◆『オタクの迷い道』#101 信じられない、信じたくない話
| 以前、カンフー映画の話(中学生が作った映画で、背景のビルがどんどん完成する)を書いたら、連載仲間の板井さんから「あの話、ネタでしょ?」と言われた。想像を絶する話を聞いたとき、人は「それ、ようでけたギャグとちゃうんか?」と、信じられなくなるのかもしれない。 ある女子大生からのメールを紹介しよう。 「私の所属するサークルもオタクな人達が揃っています。彼らは時々熱のこもった語らいをしていますが、私達女子部員には全く分かりません。(中略) 岡田さんは『快傑ライオン丸』という作品をご存知でしょうか。頭が白いライオンで体は人間、マントを着て刀を差しているやつです。小さい頃、確かにテレビで見たと思うのですが、同世代の人間に訊いてもみんな知らないと言います。そのオタク部員たちにも訊いてみたのですが、「そんな時代劇があるはずない。地方CMかなんかだろう」と蔑まれてしまいました」 信じられないのも無理はないが、その時代劇は実在する。『マグマ大使』で有名なPプロ製作のSF時代劇だ。主人公の名前は獅子丸、「風よ、光よ、忍法獅子変化!」と叫んでライオン丸に変身、ゴースン魔人と戦う、という番組だった。 まぁオタク部員たちの、そんな番組信じられないという気持ちもよくわかる。ここで書いていても冗談としか思えないようなすごい設定である。 でも、あの『北斗の拳』だって、今から20年後ぐらいに子供に話したら、信じてもらえないかも知れないのだ。 「子供の頃、北斗の拳ってマンガが流行ったんだ。核戦争後の地球の話で、身長30mの巨人相手に空手で戦うスーパーヒーロー・ケンシロウの話。キックやパンチだけで、相手は「あべし!」とか叫んで頭が爆発するんだぞ。「お前はもう死んでいる」ってセリフ、かっこよかったなぁ」 そんなことを言っても「それ、ギャグでしょ?」と疑われるだけ。どの時代にも「それって冗談でしょ?」っていうような破天荒な話が、まじめに作られてたりするのだ。 「お尋ねの『怪傑ライオン丸』という番組は実在します。詳細はコレコレであります。それどころか翌年には続編の『風雲ライオン丸』も製作されました。『風雲』は、戦国時代が舞台のウェスタン風時代劇。幌馬車で旅する主人子・獅子丸は「ロケット・ライオン丸!」と叫んで、背中に背負ったロケットで空を飛び、ライオン丸に変身する、という設定でした」 僕がメールを送ると、彼女から感謝のお返事がすぐに届いた。 「貴重な情報、ありがとうございます。これで友達にも、本当だと胸を張って話すことができます。ところで続編の『風雲ライオン丸』は、岡田さんのギャグですよね?そんな番組、あるはずないですよね?」 そうなのだ。人は想像を絶する話を聞いたとき、「それ、ようでけたギャグとちゃうんか?」と信じられなくなるのである。 (近況) |
| アメリカン・オタクに「どうやって仲間を見つけるのか?」と訊いたことがある。「授業の前に教室でさ、アニメージュとかニュータイプとか日本のアニメ誌をバーンと全開で読むの(笑)。そしたら興味のあるヤツが寄ってくるから『彼女、ラムちゃんっていうんだ。キュートだろ!』とか『今夜、うちで北斗の拳のビデオ見るか?』と声をかければ、ばっちりさ!」 髪の毛がピンクや紫の半裸姉ちゃんが剣振り回してるページなんかを開いて、腕組みしながら待ってるんだろう。実に正々堂々、サワヤカと言えるかも知れない。 日本だと、なかなかこうはいかない。自分がオタクなんて堂々と言えるヤツなんてまずいない。コソコソと正体を隠す、隠れオタクばかりだ。 日本では異質な存在は常に嫌われる。もしオタクだなんてバレたら、クラスで村八分だ。その恐怖は深刻だ。中学、高校時代は、クラスの友達だけが人間関係のすべてなのだ。だから、オタクたちは実に慎重にその手の話題は避ける。クラスの友達とはあたりさわりのない話をするよう心がける。 とは言え、落とし穴はいくつもある。特に修学旅行は最も危険なイベントとなりうるのだ。 オタキングの社員・柳瀬くんも、修学旅行で危ない橋を渡った。旅行先は京都だ。 「京都ローカルの、日高のり子(アイドル声優)のラジオ番組が聞きたい!」 当然、京都に着いたらまっさきに持参したラジオでKBS京都が受信できるチェック。クラスのみんなが女の子の部屋へ行ったり、外へ繰り出したりする夜に、「いや、おれはちょっと」とさりげなく断って、フトンの中で日高のり子を聞いたそうだ。 バイトの松原2号は「だめですよ。そんなのバレバレですよ」と柳瀬くんの苦労談を一蹴する。 「オレは修学旅行の日が、たまたまBOMB!(アイドル写真投稿雑誌)の発売日だったんですよ。どんなに発売当日にBOMB!を読みたかったことか。自由時間に本屋に行って買いたかったけど、旅行が終わるまではとぐっと我慢したんです。でも前々から、こいつもひょっとしてアイドラーでは?と疑っていた野郎が、ガマンしきれずBOMB!を買いに走ってしまい、しっかりバレちゃったんです」 おお、気の毒にな。 僕はというと、そんな隠れオタク経験はない。第一、僕が学生の頃には「オタク」という言葉はまだなかった。僕自身は自分のことを「SFファン」だと思っていたし、隠しもしなかった。電車の中で、堂々とアニメージュやニュータイプを読んでいたから、アメリカのオタクたちとどっこいのおおざっぱなメンタリティだ。僕の友達のSFファン達も、堂々としたモノだった。 そんな古き良き時代にも、隠さなければならない趣味を持つ人がいた。僕の先輩・関さんもそうだった。彼のあだ名は「ロリコンの関さん」。彼は自分がロリコンだということを必死で隠していた。(続く) (近況) |
| 学生時代の先輩に「ロリコンの関」と呼ばれている人がいた。新歓コンパで「次、ロリコンの関〜」と明るく指名され「そやから僕、ロリコンちゃいますよ〜」と笑っていた。「ロリコンの関」なる先輩は、そのあとまじめな自己紹介をした気がする。以前にたまたまロリコンと誤解されるような発言か何かをして、そのことをいつまでもからかわれているのだろう、と思った。 関さんはいかにも、まじめなSFファンというカンジだった。でも誰一人、「ロリコンの関」と呼ぶのをやめない。そのたびに関さんは「違いますよ〜」と一応否定するけれど、「なに言うてんねん。お前が関でなくなる日はあっても、ロリコンでなくなる日はあらへん」と返されるのがオチだった。関さんは、怒るわけでもなく、それ以上言い争わない大人な態度だ。からかうにしても少ししつこいかなぁ、と思った。 が、たまたま先輩たち数人と自動車で移動中、先輩たちがSF研の運営について論じているときだ。関さんは「星川さんのやり方では、やっぱり若いもんはついてけえへんと思うねん」とマジメな発言中に、不自然に視線が移動している。外の景色に気を取られているのだ。何だろうと見ると、信号待ちしている僕たちの車の横を、小学5〜6年くらいの女の子たちが通り過ぎて行くところだった。ロングヘアの雰囲気のある女の子も混じっている。 「えっ?!」と思った時には、関さんの視線は戻っていて、誰も気づいていない。 梅田の大書店に行ったときも、関さんはロリコン写真集の棚には近づかない。しかし解散したあと、その棚には必ず、熱心に立ち読みしている関さんがいた。 定番の「関ジョーク」は、「この前旭屋の5階で、関さんを見た」だ。これはちょっと難しい。旭屋書店の5階は医学専門書のフロア。関さんが見ていたのは小児女子科の専門書、というのが答えだ。旭屋書店のフロア知識は大阪オタクの基礎教養。そして関さんがロリコンなのは、僕たちグループの共通認識なのだ。 噂によると関さんの部屋にはどうやら、ロリコン写真集が山ほどあるらしい。誰も見た者はいない。ただ、僕が関さんの下宿に遊びに行くと、部屋の前で10分以上待たされた。その間中、何かを片づける音が聞こえるのだ。ようやく入れてもらった部屋には、本棚がびっちりだ。棚にはSF小説が並んでいる。 本棚に手をつくと、本棚がぐらっと向こうに傾く。本棚と壁との間に、何十センチもの隙間がある。なぜそんな隙間が? 先輩にその話をすると「アイツはあれでも隠してるつもりやねん。せやから言うたるなよ」と笑った。僕もつられて笑ってしまった。 その後、僕も明るく「ロリコンの関さん」と呼べるようになった。関さんはあいかわらず「なんで僕がロリコンなんですか〜」と言う。でも僕たちは「そんなん、大昔から決まってるやんけ」と笑うだけ。 けっして理由までは言わないのだ。 (近況) |
| やぁ、みんな!やっとコミケが終わったね!僕らオタクにとってコミケと言えば、同人誌を売ったり、買ったり、作ったり。どっちにしても、重かったり辛かったり、徹夜だったりするというガテン系のイベントなんだよね。 だけど、君たちのようにトゥナイト2でしかコミケを知らない人たちにとっては、コミケって言えばコスプレなんだろ? ラムちゃんとかアヤナミとか「ときメモ」の格好した半裸のねーちゃんと、カメラ小僧がウジャウジャいる場所。 たしかにコミケって、そう思われている。 僕がコミケに出ると言うと、たいていの人は「えっ、じゃぁ岡田さんもコスプレするんですか?」と訊いてくる。どうもそういう人たちは、コミケ参加者全員が何かのコスプレをするんだ、と思っているらしい。 そんなわけないでしょう? コミケ参加者って50万人だぞ。 50万人のコスプレ。見渡す限り、コスプレの大海原。そりゃ僕だって見てみたい気もするけど、行きたくはないよ。そんな恐ろしい風景はトゥナイト2で充分だ。 「じゃあ岡田さん、コスプレしたことないんですか?」 相手の目には、安堵と落胆のいりまじった色がうかがえる。オタキングと言ってもしょせんマスコミに出るようなニセモノ、やっぱ大したことないじゃん、とでも考えているらしい。 「したことはありますよ、コスプレ」 「えぇ!いつですか?」 コミケ以外でコスプレすると、法律に触れるとでも思っているのか。 「最初にコスプレしたのは、スターウォーズのオールナイトで並んだ時」 「スターウォーズって、何作目の?」 「第一作目、1978年公開のに決まってるだろ」 「あぁ、わたし生まれてませんでした」 わかったよ。 どうせオレは中年だよ。ジジイだよ。 「何のコスプレしたんですか。ルークですか?ダースベーダーですか?」 「いや、ちょっと大魔神を‥」 ここで、相手はすっかり混乱してしまう。スターウォーズなのになぜ大魔神? 「そんな関係のない格好で並んで、ヘンに思われないんですか?」 「まわりもみんなスターウォーズとは関係ないコスプレで並んでいたからね。スパイダーマンとかスーパーマンとか」 「その方達も、岡田さんのお友だちだったんですか」 「スパイダーマンやってた澤村君は、いまガイナックスの社長。ほら、エヴァンゲリオンで大儲けして、脱税でつかまった人」 このあたりで、さすがにみんな「はぁ」とかモゴモゴ言って退散していく。 オタクたちの歴史の深さにふれ、畏怖の念を抱いたためなのか。 いや、きっとオタクのアホさ加減を思い知って、呆れ果てたためなんだろうなぁ。 (近況) |
| 「シアトルはいつも、雨なのか?」 シアトルでの取材旅行中の話だ。タクシーの運ちゃん相手になにげない世間話のつもりだった。 「この季節はいつも雨だ」 予想通りの答え。トム・ハンクスの映画でも「シアトル?雨降ってるだけの街だろ?」というセリフがあるくらいだからな。しかし次の質問は予想外だった。 「でもエチオピアならずっと乾いてる。なぜお前はエチオピアに行かない!?」 どういう意味だろう?この黒人の運ちゃん、熱狂的愛国者のエチオピア人なのか?返事一つでは、相手の逆鱗に触れまくりそうである。とにかくエチオピアについて知ってることを必死で思い出した。 「1970年、日本の大阪で万国博覧会があった。そのエチオピア館でコーヒーを飲んだ」 我ながらマヌケな答えだが、運ちゃんは上機嫌になった。 「そうか、シアトルにもエチオピア料理店が3軒あるぞ」 ほっと胸をなで下ろすと、 「3軒ともすごく高い。エチオピア人がやってる。エチオピア料理が出る。でもオレ達エチオピア人からも高い金をとる!」 怒り狂いながら運ちゃんはいきなり携帯電話をつかむ。左手だけで運転をしながら、エチオピア語に違いない不思議な言葉で話し始めた。 電話は、長々と続いた。時速80マイル以上で飛ばしながら、携帯で話すもんだから、運転がお留守になる。猛スピードによる風圧でタクシーの車体は大きく左右に揺れて車線をはみ出し、横を大型トラックがものすごいクラクションを響かせて通り過ぎていく。僕はひたすら、早く電話が終わってくれることを念じ続けた。 ようやく電話が終わったと思ったら、くるっと後部席へ振り返る。 「安くていいエチオピア料理店の予約が取れた。今夜、食べるか?」 「残念だが、今夜は友達と約束がある」 速攻で、お断りした。それより前を向いて運転してくれ! 「日本から来たのか?」 この質問なら安全だろう。 「東京から来た」 「東京にもエチオピア料理店はあるか?」 しまった!話題を終わらせろ! 「いや、知らない」 「そうか、ちょっと待て」 また携帯電話だ。しかし会話は口論となり、ついには通話相手とケンカをはじめる。興奮した運ちゃんは、目的地を気付かずに過ぎてしまった。あわててタクシー無線で本部を呼び出し道順を確かめる。その間も携帯を持ったままケンカは続けていた。 右手に携帯、左手に無線機。運転?彼の右膝がハンドルを動かしているのが見える。時速百二十キロの、まさに神業だ。 僕は何にも考えないように、シアトル名物の雨が、猛スピードで窓ガラスを流れていくのをじっと見つめていた。 (近況) |
| 「日本から電話、まだ来ないっス」 晴れ渡ったフロリダの空の下、額田君の顔は暗かった。満を持して発売された「お菓子フィギュア王」の増刷を知らせる、めでたい国際電話がまだ来ないのだ。 額田君がどうしても出版したくて、社長に情熱のプレゼンをして、他の仕事をサボりながらようやく出版にまでこぎつけた「お菓子フィギュア王」。お菓子のオマケのおもちゃばかりを集めるという斬新な切り口と三百円という手頃な価格。コンビニ販売という確実な販売網。彼の予想では、発売と同時に飛ぶように売れ、あっと言う間に追加注文が殺到。発売日当日に増刷が決定するはずだった。 「増刷が決定したらオレに電話しろ。売れてる程度の報告なら、連絡はいらん!」 額田君は部下にそう命じて意気揚々とアメリカ取材へと出発した。 が、発売日より二日。電話はナシ。 ステーキレストラン「神戸屋」で、シェフがでっかいナイフとフォークをカンフーのように振り回して踊っているのを見ても、昨日までの陽気さとは別人の沈みっぷりだ。 アメリカに多いニセ日本料理店だ。至る所に怪しい日本情緒があふれていた。天井から下がった提灯には「ぎょうざ」とか「さくら」と無意味な日本語が書かれている。変なハッピを着たウエイトレスのお姉さんは、顔は東洋系だけど、日本語は通じない。アメリカ旅行も一週間が過ぎ、どうにも醤油の味が恋しくなっていたので、こんな店にもう二日連続で来ているのだ。 昨日は額田君もこの店の怪しさを腹の底から楽しむ余裕があった。ステーキを出されたら「ドモ・エガトウ」と変な発音でおじぎ。水をついでもらったら合掌。割り箸を割るときはもちろん空手チョップだ。隣のテーブルで見ていた金髪のガキが、さっそくマネして空手チョップをはじめた時、僕と額田さんは心の中でハイタッチした。 「いやぁ、お菓子フィギュア王が売れずに編集長クビになったら、ここでステーキ焼こうかな」と余裕たっぷりだったのだ。 しかし増刷決定を告げる電話は来ない。昨日は目線が斜め上45度だったのに、今日は斜め下45度だ。 「日本に電話して、POSデータ確認すれば?」「あんな大口たたいて出てきた手前、こっちから電話できませんよぉ」 暗い声で答えながら、シェフの手つきを見つめている。 「編集長クビになったら、ここでステーキ焼かなきゃいけないですよね。オレ、カンフー出来るかなぁ。ここの給料で女房と幼稚園の娘、食わしていけるかなぁ」 売れなかったと決まったわけではない。クビと言われたわけでもない。仮にクビになっても、別にこんな地の果てのステーキ屋で働く理由なんかどこにもない。 しかし額田君の妄想はますます膨らみ続け、店の人たちは昨日のバカ陽気から一転した僕たちを「やっぱ日本人ってヘン!」と遠巻きに見るのであった。 (近況) |
| オタキング社員・柳瀬君の「こんなところに勤めているから彼女の一人もできない」というナマイキ発言で始まった「さわやか合コン部」。発足から数カ月、ようやく活動も軌道に乗りだした。 「合コンとはなんだ!女の子とはなんだ!」という強化合宿ミーティング、ネット掲示板での熱い討論会、そして都内OL様や女子大生様、ネットアイドル(自称)様御一行などとの対外試合を繰り返し、ついには札幌で初の遠征試合に臨むという気合いの入りっぷり。 「女の子と話ができるだけで幸せ」という卑屈な部員もいれば、「土下座してでも嫁に欲しいぐらいのイイ女、いないなぁ」という、お前合コンになに望んでんだ的意見あり、とバラバラだ。合コン幹事・松原2号の苦労は耐えない。 何度か無事に合コンをこなし、部員たちも少しは合コン慣れしてきた。しかし油断大敵である。 ついに女の子を二次会に連れ出すのに成功、男女比は2対2。雰囲気はアットホームだ。女の子達も「オタクな話でもいいわよ」なんて優しいことを言ってくれる。 僕はすっかりリラックスしてしまった。 最初はただのアイドル話だった。 女の子に「アイドルの写真集なんか買うんですか?」と聞かれた時、アイドルオタクの松原2号が走り出した。「写真集なんて、そんな薄いことしないっスよね?」と、いきなり心のエンジン、フル回転。 「写真集じゃなくて、BOMB!っていう雑誌をコンビニで立ち読みするのが通だね」 「日経アドレの表紙、いい写真が出ますね」 「服着てても水着が想像できない奴はダメじゃない?」 話はヌード写真集批判にまで進んだ。 「ヘアヌードとかもう見たくない。もっとマニアックな切り口で見せて欲しいね。例えば乳首写真集とか」「乳首!いいっスね。乳首写真とアイドルの名前だけがずらっと並んで、他に余分なのナシ!」「でも見せてくれないアイドル、どうする?」「そんなのオレ達だったら相当の確立で予測できるじゃないですか?例えば榎○加奈子だったら‥」「小さいけど、黒くて尖っている!」「安○ひろ子は?」「乳房より乳輪の方がでかい!」「でしょ?あ、でもオレ森○信者だから、あの乳首は想像できない‥」「大丈夫、オレが決めてやる」「いくら岡田さんでも、○高の乳首は無理です!」「い〜や、オレが厳選した乳首写真の中からこれだ!というのを選んで、下に『熊本県出身』と書いて‥」「ま、参りました〜」「でね、目次はもちろん掲載した全乳首のミニ写真が、見開きでスペクトル順に並んでるんだよ」「そう単純じゃないですよ。色には明度と彩度がありますからね。縦軸と横軸でマップになってるのが正しいですよ」 ふと気がつくと、女の子は一人残らず逃げ出していた。 ああ、なんて女の子って難しいんだろう。 (近況) |
| テレ朝のワイドショー「スーパーモーニング」の火曜に出演している。毎週火曜日の朝、おすぎと共演!そんなことが自分の人生に起きようとは! 初共演の日、ミーティングルームにやってきたおすぎは「オ・カ・マ・が・来・た・わ・よ〜」と歌いながら体をくねらせ、お尻からストンと座った。「来たわよ」の「よ」とストンが同時だ。座ったのは僕の隣。 もうこれだけで僕の心中は嬉しいような、恐いような、矛盾した感情が渦巻いた。 おすぎ、もう楽屋で語る語る。 「ホント最近、イイ男がいないわねっ!」 「イイ男と言いますと?」 「素敵に輝く人に決まってるじゃないっ」 「はぁ、僕でもまだ間に合いますかね?」 「‥‥何事も人生、遅すぎるってことはないかもね」 おすぎの説教は、なぜか僕が拝聴することになる。 「岡田さん、男ってそういうところがダメなんでしょっ!わかってるのっ!」 よりによって、おすぎに男を、人生を教えられる。気がつくと毎週、私立おすぎ塾(塾生は僕一人)がはじまっていた。 塾長の説教は、突然始まる。他の出演者にキツ〜い言葉をかけていたと思うと、急にくるっと振り返り、僕の目を睨む。 「水野晴朗ってオカマでしょ!」 いきなりコレだ。 「はぁ、そんな噂もありますね‥」 「最近の報知スポーツってヘン!水野晴朗はホモじゃないって書くのよ。なに言ってるの、水野晴朗はオカマよ!淀長先生なんか、水奴(ルビ:みずやっこ)って呼んでらしたわよ!」 水奴のくだりは、嫣然と微笑んで言う。何と返事していいのか、塾生一年坊主の僕にはさっぱりわからない。仕方ないので、心のメモ帳に「水野晴朗はオカマ」と書き込んだ。これで、イイ男に一歩近づいたに違いない。 次の週も、貴重な教えを頂いた。 「一家に一ゲイって言ってね、家族の中に一人はオカマがいないとうまくいかないのよ。岡田さん、わかってるのっ?」 「でもうちは、僕と妻と娘の三人家族なんですが、こういった場合は‥‥」 「あなたがオカマになればいいじゃないのっ!」 おすぎ塾の教えは厳しい。イイ男になるためには、まずオカマにならなきゃいけないのか。僕の心のメモ帳に貴重な訓辞をたれたおずぎ塾長は、帰り際にマフラーを器用に飾り結びにして、くるっとこちらに振りかえり、色っぽくポーズを取る。 「50才過ぎたオカマには見えないでしょ?」 なんと返事しても怒られそうな気がする。口ごもっているうちに「オ・カ・マ・が・か・え・る・わ・よ〜」と、歌いながら帰っていってしまった。 おすぎ塾長、また来週もよろしくお願いします。押忍! (近況) |
| 僕がプロとしてアニメを作りはじめた時、一番頼りにしたのが井上さんだ。もともと友人として面識はあった。アニメの製作が仕事で、やり手だという噂も聞いていた。 当時、僕が仲間と作った自主制作アニメは、オタク好みのツボを押さえまくりで、オタク業界では圧倒的な人気があった。雑誌でも紹介され、名前も売れていた。 こうなったら東京へ行って一旗あげよう!しかし一番不安なのはプロとしての経験の無さだ。そこで真っ先に浮かんだのが、井上さんの名前。製作進行という下っ端から製作デスク、プロデューサー補と出世街道を驀進中だという。 僕が浪人したり大学をさぼったり除籍になったのを親にごまかしたりしながらアマチュアアニメで遊んでいる間に、彼はプロとしての経験値をどんどん積んでいたというわけだ。こういう逸材を見逃す僕ではない。僕の口車、いやいや若さスパークの熱弁に井上さんは勤めている会社をやめて、僕と一緒にスタジオを作ることになった。 後に『エヴァンゲリオン』でブレイクする庵野秀明や貞本義行たちなど、才能だけは腐るほどあるけど実績がない連中が、次々と僕の口車、あわあわ熱弁に共感してくれて高田馬場に小さなスタジオができた。27才の僕と井上さんが一番年上。クラブの合宿みたいな雰囲気だった。 スタジオは株式会社ガイナックスと名付けられた。社長は僕だ。でも株式会社になろうと、僕が社長であろうと、その雰囲気は変わらない。僕はあいかわらず岡田さんで、社長と呼ぶのは社外の人だけだった。 ところが、井上さんが一番気にしたのも、その会社離れした雰囲気だ。 「他の会社になめられちゃうよ!」 アニメーションを製作するには、イヤでも音楽製作会社や撮影会社、編集会社、録音スタジオ、声優さんたちなど、様々な業界の人達と一緒に仕事をしなければならない。アマチュアとなめられたら、まともな仕事なんかしてもらえない。いくら庵野君たちが死ぬ気で絵を描いても、その先の部門に手を抜かれたらオシマイなのだ。 その為には「よそと同じように、いや、よそ以上にキチンとしてます!」という所を見せなければいけない。井上さんは「トイレで歌うな」「他社との打合せ中に、横でマンガを読むな」「トイレでセリフの練習をするな」「来客中は謳うな」など、細かく、実に下らないことまで説教しなければならなかった。 「そんなんじゃダメだよ!」 というのが、井上さんの口癖だった。 特に声優さんは難しい。アニメ業界ではなく芸能界の人だからだ。アニメ業界の中でなら、アニメにこだわる気持ちも通じる。多少の脱線や失敗、段取りの悪さも笑って許してもらえる。が、声優業界は芸能界だから、しきたりにうるさいのだ。 「例えばさぁ、ドラえもんとのび太の声優さんって、めちゃくちゃ仲が悪いんだよ」 井上さんの説教がはじまった。 (近況) |
| 「ドラえもんとのび太の声優って、めちゃくちゃ仲が悪いんだよ。一言も口を聞かないし、座る席もスタジオの右端と左端。そのへん、こっちが押さえとかないと大変なことになるんだよ」「アフレコ当日に絵が間に合わないからって『すみません、ここ絵がないんです』とあやまれば済むもんじゃないよ。ルパン三世の山田康夫さんなんか、一ヶ所でも絵が入ってなかったら、なんにも言わずに帰っちゃうんだから」 ひえ〜、声優さんって怖い〜! さて、僕らも少しは経験も積んで、他のスタジオに友達ができた。そうなると徐々にプロデューサー・井上さんの脅しも効きが悪くなる。よそだってけっこうダメなところがあるからだ。 「マクロスの七話でさぁ。夜のシーン、背景なかったから、ええぃしょうがないって、替わりにただの黒い紙を撮っちゃったよ」 「ひっでぇ〜!」と大笑い。 「製作はいろいろ脅すけど、まぁスケジュールなんて何とかなる。だから、納得できるまで凝ったほうが得」 みんながそう思いはじめたとき、必ず井上さんはやって来た。 「オレが24時間作ってた時はさぁ」 彼は以前、日テレの「Tアニメ」製作担当だった。「愛は地球を救う」という番組用に、一時間アニメを作るのが仕事だ。通常、一時間アニメを作るのに3ヶ月はかかる。しかし毎年、T大先生の凝り症その他の理由で放映2週間前になっても、何もできていない。普通ならもう不可能だ。が、まさか24時間テレビで穴をあけるわけにはいかない。何か映っていなくては! 「あさってがオンエアっていう日、背景もセルも半分もない。手塚先生はまだ台本書いてるしでさぁ」 みんなは固唾をのむ。いかに絶望的な状況か、聞いてるだけで胃が痛い。 「しょうがないから手近にあるセルと背景、適当に組み合わせて、とにかく撮るんだよ。順列組合せで」「声優さんには土下座だよ。ぜんぜん絵と合わせなくっていいですからって、無理矢理アフレコ」「でも、後で声と音楽を適当に撮った絵に合わせたらねぇ、すごいよ、けっこう見れるんだよ!あれはアニメ製作じゃないね。パズルだったね。アハハハハ」 あまりのことに、みんなは笑えない。 レベルが違う。 それまでの話は、何のかんの言っても「いい作品を作ろう」という苦労だ。が、井上さんのは違う。「なんでもいいから、作る」が目標なのだ。クリエーターにしたら、そんな風にして「とにかく作ら」れてしまうことほど恐ろしいことはないのだ。 みんなは青ざめたまま、すごすごと自分の机に戻る。こんなムダ話をしている暇に、ちょっとでも仕事をしなければ。井上さんに「とにかく作ら」れてしまったらおしまいだ。 そんな僕の前にあらわれたのが、あの「シャア少佐」だった。(まだ続く!) (近況) |