TV bros『オタクの迷い道』連載第二十一回〜第三十回
ン1995-1998.Toshio OKADA all right reserved.
目次へ連載一覧に戻る




◆『オタクの迷い道』#21 君も夏コミでオタキングと握手!



 オタクが燃える日本の夏、それがコミックマーケットだ。自分たちで作った同人誌を持ち寄り、探し、買いあさる。僕も東大オタク文化論ゼミの学生達と一緒に同人誌を作った。一人々々が好きな内容で一冊づつ作り、「オタク袋」として限定99部を売る予定だ。
 僕の作る本は巷で話題の「アイドル首すげ替えヌード集」だ。顔はアイドル、身体はAVというのを、MACに取り込んでCG合成するわけだ。簡単そうに聞こえるかも知れないが、不自然でないように繋ぐのにはけっこう知識や技術が必要である。僕はさっそく千葉大の画像工学研究室に教えを乞うた。専門家の話では、ポイントは鎖骨の位置でつぐことらしい。もちろんオタキングが出すヌード集だから現役のアイドルなんか使わない。
 学生たちの本も個性豊かだ。高速道路の立体交差オタクの奴は、立体交差写真集を出すと言っていた。が、そんなものにまで著作権があることが判明したので、仕方なく「高速道路立体交差評論文」になった。
 しかし修行中のオタク、中尾君は「僕だってちゃんと本を出したいのに、何を書いたらいいのか全然わからないんです。ああ、どうしたらいいんでしょう。早く立派なオタクになりたいのにぃ」とウジウジ言う。そこで僕は素晴らしい助言を彼に与えてやった。「そのオタクになりたい、という熱い気持ちをポエムにするんだ。タイトルは『迷子の仔犬』」中尾君の顔はパッと明るくなった。「それなら僕、できますよ」
 こんな打ち合わせを講義の後、大学近くの喫茶店『ZIZI』でやっている。隣では文学部が「三島が」とか「ロラン・バルトが」とかディスカスしてるのに、恥ずかしいぞ。

(近況)
おかだとしお 「オラこのままじゃレギオンに勝てねぇ。地球のみんな、オラにちょっとづつ元気を分けてくれ!」に脱力の日々。



目次へ連載一覧に戻るインデックスページに戻る




◆『オタクの迷い道』#22 そういえばブロスも「邪推系」の雑誌?



 関西ローカルのラジオ番組『サイキック青年団』のファン達は自らをサイキッカーと呼び、世間の全てを「邪推」の目で見る猛者たちだ。
 「邪推」とは何か?説明しよう。
 数年前から田村英里子はEYE−CON誌上で『マッキントッシュアカデミー』なるエッセイを連載していた。「英里子はMACが大好き! みんなにもMACのことをわかってほしいの」なんて書いてたわけだ。MAC野郎の僕も彼女のことを憎からず思っていた。しかし!それがいつの間にか「英里子はウインドウズが大好き!(以下同文)」に変わってしまった。「ふん、MACの形勢が不利だと思って裏切りやがって!」なんて僕は、つい考えてしまう。
 しかし心を「邪推モード」にすると、別の視点があらわれる。「田村英里子はMACユーザーの男と付き合っていた。で、そのMAC男と別れて次に付き合った男がDOS/V男だったのではないか?。そう言えば最新のEYE−CONで、田村英里子のエッセイが終了した。DOS/V男とも別れたに違いない」
 これが「サイキッカー特有の邪推モード」だ。サイキッカー達は次々と芸能人達に関して邪推を続ける。『キダタローの頭はヅラに違いない』とか、案外モテる林家こぶ平の女性遍歴を『こぶ平犯科帳』と名付けてリストを作ったりする。
 僕は東京にいるので、この番組を聞けない。代わりにサイキッカー達の飽くことを知らぬ邪推モードを、パソコン通信で拝見するばかりだ。以前は何としてもこの番組を聞いてみたかった。が、最近は違う。サイキッカーの発言から番組内容を「邪推」する、という楽しみを知ってしまったのだ。自分でもさすがに「重症だな」と思うぞ。

(近況)
おかだとしお 今回の原稿はフィクションです。実在のラジオ番組や田村英里子、キダタロー、林家こぶ平とは一切関係ありません。



目次へ連載一覧に戻るインデックスページに戻る




◆『オタクの迷い道』#23 今回はイラストに注目!K子先生爆発か?



 夏は出会いの季節。オタクにも様々な出会いがある。SF大会の実行委員として熱い経験を共にしてるうちに子供が出来たとか、コミケの会場で見つけた絵の上手い人を自分のサークルにスカウトしてとか、担当の少女マンガ家をそのまま押し倒してとか、とてもドラマチックだ。(女性マンガ家と編集の爛れた愛欲関係は、イラストのソルボンヌ先生が解説してくれるだろう)
 一度はぐれれば二度と会えないといわれるクソ広い有明新コミケ会場で、同じ人と何度もすれ違えば、それは運命かも知れない。お互いの似合わぬコスプレを非難してるうちに、いつの間にか忘れ得ぬ仲になってるかも知れない。サークルでマドンナ的人気を誇る彼女を、小松左京の息子(仮名)と取り合ってゲット!!という、うれし恥ずかしなのもあるかもしれない。(今回は全て実話)
 そんな中でもピカ一「いい出会い」を先日サンフランシスコで見つけたぞ。サンフランシスコ・クロニクル誌はS.F.の街角に無料で置いてある新聞だ。S.F.っ子なら誰でも知っているその新聞でも、一番の人気コーナーは恋人募集欄。男→女 女→男、の他に、男→男 女→女の欄もちゃんとある。さすがサンフランシスコ!
 そう思って読んでると、男→女欄にイイ味出してる募集が。本人はSMW5.6。シングル、メール、ホワイト、つまり独身の白人男性、身長5.6フィート。募集しているのが、「やせ形独身白人女性。8月3、4日にいっしょにスタートレックコンベンションでコスプレしてくれる人募集」
 遥か海の向こうのSMW5.6さん、君は今年、熱い夏を過ごせただろうか。

(近況)
おかだとしお このコラムの上にいる板井さんがサイキック青年団制作者と知らずに大恥。板井さん、どうもお騒がせしました。



目次へ連載一覧に戻るインデックスページに戻る




◆『オタクの迷い道』#24 インディペンデンスディはサイコー!!



 その昔、「スーパープレジデント」というアメリカ製TVアニメがあった。アメリカ大統領がいざとなるとスーパーマン(!)に変身するというすごい設定だ。やっつけるのは、宝石泥棒からギャング団、宇宙人、海底人まで節操がない。もちろん秘密基地はホワイトハウスの地下にあり、空飛ぶ車で現場まですっ飛んでいく。アメコミ調の絵で、ノーテンキな話。このトンデモ感が結構気に入っていた。
 さてこの間、アメリカで「インディペンデンスディ」という映画を見た。最新のSFX技術を駆使した娯楽映画で、全米興行記録を次々と塗り替え続けている超ヒット作である。
 まず、NYやロスが宇宙人の攻撃によって次々と廃虚にされていく描写が驚くほどリアル。大統領の政治的判断のシーンもステロタイプじゃなくリアリティがある。感動、感動で見ていると、その映画のクライマックスシーン「よ〜し、いよいよ人類の反撃だぁ」というところで、アメリカ大統領がいきなり、押入から銀のヘルメットを出して来るのだ。「まさか!!」と思う間もなく、ジェット戦闘機に乗り込み「オレが先頭だ!」と叫んで、ミサイルをバンバン撃ちまくる。コードネームはイーグルワン。かっちょいい〜!!
 映画館中のアメリカ人が大感動で目がウルウルしている中、僕は「スーパープレジデント」を思い出して大爆笑してしまった。
 気がつかなかったが、僕の笑い声は映画館中に響きわたって、何人ものアメリカ人が不快そうに振り返っていたいたらしい。一緒にいた友人に「あの時は暴動が起きるかとハラハラしましたよ」と忠告された。そうだったんだ。生きててよかった。ドキドキ。

(近況)
おかだとしお 9月21日(土)午後1時から大阪府立文化情報センター(06-444-1011)でオタクアミーゴスのトークショーをするぞ。



目次へ連載一覧に戻るインデックスページに戻る




◆『オタクの迷い道』#25 米国オタクを熱くするボン・ダンスとは?



 先日、世界各国からアニメオタクが集まるコンベンション、「アニメ・アメリカ」へいってきたぞ。場所はカリフォルニア州サンノゼ・いわゆるシリコンバレーど真ん中だ。
 ついたらすぐに開会式。「今回はボン・ダンスがあるんです」と実行委員長のカイルが嬉しそうに言う。ボン・ダンス?盆踊りのことかぁっ!ガイジンが盆踊りを踊っている、日系人も2〜3人いるが、あとはメキシコ系とか白人系とか、見るからに「ガイジン」だ。まぁ以前から気付いてはいたが、今やアメリカのアニメファンは「日本のものなら何でもありがたい」状態になっている。「♪浴衣姿で〜袖が触れ合う〜ヨメシュウト〜♪やぐら太鼓で景気よく、ソレドドンとドドンとみな踊れ〜♪」日本人のオレですら知らない歌「やぐら音頭」をたっぷり堪能させられた。わざわざ皆で講師を招いて練習した成果を披露しているそうだ。飛行気疲れの頭に、これは真剣に辛いぞ。その後、ソーラン節、野球拳などボン・ダンスは30分以上続いた。
 夜はまた、コスプレショーがあった。とにかく今、アメリカのアニメファン(女)は何かというとセーラームーンのコスプレをしたがる。今回もありとあらゆる人種・年齢・体型のセーラームーンが見れた。男オタクに人気なのは「ドラゴンボール」。今回は5メートル離れてもポマード臭いベジータが大活躍、舞台に上がるとマイクを離さない。いきなり「マクロス・プラスのOPでかかる幽霊みたいな歌」を歌いだし、次に「マンガの森」のCMソングを歌いだした。これはオレも歌えない。濃いぞ、アメリカ人!
 アメリカの暑い夜は、まだまだ続くのだった。

(近況)
おかだとしお 最近、人から理解して貰えない時には「先生ぴゃん、かわいそう・・」と自分で呟くことにしている。重症だな。



目次へ連載一覧に戻るインデックスページに戻る




◆『オタクの迷い道』#26 ついに登場、実物大アニメ美少女人形!




 この夏のワンフェス(ガレージキット即売会)で、ついに1/1フィギュアが登場。禁断の人形・実物大の綾波レイは、もちろん会場中の注目を集めた。
 もうみんな写真を撮りまくっている。普通フィギュアの写真撮影は、30センチぐらいに近寄っての接写だ。が、実物大レイちゃんは、なぜか皆、カメラを手近の人に預けて、おもむろにレイちゃんの隣に並び、いっしょに撮って貰っている。まるでミッキーマウス。
 発売は年末、定価は28万円なのだが、もう予約が10件近く入っているらしい。すげえ。
 想い起こせば、フィギュアの歴史は、タミヤの1/35人形コンテストから始まった。「ドラゴンボール」で超多忙になる前の鳥山明も常連入選者だったのが懐かしい。その後ガレージキットが定着し、1/12から1/8が主流となった。ラムちゃんなんていう人気キャラの場合は1/4も売り出され、1/2ミンキーモモの企画という噂も流れたことがある。いずれどこかが1/1を作る、というのは必然だったのだ。
 だから、今回の1/1レイちゃん、さほど意外ではなかったが、実際に見た時の僕の正直な感想は、「オレにこれをどないせぇっていうねん!?」だった。みんなも似たような感覚だったのだろう。普通は「いつ発売ですか」とか「予価はいくら位ですか」ときくはずのところを「これ売るんですか?」と訊いている。「ホントに売る気なんかおまえ?!」という気持ちのウラには「ホントに買う気なんかオレ?!」「買うてどうするんや、オレ?!」「でも買うてしまうかも・・」という気持ちが見えかくれしている。
 実物大フィギュアかぁ・・。また世間はあれこれ言うだろうなぁ。

(近況)
おかだとしお お笑い芸人ユニット「オタクアミーゴス」の、いわき/大阪公演大成功でゴキゲン。スタッフのみんな、ごくろうさま。



目次へ連載一覧に戻るインデックスページに戻る




◆『オタクの迷い道』#27 衝撃!こうしてオタクは誕生する!




 オタクとは、あえて「なる」ものではない。「やめない」ことがオタクなのだ。子供の頃、人は誰しもオタクである。しかし様々な人生の誘惑に負けて、人はオタクをやめてしまう。
 人生には、そんなオタクの危機が3回ある。
 一回目は小学校4年生。そろそろ半ズボンが恥ずかしくなる年頃だ。少しでも背伸びしたい。だから、少々面白くなくても大人の番組を見る。「いい年して怪人だのロボットだの言ってられないよな」と、キッパリと子供番組から卒業する。大人番組を見れば大人だと考える単純なガキになるのだ。
 2回目は中学2年生。そろそろ異性の目が気になり出す頃だ。それまでは男同士で遊ぶ方が面白いと言ってたくせに、いきなり女の子とつき合いだす奴が出始める。夏休み越える頃には、クラスの過半数がエロぼけ状態。それに対抗して「一生女なんかとつきあわない同盟」を設立するオタク達。「女とかフツーの奴等にはオレ達のことなんかわかんないよな、どうせ」と、潔く退路を断って修行に邁進する。ああ、書いてて心が痛いなぁ。
 三回目は高校三年。大学に進学するのを契機に「このままでいいハズがない」と足を洗う奴も多い。今までの自分を知らない人ばかりの環境で、こっそりとオタクを捨てるわけだ。ただし、この時期までオタク修行を積んだ奴は、完全にフツー人にはなれない。いわば、いつぶり返すか判らない保菌者と言える。
 この三回の関門を晴れてくぐり抜けた奴はもう大丈夫。結婚しようが、子供が出来ようが、一生オタクでいられる。
 おめでとう。君には、もうボーナスを1/1綾波レイにつぎ込むしか道は残されていないのだ。

(近況)
おかだとしお 27日にはジャーナリスト専門学校学園祭で、11月2日には大阪キリンアートプラザでトークショー。気軽に来てね。



目次へ連載一覧に戻るインデックスページに戻る




◆『オタクの迷い道』#28 80年代、日本映画界を震撼させたオタクがいた




 僕が一番心に残っているオタクの話をしよう。彼は、別に立派なオタクであったわけでも、まじめなオタクであったわけでもない。
 が、オタクとして不可欠な「一目置かれたい」という欲求が並外れて強いヤツだった。その欲求の強さが、結果的に彼を破滅へと追いやってしまったのかも知れない。
 彼の名は光山昌男。
 僕が彼に初めてあったのは今から10年余り前、当時20才か21才だった彼は、小柄な体ながら業界人ぽいチョビ髭を生やし、身分は「自称」浪人生。来年、東大法学部を受験する予定だと言う彼は、文句なく怪しげな男、であった。
 当時の彼の評判は、NHK少年ドラマシリーズ「タイムトラベラー」のビデオを全巻持っている男、だった。超カルトな人気作「タイムトラベラー」は、当のNHKにすら既にマスターテープがなく、それを全巻持ってる、というのだから一目置かれて当然だ。地方のNHK局を訪ねて、ダビングテープの切れ端を収拾した、という彼の苦労話が、その話にリアリティを添えていた。ただ、誰一人、彼の秘蔵の「タイムトラベラー」を見せてもらった者はいなかったけど。
 もう一つの評判は、「高橋留美子の自宅のビデオ配線をした男」だ。当時「うる星やつら」のアニメが大人気で、作者・高橋留美子は時の人だった。たとえ自宅のビデオ配線をつないだだけでも、オタクの間ではスター扱いされた。ただ誰一人、彼が高橋留美子と一緒にいるところを見た者はいなかったけど。
 というわけで、オタクの間で光山君は一目も二目も置かれる存在だった。いま明かされるオタクの暗黒世界、次号へと続く!

(近況)
おかだとしお 11月9日、TBS系「ブロードキャスター」に生出演。23日、京大学祭で講演。24日、新宿ロフトプラスワンでトーク。



目次へ連載一覧に戻るインデックスページに戻る




◆『オタクの迷い道』#29 銀河オタク小説・闇のオタク王(発動編)




 光山君の話は聞く度に、どんどん大きくなった。まるで本宮ひろ志のマンガのように。
 「ソ連からチェルノブイリ関連映像の権利を全部買った」「この前渡米した時に、ブライアン・デ・パルマ監督の家へ遊びに行って、奥さんのナンシー・アレンと握手した」
 その時の写真を見せられて、僕が素直に感心すると、「デ・パルマが中座した時に、ナンシーにベッドルームに誘われて、SEXした」ここまで話がふくらむと、もう絶対ホラに決まっている。が、話す彼は、どこまでもマジメで、自信たっぷりだ。それにソ連に行ったのも、パルマ家の写真も事実だったりするので、彼の話につい引き込まれてしまう。
 そんな彼が、会社を作った。マウントライトという、「光山」を英訳しただけの名前だ。それがアメリカの超一流映画業界誌「バラエティ」の新年号に、16ページ連続で会社広告を載せた。これには皆、ひっくり返った。僕を始め、みんなが光山君はとうとうホンモノの大物になってしまったと感じた。
 その直後、僕はNYのウォルドルフ・アストリアホテルのロビーで光山君と逢った。彼は超高級ホテルのソファーに深々と座り、金髪のコールガールを両側にはべらせていた。
 その時も彼の話は、とどまるところを知らなかった。「アポリッツ映画祭で、ジョージ・ロメロの『ゾンビ』オリジナル3時間40分版の権利を買い取った」「エイリアン3の脚本を今自分が書いている」「スティーブン・キングの出版権を全部自分が買い占めた。」「キューブリックに次回作を依頼した」等々。景気が良くなった彼の口から出ると、相変わらずどこまでが本当でどこまでがホラなのか判断が付かなかった。さらに続く。

(近況)
おかだとしお 11月23日は京都大学祭で講演。24日は新宿ロフトプラスワン(03-3357-1676)でオタクなトークショーだ。



目次へ連載一覧に戻るインデックスページに戻る




◆『オタクの迷い道』#30 銀河オタク小説・闇のオタク王(最終回)



 衝撃の米国デビューから1年後、業界は再び光山君の噂で覆われた。借金に追われているとか、権利を持っているというのはウソだったとか、様々な噂が乱れ飛んでいた。
 そんなある日、光山君から電話があった。「五百万円足りなくて困っている。明日返すから貸してくれ」という。彼は一生懸命、「ほんとにはした金なんだけど、ちょっとしたトラブルで。百万でもいいんだ」と言い訳する。一生懸命言い訳されればされるほど、僕は切なくなった。彼はプライドだけはものすごく高いヤツだ。ちょっとでも軽く扱われると、「オレの顔に泥を塗られた。あの会社、つぶす!」とか激怒するヤツだった。そんな彼がたった百万円の為に、僕にまで頭を下げなければならない。彼にはどんなに辛いことだろう。彼の悔しさが僕には痛かった。
 僕は思わず「いいよ」と返事してしまった。パソコンゲームで当たって、少し気が大きくなったのが原因かも知れない。いや、きっとそんな惨めな光山君を、これ以上見たくなかっただけなのだろう。「もし」返ってこなくても、今までこんなに楽しませてもらったギャラと思おう、と考えたりもした。大方の予想通り、彼は僕からの電話に一切出なくなった。会社をたたんで雲隠れしてしまったのだ。
 それから7年経った。先日「噂の真相」の記事で、「十年ほど前、業界を大騒ぎさせたMは、まだ逃げている」という記事を読んで、彼を鮮やかに思い出した。ヤクザに追いかけられながらも、まだ生きのびているらしい。
 光山君、どこかでこの文章を読んでいたら、僕に連絡して下さい。またあの時のように話しましょう。その時、ついでで結構ですから百万円返して下さいね。

(近況)
おかだとしお 12月22日に新宿ロフトプラスワン(03−3357−1676)でクリスマスパーティー。聖夜をオタクに盛り上がろう!




次項へ目次へ連載一覧に戻るインデックスページに戻る