◆『オタクの迷い道』#131 コスプレ居酒屋に行った(前編)
| ビジネス街神田に”コスプレ居酒屋”があると聞いたのは、ずいぶん前の話だった。平日はただの居酒屋だけど、毎週日曜だけはコスプレ居酒屋に変わるらしい。 「コスプレ居酒屋?」 「肉じゃがやシシャモ、揚げだし豆腐なんかを、コスプレした女の子が持ってきてくれるんですよ」 「それ、嬉しいか?」 「いやぁ、これがあんがい‥‥」 そいつは、クククと笑った。さっぱりわからないけど、コスプレには興味が無かったので、そのまま忘れてしまった。 十二月の初旬、二十世紀もあと数週間という日、ある人から「コスプレ居酒屋へ行きましょう!」と強く誘われた。 「行列はこちらで手配します」 行列って並ぶの?居酒屋で? 「大丈夫、着席位置も考えているそうです」 席とり?居酒屋の姉ちゃん見るのに? そこまでしなくてもいいよ。オレ、アンナミラーズで。 いや、いかんいかん。 最近は、すぐ年寄っぽく出不精になる。 誘ってくれたメンバーに、このコスプレ居酒屋の常連がいた。某ゲーム会社に勤めている、と匿名にしても意味がないな。こんな濃い奴が勤めてるゲーム会社なんてもちろんSEGA以外あるまい。 さてこのセガくん、自分のサイトでコスプレ居酒屋攻略法のページを開設して、常に最新情報を提供している。 どんな女の子が、どんなコスプレをしているか。何時間前から並ぶか。何人で行くと良い席に座れるか。 さすが毎週、昼間から並んで通っているツワモノだ。その日、セガくんは5時開店の二時間半前、つまり二時半から並んでくれているという。この居酒屋、開店と同時に満席になり、二時間の時間制限で総入れ換えだそうだ。 僕が誘ってもらえたのも”5人”という人数合わせ要員としてである。5人だと、店内を見渡せる中央の席に案内してもらえる可能性が高いのだ。事前に並んぶようなライバルたちは、全員常連だ。当然五人組でくる。ますます、早く並ぶ必要がある。 場所は聞かなかったけど、「神田の駅を降りたらすぐわかります」という言葉を信じて、改札を出た。 確かに一目でわかった。 道の向こう側に、どこまでも続くくすんだ色のコートの列。異常に高いメガネ率。 列をたどっていって、二時間半前から並んでいたセガ君たちと合流。彼の前には、すでに五人組が二グループ並んでいた。 セガくんは嬉しそうに「いやぁ、次からは三時間前でしょうかねぇ」と、はしゃぐ。 「夏に開店してからずっと、毎週並んでるんです。五時開店の時にはすっかり暗くなることで季節の変化を感じるなんて、もう僕も人間として最後ですねぇ」 セガくんはさわやかに笑った。(続く) (近況) |
◆『オタクの迷い道』#132 コスプレ居酒屋に行った(第2回)
| JR神田駅前の普通の居酒屋。しかしそこは毎週日曜、コスプレ姉ちゃんが焼き鳥や肉じゃがを運ぶコスプレ居酒屋に変身するのだ! 開店を待つこと2時間半、いよいよ入場だ。狭い階段を地下まで降り、「こちらへどうぞ」と、奥の柱の影に案内された。「しまった、最悪の席だ!もうこれで、連続5回ですよ。運が悪いなぁ!」セガ君が叫ぶ。 ちょっと待て、これは運じゃない。 初めての客が悪い席だと、もうそいつは来ないかもしれない。良い席に案内すればまた他の友達を連れてくるかもしれない。でも、毎週来るような客は、どんな席でも文句言わずにまた来週も来るのだ。 そんな冷酷なビジネス判断には、カケラも気付かないセガ君。だが、注文となるとベテランの強みを見せた。 「ダメですよ。まずは飲み物だけです。その後も、一品づつ注文するんです」 なるほど。普通の居酒屋とは違うのだ。 まずは飲み物注文で乾杯。次ぎに食べ物をオーダーだ。セガ君が手をあげる。メイド服の女の子が反応、目がキラリと光る。 「よし、ドジっ娘だ!」 確かにこの女の子、「御注文をどうぞ」も言えずに舌を噛む。注文はとちる。何もない床でつまづく、とステキなドジっ娘ぶりを披露してくれた。そのたびにまわりの席から、「ドジだ」「ドジっ娘だ」「萌え〜」と喜びのささやきがこだまする。イヤな客たちである。 追加オーダーのために手をあげようとすると、またセガ君に説教。 「やみくもに手をあげちゃダメです。まずロックオンをおぼえて下さい」 何も考えないで呼んではいけない。店員はコスプレ女性の他、男性店員も二人いるのだ。彼らが来たら、末代まで後悔だ。 だからロックオンという技が必要になる。 まず目当ての娘を決めて、ずっと目の端で追う。彼女が手ぶらで、誰からも呼ばれず、店内を見渡している状態になったら、すばやく挙手! ただし、その時彼女より近くに、別の暇そうな店員がいるとそっちが来てしまう。右目でターゲットをロックオンしながら、左目は店内全部を監視する必要がある。 広い店内で、頻繁に注文が飛び交う中、目当ての女の子をロックオンするのは、動体視力と反射神経と第六感がモノを言う。 僕もチャレンジしてみる。 好みの、ピンクの制服を着た看護婦さん(『深夜病棟』というエロゲーのコスプレ)にロックオン。しかし彼女はなかなかの売れっ子で、おまけに僕たちの席は奥の柱の影でフロアには暇そうな男子店員が歩き回り、と最適のタイミングで注文するのに20分もかかってしまった。 無事、目当ての娘に注文を終えると、は〜っと疲れ果ててしまう。 「スゴイですね、岡田さん。ロックオンができたらビギナー卒業ですよ」 セガ君の言葉、素直に喜んで良いのか? (近況) |
◆『オタクの迷い道』#133 コスプレ居酒屋に行った(第3回)
| 面白いのは店員だけではない。お客さんもイイ感じだ。コスプレ店員をじっとりした視線で眺めているが、オーダーを取りに来ると下を向いて女の子と視線を合わせない。そのくせ、彼女がテーブルから立ち去るときには、その後ろ姿をまたじっとりと観察するのだ。 セガ君は他の常連客と話している。 「今週はプラクティス、来たんですか?」 プラクティスとは、もともとはレース業界用語。本番前に同じコースを練習走行することだ。この場合は、コスプレ店員のいない平日に、椅子の配置や店員の定位置、歩くコースなどを研究するわけだ。 セガ君の「めがね話」も面白かった。彼には、どうしてもめがねをかけてほしい!と思う、お目当ての女の子がいた。彼はわざわざ、彼女に似合いそうなめがねを購入。写真撮影会で自分の番になった時、「これをかけて下さい」と、さっと手渡した。 彼女は「はい」と素直にかけてくれた。 その瞬間、「めがねだ」「めがねっ娘だ!」という声は、さざ波を通り越し、海鳴りのように拡がり、ものすごい人数が押し寄せてきた。セガ君は、彼女にめがねをプレゼントしたそうだ。 翌週の写真撮影会では、他の店員の女の子が二人、わざわざ自分のめがねを持参、撮影会になるとさっとかけてくれたそうだ。 「めがねだ」「マイめがねだ!」 新たな囁きが、波のように店内を覆ったそうだ。 いよいよラストオーダーの時間。各テーブルで一斉に注文が入り出す。どれも作るのに時間がかかりそうなモノばかり。5分でも10分でも延ばそうという作戦なのだ。 僕のテーブルでは、オーダーはご飯もの中心で攻めた。注文が殺到すると、ご飯がなくなることがある。仕方なく炊くという事態も発生する。以前、お茶漬け一杯で40分かかったというジンクスに賭けて、セガ君はお茶漬けを頼んだ。 ただし、お茶漬け5人前なんて単純なオーダーはしない。何しろオーダーを取りに来ているのは、お気に入りのドジっ娘だ。 「え〜っとぉ、のり茶漬けとぉ、鮭茶漬けとぉ、たらこ茶漬けとぉ…」 そこでセガ君、嬉しさを押し隠しながら、冷たく一言「ちが〜う」 で、一呼吸おく。 彼女のまごつく様子を堪能してから、 「鮭茶漬け、ザルうどん、たらこ茶漬け、焼きおにぎり、のり茶漬け」 彼女が覚えにくいように、わざと毎回順番を入れかえて早口に注文を繰り返す。 「はい、鮭茶漬け、たらこ茶漬け、えっとぉ…」 当然、ドジっ娘はまた間違える。 「ドジだ」「ドジっ娘だ」という囁き声も、さざ波のように遠くまで拡がっていく。 見事だ、と感心しながらも、やっぱりこんな客は、一番悪い席に案内するよな、と思う僕であった。 (近況) |
◆『オタクの迷い道』#134 では最後に岡田、歌います!
| ♪聞いてアロエリーナ ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ 編集長が替わったから、この連載も今回で最後なの 聞いてくれてあーりがと アロエリーナ♪ ♪聞いてアロエリーナ ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ まだまだ書きたいネタ、いっぱいあったのに残念なの 聞いてくれてあーりがと アロエリーナ♪ ♪聞いてアロエリーナ ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ 人気あったらしいのにどうして終わりなのか、自分では割り切れないの 聞いてくれてあーりがと アロエリーナ♪ ♪聞いてアロエリーナ ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ イベントとか同人誌で編集長のことイロイロばらしたのがいけなかったのかしら? 聞いてくれてあーりがと アロエリーナ♪ ♪聞いてアロエリーナ ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ そういえばナンシー関やリリー・フランキーも「ブロスでいきなり連載を打ち切られた」って言ってたわね 聞いてくれてあーりがと アロエリーナ♪ ♪聞いてアロエリーナ ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ 大好きな連載だったから悲しいけど、原稿料大二枚だから平気なの 聞いてくれてあーりがと アロエリーナ♪ ♪聞いてアロエリーナ ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ せっかく今年の夏コミケにはセバスチャンが来るのに残念なの 聞いてくれてあーりがと アロエリーナ♪ ♪聞いてアロエリーナ ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ 「もうネタにされずにすむ」と喜んでる柳瀬と松原2号が憎いの 聞いてくれてあーりがと アロエリーナ♪ ♪聞いてアロエリーナ ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ 単行本は文芸春秋社からたぶん六月ぐらいには出るの 聞いてくれてあーりがと アロエリーナ♪ ♪聞いてアロエリーナ ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ そういえば連載のキッカケって、編集の鳥居さん相手に最新のブロスに赤ペンで「これもこれもつまらないから打ち切りましょう」とバツつけて「ほらこんなにスペース空いたからオレの連載を」って売り込みかけたんだよなぁ。ああ何もかも懐かしいわ 聞いてくれてあーりがと アロエリーナ♪ (近況) |
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