『東大オタク学講座』
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もともと、オタクとは男の趣味、というイメージがある。美少女キャラという存在からしてそうだ。もちろん、「やおい系美少年」なんてのもあるのだが、やはり、美少女の方が王道だろう。メカ、ロボット、怪獣というのも、普通、男の子が好きなものだ。だいたい、メカ音痴は女の子と相場が決まっている。 男のオタク社会に入ってくる女の子も、少数だが存在する。そんな子は、モテることはモテるけど、一人前扱いされにくい。だいたい、オタク修行自体が、女の子に不利なようにできている。ガレージキットなんて、プラモデルも作ったことがない女の子には厳しすぎる。徹夜で並ぶ上映会だって、親の許可を取るのが難しいだろう。 もちろん、例外はあるけど、あくまでも例外だという気がしていた。 ところが、コミケに行くと、その常識は見事に覆される。女の子の方が多い。それも七対三ぐらいの比率なのだ。どうも、オタクの世界でも、女の子は社会的弱者として、存在が過小評価されているらしい。 そんな中で、男のオタク社会内で「女オタク」として、のびのびと楽しくオタク道を邁進している逸材がいる。それが青木光恵嬢だ。彼女は、自分のまんがの中でも、巨乳の女の子を見たり、さわるのが好きと明るく公言している。対談のとき、そのことを訊くと「私も巨乳ですねん」とポンと返されてしまった。ツッコミにくい返事を返すなぁっ! まぁ、そんな青木さんに、女のオタクの生きる道とか、生き方、生き様に関して、語ってもらいたいと考えてお呼びした。
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やおいの園 岡田 今回のゲストは女の子好きの女性まんが家、青木光恵先生です。青木先生と話す以上、今日の私は関西弁使用ですのでよろしく。今回のお題は「女のオタク」なんですけど、最初「女とオタク」にしようか「女のオタク」にしようか迷ったんですよ。男のオタクについてはいろいろ知ってるけど、女のオタクについてはよく分からない部分が多くて。 青木 女の子のオタクは「やおい」ですよ(断言、会場爆笑)。それに尽きます。最近新しく入ってもらったアシスタントの娘がそっち方面に詳しくてね。いままでウチに来てたアシスタントっていうのは「女の子なのにロリコン誌を出してる子」っていうのが多かったんです。ほら、そういうのがあるでしょ、流れとして。 岡田 うわぁ……なんか友達になりたいようななりたくないような……。 青木 一六歳くらいのときに『漫画ブリッコ』でデビューしたような人っているやないですか。と言っても分からへんか。 岡田 大塚英志に声かけられたような。 青木 そう(笑)。編集部で簡単なはがき整理とか写植はがしとかのバイトしたりして、大さんに「これバイト代。領収書はいいから」と五〇〇〇円握らされて、「なんのバイトやろ」と思ったとか、そういうコトやってた娘が一〇年の歳月を経てウチにアシスタントで来てる。それとは別の新しいルートで来た女の子が「友達は全部やおいです」。本人はちがうらしいんですけど。 岡田 「やおい」というのは俺の印象の中では「男の裸の同人誌を出す人」っていう……。 青木 誰の印象でもそうやと思う(笑)。 岡田 いまは誰が裸に剥かれてるんですか? 青木 いまねえ、たぶんすごい広いんとちがうかな。 岡田 三年くらい前に商業出版の単行本でダウンタウンのやおい本を見つけましたよ。 青木 ダウンタウンねえ、私も描いたことあります(会場爆笑)。やおいではないですけど。 岡田 描いてたんですか。俺が見たのは、松っちゃん縛り上げて口にガムテープ貼って、暗い部屋に転がしとくんですわ。で、浜ちゃんがきて「早よ楽になれや。おまえを分かっとんのは俺だけや」とか、そういう内容のやつ。 青木 浜田×松本ですね。同人誌の世界でダウンタウンのあの路線を築いた「イトウセイコ」さんという人がいるんですけど、私その人とは昔からのお友達で、ダウンタウンの存在もイトウさんから紹介してもらったんですよ。「なんかめっちゃおもろい漫才師おんねん」って。いまよりずうっと前、『四時ですよーだ』やるより前なんですけど、そんとき見に連れてってもらって好きになって。そのイトウさんが同人誌始めて、そこで描いたんです。たぶん日本で一番最初にダウンタウン本やり始めた人やと思います。 岡田 日本最初のダウンタウン同人誌で、もうしょっぱなからやおいだったんですか? 青木 いや、最初は……いや、そうでしたね(笑)。でも最初の頃はちょっと可愛いってくらいでそんな激しくなかったんですよ。いつのまにかはっと気づいたら浜ちゃんが女の子になってて、実験室で試験管入れられてたりして。オイオイって思ってたんですけど、女の子の描くやおいってすごいパワーがあるでしょ。男の人のエロまんがもすごいなあ思うんですけど、もうそんなもんじゃないんですよ。設定を勝手に変えてるんです。たとえば光GENJIの同人誌作ってた友達がいるんですけど、「それぞれこの設定で書いてください」って作家さんに依頼するんです。 岡田 それ、個人本じゃなくて同じ設定での合作なんですね。 青木 そう。それで、その設定というのが「諸星君=高校の近くにある喫茶店でバイトしてる男の子。童顔だけど結構歳上」とか「下の若い子たちはその高校に通っている」とか「メンバーの中でも歳上の大沢君は高校の先生」とか、そういう風になってるんです。設定がすごい細かいんですよ。そういう同人誌がいっぱいあります。 岡田 その場合の同人誌は普通のドラマなんですか? 青木 いや、「やおい」ですよ。フツーのドラマじゃないです。 岡田 偏見なんですけど、俺ってどうも「やおい」と聞くと男と男が「ケツ出せ!」って世界を想像してしまって。 青木 それは「やおいとホモのちがいはなにか」ということになるんですけど。 岡田 ちがいあるんですか? 青木 先っちょにウンコがつかないのが「やおい」でつくのがホモ(笑)。 岡田 ああ、呆れて学生が一人帰っていってしまった(笑)。 青木 なんか申し訳ないなあ。私、下ネタ平気やから。さっき話したアシスタントの女の子というのは他にもアシスト先を持っていて、その仕事先でもみんな「やおい」の話ばっかりしてるんですって。でもそこの先生がどうもそういう話好きじゃないらしくて「ホモなんかやだわあ。だってウンコつくのよ」って言ったら、そこにいる別のやおい好きのアシストの女の子がキッと先生睨んで「やおいはウンコつかないんですぅ〜!」って反論したらしいんです。だからそのへんにポイントがあるみたいなんで、人からちがいを聞かれたらそういうふうに答えた方がいいかと。 岡田 いややわ、そんなん(笑)。本番行為のない「やおい」も結構あるじゃないですか。言葉なぶりみたいな。でも行為がなくても「やおい」って本質的にSMの世界ですよね。 青木 うーん、それ言うたら、エロってたいがいそうちがいます? 男の人の読むのでも。 岡田 おっしゃる通りです。男のエロまんがでも絶対にSM入ってます。だからアメリカでは日本のロリコンコミックがすごい人気なんですよ。アメリカ人に聞いてみたら「SMをあんなに真っ直ぐには表現できない」と言ってました。あの国でのSM表現は男女とも歓ぶもんだから、やられてる女の子が楽しそうな表情してないと男女差別とみなされるんですよ。絵でもそうだしビデオや写真でも同じです。ムチでビシバシしばかれてても、カメラ目線でニコッて笑ってなきゃいけないんです。叩いてるだけで相手が痛そうな顔してると問題になるんですよ。本当にハードな路線で「男が女をいじめる」だの「幼女をいたぶる」だのって作品になると、通信販売でしか買えないそうです。アメリカのポルノビデオ見たらもうすごいですよ。男が女に乗っかってるシーンと女性上位のシーンが、タイムレコーダーで測ったみたいにきっちり半分ずつになってるんです。男の方が長く上になってると女性差別として糾弾されるんでしょうかね。 青木 そんなん個人の趣味やのにねえ。 岡田 個人の趣味にも社会規制があるんですよ。そのうち民族問題も入ってきて、「ポルノビデオには必ず五民族を出さなければならない」なんてことになるかもしれない(爆笑)。あの国だったらやるんちゃうかな、『パワーレンジャー』みたいに。 やおい以外で女のオタク的タームを挙げると、まず「ヅカ」ですよね。宝歌劇。あとピンクハウスオタクのピンキーってのがあって、コスプレは女の子特有って感じじゃないから……あ、「ショタ」があるか。 青木 でもショタはやおいとちがうから。 岡田 あ、分からん人もいますよね(笑)。この講義で前列に座ってる人たちはどんな用語でも理解できますけど(大笑)。ショタというのはですね、『鉄人28号』の正太郎少年に由来する「正太郎コンプレックス」の略です。 青木 「半ズボン素敵っ!」(笑)ところで今さらですけど、皆さん「やおい」がなにかってのは分かってはりますよね? 岡田 解説しとこうかな。一般の用語でいえばホモの一ジャンルです。アニメやまんがのキャラクターに自分のホモ妄想を燃え上がらせて、同人誌とかにしてしまうのが「やおい」です。 青木 もともとは「ヤマなし。オチなし。意味なし」の略語ですよね。ホモまんがってみんなそうなのかな。 岡田 俺が昔見ていたやおいというのは『ボルテスV』。 青木 それ誰×誰かなあ。すごい気になる。 岡田 いや、忘れました。ごめんなさい(笑)。でもその時代から「ヤマなし。オチなし。意味なし」でしたよ。ハイネル様がイジめられたりプリンスシャーキンが裸に剥かれたり。 青木 美形の敵キャラがそういうふうにするって流れがありましたよね。 岡田 それも二種類の流れがあって、強い敵キャラが強いままで出てくるか、それとも捕まるかなんかしていびられるか。こういうものの研究書って出えへんのかなあ。やおい本の歴史研究書ってのを全集で出してくれると嬉しいんですけどね。 青木 「やおいの歴史はこう流れとんのやっ!」って。『怪獣王子』から始まって『エロイカ』が入って……という内容ね。たしかにいいかもしれへん。深いんですよね、すごく。
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世界はすべて「×」の日常 青木 私あんまり「やおい」の友達はいないんですけど、さっきのアシスタントの娘とか詳しい人に聞いてみると、シャレにならんのですって。彼氏もいーひんし、なんか恐いらしくて。私ね、青磁ビブロス系のまんが家さんとお友達で、その人のところに一度遊びがてらアシスタントに行ったことがあるんですけど、ビデオずっと流しっ放しなんですよ。テレビ番組とかアニメとか好きなやつを一二〇分テープに三倍録画して、それをずう〜っと流してるの。いいシーンになると皆手を止めて金切り声で「○○様ぁ〜!」「この顔が可愛いのぉ。もういっぺん巻き戻して見ましょうよ!」 岡田 そういうのっていかにも彼氏いなくて家でポテトチップス食ってってイメージあるんですけど、ホンマにそうなんすか? 青木 ポテチは原稿汚れるからホカ弁ですけどね(笑)。私、そこで『夢で逢えたら』全部見たんですよ。丸一日しかいなかったけどいろんなこと知りました。普段そこで流れてるBGMって、TMネットワークが多くて、やはり「このソロの声がいいのよねぇ〜」とか金切り声で叫んでました。エンドレスでいろいろなものが回ってて、クラクラしてくるみたいなんですよ。わけ分からんようになって、それを何年も続けているんです。彼女らは。まんが家歴長い先生のところへ行きますと、そこにずうっと勤めてる四〇歳近いアシスタントの人がいて、職場の生活仕切ってはるんですよ。その生活がエンドレス。 岡田 編集の人はなんか救いの手を差し伸べようとは……。 青木 それなんやけど、私、笑うたんはね、編集さんを見ても「編集の○○さん(男)ってバイトの△△君(男)と仲良くない? 怪しいよねえ」って、勝手にやおいにしてるんですって(会場爆笑)。なんでも「×」で考えるんですよ。「どっちが受けだと思う?」「ええ〜、絶対△△君が受けよお」とか、そういう些細なことで盛り上がって、それで趣味が合った人たちで「じゃあ○○本作ろうよ」ってことになるらしいです。 岡田 それはたとえば、テレビのトーク番組かなんかで「席が離れてるのに同じギャグで笑ってた」とか、そういう細かいところから「二人は怪しい」なんてことも……。 青木 芸能系の「やおい」にハマってる人ってほんとすごくて、ビデオを細かくチェックするんですよ。昔だと『夜のヒットスタジオ』を録画して、あの番組出演者が司会者の後ろに座ってるじゃないですか。それを見て「○○君と××君、いつも楽しそうに喋ってるよねえ……。はっ! これは!」っていうふうにひらめいて、それで一冊本作るんです。芸能好きになると大変ですよ。ビデオいっぱい録らなあかんから。 岡田 まんがはまだマシなんすよね。その作品だけに登場してるからチェック楽で。いま、やおいの元ネタってどうなってます? 昔はアニメでしたけど、どんどん拡大してるんですか? 青木 何でもありみたいですよ。 岡田 夏コミはカヲル君でしたよね。 青木 そうなんですよね。個人的なシュミとしては、あれにはちょっと異議があるんですけど。 岡田 あと、アニメのキャラと現実の人物はかけないでしょ。 青木 あ、それは種族ちがうから。 岡田 そうそう、種族がちがうから(笑)。カヲル君×ナンチャン(ウンナンの南原)とか……。 青木 それはないですね。接点がないからダメなんちがいます? 岡田 よそのアニメのキャラとだったら大丈夫なのかな。カヲル君×ダグオンの誰かとか。 青木 そんなん聞いたことない(笑)。 岡田 たとえば同じサンライズ制作のアニメだったら、サンライズの4スタでお互い座っててとか。 青木 それ、ゆうきまさみさんのまんがで昔やってましたね。コスモがパーマかけさせられてるとかそういう楽屋っぽいやつがあって。私、そういうのはゆうきさんのまんがでしか見たことない。芸能はそういうの結構ありますね。スタジオですれちがってそこでドラマが始まるとか。よくアーティスト同士が同じ番組に出るでしょ。だからちがうグループやアーティスト同士が絡むのはよくあるんです。世界が一緒だから。でもアニメやまんがは細かく世界が分かれてるでしょう。だからその世界層を破るのはないんじゃないでしょうか。 岡田 『ドラゴンボール』のやおいとかはあんまり見ませんでしたね。ベジータなんて意地っ張りな子って感じが愛されそうなんだけど。教室の皆さんに聞いてみましょうか。誰か『ドラゴンボール』のやおい見たことある人います? 青木 あ、結構おるんや。手を挙げてるのが何人か。 岡田 誰と誰でした? 学生 カカ×ベジだったと思います。 岡田 ……誰? 学生 カカロットとベジータ。 青木 略してはるし。略すのって使用頻度が高いいうことですから彼はかなり……(会場爆笑)。 岡田 「カカロット」と言って通じる空間っていいですよね(笑)。 青木 すごい幸せやわ。やっぱり女の子のオタクは「やおい」に尽きるみたいですよ。もう、なんでも「やおい」。 岡田 目にやおいレンズついてて、なにか見るとやおいに見えるという感じですか。 青木 あれはもう取れへんね。天然やわ。 岡田 橋龍と小沢一郎見ても……。 青木 絶対そう思う。 岡田 「昔、角栄の前でこんな屈辱的なプレイさせられたんだ」とか(大爆笑)。そういえば、女の人が描くレズっぽいものはあまりないですよね。 青木 いえ、いっぱいあると思います。私『セーラームーン』ですごいいっぱい見たし。 岡田 『セーラームーン』は多かったな。でも男がレズを描くのは、レズが描きたいからじゃなくて、「セーラームーンの裸描きたいけど野郎は描きたくないなあ。どうしようか。そうだレズだ!」って感じでしょ。 青木 男の人の場合は「レズが好き!」って感じじゃないんですよね。でも女の子はホンマにやおいが大好きなんですよ。 岡田 たしかに男の場合はホンマのレズ好きとはちがいますよね。そやからすぐにとんでもない器具を腰に着けたりするじゃないですか。 青木 ホンマにねえ。私、高校時代の同級生にまんが好きで竹宮恵子先生の大ファンという女の子がいて、その子と話が合うかなと思ってたら、もう全然合わなかったんです。その子はね、「女の子はキライ! 女キャラなんて邪魔!」って。 岡田 邪魔 青木 その子は自分でもまんが描いてたんですけど、金髪とか黒髪とか美形外人っぽいキャラがメインで、でも女の子のキャラは邪魔で邪魔で大キライだから絶対出さないんですって。まんが読んでても女の子キャラが邪魔だって腹立つらしくて、それ聞いたらもう私引いてもうて。女のキャラが入ってくると人気落ちるとか、ホンマにあるみたいですね。私も『エヴァンゲリオン』の同人誌で「ミサトがムカつく! シンジ君にくっつきすぎ!」とかそういうの読んだことありますよ。「大きなお世話や。あんたに関係あらへん」とかツッコミ入れながら読みましたけど、そんなに腹立てんでも、ねえ。でも本人はわりとマジみたいなんですよ。だから「やおい」の邪魔するようなキャラクターが出てくると腹立つみたいですね。普通ヒロインって博士の娘だとか主人公の男の子とちょっと関係あったりとか、そういう設定が多いじゃないですか。それが「邪魔してる」って風な考えになるらしいですね。 岡田 こう言うとなんですけど、「女の業」みたいなものを感じますねえ。だって男が『セーラームーン』のパロディ描いたって「タキシード仮面、邪魔!」とか思えへんでしょ。 青木 まあ邪魔は邪魔なんでしょうけど、怨念がちがいますよね。そういうの聞いてるとすごいですよ。長編描いてる少女まんが家さんの仕事場なんですけど、長い分修羅場も長いから、詰めの四日間くらいになるとずうっとそういう話題が続くんですって。皆わけ分からんようになってて「私は○○様と△△様!」「私はこう!」「いや、それは認めん! 許さん!」とかそういう話が丸四日間。一般的な女の子たちが男の子の話をするのとは、もう全っ然違ってて、泣きそうになるくらいツラくて、そういう話題についていけない人は「帰りたい〜。もう帰りたい〜っ」ってウツ入るらしいです。 岡田 なんか楽しそうやなあ。女の園って感じするやないですか。
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オタク少女たちの恋愛 岡田 青木さんのお知り合いというのは、やっぱり女の子のオタクが多いんですか? 青木 うーん、男の子の方が多い……かな。女の子は、大体「女の子の好きな女の子」が多いですね。エロまんが描いてたりとか。 岡田 そういう特殊なジャンルにも女の子がおるわけですよね。 青木 ロリコンエロまんがを描いてる女の子が、この世には確実に存在するんですよ。 岡田 ああいうまんがの作者さんで女の人ってよくいるんですけど、それは「女の子好きの女の子」が描いてるんですか? 青木 そうみたいですね。あとそういうロリコン雑誌に描いてると、男の人が寄ってきて嬉しいって人もいるんちゃうかな。ロリコン雑誌に描いてる女性まんが家ってちゃんと彼氏いる人たちなんですよ。しょーもない男ではあるけど、いっぱい寄ってくるみたいです。 岡田 数から選べるというメリットはありますよね。たとえ薄汚いオタクが三〇人寄ってこようと、その中から選べば一人くらいは妥当なのが……ひどいコト言ってるなあ、俺(笑)。 青木 コミ結婚な人たち(笑)。そういうパターンが多いと思いますね。ロリコンまんがを描いてるような女の子の典型的なモデルって、中学生くらいのときにロリコンにちょっとメカ入ってるようなやつがあるでしょ。あかほりさとるが脚本書いてそうな、童顔で肩にちっこいメカ乗っけてるような絵のやつ。そういう路線の同人誌出してるサークル入って、五歳くらい年上の男の人と仲良くなって、そのまま付き合いだしてサークルのマスコット的存在になってしまったような、そんな過去を持つ女の子が多いですね。ウチのアシスタントだった女の子や友達はそういう人が多い。 岡田 昔僕が所属していたサークルでも、女の子はすごいモテてましたね。SF関係や特撮関係なんて男ばかりだから、「円谷英二先生がね」なんて話題にうなずいてくれる女の子ってだけでもう、宝の山掘り当てたようなもんでしたよ。 青木 「そういう女の子おったんか!」みたいな(笑)。 岡田 (なぜか思いっきり力をこめて)もぉ〜「おったんか! ゴー!」(笑) 青木 モテてましたよねえ、そういう女の子って。黙っててもいっぱい男が寄ってきて。 岡田 そういう女の子ってどういうきっかけでオタクになるんですか? 青木 ウチにアシスタントで来てた娘の一人だと、池袋のデパートの上に、なんかノート置いてある所があったんですって。ノートにイラスト描いておいて、そうするとまた誰かが持って帰って返事みたいな書き込みしといてくれるっていう、そういう交流の場みたい。そこに出入りしててある日「あっ、新しいノートが入ってる」って手を伸ばしたら、もう一人男の子が手を伸ばしててノートの上で指先がチョンって触れてね、昔のラブコメみたいに。そこから「どうぞ」「いえどうぞ」「あの、まんがとかアニメとか好きなんですか?」という出会いだったそうです。その娘はもともと埼玉に住んでいて、私立中学へ進学したのをきっかけに東京まで出てきたんですって。それで通り道になってる池袋に「なんか同じ趣味の人たちが集まってる楽しそうな場所がある」と知って、そこでその男の子と出会い、そこの同人誌にゲストで原稿描いたり。 岡田 なんかロマンチックな……ロマンチックやけど、彼氏ちょっとええ味出してますよねえ。 青木 そのお兄さんとは別に付き合ったりとかなくて、ケンカ別れになったみたいですけど。その理由というのが、同人封筒で手紙送ったら向こうにエライ怒られたらしくて(笑)。 岡田 それもある意味ロマンチックです(笑)。
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許せんコスプレ 岡田 女の子のオタクというと、最近ではコスプレがメディアで取り沙汰されています。青木さんはやってませんでした? 青木 うーん、元から「やってみたいな」という願望はあったんですけど、なんとなく機会がなくて。コスプレって、中学くらいのときにそれがホンマは恥ずかしいことなんだって知らずにうっかりやっちゃって、そのまま定着するもんなんですよ。 岡田 えっ 俺、初めてのコスプレはハタチでしたよ? 青木 岡田さんみたいな人もいますけど、そういうのはもうしょうがないんですよ(笑)。ハタチ過ぎてやる人は周囲がすごい濃い人たちで固められてて、多分、一生その道を進むしかないんです。でも、最近のコスプレは昔とちょっとちがいますよね。 岡田 いまは自分で縫うんじゃなくて、買うようになっちゃいました。 青木 いまコスプレやってる女の子って、オタクの男をってるらしいですよ。 岡田 なんかデビューのきっかけを狙ってる女の子が多いとか。 青木 コスパ会場で会話聞いてると、なんかもう普通の男女の会話みたいで、「彼女ぉ、すごい似合うね、そのコスプレ」みたいな。 岡田 なんかちょっとちがうよねそういう人たちって。この三年くらいで増えてきたのが、女の子のコスプレイヤーで元ネタ知らずにやってる娘がいるでしょ。 青木 いますいます(笑)。 岡田 だから白いプラグスーツ着てても『エヴァンゲリオン』なんて見たこともないし、「え〜、あんなの見なぁ〜い!」とか言ってる奴が多いの。俺はもうそういう奴らが憎くて憎くて、「てめえ、晴海に埋めたるぞこのアマ!」とか叫びたくなる!(大爆笑)なんでそういう奴らがコスプレしてるかというとね、この二、三年ほどの間にコスプレ写真が一般誌でも紹介されるようになってきて、それでデビューのきっかけを作ろうと考えつく人が増えてきたからなんです。 青木 そういう娘は本も買わないしビデオも見ませんからね。あと「やおい」と通じるんですけど、女オタクには「男の子になりたい女の子」がいます。現実の男は好きじゃないし、かといって小次郎となんかしたいっていうのでもなくて、どちらかというと「私、カヲル君になってシンジ君とお風呂に入りたい」っていうノリ(笑)。 岡田 倒錯してますねえ。 青木 もう、ヒネってヒネってヒネり倒しっていう(笑)。たとえどんなにシンジ君が好きでも女のまま関係持ちたいって方向に行かないで、あくまでも「男として男のシンジ君と関係したい」という欲求なんですよね。だからそういう人はミサトさんをめっちゃうの。 ところで、私「ガイナックス祭り」で上映したビデオがあるんですけど……。『私の処女を破りにきて』というアダルトビデオ。噂で「キャラクターの名前を呼びながら喘ぐAVがある」と聞いて、それをまんがで描いたら監督さん本人が送ってきてくれたんです。監督さんのコメントが書いてあったんですけど、その監督さんはオタクでもなんでもない普通の人らしくて「とても怖かった」って書いてありました。出てる女優さんは、といっても素人さんなんですけど、『幽遊白書』のすごいファンで、同人誌ももちろん描いてて、三〇歳くらいの処女。それで「処女であることが重荷なんで、プロの男優さんならうまいことやってくれるだろうからAV出る決心しました」という人なんですよ。ところが実際に本番シーンに入ると……。 岡田 なんか、途中でドキュメントみたいになってくるんですよね。 青木 そう。もうAV撮れないんですよ、マジ気持ち悪くて男優さんが勃たなくなっちゃって。女優さんはええとなんだっけ、キャラクターの名前を……。 岡田 飛影。 青木 そうそう飛影! 「飛影……」とか言い出してるし。まあそれだけやったらなんとかガマンしようかなと思ったらしいんですけど、その女優さんの頭の中では「自分は鞍馬だ」と思ってて、男として飛影と絡んでるストーリーができてるんですよ。それで「俺の……俺の飛影……」みたいな(大笑)。 岡田 それで男優さんもわけ分かんなくなって、部屋の隅っこで『幽遊白書』読み出して。あれは感動したなあ。 青木 男優さんもそういう努力して「僕がなんとか合わせてみます」と言って、「ほらほら、幽助が見てるぞ」とか盛り上げようとしたんだけど、その娘の中の「俺的な幽遊」とはちがったみたいで、急に真顔になって「幽助はそんなこと言わないよ!」 岡田 あのビデオって一日で撮影するつもりだったのが一泊二日の合宿になってしまって、夜、男優さんが『幽遊白書』読みながら「分かんねえよコレ」って悩んでた(笑)。で、カメラをパンすると女優の方は夏コミ用の原稿描いてる。しかも、キャラクターのキーホルダーを「ぎゅ」って握り締めて、「待ってるのよ、いまから処女を失う自分は……」って。でも結局うまいこといけへんかって。でもビデオはなんとか出さなあかんから、もうムリヤリドキュメントみたいにして、途中で「『幽遊白書』とは……」とエロ劇画の作家に描かせた絵を出して、初めて見る人用の解説が入る。 岡田 アダルトビデオで『幽遊白書』の解説聞かされるとは思わなかった(笑)。 青木 構成はうまかったけど。「彼女はいまこのキャラクターになりきっており、男優はこのキャラクターのつもりでいるのだ!」って、キャラのイラストを上からほわ〜んとかぶせてたりしてね。 岡田 クライマックスの方で一応ちゃんとやったら、女の子が急に「飛影、もう離れない」と言い出して、男優さんが面倒臭そうな口調で「俺はもう行かなければならない。もうすぐ冥界の門が閉じる……」と言いながら後ずさりしていくという(爆笑)あの展開はすごいですよ。 青木 あれは本当にドキュメントみたいなビデオで、監督さんに聞いたら最初女優さんがオタクだって知らなかったから、もうただひたすら怖かったんですって。イっちゃった目つきで「飛影、俺は、俺は……」とか言い出してるし……。 岡田 途中で、その女の子の頬をパンパン張り飛ばすシーンがありました。クスリかなんかでイってると男優さんが思ったらしくて、「オタクは社会性を持て!」みたいな洗脳張り手が乱れ飛ぶ。でもその女の子はなんで叩かれてるのか分からないって顔しながら、キーホルダーを「ぎゅ」っと握り締めてて(笑)。 青木 そのシーンですごいオタクっぽいなあと思ったのが、女の子が叩かれたときに「痛い」って言ったでしょう。ところがそれ、普通の人が叩かれたときのリアクションの「イタっ!」じゃなくて、セリフの「痛い」なの。オタクの人ってよく「ウルウル」とか言うでしょ、あれなんですよ。あれと同じ、セリフ口調の「痛い」だったの。それ聞いて「ああ、擬音を口に出すようになったらあかんなあ」とため息ついてしまって(笑)。ダメですよねえ、口に出しちゃあ。 岡田 無意識にやってる人、多いですからね。日常会話がアニメのアテレコ口調になってる人。皆さんも気を付けないと(笑)。
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