◆『オタクの迷い道』#91 読者様からのお便りです
| 先日、この連載で書いた「死体のホルマリン漬けバイト」に関して、いくつかお便りやメールをいただいた。 「6年以上前、ミュージックステーションという番組で、カールスモーキー石井が『2万円というバイト代でやった』と発言した」 「慶應大学の医学部では、脳のみエチルアルコールに漬け、他はホルマリンプールで専属の死体管理人が保管している。しかしホルマリンは可燃のため、危険物取扱要資格だから外部からバイトを雇うというのは、まずない。医大生バイトは一晩二万円で、心電図のバイト(一晩七千円)よりずっと割りがいいけど、髪が死臭臭くなるのがイヤと言っていた。」 「母親が看護婦で、大学病院で目撃した。アルバイトが死体をプールから引き上げる係で、ものすごい匂いのため重装備のマスクが気味悪かった」など。 いやぁ、単なる伝説・うわさ話だったんですけど本当なのかなぁ。情報提供者の皆さん、ありがとうございます。 僕も学生の時に友達から「バキュームカーの清掃バイト、するか?タンクの中身を洗って、一台七千円。午前中で二台は軽いで」と誘われた。心が動いたけど「臭い、というより目が痛い」「服が一日でボロボロになる」と言われて、やめてしまいました。はい、根性なしです。 「役に立たない超能力」に関しては、ある女性から「私には『役に立たない美貌』があります」という返事が来た。 眼科に使い捨て用ソフトコンタクトレンズを処方してもらいに行ったら、見たこともない検査装置で眼球を検査され、いきなりおじいさんの先生が叫びだした。 「美しい!すごく奇麗だ!」 「は?」 「あなたねえ、眼球のカーブがすごく奇麗。理想的ラインだよ!」 「‥‥そうですか。」 「これは何万人、いや何十万人に一人の美しさだよ!」 眼球のラインなんてマニアックな部位が、どんなに美しかろうと、確かに役には立たない。眼科医相手の合コンならもてるかもしれないけど。 最後に、最近もっとも印象に残ったメールを、ご紹介しましょう。 「ハ〜イ、オカダさん。あなたの親友・フランスのセバスチャンから紹介されてメールを書きました! 僕はニューカレドニアでただ一人のアニメファンなんです。学校が終わるとまっすぐに家へ帰ってアニメのビデオを見ます。 いつも友達を誘うのですが、みんな、サーフィンやスキューバに行ってしまいます。 でも今は、インターネットでアニメ友達をいっぱい見つけたからさびしくありません。オカダさんも僕の友達になって下さい!」 ニューカレドニア。天国に一番近い島。そこでたった一人のアニメファン。 なじかは知らねど、心に沁みるメールだ。 (近況) |
| 今から15〜20年前、SF小説が大ブームになった。SF作家が神様のように慕われた時代だ。SF大会は、その頃に盛り上がった年に一度のイベントで、SF作家がゲストに来るは、ファン同士が徹夜で酒盛りをするはで、毎年大盛況だった。 時は移り、SF小説ブームは去ったけど、SF大会はあいかわらず盛り上がりっぱなし。当然、参加するファンも年々歳をとっていく。今や平均年齢は三十代なかば以上、昨年は十代参加者が10人を切ったそうだ。 軽佻浮薄な世間的ブームを無視し、ひたすらオノレの進む道を進むツワモノたち。SF小説にいつまでも未練をもっている、じゃなくて熱い想いを抱いている筋金入りのオタク中年が、千人以上も集まるのが、現在のSF大会なのだ。 4年ぶりにこのSF大会に参加したけど、久しぶりで強烈だったのは、彼らのオタク・ファッションだ。といっても、別に身につけているものが、特殊だというわけではない。 何の変哲もないチェックやストライプのシャツ。ケミカルウォッシュのジーンズ。又は、ベージュの綿パン。 こういう、いわゆる「ごく普通」の恰好も、行きすぎるとちょっと違和感はある。一つは、「普通」であろうとするあまり、本当の普通の人に比べてあまりにも主張がなさ過ぎる点。もう一つは、服装に気もお金を使わないために、普通の人よりどうしてもヨレヨレしている点。そして、大量に集まっても、みんながみんな、本当に同じような恰好だという点。 が、この服装でバラバラと外に出れば、すっかり町中にとけ込める。オタク服とは、都市型迷彩服なのだ。 オタクの都市型迷彩服は、ほっとくとある方向に進化する。 まずバンダナ。海賊みたいに頭にバンダナとか手ぬぐいを巻いて後ろで結んでいるのをよく見かける。髪型で次に多いのが後ろで結ぶチョンマゲ。なぜチョンマゲ? 次にベスト。Tシャツの上から、ポケットがいっぱいついて背中が網になっているベストを着ている。カメラマンやフィッシャーが着るような機能的なヤツだ。 それに軍用ブーツ。異様なほど履き古したものがほとんど。 これらのアイテムも、一つ一つとってみれば、さほど珍しくない。おせじにもスタイルが良いとは言えない中年男女。別にコスプレをしているわけでもない。ハデな恰好というわけでもない。なのに、この浮き世離れ感は一体何なのだろう。 場所は、長野県の山奥にポツンと一軒だけある豪華ホテル。もちろん貸し切り。霧に囲まれてまるで映画『シャイニング』のの幽霊ホテルみたいだ。 もし一般人が遭難してやってきたら、どう見えるだろう?いまどきSF小説で、見回せばあのファッションの男女が大群。なにか得体の知れない不思議さに、本当の幽霊ホテルだと思うかもしれない。 (近況) |
| 今年もコミケの季節がやってきた。コミケというのは同人誌専門のフリーマーケットのことだ。アニメやマンガのファンを中心に、日本全国からなんと50万人以上ものオタクたちが集まる、世界でも類例を見ない大イベントである。 このイベントに僕は毎回、自作の同人誌を作って参加している。毎回、楽しく作れて大好評なので、今年も早めから構想を練っていた。2月初旬から「どんな本にしよう」とさんざん検討していたけど、悩み続けて結論は出ないまま。ハッと気がつくと、もう7月20日だ。いまだに「何を書いたらいい?」の段階から抜け出せないのだ。 読者の皆様も「はぁ、そりゃまぁお困りなんでしょうなぁ」とお思いでしょう。 「仕事でもないんだし、適当でよかろうに」と考えている方もいるでしょう。 とんでもない。 仕事じゃないだけに、つまんないもん、作れないんですよ。 仕事なら「文字数の制限で」とか[〆切が早くて」とか「これ書いても売れないから」とか、言い訳はいくらでもある。 が、コミケで出す本には、なんの制約もない。ページ数も内容もお好みのままだ。〆切だって半年も前から判っている。 だから、コミケで本を出すというのは「自分が本当にやりたかった本はこれです」と表明するようなものだ。 適当なものを出せば自分の評価はがた落ちとなる。いや、他人の評価というより、「オレはこの程度の人間だったのか」と自分自身に引導を渡すしかない。 焦る僕の心の中で、様々な声がこだまする。 「本当にやりたいものがなければ、さっさとやめてしまえ!」 「もう、どんな本でもいいよ。とにかく適当に売れそうな本を書こうよ」 「出すからには50冊しか売れないなんて、絶対イヤだ。バカスカ売れて大評判になるような本にしよう」 「本当に自分が書きたい本なら、1冊しか売れなくたって嬉しいよ。20冊作って15冊売れる。そんなマジメな活動をしようよ」 「もうオレはダメだぁ」 というのが、昨日までの僕だった。 が、もう大丈夫。ついさっき、もんのすげぇアイデア、思いついたもんね。16ページ中カラーが8ページもある同人誌を一度に2種類、わずか1週間で完成させる方法、見つけたもんね。 やっぱオレ様は天才だわ。今年も岡田斗司夫はやりますよ。おまかせ下さい。 だまされたと思って、五百円玉握って僕のブースまでおいで。去年の夏は千円、冬は五百円だった。今年の同人誌は、なんと二冊で五百円。去年の夏のコンセプトがかっこいい本、冬のコンセプトが面白い本。今年のコンセプトはかわいい本だ! 同人誌の他に、手作りの小物も用意して待っています。8月15日(日)に東京ビッグサイト東館モ16bロケット野郎で会おうぜ! (近況) |
| BSマンガ夜話を見た人から「最近、パワーないですね」と言われた。 BSマンガ夜話とは、NHKの衛星放送・BS2の人気番組。ひとつのマンガ作品を1時間かけて語りあう番組だ。当然、話題はひたすら濃くなる。午前1時スタートという深夜番組だから、それも許されたのだ。 今は夜10時からというプライムタイムの放映。異常に評判が良いからだ。4年ほど前の番組開始からずっと、僕はレギュラーとしてこの番組に出演しているのだ。 「攻殻機動隊とかナニワ金融道の岡田さんはパワー全開だった。このまま文化人になるつもりですか」とも言われた。確かに自分でもパワー全開とは言えない。文化人呼ばわりされても、反論できないではないか。 全開できない理由を考えてみよう。 最初はスタッフも手探りだった。出演者も感性で自由に話せた。しかし今は違う。すっかりフォーマットが決まっている。 まず最初にゲスト紹介とマンガの内容を説明するVTRその他で7分。次にいしかわ氏がマンガとしての評価を説明。視聴者からのFAXを紹介するコーナーが3回入って夏目氏のコーナー、絵や表現方法に関するつっこんだ考察をする。ここまでで45分、残り15分がこの間にバラバラとはさまれるわけだ。この時間中で「燃えろ!」と言われても、なかなか難しい。 大槻ケンヂ氏は凄かった。番組が始まった瞬間、「今日は僕、『俺節』を語ります!クリエイターが普遍的に持つ、魂の叫びです!」とはじけたのだ。 でも僕は、一人では燃えられない。会話を積みながら、じわじわっと燃えはじめ、気がつくと誰にも消せないくらい燃え上がり、その場を焼き尽くすタイプだ。「視聴者からのFAXを紹介」と入れば、あっとうまに鎮火されてしまう。 深夜番組でなくなってからは、「視聴者をおいてきぼりにした濃いトークは控えないと」などと遠慮してしまう。自分自身で燃えないようブレーキ踏んでるも同然だ。 「ファンの気持ちを考慮する」という規制もある。 特に少女マンガは気を使う。「はみだしっ子」や「エロイカより愛をこめて」のとき、熱烈ファンからのブーイングがすごかった。 「本当に好きな人にしか語って欲しくない!」「もっと原作を研究して!」 熱烈ファンのお姉さま方の怒りは尋常じゃなかった。番組に寄せられたFAXやメールからも、充分にうかがい知れる。これには出演者全員、ビビってしまった。気の弱い僕なんか、少女マンガの日はつい、あたりさわりのないことを話してしまう始末だ。 わかっている。言い訳と泣き言ばかりではダメだろう。いつまでも大人しくしているのもイヤだ。 よろしい、8月30日から3日連続で、またマンガ夜話がある。ここでブレイクして見せましょう。 現在、短時間で自分を燃え立たせる技を修行中だ。結果はその日をお楽しみに。 (近況) |
| アニメ誌を買わなくなった。大学の頃は世間様になんと思われようと、発売日に全てのアニメ誌を買っていた。表紙がミンキーモモやラムちゃんのアニメージュを、電車の中でも平気でガンガン読んでいた。 ガイナックスを設立してから、アニメ誌は出版社から送られてくるようになった。そうなると人間、つい心がおごる。発売日を指折り待って買ったアニメ誌も「あぁ、また送ってきたの。そこらに置いといて」となってしまった。 物書きになってからは、さすがにアニメ誌は送られてこない。それでも、何だかわざわざ買うほどのものでもない気がして、必要に迫られない限り買わない。 そんな僕が、久しぶりにアニメ誌を買ってみたのだ。 もう、目がつぶれるかと思った。 赤とか紫とかピンクで、ヘンな髪型。猫みたいな目。鹿みたいな耳。妖怪変化みたいな幼児体型。そんな女の子が氾濫している。いや別に、最近、こんなへんなキャラが出てきたと言うつもりはない。僕がアニメ誌を買っていた頃も確かに、頭に角がはえて、緑の髪の猫目姉ちゃんが空を飛び回っていた。でも、そんなのばっかじゃなかったような気がする。 今のアニメ誌を見る限り、世の中のアニメはロリロリ〜な女子とヤオヤオ〜な男子しかいないみたいだ。そんな部分にしか楽しみを見いだせないのか。 こういう声は、僕と同世代のオタクからはよく聞く。 「あかほりさとるのアニメなんか見るし、マルチ萌え〜、と叫ぶ低能ども!」と、過激な意見をはく人も多い。 「そんな暇があったら、もののけ姫でもみて、社会を語りたまえ!」 10年前には、コミケでコブラやラムちゃんのコスプレをしていたおじさんたちは、ぶちあげる。 が、ヤングなオタクたちは、なにかというとすぐガンダムとかマジンガーとか語り倒すおじさんたちを、うざったそうに遠巻きにするだけだ。つまり、ジェネレーションギャップというやつ。オタク業界なんてただでさえ狭いサークルだ。いや、狭いから対立もますます加速する。 僕も「最近のアニメはもう」と先輩にグチったら、「何を言っている。毎日テレビでアニメを見られるだけでもありがたいと思え!」と叱られてしまった。 僕の先輩、オタク第一世代は、アニメが貧しい頃に思春期を過ごした。だから、僕らがオタク修行にビデオやLDをばかばか買うことすら気に入らないのだ。 「そんなものが手元にあると、アニメを見るときに気がゆるむ。もう一生見れない、という気合いで見て、おぼえろ!」 ああ、世代間の壁は、いかんともしがたいなぁ。そんなわけで、今後僕のことは気軽にオタクと呼ばないように。正確に「第二世代オタク・SF右派」と、呼んでくれたまえ。 (近況) |
| 東大ゼミ時代の学生たちと「一度、合コンというのをしてみよう」という話になった。「男ばかりで一晩中オタ話もいいけど、たまには合コンもいいよね?」 余裕のある言い方を装っても、みんなの心の中は「取らぬタヌキ」だ。だって考えてみれば、みんな圧倒的に高学歴。「複数の女性から言い寄られたら、傷つけないように断るにはどうしらいいか」なんて妄想にふけりだした。 「じゃ、僕が女の子、集めてきます!」 まっさきに張り切ったのが、松原2号だ。呼び名の通り、僕たちのサークルに入ってきた二人目の松原君。普通、同姓の人が入ってきたら、名前で呼ぶとかするだろうに、当然のごとく「2号」とか「バージョン2.0」とか「新型」と呼んでしまう。ここがオタクのアイデンティティである。 松原2号は中央大学生で、東大生に比べればずっと世慣れしている。「うちのゼミから女みつくろって呼んできますよ。どんなのがいいですか?」「う〜ん、合コンと言っても、一度経験してみるのが目的だからね。相手に本気になられても困るんだけどね。」「いや、だからって、彼氏のいるヤツなんか絶対ダメだからね!」 本気になってるのはお前やろ!というツッコミすら入らない。初めて釣りに行くくせに、すごくデカいクーラーボックスを背負っていくような意気込みだ。 僕にとっても、生まれて初めての合コン。舞い上がって、会ったこともない人にまで、電子メールを送ってしまった。 「いえ、私も妻子ある立場ですから、ちょっと経験してみようかと思って」などという建て前を全面に押し出してはいたけど、心はでっかいクーラーボックス。朝帰りの時のイイワケなどを密かに考える。 ところが、オタク仲間から来る返事がひどい。「どうせ、オタ話しかできない」とか「男同士でターンAとかで盛り上がって、女の子はおいてきぼりだろう」とか。 そう言われてみれば不安になる。さっそく「合コン対策会議」を開催することにした。議題は当然、「我々は合コンで何を話題にすべきか」である。 合コン当日まで二日に一度は徹底的に討論した。松原2号は、こういう局面になった途端、急にデカい顔でみんなにとくとくと説教をはじめる。 「相手はフツーの女の子ですから、テレビの話でもすればいいんですよ」 そんなことを言われただけでフツーの話ができるなら、合コン対策会議なんてするわけがない。もちろん、テレビの話だって、出来るだろう。でも、たぶん僕らが見ているテレビと、彼女たちが見ているテレビは、違うテレビなんだ。 「きっと、彼女たちが見ているテレビには、あのロンバケとかが映っているんだろ?」 「ロンバケなんて、とっくの昔に終わりましたよ!」 「えっ!?」 ああ前途、多難なり。(続く!) (近況) |
| 合コン対策会議は白熱する。一体どこまでがオタ話で、どこまではOKなんだ?「ターンA、あまり富野っぽくないね、っていうのは?」「明らかにオタ話」「なんかまたガンダム新しいのやってるけど、昔のとカンジ違うね」「なんだ、それ。幼稚園児の会話か!」「ザクとかあったね、ってウスく答えろよ」「じゃあドムやゲルググやアッガイやブラウ・ブロやボリノーク・サマーンの立場はどうなるんだよ!」 「‥やっぱアニメは無理だよぉ」「‥‥」 「ゲームの話だったらいいよね」「ゲームだったら何でもセーフか?プレステだけじゃないの?」「ダンスレボリューションはOKだけど、爆走デコトラ伝説はダメ」 「ドリームキャスト、テレビで宣伝してるじゃん」「う〜ん、湯川元専務はOKだけど、『機動戦士ガンダム・コロニーの落ちた地に』はダメ」「なんでダメなんだよ!あれ、いいじゃんか!」「オレだっていいと思うよ!でも女の前じゃダメなの!」「‥‥」 こういう話をしていると、全員の目に「そこまでして、女と話したくなんかない!」という怒りが燃えてくる。「もてない君の相談会みたいですね」などと松原2号がポツリとぬかすから、みんな爆発寸前になる。 が、大人なのでグッとガマンだ。僕たちは合コン対策用にパソコン通信の会議室を開き、そこでもいろいろとオタ話か、フツーの話かという議論することを忘れなかった。 さて今回の合コン、見どころはこれだ。 1)オタキングの唯一の社員・柳瀬くん。彼はハンサムで背も高く、日本初の飛び級制度適用で大学院に入ったという華々しい経歴。いわゆる三高なのに彼女はいない。一体、日頃どんな態度で女の子に接している結果なのか、原因を解明したい。 2)真面目で優しい東大生、中尾くん。マメに動く性分だから、この合コンでも、会計をするに違いない。その時に日頃愛用している関数電卓を持ち出して計算するかどうか。それを見て、女の子が引くかどうか。 3)スガシカオみたいなメガネの古川くん。真っ先に宇多田ヒカルのCD買うし、今は鈴木あみがいいって言うし、レゴのマインドストームにハマるし、という書いていて恥ずかしくなるようなサブカル野郎だ。この感性が、ド田舎・中央大学の女の子にどのくらい通じるのか。 4)通称、教授。いつ、いかなるシチュエーションでも、ミニ四駆の話しかしないヤツ。就職第一希望のホンダにあっさり入社して、モータースポーツ事業部に配属された。すべてのミニ四駆野郎にっとって夢のような人生を歩んでいる。女の子から見ても、東大出でホンダ勤務は悪くない。ミニ四駆話オンリーという欠点をカバーできるか。 5)松原2号「日頃でかいことを言っている岡田さんの実力、見せてもらいましょう」 僕「あぁ〜、任天堂64マリオカートでプレイヤー1がマリオ選んだときに言う『ドキドキ〜』という気分だなぁ」 松原2号「それ、完っ璧なオタ話」 あ〜、ドキドキ〜。 (近況) |
| いよいよ合コン当日、吉祥寺南口マクドナルド前に集合する同士たち。ファッションも気合いが感じられる。でもおかんカジュアルの中尾くん、ベスト重ね着はマズいんじゃないか?まるでウィーン少年合唱団だ。 即、本会場へ移動。意気込んで店に入るが女の子達はまだ来ていない。とりあえず、男ばかり一つのテーブルに集まり、今が最後のオタ話。「ウテナ映画版、スゲえらしい」「京商のラジコン潜水艦が‥」など、禁煙室に入る前の一服といったところだね。 30分遅れで、ようやく松原2号が女の子達を連れて登場。男10人、女11人が打ち合わせ通り男女互い違いに座る。これも男同士の会話を防ぐためだ。これからは向かいと両隣の女の子とだけ話さなければ、いけないのだ。女の子とフツーの話!? 自己紹介が終わって、最初の緊張した雰囲気がほぐれると、みんなハイになってきた。時々、向こうのテーブルから「ウヒャヒャヒャヒャ〜」と怪鳥のような笑い声が響いてくる。柳瀬と高野だ。ただでさえ声がデカいのに、浮かれまくって「合コン酔い」になってるのだ。 もちろん、酔っているのは彼らだけではない。僕も女の子のたいくつそうな顔を見るのが怖くて、一生懸命しゃべり続けた。 「岡田さん、痛ましいまでの努力をしていましたね」「あの岡田さんがシモネタ話までして女の子の機嫌をとってるなんて。辛くて見てられませんでしたよ」と、後で中尾にまで言われたぐらいだ。 あっと言う間にお開きとなり、この合コン一番の見どころ、精算となった。悪魔の微笑みを浮かべた松原2号、ごく自然に「中尾くん、一人いくらかな?」と伝票を手渡す。すると中尾くん、当然のごとく愛用のでかい関数電卓を取り出した。もう女の子たち、引きまくり。 「女の子は千円安くして」とさらに追い込みをかけると、ついに紙ナプキン裏に男子支払い額=X、女子=Yとする連立二元方程式を書き出した。もちろん大マジなんだけど、女の子達もこれには爆笑。そりゃ、ここまで「いかにも東大生」なこと、テレビドラマでもしないよな。 しかし男どもはその笑いの意味に気付かない。「だから女をX、男をXプラス一〇〇〇円にすれば、一次方程式ですむだろ」とか突っ込む。なぜそこまで真剣に? 「男は三八六七円、女は二六七五円、消費税コミです!」 嬉しそうに叫ぶ中尾くん。しかし悪魔の松原2号は「一円単位じゃなくてもいいよ!」と冷たく決めつけるのであった。 二次会はアンナミラーズ。少し人数も減り、ぐっと親密な雰囲気にゴキゲンな僕たちは、女の子たちを吉祥寺の駅まで送った。 しかしボルテージが上がりきって閉まったオタクたちは、このままでは帰れない。 「よぉし、このまま反省会に突入だぁ!」 近くのオタキング事務所で、当然のごとく「男だけの朝まで反省議論大会」に突入したのであった。(次回に続く) (近況) |
| 「フツーの男なんて、つまんないかもね。僕たちって、やっぱ持ち味が違うから」と、自慢まじりのオタ話もあふれ出す。 ちゃんと普通の女の子と楽しく話せたオタク男子たち。顔は自信にあふれ、男として一皮むけた反省会の夜である。ミニ四駆マニアの松原きょーじゅは女の子から電話番号まで聞きだした。さすがミニ四駆、バックも旋回もできないけど、押しは強い。 「次はやっぱカラオケで?」と次回計画にも熱がはいる。気が大きくなった柳瀬くんから「あんな普通の女はダメだ」というゼイタク発言まで飛び出した。 もともとこの合コンには「オタキングなんかに勤めていると女の子との出会いがない」という松原2号の発言がキッカケだった。ところが当の本人は「2号!もっとオレに合った女を連れてこんかい!」とくる。 「じゃあ柳瀬さんの好みは?」「オレの話を聞いてくれる子!オレの言うことをはいはいはいはいと、さえぎらずに聞いてくれる子」「それじゃ会話のキャッチボールがないですよ!」「オレは会話のキャッチボールなんかしたくない!投げ込みたいだけ、会話のピッチング練習がしたいんだよ!」 これには全員、ひっくり返った。 「ストライクゾーンの狭い女はダメ。オレの話題が暴投しても、ちゃんとミットの中心で取ってくれる女の子を用意してくれ」 「柳瀬さん、それは合コンではない。単なるシゴキですよぉ‥」 オタク男の話はそこから「こんなにオレたちの話は楽しいのに、割に合わない」と流れた。女の子たちもあんなに楽しんで帰ったのだ。これはもう、お金をとって話し相手をする方がいいのではないか。僕たちの品質の高い爆笑トークやジェントルな雰囲気をウリにしたオタク系ホストクラブはどうだろう。場所はこの事務所でOKだ。照明をシャンデリアに替えて、椅子をソファに。飲み物はペットボトルのコーラ。 激安ホストクラブ、五百円ぽっきりなんて繁盛まちがいなし! 合コン酔いの勢いを借りて、話はどこまでも大きくなった。 数日後、合コン対策専用掲示板に松原2号が戦慄の発言を掲示した。女の子たちから先日の合コン感想アンケートがまとまって送られてきたのだ。 一人々々に関して、どんな感想があったかは、ここであえて触れない。思い出したくもない。辛くてちゃんと読めなかった。ただいくつかの単語が胸に突き刺さった。 「うるさい」「彼氏としては全員、対象外」「ある意味おもしろかったけど、もう一度行きたいとは思わない」 冷静になって思い出せば、吉祥寺の駅で女の子たちはちっとも名残惜しそうじゃなかった。いっぱい話したけど、彼女が何を話していたか覚えていない。ちっとも聞いてなかったんだ。 「アンケート結果をノーカットで読んだら、みんな死んでしまいますよ」と、松原2号は心配する。心配するな、僕たちの純情ハートはすでに死んでいるぜ。(まだ続く!) (近況) |
| 「試合に出るのが早すぎた」と、松原2号は言う。「もっと基礎力を鍛えないと。あんな連携プレイも作戦行動もない合コン、初めてですよ」 連携?作戦?ナニそれ!? 基本的に合コンとは、目当ての女の子を見つけて落とす、という集団ゲームだ。まず、どの女の子にも楽しく接すること。寂しそうな女の子がいたら気をつけて話しかけるなどフォローも大切。放っておくと他の女子からマイナス点をもらってしまう。こんなマイナス点をとらないように最大限注意を払うのが序盤戦。最初っからガンガン面白い話を、は問題外である。 目当ての女の子が決まったら、それとなくアプローチを増やすことで、周囲の人間にソフトにアピールする。気づいた者はフォローを入れる。「そういえば、○○もそれ好きだよね」とか話題をふってやるわけ。当然、自分も他のメンバーが誰を狙っているかを察知して、フォローする。 お気に入りの女の子が見つからず、最後までフォローだけに専念する、ということもあり得る。その場合は落ちついて次回へと希望をつなぐ。集団プレイだから、一番大事なのはチームワークなのだ。その場の和やかな雰囲気をこわさず、心配りを忘れず。これが合コンの極意ですよ! もう目からウロコが落ちまくりである。 中央大学の松原、しかも2号の話を、こんなにありがたく拝聴する日が来ようとは。 あぁ、そうだったのか。合コンってそんな高度なゲームだったんだ。 「会話のピッチング練習じゃないんだ‥」 柳瀬君がうなだれる。 「女子のアンケートに『変なメガネ』って書かれてしまった‥」 古川君はため息をつく。 「ミニ四駆だけじゃダメだと言うのか‥」 松原きょーじゅの後ろ姿がイタい。 「僕は電卓で笑われただけなんですか‥」 うん、そうだよ。中尾君。 そういうわけで、僕たちは現在リハビリ中だ。大ヤケドをした消防士同様、しばらくは足がすくんで合コンの話題すらできない。2号はあいかわらず、看護婦さんやネットで知り合ったお姉さんと合コンをしまくって、嬉しそうに報告をする。イヤなヤツだ。 「このままではいけない。まずサークル名を変えよう!」 再出発には、やっぱこういう儀式が必要なのだ。 新サークル名は「さわやか合コン部」。 なんてわかりやすい名前だろう。誰が聞いても、合コンサークルだとすぐわかる。しかも「さわやか」だから申し分ナシ。 2号は「自分でさわやかなんて名乗るなんて、すっごく怪しいですよ!」と言う。 いや、一般大衆など単純なもんだ。自分から「さわやか」と自己申告するような正直な若者たち(僕は41才だけど)を、誰が疑うだろうか? 行け!さわやか合コン部。世の中は広い。きっとどこかにミニ四駆やオタク話の好きな、白馬に乗った王女さまが待っているに違いない。違いないのだぁ! (近況) |