TV bros『オタクの迷い道』連載第十一回〜第二十回
ン1995-1998.Toshio OKADA all right reserved.
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◆『オタクの迷い道』#11 「オタク」って差別用語なんだよ。知ってた?
| NHK「にんげんMAP」の収録前打ち合わせで「オタク」という言葉は使わないでくれ、と注意された。でも番組の内容はオタキング岡田の紹介だ。「オタク」と言うな、といわれても困る。だいたい、アニメ・マンガ・特撮・ゲーム・SF・同人誌・コスプレ、といったジャンルを統合できる言葉は「オタク」以外にあるはずもない。どう言やいいんだ?というわけで僕は気にせず「オタク」という言葉を使いまくった。 ところがオンエアを見てびっくり。 「オタク」という発言が巧妙にカットされている。内容もオタクっぽい話は巧妙に避けて編集している。なんかこれじゃオレっていい奴っぽいカンジだ。「お茶の間向け」のオレが出来ていたのだ。 NHK恐るべし! どうやら「オタク」は差別用語らしい。 朝日新聞社から本を出すときも似たようなことを言われた。やっぱり差別用語なんだなぁ。 で、その数日後、今度は「宝島30」という雑誌の編集から、オタク特集に協力してくれ、という電話があった。 「岡田さん、レアなアイテムをコレクションしてませんか?」と聞かれたので「僕はオタクとして持ってて当然のモノを当然のように持ってるだけです」と答えると「いやぁ、ダメだなー」と来た。 「なんて言うかねー、オタクが秘蔵のコレクションの前でコスプレしてる写真みたいなー、を撮りたいんだよねー」 おあいにくさま、そんな写真を撮らせる奴はオタクじゃない。僕は彼に「BBS辺りが取材に来て『床の間の前でセップクしてる絵がほしいでーす』って言われてハイハイ言うこと聞きますか?オタクも同じですよ」と説明してあげた。電話口の向こうで、彼は明らかに不機嫌になっただけだった。むなしい。 (近況) |
| オタクを長年やっていると、ある超能力が身に付く。人混みの中でも「オトモダチ」を見分ける不思議な能力だ。 街中で「おや、あの人はオトモダチじゃないか?」と思ったら、ちゃんとそいつは洋書店に入って『シンプソンズ本』や米国アニメ誌を漁りはじめる。 渋谷あたりで見かけるオトモダチは大抵、上新電機コンピューター舘でエヴァンゲリオンCD−ROMを買う。上新電機を通り過ぎる奴もいる。オレもまだまだだと思ってたら、そいつは海洋堂に入って『ときめきメモリアル』フィギュアの写真を撮るのだ。 先日、ロフトプラスワンで「オタクアミーゴス3」というイベントをやった。客層は一目見てオトモダチと判る奴ばかりだ。しかし違う人たちもいた。 「ブロスを見てきた人たちだな」 噂の真相、ガロ、パソコンネットという濃い場所で告知されたイベントだ。当然、カタギの人なんか来ない。「ブロス君」たちはオタクの海の中で明らかに浮きまくっていた。大丈夫か? しかし心配無用。ブロス君たちはみんなといっしょにメキシコ製超Z級映画「ロックンロール・レスリング・ウーマン対アステカのミイラ」に大爆笑していた。サイテーなエド・ウッド映画が「市民ケーン」に見える作品だ。 韓国のスーパーヒーロー「ファイティングマン」もスゴい。これを見て喜ぶ韓国の子供たちには「竹島ぐらいあげるよ」と優しく言ってあげたくなる。 こういう掘り出し物を大爆笑しながら見ているうちに、ふと気がつくとブロス君たちも周りと一緒にゲラゲラ笑い転げている。よく見ないと見分けがつかないほどオタクたちとなじんでいるのだ。 おめでとう、ブロス君。君も僕のオトモダチだ。 (近況) |
| オタクの世間話をオタ話という。 「最近おもしろいTV番組がないなぁ」ここまでは普通の会話。 「そうそう、思い切ってプリズナーNo.6を毎日連続で放映するとかしてほしいよな」「て言うか、アーウィン・アレン物とかの海外SFをバシバシ放映したりして」何かというとすぐオタク方面に話が集中する。これがオタ話。 「コミケの生中継もやって欲しいな」「て言うか、コミケ専門の印刷屋をレポートするのがいいぞ。〆切前に印刷屋で最後の原稿を仕上げてるのの生中継!」「何かそれ、イヤーンな感じ」 オタ用語とオタ表現が並んでて、申し訳ないと思う。しかしオタ話はまだ続く。 「ほんとTV局も能がないよ。トレンド・ドラマみたいのばっかでさ」 「ドラマといえば、代アニ(代々木アニメーション専門学院のオタ語)を舞台にした恋愛ものってどう?」「おお、それはナイス」「主人公はアニメーター科の男の子。声優科の女の子にひとめ惚れ。身分違いの恋に悩む」「友達にも、声優科の女はアニメーター科を人間と思ってないぞ、なんて言われちゃったりして」「なんかリアルすぎてイヤーンな感じ。本物の代アニ生徒、辛くて見れないぞ」「クライマックスは卒業制作。ライバルが監督でアニメを作る。もちろん声はヒロインだ。主人公は下っ端動画マン。恋の行方は?」「熱血先生が登場するのもいいぞ。おまえらそれで一人前のアニメーターになれるつもりか!」「続編で3年後、も見たいな」「やっぱ日本のTV局はダメだよ。なんでこんな番組やらないんだ?」 オタクしか見ないからだよ。 (近況) |
| 最近、このコーナーを読んで「おれもちょっとオタクになってみようかな」なんて考えているヤツがいるらしい。が、ちょっと待て!何も知らずにオタク文化に近づくとヒドイ目に会うぞ。 ついこの間も、TVでUFOの特番があった。題して『異星人解剖ビデオを入手!』。このタイトルだけで怪しい。 内容もスゴいぞ。TVが報道機関なんてウソッパチと視聴者に教えようとするかのような映像だ。何しろ解剖室の壁が常に同じ2面しか映らない。反対側には証明さんがレフ板持って立ってるのが丸わかりだ。解剖ハサミの持ち方も、医療関係者が一目見れば素人とわかる。穴だらけだ。しかもこの番組、ゲストにUFO専門家が一人もいない。呼べるわけないか。 この番組、実は放映前からインターネット等では大評判だった。「あんなウソ丸出しのビデオをどうやってホントと言い張るんだ?」様々な憶測が乱れ飛んでいた。 が、フジテレビはみんなの想像を遥かに飛び越えた。あろうことかクライマックスで、いきなり通販番組になってしまったのだ。宇宙人解剖ビデオに、番組のブルゾン、おまけにUFOが墜落した、と言われるロズウェル地方の石ころ。「お申し込みは今すぐお無料電話で!」 断っておくがロズウェル地方は石ころだらけのただの野原だ。その石まで通販で売ってしまう。フジテレビ恐るべし!SPA!で毎週フジテレビ番組の提灯記事かいてる神足氏もこの番組誉めろよな。 こんなものを、素人の君が見たらうっかり騙されないという保証はない。一人前のオタクになるまでは、まず、ちゃんとしたオタクにいろいろ教えを乞いながら進むのが安全だ。そんなインストラクターなんか身近にいない君には、インターネットの『国際おたく大学』をお奨めする。そこから第一歩を始めよう。 (近況) |
| オタクたちは今、揉めている。「新世紀エヴァンゲリオン」という先日、終了したTVアニメの評価が原因だ。せっかく予約した全話セットLDを解約する者も続出した。 数々のSF的な謎や設定でエヴァはオタクには大人気だった。ところが大期待の最終回、謎解きやストーリーは放ったらかしで、いきなり主人公が一人で自問自答しはじめた。で、一人で悩んでいた主人公が「そうだ、判った!」とか言うと壁が崩れて(本当に崩れる)他の登場人物が拍手してくれる、という自己啓発セミナーみたいな終わり方をしたのだ。 試しに身近なオタクにエヴァのストーリーを訊いてみるといい。誰もが、途中で判らなくなって言葉につまったり、感情的になったりする。これは今一番面白い遊びだ。 このトンデモアニメ・エヴァの評価でオタクたちはまっぷたつに割れた。結婚詐欺にひっかかった女のケンカとそっくりでおもしろい。 「ダマされた。あの人はただのウソつきだったのね。あの人が語ってくれた夢や希望やSF設定は全部ウソだったのね」 「ほ〜ら、あなたには彼の事なんて何一つわかってなかったのよ。私はあの最終回まで含めて全部好きよ。それを騙されたなんて、最初からホントの愛じゃなかったのよ。」 「自分だけが彼のことをわかってあげられるのよ」という肯定派の自信満々の顔を見ると、「まだ目が覚めないのね」と否定派はますますイライラする。そこへ制作者が「え〜、あれは不本意なラストでした。本当のエヴァは来年発売のLDでしか見れません」と発表した。これには一同唖然。頼みの綱のアニメ誌にはもちろん提灯記事しか載っていない。 オタクたちの受難は来年まで続きそうだ。 (近況) |
| オタクも親になる。 近頃、子持ちのオタクがどんどん増えつつある。ちゃんとしたオタクなら、子供のオタク教育にも気を配る。その気の配り方も千差万別。それぞれのオタク観が出る。 まず子供に与える作品。フツーの親なら、とにかくディズニーとなるところだが、オタクは違う。以下は全て現実にあった話だ。 クレヨンしんちゃんの映画に3回も4回も子供を連れていく親。小さい頃から「トップをねらえ!」を何十回となく見せる親。3才の子供はセリフを丸暗記してしまった。ストーリーは半分もわかってないけど。 「未来少年コナン」をもう通しで50回は見せられたという5才の子供もいる。全26話をだ。初めて見た時は、親といっしょに一気に見た。見終わったのは朝。徹夜明けでハイになった子供はもっと見たいと泣いたそうだ。 そんな中で僕が今、注目している大阪の専業主婦・金成さんも2児の母で、もちろん重度のオタクだ。アニメ・替え歌・芸能ゴシップ邪推という豊富な才能の持ち主・金成さんが、今最も燃えている趣味はリカちゃんやJENNYの服作り。それもアニメキャラの制服を開発し続けている。 「そんなもん作るんやったら、自分の子供の服でも作ったらええのに」という近所の奥さんの非難を尻目に、彼女は日夜オタク道を邁進する。たまに親心を出して「地獄くん」の編み込みセーターを子供のために編んでやったら、子供は怖いと言って着てくれなかったそうだ。「親の心、子知らず」だな。 彼女には、インターネットの国際おたく大学で、「リカちゃんドレスメーキング」の講義をしてもらう予定だ。ディープだぞ。 (近況) |
いいオタクになるには、小さい頃からの努力と、それ以上の素質が必要だ。 娘のボーイフレンド・たかのぶ君(6歳)もいいオタクになりそうな一人だ。 僕のマッキントッシュも興味しんしんで見にくる。この前は「さっきこうえんにいくとちゅう、ぴーえっちえすの中継アンテナをみたよ」と言っていた。 先日、「クレヨンしんちゃん」の映画をいっしょに見に行ったときも、高速インターチェンジのシーンで「あっ、かんえつインターだ」とつぶやいた。 そんな彼だから、もちろんミニ四駆が好きだ。この前も、うちの娘に「こんどいっしょにミニよんくしようよ」といって「いやだ!」と断られていた。いつの時代もオタクはまず女の子に差別される。 がっかりしているたかのぶ君に、ミニ四駆の話を聞いてみた。案の定、語るかたる。「ぼくがもっているモーターは、まっはだっしゅもーたーと、とるくちゅーんもーたーだよ。友達のあき君はもう一個、れびもーたーを持ってるよ。まっはだっしゅもーたーは、すっごくはやいけど、でんちがすぐなくなっちゃうの。あるかりでんちはね、にっかどでんちにくらべて、じゅうでんできないから」 まわらない口で一生懸命のたかのぶ君。彼のオタ話は無限に続いた。 たかのぶ君が貸してくれた「小学一年生」に、「めざせミニ四くかいぞうチャンピオン」という読者投稿コーナーがあった。「ふろんとすらいどだんぱー、ろーらー、13.8ミリべありんぐ、りあぶれーき、にくぬきけいりょうか・・」 将来有望なオタク達がここにもたくさんいる。 (近況) |
| 僕が東大でやってる「オタク文化論」というのは正規の授業と自主ゼミとの中間的存在だ。松原君という学生代表が教務課に申請し、教授会で審査されてようやく開講となる。 その松原君はミニ四駆オタク。ゼミの後、彼はいつも「今日こそみんなでミニ四駆を走らせに行こう」と誘うが、結局一人で渋谷のコースに出かけていく。男の戦いは孤独だ。 ミニ四駆のコースに行きさえしたら、松原君はヒーローだ。何しろ彼のミニ四駆は根性で改造しまくっているから、メチャクチャ早い。シャーシの肉抜きなんか芸術品と言っても過言ではない。あ、過言か。 彼はいつも廻りの小学生に「お兄さんスゴイ!」「お兄さん、どうしてそんなに早いの!」とモテモテだ。ウエストポーチからミニ四駆を出すと歓声を上げて寄ってくる。 「これは8年前にタミヤから出ていたミニ四駆専用ポーチだよ」と説明する松原君。まさに子供達のヒーローだ。「8年前!そのころ僕まだ1才だもんなぁ」と下を向く小学生達。イイ味出しすぎてる。 松原君のインターネットのホームページはもちろんミニ四駆ネタでいっぱいだ。先日、ホームページを見た小学年生の男の子(!)から、「リンクをはらせて」という電子メール(!)が届いた。 「ぼくは12月にはじめてマグナムセイバーとプロとエンペラーZXをつくりました。少しだけおとうさんにてつだってもらいました。(中略)こんどからは つくるのも じぶんだけでできるとおもいます。」 小学生にモテモテの松原君。東大理系、エリートの松原君。いいぞ、振り返るな!頼むからそのまま突っ走ってくれ。一人で。 (近況) |
| 「エヴァンゲリオン」を作った会社・ガイナックスは、毎年年末に仮装忘年会を開く。社員も取引先もコスプレが義務、というキビシイ忘年会だ。チバレイも行きたいと言ったほど、業界では有名なパーティーである。去年も年末にやるはずだったが、エヴァの作業遅れやプリメ3制作遅れが原因で(濃い話題でスマン)、開催が半年も遅れてしまった。それがやっと6月16日に開催されたわけだ。 うちのヨメさんはガイナックスの社員なので、毎年参加している。仕事としてコスプレするわけだ。ヨメさんはオタクじゃない。しかし環境が環境だから、ど素人にしては妙に詳しかったりする。それでも、この恒例のコスプレパーティだけは、毎年ずいぶん前からアレコレ悩んでいる。濃いコスプレでないと、オタク村八分にでも合うらしい。イヤな会社だなぁ。 何しろ、同社々員の気合いのいれようはスゴい。布を切ったり縫ったりしているうちはコスプレなんて言えない。スポンジとか合成樹脂に手を出さないと、このパーティーでは一人前じゃないのだ。 ギャオス(初代)、3メートルの宇宙人、格闘ゲームのポリゴンキャラ、夫婦で岩石オープン(チキチキマシン)、親子で鉄人28号&正太郎・・。もちろん出来も素人ばなれしている。 前々回、ヨメさんは娘にマリオをやらせ、自分はヨッシーをやった。前回は、「トップをねらえ」のカズミとノリコ。今年はさんざん悩んだあげく、「魔法使いグルグル」に出てくる風の妖精『ギップルちゃん』をすることにした。ギップルちゃんとは図のようなキャラだ。このように女であることを捨てなければ、あの会場では一人前とは見なされないのだ。 次回は、当日をレポートする予定。果たしてヨメさんのギップルちゃんは目立つことが出来るか!?乞うご期待! (近況) |
| 普通の人は自分のサインなんて持っていない。中学生の頃、ヒロミ・ゴーとかのサインを真似てみた程度だと思う。ぼくもそうだった。もちろん上手くいかず、すぐ挫折。で「オレはそんな軽薄なことしないんだ」という顔をして、それきりやめてしまった。 が、最近サインを頼まれることがやたら増えた。イベントの時ならともかく、あろうことか、講義の前後に学生が僕の本を持ってきてサインをせがむ。仕方がないから名前を書く。が、それはどう見てもサインじゃない。ただの名前だ。おまけに相当ヘタクソな字。小学生のテストの名前欄みたいだ。 これでもアメリカオタクにサインした時は「東洋の神秘・漢字をすらすら書く」というだけで、感嘆の眼差しを受けた。字が下手だって、アメリカオタクにはわからない。 しかしここは日本だ。こういう時は唐沢俊一氏の入れ知恵を聞くに限る。「ウォルト・ディズニーは自分のサインをデザイナーに発注した。クリエーター最後のアイデンティティとも言うべきサインまで、他人に考えさせる。さすがディズニーの商売根性、スジガネ入りなり」 入れ知恵まで名調子な人だ。 そうか、その手があったか! さっそく知り合いのデザイナーに発注し、いくつか考えて貰った中で気に入ったのを選ぶ。ちょっと自分でも改良してみたりして僕のサインが決定した。イラストの通りだ。 これでサインも怖くないと舞い上がった。が、僕の書いたサインは、デザインして貰ったのと比べてどことなくカッコ悪い。よく見ると線がガタガタしている。字のバランスも崩れている。盲点だった。デザインはプロでも、書くのは僕なのだ。 (近況) |