1.テーマパークとは
今回の講義は、テーマパークについてです。1982年に開園した東京ディズニーランド、(マニアやリピーターにはTDLの名で親しまれています)は大成功をおさめました。これに押されてバブル経済の時代、日本中でテーマパーク建設が始まりました。しかし、ほとんどが無惨な結果に終わっています。
失敗の原因としてあげられることは、そもそもテーマパークっていう考え方自体があんまり理解されていなかったということがあります。つまり、ただ単に遊園地のことを英語ではテーマパークっていうんだと思っている人がすごく多かったわけです。「ちょっと豪華な遊園地」を作ればそれがテーマパークだ、という認識だったと思うのですが、実は全然違うわけですね。
では、そもそもテーマパークとは何なのか。それを考えるために、いわゆる遊園地というのは4種類くらいに分類できるというところからお話を始めることにしましょう。

いわゆる遊園地というものを、「ライドパーク」「アミューズメントパーク」「テーマリゾート」「テーマパーク」と4つに分けてみました。ここでの分類の特徴は、施設や内容の違いもあるんですが、売り上げが何によってなされているのかで分類しているところにあると思います。
では順番に、その特徴をみてみましょう。

ライドパークというのは、まあいちばん遊園地というもののイメージに近いかもしれませんが、としまえんとか後楽園ゆうえんちというような、乗り物が主な楽しみとなる遊園地ですね。いわゆるジェットコースターがあったり、観覧車があったりというやつです。1900年には、アメリカのシーライオン・パークで宙返りコースターが設置されて、人気をよんでいました。
ライドパークの収益は、入場料とチケット販売で、入場者の平均滞在時間は4時間程度です。
ライドパークの問題点はいくつかあるんですが、設備投資にかかる金がどんどん過剰になっていくことが最大のものでしょう。「フジヤマ」とか、そういうでっかいジェットコースター1基作るのに何十億円もかかるようになってしまったので、バーチャルリアリティー技術を利用するとか、もしくはお化け屋敷とか、小さいアミューズメントスポットを作って回収しようとする流れが見えてきています。
もう一つの問題は、ライドパークに来るのは子供が中心なので、オンシーズン、オフシーズンの差が激しいというこ
とです。夏休みとか、混むときはめちゃくちゃ混む、でもヒマなときはすごいヒマだと。ということはどういうことかというと、ライドパークにある乗り物っていうのは、機械でしょう。機械というのは毎日毎日同じように動いてはじめて整備が楽になるんだけど、過剰のときには平均人数の倍の荷重がかかって、1日に何十回と動いてるのが、乗らないときには全然乗らないとなると、サビが浮いてしまう。これだけでもう故障の原因になっちゃう。つまりオンとかオフがあるってこと自身が、実はメカニカルな運営をやっていかなきゃいけないライドパークにとっては、致命的な問題になってるんですね。
それから、このライドパークというのは、はやればはやるほど、設備が過剰になっていきます。設備が過剰になっていくってこと
は、実は危険率が上がっていくわけで、その遊園地が加入しなければいけない保険の額も増えていってしまうと。
お客さんをよぶためにはどんどん設備投資をしなければならない、そうすると保険やらメンテナンスやらの費用も膨らんでいく。そこまで過剰な投資をしてるのに来園者の平均滞在時間も4時間程度しかない。というようなかたちで、ライドパーク自体、実は今、頭打ちになっています。

アミューズメントパークとは、ナムコワンダーエッグとか、広い意味での「アミューズメント施設」で観客を集める都市型の遊園地です。収益は入場料とチケット販売で、これはライドパークと同じですね。
ライドパークが乗り物中心なのに比べて、こちらはやや大人向けです。つまり、1回のアミューズメント施設の使用料を高く設定できるということになります。それから、ライドパークのように、高低差があるような危険な乗り物を作るんじゃなくて、電子的なものを利用した施設が多いのが特徴です。これの最大のメリットは、とにかく安く済むということです。どうしてかといいますと、ソフトウェアの変更によって乗り物の印象を180度変えることができるので、施設を新しくするというときに、大規模な工事が必要ないからなんです。
例えばイスが動く映画なんていうのは、恐竜が出ようが未来都市が出ようが海の中へ行こうが、フィルムを変えてイスを動かすプログラムをちょこっと変えるだけで済んじゃうっていう、そういうやり方ですね。ライドパークで模様替えしようと思ったら土木工事しないといけないのとはえらい違いです。どういう違いがあるのかというとですね、例えばこの前まで山の中を走っていたジェットコースターを、今度は海の中を走らせますっていうと、何カ月もの間その一帯を入場禁止にして、収益ゼロにして、工事しなくちゃいけない。ところが別のところでソフト作ってデータ入れ替えるだけだったら、そういう切り替えって3日もあればできちゃう。この差ってすっごい大きいですよね。
というように、ライドパークと比べると設備投資がものすごく節約できるというのがアミューズメントパークの特徴です。じゃあ問題がないかというとやっぱり悩みはありまして、観客の滞在時間が短いんですね。平均滞在時間は約3時間。あとね、これ1回行ったら飽きる。結局アミューズメントパークっていうのはライドパークの安く作ったバージョンだから、1回か2回行ったら飽きちゃうんですね。

ナムコワンダーエッグとかに行って、電子銃でお化けを撃ったりして遊ぶというのは、ハイテクでかっこいいんだと思っていましたが、実はなんのことはない、安上がりの施設で遊ばされていたということだったんですね。


テーマリゾートっていうのはですねえ、テーマパークをさらに発展させたようなもので、中心部にテーマパークをおいて、その周辺をまとめて開発して大規模リゾートをつくるというものです。いちばん有名なのはフロリダのウォルト・ディズニー・ワールドなんですが、最近ではラスベガスのルクソールホテルなども注目されてきています。これは開発費は膨大ですが、その見返りは驚くほど巨大です。というのは結局、都市開発ができるからですね。
例えば、フロリダのディズニーワールド誕生により、1966年には17万人足らずだったオーランドの人口は、20年後の86年には200万人。つまりそれだけ雇用が作られたわけです。
17万人が200万人になっちゃったわけですね。フロリダのディズニーワールドができる以前は、オーランドっていうところは沼地で、ワニしか住んでなかった土地です。ところがそんな場所にディズニーワールドができて、その周りにディズニー経営のゴルフ場、ホテル、海水浴場とか、そういう施設がガンガンできて、いま街の人口が200万人くらいです。つまり、183万人分の仕事がここで発生したわけです。日本ではあんまり雇用創出というのはいわれないんですけども、とにかくアメリカなんかでビジネスをすると、いちばんいわれるのは、その仕事がいくら儲かるかじゃなくて、どれくらい雇用を作ることができるか、つまりどれくらいの人が雇えるかということですよね。このへん、日本とはちょっと考え方が違うんですけど、その意味で、これは当たればものすごくでかいです。
ただこれの欠点はですね、ハズすと考えられないほどの被害が出るんです。なんか、向こう35年間にわたって年間50億円の赤字とかですねえ、そういう大爆笑の話をよく聞きますけれど(笑)。これハズしたら、たぶんその企業が倒産するだけでは済まないで、それにゴーサインを出した知事からなにから、全員責任とれというような状況になるでしょう。
ただ、うまくいくと、地域開発どころじゃなくて、そこに産業が作られて雇用が発生して町ができてっていう、いいことはいっぱいあるし、あと活気ですね。よそから人が来る活気というのが作られる。しかもテーマリゾートというのはリゾートですから、高収入の人、所得高額者が来て、お金落としていくわけだから、犯罪率があまり上がらないんですね。
もともとはですね、スイスにあるサンモリッツなどのスキーリゾートが原型で、17世紀から18世紀の中頃までは貴族しか行けなかったようなところが、一般市民に解放されたというのがテーマリゾートの始まりです。他に世界で有名なテーマリゾートというと、モナコですね。つまりあそこは、F1レースっていうテーマパークがある町なんですよ。日本でテーマリゾートに近いものというと、京都があるかな。
収益に関していうと、ちょっとさっきとは違いまして、ライドパークやアミューズメントパークはチケットの売上と入場料がメインだったんですけれども、テーマリゾートは滞在費と物販がメインです。物販というのはお土産の販売ですね。テーマリゾートを作るときのすごい注意点は、この物販がちゃんとできるかということ。つまり、テーマリゾートの中にあるテーマパークの場合、それ自体の売上は、ほとんど期待されてないんです。はっきり言っちゃって、タダでもいいんです。そのかわり、ホテルにできるだけ長い間滞在してくれて、その間そこで食事してくれて、そこでお土産をガンガン買ってくれるっていうのがすごい大きなものなんです。ですから、平均滞在時間は48時間以上というのも、統計上そうなっているだけで、見学なんかで日帰りで帰る人以外はだいたい3日以上滞在します。そういう長期滞在客を対象にして、とにかく滞在中にいろいろなところでお金を使ってもらいましょうというのが、テーマリゾートです。

さて、いよいよテーマパークです。日本のテーマパークが東京ディズニーランドを除いてほとんどうまくいってないというのは冒頭にお話ししましたが、まず失敗例と言いましょうか、それじゃあうまくいかないだろう、という事例として、瀬戸内海にある「レオマワールド」をあげて説明したいと思います。

レオマワールドというのははじめて聞きましたが、どんなテーマパークなんですか。「レオマ」というと、何かそういう動物とかが出てくるおとぎ話でもあるんですか。

レオマワールドのテーマというのは、一応「おとぎの国」なんですが、その「レオマ」という、いかにも何か伝説でもありそうなネーミングが、実はものすごい理由でつけられたんですね。
瀬戸内海のレオマワールド。大西さんというのが社長なんですが、開園のちょっと前に、いよいよ開園ということでドキュメンタリーの特番がありました。それによると「レオマ」というのは、
担当の社員が「レジャーは大西にまかせろ!で、レ・オ・マ、はどうでしょう?」といって決まったそうで、大西社長はうれしそうに「これを考えた社員にはボーナスを出しました」と言ってました。
もう、これ聞いただけで、むちゃくちゃでしょう。そんなの、テーマ性も何もあったもんじゃない(笑)。
でもこの当時の日本のテーマパーク作ってる人たちっていうのは、テーマパークというのがわかんなくて、何か、高級な遊園地なんだろうと。遊園地があったら、まん中でぬいぐるみが踊ってりゃいいんだろうと。そんで、お昼にはパレードすりゃあいいんだろうと、要するにそういうものだと思っていたわけです。
それで、そのレオマワールドという、瀬戸内海の島に浮かぶテーマパークというのが、「レストランには和洋食全ての料理がそろう」というのが売り文句のひとつだったんですね。でも僕なんか見てたら、「なんで和洋食なの?」と言いたくなってしょうがないわけです。つまりそれは、テーマに沿ってないというか、例えば森がテーマだったら、森の料理しか食べられない方が、絶対いいんです。逆に言えば、和洋中華イタリアと全部食べられるじゃなくて、これしか食べられない、ここでしか食べられないというところに魅力があるんだけど、日本という国はもともと40年前の貧乏から這い上がってきた国だから、和洋食全部っていうのが豪華に見えちゃう。
それはねえ、僕が中学生か高校生くらいの頃に、大阪で喰いだおれの人形が出てくるテレビのCMがあったんだ。ロボットが「チンチンドンドン」って動きながらやってて、その時の子どもたちをしびれさせた言葉が、「和洋中華何でも」っていうのがあったんだ。それを聞いたその当時大阪の貧乏人だった僕たちは、「和洋中華何でも」っていうのがすごい豪華に聞こえたわけだよね。でも今は、「イタリアンレストラン」とか、「フレンチレストラン」とか、もしくは「チーズフォンデュの専門店」っていうほうが豪華に聞こえる。このチェンジっていうのが、恐らく80年代の前半にあったんですね。そのことを気付かずに、いまだに「チンチンドンドン和洋食中華全て」っていうね、それは60年代の大阪だよ、レオマさん、って(笑)。それで「レジャーは大西にまかせろ!」でしょ、ダメだよ、それじゃあ(笑)。テーマも何もない。でも、社長大喜び(笑)。
★1 ここで述べた「あえてコレしか食べられない!」を応用し、成功したテーマパークの実例として、横浜の「ラーメン博物館」があります。

そんな理由でテーマパークの名前決めちゃうというのは、ものすごいですね。じゃあ冗談じゃなくて、本当にいい名前だと思ってやってるんですね。「レジャーは大西にまかせろ!」「すばらしい!」と。

そうそう。確かにねえ、「レオマ」っていうのはおもしろい。「なんだ?」と聞きたくなる。すると「レジャーは大西にまかせろ!」だと。それもおもしろい。何より人に憶えてもらえるというところで素晴らしいアイデアでしょう。「じゃあ大西ってなんだ?」って聞くと、もうないんだ(笑)。そこから先がない(笑)。
これがディズニーだと、「ウォルト・ディズニーってなんだ?」っていうと、あの人のキャラクターだよね。顔を見るとおじさんで、ヒゲを生やしている。あのヒゲも意味があって生やしてるわけで、伊達や酔狂であんなかっこうしてるんじゃなくて、あれは何かっていうと、アメリカ人が追い出されたヨーロッパだよね。尻け飛ばされてメイフラワー号で裸一貫でドーンと東海岸に放り出された、みんなが追い出されたあこがれのヨーロッパの文化、そういうふうなものを子どもたちの代に与えたいと。つまり私たちの代では開拓民だから無理だろうけど、でも子どもたちの代になったらヨーロッパ風の教養を身につけてほしい。それは同時にヨーロッパに対するコンプレックスだけでなくて、よりアメリカ的、つまり大衆的にポップにした形でやることで、故郷のヨーロッパに対して、どうだ俺たちの方がサイエンティフィックに君たちの古典文化を再現したんだよというふうに威張りたいという、アメリカ人のすごい切ない願いが込められてるわけです。それが大西さんは、ヘリコプター持ってるのはよくわかったけど、もうそれだけでその先は何もない(笑)。

なるほど。そうすると、ディズニーというものに込められているテーマ性というのは、単純に「おとぎの国」というものだけではない、アメリカ人の精神の根本的なところにまで結びついている、ものすごい深いものだったんですね。そこまで深いテーマ性を持ったテーマパークっていうのは、やっぱりなかなかないですよね。

コンセプトのテーマ性さえちゃんとできればいいんですよ。例えば、ホンダがモータースポーツのテーマパークを作ることはできる。ところが、レオマワールドのテーマは何かというと、やっぱり「おとぎの国」でしょ。それはディズニーでやってるじゃないですか。
家族そろってどこかに出かけようとなると、おじいちゃんもいればおばあちゃんもいれば子どももいると。そういうふうなときに「ディズニーランド行こう」だったらノリがいいし、もしくは「江戸村に行こう」だったら、「ああ、江戸なんだな」とすごくわかりやすい。「横浜のラーメン博物館行こう」。もうコンセプトはラーメンですよね。すごくはっきりしててわかりやすい。
ところが、世の中にはわかりにくいコンセプトのがあるんですよ。まさにレオマワールドなんかがそうで、「レオマワールド行こう」「そこ何?」っていわれたら、「えーっと、瀬戸内海にあるディズニーランド」としかみんな答えられない。その意味ではテーマ性っていうのがはっきりしないと、テーマパークというのはなかなか人を呼べないです。
テーマパークの収益はですね、チケット販売、物販、お土産の3つがきれいに配分されているのが特徴です。チケット販売、それも年間チケットとかの販売が案外多い。あと物販、中でどんどん飯を食って、ジュースを飲んでくれる。それから、帰りにはガンガンお土産を買ってくれる。このお土産をいかに買ってもらうかというのも、テーマパークの勝負どころですね。平均滞在時間は7時間以上と書いてありますが、夕方からの割引の料金で2時間3時間しかいない人を含めての数字ですから、実は1日行ったきりの人がほとんどなんですよ。そうすると最低2回飯を食う。この売上は結構いいですよね。だから数字的には、テーマパークというのはすごくおいしいんですね。なんかそういう話をしてるとうらやましい商売の話をしてるみたいで、関西人の血が騒いできました(笑)。
テーマパークというのがただの「高級な遊園地」というようなものではないことがわかっていただけたのではないかと思います。じゃあ、そのテーマパークと呼ばれるようなものは、いったいいつ頃から世の中にあったのだろうかという、「テーマパークの歴史」がつづいてのお話です。
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