
早川書房っぽい装丁の、分厚い単行本を書店で見たときに、買おうかどうしようか迷ったのだけれど、無意味なルビのうっとおしさがイヤで買わなかった。
その本がベストセラーである。
妹が貸してくれた本を「コールドマウンテン」(新潮クレストブックス 600ページ近くある)と同時に読み始めた。
同時に違う本を読み始めると、当然どちらかに比重がかかる。
今回は途中から「ハリー・ポッター」を先行して読んだ。
そして、たった今、読み終わった。
読後感は、遊園地のジェットコースターに乗ったような感じ。
つまり、楽しいといえば楽しいが、そこにはなにも意味するものはないということだ。
そもそも書籍というのはたいていは作者がなにかを言いたいから書いているはずなのだが、これほど中身のない本は珍しいと思った。
主人公は確かに勇気がある少年かもしれないが、とくになにか努力するわけでもなく、なにもしなくても周囲の力で解決できてしまうのである。
そして「賢者の石」という謎めいたシロモノも、「不死の妙薬」という陳腐さ。
みんなが恐れている悪魔のような魔法使いも、いったいなぜ、そんなに恐れなくてはいけないのか、物語の背景がまったく見えてこない。
同様のファンタジーではエンデの「ネバー・エンディング・ストーリー」や、トールキンの「指輪物語」があるが、それらの世界観に比べると「遊園地」という言葉がぴったりの「お遊び」ストーリーである。
次から次にいろいろなできごとがあり、びっくりしたりドキドキしたりするのだけれど、それだけである。
「お化け屋敷」を体験して、嘘くさいつくりものにキャーキャー言うのに似ている。
で、なんでこれがベストセラーなんだろうと思うと、その「思想のなさ」「遊園地的意味のなさ」がうけているのではないかと思うのである。
最後に「賢者の石」をハリーが手に入れるくだりは、腰が抜けるかと思ったほどの手抜きバトルシーンだった。
とにかく「おもしろい」と思わせるのは、話のスピード感だけである。
次々に話は進むので「なにかあるのではないか」と思ってページをめくり・・・結局は「はい、ゴールにつきました。お疲れさま」といって外に出されるのである。
はぁ、びっくりした。
この本を読んで「ハリーってかっこいい」とか「こんな体験をしてみたい」とか思うのだろうか。
はっきりいって、わかりません。
SF好きがタイムパラドックスを無視した「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に怒りを覚えるがごとく、どうも消化不良のファンタジーのようで納得しかねるのである。
同時に読み、途中で中断している「コールドマウンテン」はジャンルが違うが、1ページ1ページに「におい」のようなものがある。
読みながら心をかき乱されるような空気がある。
それが文学であり、作者の持つフィロソフィーであると、私は思っている。
だから「ハリー」を読み終えて「ファーストフードを食べ終わった」という気持ちであり、これから続きを読む本はちょっと味のあるデザートのような感じ。
しかしながら、この作品でもうひとつイヤだな、と思うエピソードを聞いたことがあって、そのせいもあっていまひとつ本気で読めないのである。
そのエピソードというのは、この本に感動したインドネシアの少女が「harrypotter.com」というホームページを作ったら、作者が訴えたという話。
それを聞いたとき、なにも子供相手に訴えることはないのに、と、なんだかとても不快だったのだ。
相手が悪徳業者とか、商売でドメインを高く売りつけようとしているとかいうならいざしらず。
結構この作者ってイヤなヤツなんじゃないの?という先入観が私には植えつけられてしまっていた。
真相はどうなのだろうか。
まあ、感動する作品を書いている人がいい人とは限らないから、どうでもいいことなのかもしれないけれど、やっぱりあんまり品がない感じがする作家は私は好きになれないのだ。
それでも「ハリー・ポッター」は全世界的ベストセラーで、このあと続編もあるということなので、もうちょっと読み進んでみよう。
「おもしろいけど、ためにならない」というものを否定しているわけではない。
それはそれでエンターテイメントなのだ。
私の大好きなSFX映画はほとんど「おもしろいけどためにならない」し、そこには何の示唆するものもない。
エッセイやコラムの大半は暇つぶしだ。
でもね。
たまには読後、何日も何日も、思い出しては心が揺れるという作品も読んでみたいと思っていたときだったので、「もうちょっと読むと何かあるのかな?」と期待して、期待して・・・ だからがっかりしたのね。
私みたいにがっかりした読後感を持つ人って、いないかな。
一般的にはすごくうけてるみたいです。
PS:私はディズニーランドがなんでおもしろいのかわからないというタイプなので、だからきっとこの作品のおもしろさが理解できないのだと思う。
先日念願のディズニーランド初体験を果たした70歳の母は「おもしろかったわーっ! また行きたいわーっ!」と頬を上気させているので、「いったい、どこが楽しいの?」と聞いたら「パレードはきれいだし、乗り物は楽しいし、映像はすごいし・・・」ということだった。
遠いし、歩かされるし、人混みはすごいし、客層は・・・だし、待たされるし、食事はまずいし、エンターテイメントはちゃちいし、キャラクターグッズはせこいし・・・
よくわからないんです。ごめんなさい。
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