットマシンが並んでいるし、CINNABONだって確かあったはずだ。そして、ホテルに着いてわかったこと。
なんとなんと。
ノートパソコンの電源アダプターを忘れてきたのだ。
あわてて会社に電話をしてFEDEXで送ってもらうことにした。荒木さんに大感謝。
ちっとも旅慣れていない。
というか、旅慣れしすぎて緊張感がなくなっているんだな。反省、反省
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