
私はO型のせいか、わりと粗雑で、大ざっぱな性格をしている分、楽天的で、それほどちまちまと悩み続けるということはない。
でも、案外デリケートで、妙に心が傷つくような思いに苛まされることがある。
先日、あるご夫婦のホームパーティーに招待された。
ホームパーティーといっても、すばらしいお宅で、おふたりも、お客様も、それはすてきなかたたちばかりである。
そんな、ちょっとした社交界のようなお宅に招かれるとあって、私はなにをおみやげに持っていったらいいか、ずっとずっと考えていた。そして、たまたま学会で行った沖縄のホテルにあった「アイスワイン」を購入して持参することにした。
アイスワインとは、収穫が終わったあとに残った完熟のぶどうを使ったワインで、濃厚な甘みと芳醇な香りが特徴のデザートワインのことを言う。最後のぶどうとあって、アイスワインは大量にはできないため、価格も高く、日本で買うと1本2万円前後するらしい。
私が買ったものも「定価18000円」とあり、「格安」になっていたとはいえ、私にとってはかなり高価であるように感じた。しかし珍品で、味もよいと聞いて、彼らが喜んでくれることなどを期待して、その日まで冷凍庫に入れておいた。(冷凍庫がいいのか、冷蔵庫がいいのか、よくわからなかったのだが、私が見た写真のワインボトルには霜がついていたため、凍らせたほうがいいと思ったのだ)
そうしていそいそとそのワインを持っておよばれにうかがった。
ご挨拶もそこそこに「これ、アイスワインといって、とても珍しいワインなんだそうなんですよ」と、ホステスである奥様に渡したところ、「あら、ありがとう」と言ってくださったものの、あまり関心があるようには見受けられなかった。
少しがっかりして、ご主人とあいさつしたときにもまた「とても珍しいドイツのアイスワインを持ってきたんですよ」と言ったのだが「へえ」と、やはりあまり大きなトピックという感じではなかった。
もしかしたらドイツのワインなどは亜流なのかもしれないな、場違いだったかな、と、この時点で自分の判断に自信がなくなりかけた。
そして、お客様たちと話ているときに、ふと、部屋の隅に私が持参したワインが置いてあるのが眼に入った。ずっと凍らせてその日を待っていたというのに、暖かい部屋の隅に置かれたため、包み紙が濡れているようだった。
デザートワインだからあとで飲んだほうがいい、と言ったけれど、あんなところに置いておいて大丈夫かな、と思ったときに、著名な料理人の方が遅れてやってきた。そして部屋に入るなりに「珍しいアイスワインを持ってきた」と、大声で言った。
すると、その家のご夫婦がふたり揃って「えーっ? なんですか、それは? 珍しいのならさっそくいただきましょうよ!」と、いそいそとグラスなどを並べるのである。
私はちょっとオトナ気ないかなと思ったけれど「私もアイスワインを持ってきたんですよ」と言って、部屋の隅にあった持参のワインをテーブルに並べた。
でも、なぜかホストとホステスの方はそのゲストのワインを大仰に注いでまわって、私のワインは無視されてしまった。
ゲストの方のワインはカナダ産で、ほんとうにおいしい、甘くて芳醇なデザートワインだった。 相手にされなかった私に気づかって、ほかのゲストの人たちが「飲み比べてみよう」と言って、私のワインにトライしてくれた。
私が持っていったものは本場ドイツのものとはいっても、味はかなり劣っていると思えた。
そう思ったとたん、料理人の彼が大声で、私をかなりバカにするような感じで「こっち(自分のほう)のほうがはるかに高級だ」と叫んだ。
私は少し悲しい気持ちがましていたけれど、たしかにそのとおりだと思ったので「ほんとうにこちらのほうがずっとおいしいですね」と言ったが、彼はホストの方たちがいるほうへさっさと行ってしまった。
でも、テーブルのまわりに残っていた人たちはやさしく「確かに味は違うけれど、これはドイツらしいね」とか、「これはドイツの○○という町ね」などととりなしてくれた。
パーティーはとてもエレガントで、とても素敵なひとときであったのだけれど、私はなんとなく「ご遠慮したほうがよかったのかな」と思えてならなかった。
帰宅してからも、はっきりした理由がないまま、なにかもやもやとした気持ちのまま、時間とともに傷ついていくようだった。
なぜ傷つくのだろう。
せっかくのおみやげに喜んでもらえなかったから?
おみやげが無視されたから?
私自身が無視されたわけではないのだから、傷つく理由はないのだけれど、好意が肩すかしにあったという以上の、なんと書いていいかわからないけれど、無碍にされたように思えたのだ。
そのあと2、3日、なんとなく悲しかった。
親しい人にその話をしたら「かわいそうに」と言われて、「あ、やっぱり私、傷ついてよかったんだわ」と思った。
まあ、それだけのことなのだけれど、私だって傷つくことがあるのだ。
私の思いこみかもしれないし、自意識過剰なのかもしれない。
どうした傷ついてしまったのかと考えすぎるのは健康によくないからほどほどにして、自分が他人を傷つけないようにしなくては、と考える。
結構、知らず知らず、いろんな人を傷つけているんだろうなあ。
ごめんなさい。悪気はないんです。だから、これからも仲良くしてね。
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