
最近の経営者はMBAを持って、きちんとした事業計画などとともに起業するケースが多く、私のようになりゆきで起業するなんていう無謀なことはしない人ばかりのように見受けられる。
学校で学んだ経営学と、実際の経営とのギャップがあるのか、ないのかわからないけれど、学ばないよりは学んだほうがいいと思う。
しかしながら学ぶ暇のなかった私は、起業してからあわてて、いろいろなビジネス書を買いあさり、読みあさった。
人の助言をありがたがって読むなんてと思うけれど、よちよち歩きの経営者としては「経営学」はもちろんのこと、経営マインドを学ぶ「帝王学」を学べる書物をなんとかして見つけようと思ったりするわけだ。そんなわけで、起業してからの10年間くらいは、超娯楽本かビジネス書しか読まないという偏った文学歴となり、書くのもはずかしい「定番」本も買っている。
この「チーズはどこへ消えた?」(扶桑社)の著者は「1分間マネジャー」という格言的アドバイス本の著者でもあるスペンサー・ジョンソン。(恥ずかしながら、「1分間マネジャー」はもちろん持っている)
内容は、2匹のねずみと2匹の小人(ねずみより頭がよく、策士であるらしい)が迷路のなかでチーズを探すという話。
最初に大きなチーズを見つけて安穏とした小人たちは、そのチーズが無くなったときにはじめて「どうしよう」とうろたえ、体力のなくなった身体で冒険に出かける。
しかし、頭の悪いねずみたちは策を論じることなく次のチーズを見つけるために迷路のなかをトライ&エラーでつき進んでいく。
結局、疲労困憊したあげくに最初のチーズよりも大きなチーズを見つけるのだが、そこにはすでに腹を膨らませたねずみたちが到着していた、という話。この寓話めいた説教がましいストーリーは、「チーズにとらわれた小人」を大企業や、意識革新ができない人々になぞらえているらしい。
ものごとは常に変化していく。
その微妙な変化に感覚を尖らせ、冒険を恐れていてはいけない。
どうやらそういうことを言いたいらしい。では、この寓話のなかで、頭の悪い2匹のねずみはいったいどんな役割なのだろう?
なにも考えず、チーズの匂いと味だけを頼りに、あちこち行っては突き当たり、戻ってきてはまた進み・・・そして、チーズの山を見つけても、あとから来た小人たちに分けてやってしまうのである。(小ざかしい小人たちは、最初のチーズの山を見つけたときは自分たちで独占してしまったために、ねずみたちはそこを追い出されたのだ)
小人たちが本当に頭がよければ、次にはチーズが腐る前に、ねずみに紐をつけて放つだろう。
そのときのねずみはどんな存在なのだろうか?
ただ、大手や知識ある者に搾取されるだけなのだろうか。
それとも「大手よりも零細企業や個人のほうが小回りがきいて、機転が早いよ」ということを示唆しているのだろうか。私はあきらかに「ねずみ」タイプだ。
食べきれないほどのチーズの山を見つけて独占するよりは、新しいチーズを見つける冒険をし続けていたほうがエキサイティングだと思う。
一方では、食べるのには困らないが、余禄はなく、常にあとから来た「小人たち」に名誉も中身も与えてしまう。
機転は早くはないが考えるより行動してしまうねずみは、小人たちとどう関わっていくのだろうか。それとも、おたがい関係ないのだろうか。ところで、この本の装丁は、昔私が出版プロデュースした「ミスター・ドーナツのプレミアム」(扶桑社)という単行本をデザインしてくれた小栗山さんだ。
長崎訓子さんのさりげないイラストもいい味を出している。
装丁は内容以上に内容を語る。
センスのいい本は、センスのいい編集者とデザイナーによってベストセラーになりうるといっても過言ではないだろう。
そんなわけで、この本は買うほどの内容ではないが、本の体裁は気にいっている。
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