TV bros『オタクの迷い道』連載第一回〜第十回
ン1995-1998.Toshio OKADA all right reserved.
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◆『オタクの迷い道』#1 「日本人になりたい」と考えるアメリカ人たち
| 世界中のオタクが集まるコンベンション、「OTAKON」がペンシルバニアの地方都市で開催された。そこに行ってきたのでその報告から連載をはじめよう。もちろん「オタクの中のオタク、オタキング」として主賓招待された訳だ。ちょっと複雑な気持ち。 イベントのプログラムの1つ、「カタカナ・ワークショップ」では数十人のアメリカ人達が「アーイーウー」と声を揃えていた。その日読めるようになったのは「チョ・ウ・ジ・ク・ウ・ヨ・ウ・サ・イ マ・ク・ロ・ス」他にやることはないのか?彼らがそんなに日本語の勉強に熱心なのには理由がある。 アメリカで日本製アニメが放送され、結構人気になってるのは、有名だ。が、この放映されているアニメとはアメリカの子供向けにズタズタに再編集され、単純に判りやすくした「ニセモノ」なのだ。 イベントなどで字幕版の「ホンモノ」を知ったオタク達はみんな、日本語の勉強を決意する。彼らは再編集された日本アニメを、ただ見ている人達(ビューアー)を軽蔑し、そいつらを一人でも多く字幕版のホンモノ・アニメを見る立派なOTAKUにしようと頑張っている。 そんなアメリカOTAKUが描いた「マンガ」をOTAKONで手に入れた。タイトルは「ダーティーペア」。日本の同名アニメを原作に、日本のマンガ風に描いてある点が人気の秘密である。 セリフの所々に意味もなく漢字がちりばめられている。「豚!肉!枝豆!」とか「鯨跳汁!」とか。昔流行った水森亜土のイラストに、意味もなく「DOKIDOKI HARAHARA」とかあったけど、あのノリだな。 漢字ばかり拾って笑っていると、最後には「麻原」「岡田斗司!」とあった。僕が尊師と並ぶか。家宝かもな。 (近況) |
| 「いやあ、予想に反して大盛況だな。オタクなんて部屋から一歩も出ないのかと思ってたのに」僕たちがトークショーをした店のマスターが言った。僕は秋葉原の電気店街をうろついている奴の3人に2人はオタクだと常々思っている。それなのにこれだ。「インド人はカレーしか食べない」と言われたインド人の気分。 実際お客は満員だった。普段40〜50人入れば満員の店に立ち見も入れて100人以上、それでも入れずに帰った人が続出。この店始まって以来のことだ。 新宿・ロフトプラスワンの小柄でパンチパーマのマスターは、「この店を文化の発信地にしたい」と熱く語った。だから、マイナーな文化人も大切にしたい。「お客がトークショーを聞かずに議論するのもおおいにけっこう。けれどこれだけは聞いて欲しいという話の時はこの鐘を鳴らして下さい」見ると店の天井からデカい鐘がホントにぶらさがっている。唐沢俊一、眠田直、岡田斗司夫のトークでそりゃないぜ。 もちろん鐘を鳴らす必要はなかった。2時間の予定が、3時間以上も盛り上がった。マスターには「いやあ暗いと思っていたオタクがあんなに笑うなんて」と言われたけど。 そのかわり、誰も追加オーダーしない。ウエイターが追加を取りに言っても皆うるさそうに手を振って断る。たまに追加するヤツがいるが、ウエイターが運んでくると近くのヤツから一斉に睨まれる。ウエイターのせいで見えない、聞こえないと厳しい視線がとぶわけだ。 念願かなって店は本当に文化を発信した。開店以来の動員記録を更新した。だけど、気の毒に店の売り上げはイマイチだったようだ。本当にこれでいいのかマスター。 (近況) |
| どうも一般の人は、ただ単にアニメや特撮やゲームが好きな人間を「オタク」と思っているようだ。しかしその手のものがどんなに好きであっても、それだけの人は「オタク」とは言えない。それは単なる「ファン」だ。「ファン」が「オタク」になるためには、天文学的な経済的、時間的、知性的投資を必要とする。 たとえば、どんなに「魔法陣グルグル」が好きで毎週見ていても、その行為はファンの行為でしかない。それが、全話CMカットして録画したり、挿入歌CDを買ったり、アニメ雑誌のグルグルの記事を丸暗記したり、関連商品を買い占めし始めるとオタクへ一歩踏み出したといえる。 ただしこれは一歩間違えば単なるコレクターやマニアになってしまう。 グルグルを、類似作品、たとえば「赤ずきんチャチャ」や「レイアース」と比較し始めたり、スタッフクレジットをチェックし始めたりすると、オタクにリーチがかかったといえる。 そして、彼の頭の中の知識が熟成して友達に彼なりのグルグル論・アニメ論・演出論を語り始めたときが、彼のオタクとしての第一歩なのだ。その論がいかに幼稚で、聞いたようなものであろうと、今までの見て楽しむだけ、集めたり研究するだけの彼とは明らかに一線を画する行為である。そして、彼が他の人をうならせる為だけに、人の見ないマイナーな番組や古い番組をチェックし始めたり、中世魔導書の研究のためにヨーロッパの城塞都市に取材に行ったり、グルグルのパロディマンガやグルグル論を同人誌に書き始めたら、彼はオタクとして立派に成長し始めたといえる。才能だけではオタクにはなれない。努力と精進が門を開ける鍵である。 オタクとはこのように「オタクの定義だけでも3時間喋る奴」の別名でもある。 (近況) |
| オタクにも上下がある。オタク度は「濃い」「薄い」で表現される。濃い、というのはオタク文化に対する「情熱が激しい」と言う意味か。単に「好き」とか「面白かった」では終わらない、終われない、ありあまる気持ちとも言える。 オタク道を極めるために、何を犠牲にしているかも重要なチェックポイント。クーラーはなくてもトランスフォーマーのLD−BOXがあるような人は「本当に濃い人」だ。尊敬しよう。 パソコン通信・ニフティサーブに「濃縮おたくランド」という会議室がある。濃縮、の名に恥じずさすがに濃い人ばかりだ。オタクというのは「一席ぶってナンボ」だし、濃いオタクほど語りまくる。ところが濃くなればなるほど、人の知らない知識を仕入れて、他の人がついてこれない。その為せっかくの演説も虚しく宙を舞う。いつも初心者オタクに「もっと修行しろ!」と心の中で叫ぶ濃いオタクたち。彼らに安らぎはないのか。 が、「濃縮おたくランド」なら大丈夫。「セーラームーン」?薄い薄い。やっぱり土曜の夜は「恐竜家族」だ。ジム・ヘンソンスタジオの技術を見よ。いやいや「シンプソンズ」だね。アレが判って一人前だ(何の?)。ちょっと待て、本当に「濃い」モノは、もっと日常にあるぜ。「ドラえもん」の本橋演出はどうだ?いや藤子F不二夫なら「チンプイ」じゃないか?幼児番組には案外濃いネタが隠れてるぞ。そういえばポンキッキーズで…。 「濃縮おたくランド」は果てしなく煮詰まり、カルピスで言うと「原液」を通り越して、箸が立ちそうなぐらい濃くなってしまった。もちろん、そんな濃い話についてくるヤツなんてほとんどいない。 今や、すっかり書き込みの減ってしまった会議室。オタクの天国ってこんな静かなところなのか。 (近況) |
| オタクにも、悩みはある。 僕が超一流のオタク、と尊敬するS君にすら悩みはある。 「あ〜あ、今年はクーラー買うてしもたおかげでトランスフォーマーのLD−BOX買われへんかった。ワシもまだまだやな」 彼が自分を「まだまだ」と評しているのは、お金がなくてLD−BOXが買えなかったことではない。彼の悩みはお金では解決しない悩みなのだ。 トランスフォーマーは普通のオタクにとっては、あんまり面白くないアニメだ。しかしS君のような一流のオタクにとって、この作品は見るべきところさえ判っていれば素晴らしい作品なのだ。 無意味に盛り上げるナレーター。『巨人の星』の父ちゃん声の悪役。ロディマス司令官の説得力のない説教。何も考えてないアメリカンな脚本。 S君ももちろんその良さが理解できる。だからLD−BOXを買わなけりゃと思う。いや、立派なオタクの自分は「いても立ってもいられないほど欲しくなるはず」なのだ。しかし今年の猛暑の日々、電気屋の店先でクーラーをつい買ってしまい、LD−BOXの予約期間を逃してしまう、という失態を演じてしまった。 なぜだ。もうオレはダメなのか。 彼は自分のその情熱のなさ、濃くない態度に「まだまだ」と思う。そして自分はなぜ、もっともっと濃くなれないのか悩む。「好き」というだけでアニメを見ているわけではないのだ。もっと濃く、もっと深くを目指して日々、精進する。これこそがオタクの道である。 僕はこんなS君の葛藤を「超一流のオタクだ」と嘆息する。 彼の後ろ姿を見て、僕も「エヴァンゲリオンを3倍速で録画してしまった自分」をまだまだ、と思った。 (近況) |
| オタクもクリスマスが近づくとワクワクする。 最後のゴジラ映画「対デストロイア」の公開も間近だ。ゴシラ死す、なんてどうせヤマトと一緒で信じてないけどな。きっと3年もすると復活するんだろうな。どんなイイワケするつもりだろう?あのぶっさいくなベビーゴジラが二代目襲名かな。まさか「脳死ではなかった」とかな。けけけ。でも、このタイミングで引退って言うのは、まるでガメラに引導渡されたみたいでちょっとな。 そのガメラも「対レギオン」が発表されたなぁ。年末年始は特撮パート樋口組も撮影真っ盛りだ。年末の「宇宙船」「Bクラブ」「MJ」「ホビージャパン」「テレビランド」「たのしい幼稚園」からは目が離せないなぁ。 そういえば戦隊物も最後のパワーアップがある頃だな。今年もバンダイには金を使わされたよなぁ。 年末には深夜枠で思いがけない映画が放映されるぞ。いきなり「ノストラダムスの大予言」「妖怪巨大女」とか放映されるかも知れない。「続・大アマゾンの半魚人」には研究員助手でクリント・イーストウッドが出てるんだっけ。ああ、でも年末年始は特番で何回かは「エヴァンゲリオン」潰れるんだろうな。こりゃ全TV誌にチェックだ。 仮装オフ会もあるからハンズ行って買い物しなくちゃな。「ザル二枚で作るカネゴン」なんて渋いかもな。 そうだ、せっかくクリスマスなんだから、留守電のBGM入れ替えとこう。雷門ケン坊の「ゴジラのサンタクロース」なんていいぞ。でも「エヴァン」のCD4枚同時発売は凄かったな。ビル・ゲイツよりエゲツない商売するよな。 ああ、もうクリスマスかぁ。でもなんか違うような気もするなぁ。 (近況) |
| 朝日新聞社から出ている『ぼくたちの洗脳社会』は買ったか?昨年末に出版された僕の処女出版だ。初版は五千部。日本全国に本屋は三万件、そこにたった五千部だ。大抵の本屋には無いぞ。大型書店に行って店員に『ぼくたちの洗脳社会』下さい、と言って出して貰ってくれ。急がないとそろそろ返品、裁断だぞ。 では本題だ。「アメリカのオタク特集」が、ニュースステーションでオンエアされた。アメリカン・オタクたちにも国際的に尊敬されている僕が、「オタキング・オカダ」とサインする大バカな姿が日本全国に放映されたわけだ。アメリカのオタクたちは「ナニカ絵ヲ描イテクダサーイ!」と言って譲らない。仕方なく僕は17才の頃から毎日練習したヤマトを描くことになる。それもオンエアされた。 これを観て喜んだのが東京大学で僕のゼミを取っている連中だ。あいつらは生協で僕の本を買ってきて「先生、ヤマト描いて下さい」と笑いやがる。悔しかったので「じゃ、お前ガンダム描いてみろよ!」というと、その一人が黒板にスラスラと描いた。ふん。うまいじゃねーか。 「じゃ『超生命体トランスフォーマー』のコンボイ司令官描いてみろ!」 すらすら。 「VF−1Jバルキリー描いてみろ!」 すらすら。 「じゃ、『さらば宇宙戦艦ヤマト・愛の戦士たち』に出てきた地球連邦軍旗艦アンドロメダ、描いてみろ!」 「か、描けません」 ふん。僕にオタク勝負を挑もうなど一億年早い。鼻高々に僕は「さらば宇宙(略)ドロメダ」を描き始めた。六角形の拡散波動砲が二門、鑑首にあって…。 描けない。六角形が二つしか描けない。オタキングと奢り高ぶった僕も、基本からやり直しだというのか?(冨野セリフ) (近況) |
| オタクたちには、仰ぎ見るべき「聖人」たちがいる。素晴らしいオタク作品を作ったり、オタク業界に無類の貢献をしたりした人々は、オタクの殿堂の中に祭られるのだ。本人の意思に関わらず。 そして第一期ウルトラシリーズ(ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブン)のスタッフは疑いもない大聖人である。 しかし、そのウルトラマンをデザインし、ほとんど全ての第一期怪獣をデザインした彫刻家・成田亨と円谷プロの不仲は以前から有名だ。現在、出版されているウルトラマン関係の本でも、その業績は故意に過小評価されている。 結果、成田亨はそれ以後のウルトラシリーズからは外され、円谷プロは現在に至るまで新しいウルトラマンを作り続けた。しかし第一期ウルトラシリーズのようなヒットは生まれていない。 その成田亨が先日、出版した本の中の「鎮魂歌」という詩がスゴい。 星から来た勇者 地球を救った勇者 永遠であれ 君を利用し 金儲けをたくらむ地球人の為に 角をつけたり 髭をつけたり 乳房を出したりしてはいけない スーツを着たり 和服を着たり 星空に向かってラーメンをかゝげてはいけない 強烈である。成田亨はこれを「ウルトラマンの墓」と題したモニュメントに彫りつけているそうだ。 聖人の怒りは、すなわち天罰だ。円谷プロも「ウルトラマンゼアス」なんて作ってるヒマがあったら成田亨と和解すべし。 (近況) |
| 週間金曜日、という硬派ジャーナリズム雑誌の記者に「ウーマンリブ以外に、他にもゲイ・リブとか色々リブ運動があるんです。その中のオタク・リブをご存じですか?」と聞かれた。なんでも「オタク差別を止めろ」と言うグループらしい。 「活動家の一人にインタビューしたら、自分は二次元コンプレックスで、現実の女性には興味がない、と悩んでいるそうです。どう思います?」ときた。 僕は思わず「本物のオタクが自分のことを二次元コンプレックスなんて言うはず無いですよ」と言い返していた。「陛下から電波が来た、という人が自分のことを神経性幻聴患者とは言わないでしょ?オタクにいるのは、エヴァンのレイをオカズにする奴とかガメラで濡れる人妻です。もっと具体的なんですよ」と説明した。もちろん通じない。 だいたい二次元コンプレックスって何だよ。じゃあ小説のヒロインに憧れたら、そいつは一次元コンプレックスか?セル画の女の子に憧れたら二次元なら、美少女フィギュアが好きな奴は三次元コンプレックスなのかよ。 マスコミが無責任にネーミングして喜ぶのは仕方がない。しかしそんなのにいちいち振り回されるなよな。オタクなんてのはイイ歳して怪獣だのアニメだの言ってんだから、人並みはずれて頭よくなきゃシャレになんねーぞ。 どうもマスコミの人達はオタクを「モテないせいで二次元コンプレックスになってるオチコボレ」にしたがってるらしい。 ああ、いまだに「モテる、モテない」が価値観の中心にあった80年代を引きずる哀れな人達だ。僕はすでに数年前から「オタク文化はオンナコドモには判らない大人の男の文化だ」と言っている。 トークショーなんかでこれ言ったら満場の拍手だぞ。男の客ばっかりだけど。 (近況) |
| オタクの幸福、それは何と言ってもオタク同士の結婚だ。何しろお互いの趣味に理解がある。それに投資するお金にも鷹揚になれるし、部屋が本やビデオで占領されてもお互い様。笑って許す他ない。夫婦の話題だって豊富だぞ。濃いけど。 そんな理想のオタク夫婦の中でも、ピカ一と言えば開田裕二夫妻だ。開田氏は世界一の怪獣特撮イラストレーター。彼の作品が見たければ、近所のCD屋でサンダーバードやウルトラマンのLDボックスを見ると良い。40才過ぎてもそんな絵を描いている彼は、もちろんオタクとしても超一流だ。その開田氏が結婚した。奥さんはコミケでコスプレの女王といわれた美人。オタクで美人の嫁さんはオタク男にとってドリーム・カム・トゥルー。もちろん人もうらやむ仲の良さだ。 ところが先日、開田氏編集の同人誌「ガメラが来た!」を読んだ。奥さんの「亀で濡れる」というエッセイも載っている。内容は『旦那とのセックスよりもガメラを想像した方が濡れる』、という衝撃的な告白だった。 ほんとに大丈夫か、この夫婦。 その直後ダ・ヴィンチ誌で、奥さんがヘアヌードになった。撮影はあのアラーキー。理想のオタク夫婦、危機か? しかし僕の心配は杞憂であった。ヘアヌードのギャラ5万円で、開田夫婦はガメラ2ロケ見学のため札幌へ行ったのだ。 北海道でうまい物を喰って、夫婦の絆はますます深まった。 万々歳じゃないか。旦那の編集するガメラ同人誌に、女でなければ書けない「亀で濡れる」を書く嫁。ガメラ2の北海道ロケ見学のためにヘアヌードを発表する嫁。 なんて立派な嫁だろう。 開田夫妻に末永く幸あれ。 (唐沢俊一氏のタレコミ情報に感謝) (近況) |