TV bros『オタクの迷い道』連載第四十一回〜第五十回
ン1995-1998.Toshio OKADA all right reserved.
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◆『オタクの迷い道』#41 「へきへき!」「萌え萌え!」な話

 椎名へきるという声優の親衛隊は、コンサートで「へきへきぃ!」「萌え萌えぇ!」「ウ〜」「〜ウォンチュー!!」と声を枯らして叫ぶ。これを聞いたときは死ぬかと思うほど大笑いした。で、その後ずっと、僕の頭の中では、椎名へきるを讃える「へきへき萌え萌え」の大合唱がコダマするようになってしまった。もっと「へきる話」が聞きたい!NHKで「BSへきる夜話」とかやってくれないか?僕の酔狂心は、どんどん膨らんでいった。
 ここで、「萌え萌え」というコトバを知らない人に解説だ。萌え萌えとは、そのキャラクターが好きだ!という熱い(やや臭いが)気持ちのこと。「恐竜惑星」というNHKアニメのヒロイン「鷺沢萌ちゃん」を讃えたのが語源だ、とオタク界には伝わっている。まぁ、好きという気持ちが、木々の芽が萌えいずるが如く、心の底からわき起こってくる様子、と理解してくれ。風流じゃろが。
 で、僕の酔狂メーターが頂点に達した頃、とうとう僕は一人のへきるファンに会うことに成功した。
 まず「へきへき萌え萌え」を実際にやってもらう。涙を流して大爆笑した後、失礼過ぎたかなと少し反省した僕は「すごいですね、コンサートではさぞかし大合唱でしょうね」と機嫌をとった。すると彼は「へきる嬢(!)の親衛隊は、それぞれ自由に活動しているので、そんなに声はそろわないんです」と言う。どうやら、会場のあちこちから、ひっきりなしに「へきへきぃ」と声があがるらしい。う〜ん、予想をはるかに越えているぞ。
 彼が所属しているファンクラブは「へきる十字軍(クルセイダース)」だそうだ。ナイスなネーミングに腹を抱えた僕に、彼は他のサークル名で追い打ちをかけた。「へきる騎士団(ナイツ)」、「ヘ・キングダム」「へ組」「サード・インパクト(昨年までは「赤いひょっとこ」だったらしい)」。大笑いしている僕は「ヘキングダム、大手ですよ」と真顔で注意されたぞ。
 彼の所属している「へきる十字軍」では、おそろいのハッピをコンサート会場で着る。「家から着ていくの?」と訊くと、「会場以外では、おそろいのウインドブレーカーを着ます」そんなのまであるのか。「4179☆LOVEって胸にあるんです」と得意げだ。あ、そうか。4179で、しいなく☆ラブね。ベタだなぁ。
 「ハッピの洗濯はどうするの?」「一回毎に、クリーニングに出します」「お店のおばちゃんに何のハッピかとか訊かれない?」「だからクリーニング屋を変えて、隣町まで行くんです。でも一度、これ声優さんのことでしょ、って言われて、目の前が真っ暗になりました」「大変なんだねぇ」「でも、ちょっと前に親にバレてから、かえって気が楽になりました。クリーニングとかも頼めるし」
 人生、どこにどんな苦労があるか、わからないもんだ。へきる話、次回に続く!

(近況)
おかだとしお 6月13日(金)、中央大学のイベントで鶴見済氏と対談。僕のホームページ(http://www.NetCity.OR.JP/OTAKU/okada/)では、今までの連載が全部読めるので来てね。

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◆『オタクの迷い道』#42 エヴァよりスゴい、へきるファン

「椎名へきるは、へきる星から来たんですよ」とぼくは教えられた。
「へきる星は神奈川県にあるんです」「えっ?!」「だから、へきるファンは、神奈川県へ行く時は、へきる星に言ってくると言うんですよ」
 やっぱり、へきるファンは壊れている。
 しかも、ちょうどいい具合に壊れている。
 お酒で言えば、ほろ酔い加減。でも、確実に正気ではない。
 この前、名古屋で会ったファンも、少し前までは、熱が冷めてきていたのに、新曲「目を覚ませ、男なら」を聞いてしまった。「もし私がさらわれたら、必ず助けに来て。どこまでも追ってきて」という歌詞で、椎名へきる自身の作詞だ。その曲を毎日毎日、何回も聞いていると、だんだん「やっぱりファンをやめちゃダメだ。もっと応援しなきゃ」という気になってくる。あれは尊師のテープですよ、と彼は力説した。
 CDを何回もきくのは、まだ初期症状だ。現在は、パソコン通信という悪魔のツールで、みんなの心はバキバキに壊されている。
 へきるファンたち(つまりへきらーの方々)はインターネットやパソコン通信で毎日、何百件という書き込みを読んだり書いたりしている。毎日、そんなにたくさんのへきる情報を、浴びるのだ。世界で大事なことは、椎名へきるに関することだけという確信に至っても不思議ではない。
 中でも、一番凄いのは、シンクロCHAT(チャット)だ。CHATというのは、パソコン通信の一種で、書いた文章がそのまま、即時に、みんなで読めるように表示されるシステムだ。だから、書き文字で会話が出来る。電子会議室が、みんなで見られる電子交換日記なら、CHATとは、電子井戸端会議だ。もちろんネットとつなぎっぱなしになるので、電話代や接続料がものすごく高くつく。が、それでもハマる人が多い悪魔のシステムなのだ。
 椎名へきる会議室では、シンクロCHATというのが、流行っているらしい。
 まず、予め、シンクロCHATを始める日時とアルバム名を決める。その時間前になると、ものすごい数の参加者が、CHAT部屋に入ってくる。で、3.2.1の合図の書き込みで、一斉に各自、自宅でCDをプレイする。これで、全国で何百人ものへきるファンが、同時に同じ曲を聞き始めるのだ。
 この音楽に合わせて、コールを入れる。つまりコンサートと同じタイミングで「LOVELYへきる!」と、打ち込む。入力した瞬間、同時に入力された何百行もの「LOVELYへきる!」が表示される。画面上を流れ続ける何百行ものLOVELYへきる。目眩がする光景だ。
 映画「シャイニング」で、狂った主人公がタイプライターでうち続ける同じ文章よりも、衝撃的だろう。
 へきるファンだけでなく、声優ファンの会議室では、どこもシンクロCHATが盛んだそうだ。みんな、いい具合に壊れているなぁ。

(近況)
おかだとしお 6月24日に早稲田大学内で人工知能学会のチュートリアル講演。週刊アスキーとSPA!での連載も頑張ってるぞ。メールはGFG04070@niftyserve.or.jpまでよろしくね。

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◆『オタクの迷い道』#43 そういえば清水ミチコさんも個室だ

 NHK・BS第2放送に「BSマンガ夜話」という番組がある。季節毎に1週間・毎夜連続・夜中の生トーク番組だ。毎回一つのまんがについて、僕やいしかわじゅん、夏目房之介といった強豪のオタクたちが、マンガについての語り倒す。もう、3シリーズ目なので、出演者全員、リラックスしまくって、話題はますます濃い方へ流れている。
 先日も司会の大月隆寛がいきなり「恐怖の奇形人間」というカルト映画や「外人の奴等にゃ、わかんねーよ」という過激な文句を口走って、スタッフを青ざめさせた。まぁ季節の風物詩だと諦めてもらいたい。
 そんな僕らの一番の楽しみは、収録が終わってからみんなでオタ話をしながら食べるお・べ・ん・と・う!。
 ところがある日、僕はある法則に気がついた。ゲストが豪華な日に限って、僕たちの弁当が貧弱なのだ。
 その日は、ゲストが大槻ケンヂと体操選手の池谷氏。深夜番組なのでこの2人だというだけで、いつもよりかなり豪華ゲストだった。
「なんじゃ、こりゃあ!」
 収録が終わって、さっそく楽屋で弁当の包みをあけたいしかわじゅんが叫んだ。おにぎり3つだけ。それも、コンビニのおにぎりよりセコい。
 僕はその瞬間、閃いた。
「いしかわさん、不肖、岡田が偵察にいきます!」
 即、大槻ケンヂの楽屋へ走る。大槻ケンヂの楽屋はなぜか個室だ。今までも個室を与えられたゲストはいた。でも大抵は女性だったので、気にしなかった。女性なら、着替えとかもあるだろうし、一人部屋も仕方ないだろうと、勝手に納得していたのだ。
 が、どうやら理由はそうではないらしい。
 大槻ケンジの楽屋の前についた僕は、唖然とした。ドアの前には、一流料亭の名前入りのでっかい箱がどんと置かれている。こっそりふたを開けると、中には豪華懐石料理が入っている。僕らのおにぎり3個に比べると、体積にして8倍、値段にして数十倍はするに違いない。
 僕は何としても証拠写真を撮りたくなった。週刊アスキーに連載している僕の日記に、弁当比較写真を載せる、というイヂワルをしてやろうと考えたからだ。が、残念なことに、そのときカメラを持っていなかった。誰かに借りるしかない。大槻ケンジの弁当の前で「カメラ、カメラ」と大騒ぎをしていると、プロデューサーが出てきてしまった。
 翌日の、僕らの弁当は申し訳程度に改善された。やっぱりおにぎりだけど、上に海老がのっかった天ムスになったのだ。これは、僕の功績に違いない。
 僕も早く偉くなって、個室の楽屋で悠々といい弁当を食べたいもんだ。もちろんその時には、いしかわ氏や夏目氏を呼んで、見せつけることは言うまでもない。

(近況) おかだとしお あるパソコン通信サークルで「岡田斗司夫の腹を揉みしだく会」を見つけた。有閑マダムやOLのお姉さまに揉んでいただける、と思ったら、会員は全部、男だった。(実話)

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◆『オタクの迷い道』#44 禁断のコレクター道

 コレクターという趣味は、お金がかかって大変そうだと考えがちだが、そうじゃない。コレクター道とは、お金で買えばいいという単純なものではないのだ。
 だいたい、レアなアイテムをお金で買い漁ったりしたら、当然コレクター市場の相場が天井知らずに上がってしまう。いくらお金があっても、アッと言う間に買えない値段につり上がってしまう。この「相場コントロール感」が難しい。
 そこで、普通は第二段階として「交換」という手法がとられる。海外のコレクターに日本製オモチャを送り、替わりに、SFXの小道具を送ってもらう。日本のアニメ・グッズを送り、替わりに絶版フィギュアを手に入れる、といった方法だ。
 こうして少しずつ仲間を増やし、コレクションを充実させる。やがて、コレクター仲間に噂が流れ、一目置かれるようになる。「いいものを手に入れたが、大きすぎて自分の部屋には保管できない。引き取ってくれないか」「結婚するので、コレクションは処分するしかない。が、せっかくのコレクションが散逸するのは忍びない。まとめて買い取ってくれ」という相談を受けるようになれば、あとは勝手にコレクションが充実しだす。ここまでくれば、一人前だ。
 しかしこのあたりから「禁断の一線」の誘惑が始まる。知り合いの特撮スタッフが、スタジオからこっそり持ち出してもらう。もう少し過激になると、撮影現場に自分で行って、さりげなく持って帰ってしまう。
「撮影済みのものならゴミも同じ、無料で粗大ゴミを処分してあげるのだ」「オレが持っていったのは、撮影済みのものばかりだ。コレクターとして当然のエチケットだね」などと、勝手なへ理屈で正当化する。
 特撮系俳優のお通夜に乗り込んで、「生前、譲ると約束した」と言い張って、超レアもの物件を遺族の前から奪い取る、という強者までいるらしい。
 こういったハード系のコレクターはさすがに少ないが、特撮コレクターには、いろんな噂や都市伝説が絶えない。
 アニメ界にも、スゴい都市伝説がある。
 昔、「うる星やつら」を作っていたアニメスタジオで、撮影所から戻りたてのセルが、毎週毎週、全部盗まれるという事件が続いた。鍵を変えても何をしても、毎週タイマーで計ったように時間になるとセルは消えている。しばらくすると、スタッフはみんなそんなことにすっかり慣れ、誰も気にしなくなってしまった。
 が、ある日、新オープニングのセルが撮影前に盗まれてしまった。当然、ドロボウだ、タチの悪いファンの仕業だと大騒ぎ。撮影前のセルを盗むなんて、とんでもないヤツだ!とスタッフは怒りまくった。
 他のスタジオの人は誰も「じゃあ撮影後のセルなら、いいのかよ」とはツッこめなかったそうだ。
 最近は、お宝鑑定とかがブームで、コレクター道を志している人も多いと思う。
 みんな、一線は越えないようにな。

(近況) おかだとしお 僕の服のサイズは4L(笑) 最近は都内の「大きいサイズコーナー」も征服し尽くしたので、いよいよ禁断の両国近辺を探険に行こうと思っている。目指せ、デブ・カジ!

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◆『オタクの迷い道』#45 「東大生を早くする計画」とは?

 僕が東大で「オタク文化論」の講義を始めたのは1年ちょっと前。もちろん、東大のゼミの中でも一番ヘンなゼミだった。「東大ではこんなヘンなゼミがある」と、マスコミからの取材が相次いだもんだ。
 ところが、今年の自由研究ゼミの紹介文を見て愕然とした。とにかくスゴイ。
 まず「ダイエット・ゼミ 553教室」 ダイエット・ブームの現象について幅広く知り、批判的考察を加えていくゼミだそうだ。このゼミで痩せられるわけではないが、おもしろそうだ。
 次に、「役に立つ微分方程式の使い方 594教室」 冷蔵庫でスイカを冷やすのに必要な時間はどれくらいか?といった、身近なモデルを使って、微分方程式を勉強するゼミらしい。学校の勉強の中でも、役に立たないものの代名詞として使われる微分方程式。これを実際に役立てるとこがいい。まぁ、計算している間にスイカ一個くらい冷えそうな気はするけどね。
 「核融合入門 1225教室」 SF野郎の僕にとっては、これもなかなか、魅力的だ。核融合というと理論ばかりになりがちだが、「核融合の基礎から研究の最先端までを、なるべく数式を使わずにVTRなどを併用してわかりやすく解説する」そうだ。東海村地区の見学もOKだ。
 有名人のゼミなら、立花隆の「調べて書く、発信する 1313教室」 日本有数の、知的水準が高い、しかもおもしろいホームページを作るゼミを自認している。
「やる気と能力によって厳しく選別する」と明記してるのがスゴい。誰でもOK、学生もお客様、と考えてしまう芸人根性の僕のゼミとは、大違いだ。
 こんなすごいラインナップの中でも、一番の注目株が、月曜日、5時限目にある「百メートルを速く走るゼミ 第一グラウンド」だ。教授自らが1994〜1996年度にかけて開発に成功した「スプリント・トレーニングマシーン」など、新開発のトレーニング機器を用いてトレーニングする。なんか、夜中の通販番組に出てきそうで、いかにも怪しげなカンジ。教授はそれらの機器を用いて「東大生を速くする」ことにも着手することにした、と宣言している。「一生のうちでも最も速く走れる時期は今しかない。鈍足者も歓迎!」とやる気マンマンだ。
 お勉強はできるが、スポーツはイマイチというイメージの強い東大生と、「速く走る」は実に斬新な組み合わせだ。月曜の夕方に、駒場の東大グラウンドに行くと、速く走らされている東大生を見られることだろう。できればいっしょに教授自慢の開発機器も拝見したい。
 こんな素敵な自由研究ゼミに囲まれて、僕の「オタク文化論 1222教室」は、東大で一番ヘンなゼミの座を転がり落ち、いつの間にか、けっこう真面目なゼミの一つになってしまった。
 オゴれるものは久しからず、諸行無常であるな

(近況) おかだとしお もちろん君もコミケに来るよな?

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◆『オタクの迷い道』#46 松本零士先生のちょっとイイ話

 週刊アスキーという雑誌の企画で「マンガ家入門」というのがある。僕が高名なマンガ家の先生に弟子入りして、マンガの描き方を実際に教えてもらう、というものだ。マンガ家にとっては迷惑な話かもしれないが、僕は張り切っている。実は昔から、本当に昔からマンガ家になりたかったのだ。
 「マンガ家になりたい」というと、知り合いのマンガ家はみんな、好き勝手なことを言ってくれる。いしかわじゅんなんか「いける、いける。岡田だったら半年でデビューできるよ」などと無責任に言う。江川達也にきくと「で、岡田さんはどの程度の絵が描きたいんですか?」「かわぐちかいじレベルになれれば、文句はないけど」と答えると「3世紀かかりますよ」と大爆笑されてしまった。
 そんなわけで先日、松本零士先生のところへ弟子入りして来た。高校の頃、松本メカに憧れて、何度もマネして描いたのが懐かしい。僕も早く、あんなメカが描きたい。あんなメーターが描きたい。
 そんな思いでやってきた僕に、松本先生は、エンエンと人生訓を聞かせてくれる。「早くメカの描き方を」と焦る僕も、そのとてつもない人生訓に心奪われてしまった。あまりにスゴい内容のため、とても週刊アスキーには書けないので、ここで書く。
●松本先生が使っているのは、すでに絶版になっているペン先。「絶版と聞いた途端に、即決で買い占めに走った」と教えてくれた。アシスタントを動員して、練馬区の文房具屋のペン先を、買い占めて廻ったのだそうだ。ところが大泉学園あたりから買い始めて、江古田まで来ると、急に品切れになってしまった。それから向こうは、どこへ行っても品切れなのだ。
 驚いて調べた結果、同じ練馬区に住んでいた手塚治虫が中村橋方面から買い占めてきていたのがわかった。手塚治虫は豊富な財力と権力を最大限利用して、連載誌の編集者にまで買い占めに行かせたらしい。
「手塚買い占め包囲網に、負けた」と松本先生はちょっと悔しそうだった。
●「一流のマンガ家になりたいなら、風呂に入りたいとか、歯を磨かなくてはとか、そんなことを考えていてはいけない。」別に、その時間も惜しんでまんがを描けというのではない。「そんなことで心をわずらわすな。そんなことを考えるくらいなら、マンガのストーリーでも考えてろ」
 男おいどんの作者らしい意見だ。が、そのあとがいい。
「でも、生牡蛎を喰った時だけは歯を磨け。でないと腹をこわすぞ。オレは今まで50年間、生牡蛎を食う度に腹をこわして苦しんだ。がこの前、日本海側で接待をうけて生牡蛎を食べた後、たまたま歯を磨いたら腹をこわさなかった。」
 大発見をしたという顔で教えてくれた。僕はどんな顔をしたらよいかわからなかった。アシスタントの綾ちゃんは隣でひきまくっていた。
 マンガ家への道は険しいなぁ。

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◆『オタクの迷い道』#47 ゲイツが出資したかぁ。とほほ

 僕は悲しきMac信者だ。Mac信者とはマッキントッシュというパソコンを信じ、ついていくことを運命づけられた者達を指す。
「人類はMacを作るために進化した」と本気で思っていたし、初めてMacプラスを買った時は、会社の人間を集めて、「ここをこうすれば、ほら」と、2時間ものデモンストレーション鑑賞を強要した。まるで落語の「義太夫」だ。Macの性能のみならず、Macを生み出した思想、その可能性の素晴らしさを皆に理解してもらおうと、何度も熱弁を奮った。
 だけどそんなに愛しいMacは、阪神の新外人みたいに僕を悩ませた。新外人は、膝や背中や腰など、とにかく故障が多い。Macも、ボーンとかブーンとかベゲボゲバゲなどという不思議な警告音を響かせながら、突如、画面が止まったり、いきなり何も動かなくなる事がよくある。
 が、似てるのはそれだけじゃない。阪神の新外人は、いつもスポーツ誌に、「これで今年は優勝間違いなし」とか書かれ、阪神ファンは皆、ものすごく期待する。しかしなぜかいつも、本場アメリカのスケールを見せつけるような大空振りをして、半年か一年でアメリカへ帰っていく。契約金だけしっかり取って。阪神ファンは、悪態をつきながらも、来年の新外人に思いを馳せるのだ。
 先日、僕はマッキントッシュ20周年記念モデル、8000ドルMac・通称スパルタカスの予約をしてしまった。世の中、今やウインドウズ・マシンが当たり前だ。さすがの僕も、そんなことは百も承知している。それを心得ているから、あるソフトを入手した。その名も『ソフトウインドウズ』。このソフトをMacに入れると、あら不思議、ウインドウズ・マシンに早変わりという、便利かつ屈辱的なものだ。「そんなソフトを買うくらいだったら、さっさとウインドウズ・マシンを買え!」とどなられそうだが、それでもMacでいたい人の為の、禁煙パイポみたいなソフトなのだ。
 こうして、準備万端整えて、僕は、スパルタカスを心待ちにしている。8月末には納品されるのだ。スパルタカスは今までのMacとひと味違いまっせぇ。
 まず、見た目がものすごくエレガンス。薄いモニターとキーボードだけ。別に、低音専用スピーカーがついている、という純粋に貴族的なマシンなのだ。僕の心の半分は、期待に震えている。今年の阪神は、ひと味違うのだ!!
 納品時には、一台々々セッティングに来てくれる。1年間は、電話すればすぐ修理に来てくれるという、サービスまでついている。これだけで、いかにデリケートな機械かよくわかる。今年こそ、優勝や!
 でも、僕の心の半分は、冷静に笑っている。「きっと、スパルタカスは、ボーズ社特性の極低音スピーカーで、天にも昇るような警告音を響かせながら、止まってくれるのだろうな。ははははは・・」

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◆『オタクの迷い道』#48 不謹慎だけど、これが本音

 飛行機で空を飛ぶ。どんなに気持ちがいいだろうと、子供の頃は思っていた。が、実際にジャンボジェットに乗ってみると、ちっとも気持ちよくない。確かに上がったり下がったりしているらしいが、エレべーターに乗っているのと大して変わらない。気圧で耳がツンとなるのも気に入らない。
 もっと小さい飛行機ならと思うと、やはりダメだ。セスナには何度も乗ったことがあるが、足下がボワンボワンして、まるでベニヤ板の上に乗っているみたい。浮遊感も壮快感もない。昔、宮崎駿氏がグライダーに乗ったときも「あんまり気持ちいいもんじゃないね」と語っていたのを思い出す。
 しかしそんな不満を吹き飛ばすのが、ロケットの打ち上げ見物だ。
 僕が見たのは、NASAでのシャトル打ち上げ。打ち上げの醍醐味は、2種類ある。一つはビジュアル、つまり目で見ること、もう一つは体感、つまり感じることだ。
 ロケットは湖の向こう岸に見えるのだが、それでもけっこう大きい。それが、空をどこまでも登っていき、頭の真上の見えないところへ消えていくのだ。普段、絶対にお目にかかれない光景だ。登っていくと言っても、アニメによくあるように、ロケットのおしりから火を噴いて登るワケではない。まず、発射した瞬間からものすごい勢いで、真っ白い煙がロケットの下の方からわき上がる。この煙はまるで、プリンかゼリーのような固形物に見える。大気との境目がはっきりしているからだろう。さっきまで体積ゼロだった煙は、アッと言う間に成長する。ロケットは、その煙の柱に押し上げられて登っていく。フロリダの強い風で、その煙が全体的にズズズッと動くのも見ものだ。
 こういった意外なビジュアルといっしょにやってくるのが、体感だ。まずロケット噴射と同時に、衝撃波がくる。風ではない。何か空気の固まりが、バンとからだを突き抜けるような感覚だ。「えっ?!」と思って、周りを見回すと、皆が「えっ!?」という顔をしている。「衝撃波だ!」正体を理解すると、みんな一斉に興奮した笑顔になる。次に来るのは、音だ。ゴゴゴゴという極低音は地球自身を反響盤に使った楽器のようだ。そしてバリバリバリ!という電気スパークのような巨大音。それがものすごい音量でやってくる。あんまりでかいので、地平線の木までが一斉に揺れている。
 続いて、爆風。自然の風とは違う。たっぷり1分、一定の強さで吹き続ける。しかも、ロケットを中心に放射状に吹く。それが周りの木の揺れ方を見回すと、はっきりわかる。初めて打ち上げを見た僕は、感動しまくった。
 ただ寂しいのは、打ち上げそのものはものの3分ほどで、すべてが終わってしまうことだ。そう考えると、チャレンジャー号の爆発を見た人は、お得だったと思う。上記の打ち上げの醍醐味を全て経験した後、爆発という予想外のクライマックスがついていたのだ。あの場にいられなかったのが残念でならない。

(近況) 
おかだとしお 9月26日、講談社より最新刊『東大オタク論講座』が発売される。書店で探してね。札幌でオタクアミーゴス公演が10月4日にあるから、そこで会おう。

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◆『オタクの迷い道』 #49 オタクとは本の保管で悩む人(5、7、5)

 オタクの定義も色々あるが、まぁ要するに本をたくさん持っているヤツと判断してもかまわない。フィギュアやゲームが好きでハマっていても、それに関する本を莫大に保有していない限り、そいつは単なる「ファン」だ。
 先日、知り合いのオタクが二人、連続して引越をした。一人は作家・竹熊健太郎さん。段ボール箱250箱以上の本が移動したそうだ。コレを聞いた唐澤俊一さんは、「いやぁ、僕が引っ越しするときは、300箱では済まないだろうなぁ」と嬉しそうだ。なにがそんなに嬉しいのか?
 ゲーム作家の眠田直さんは、段ボール箱80箱。竹熊さんの話を聞いて「それに比べれば、僕は大したこと無いですね」と申し訳なさそうに語っていた。けれど、眠田さんの場合、全ての雑誌は必要な部分だけを切取り、厳密に分類され、ファイリングされている。同じ80箱と言っても、オタク的に密度の濃い80箱、天下に恥じることのない、いや胸を張るべき80箱なのだ。
 オタクにとって、本とは買って当然のもの。オタクは高額所得者が多いので、本代は問題にならない。むしろ問題点は、それを置くスペースである。これはオタク永遠のテーマなのだ。
 僕が高校の頃だ。急に景気が良くなった僕の両親は家を新築した。その際、好きな広さの部屋を好きなデザインで作ってやる、と言われた。僕は45畳という途方もない広さの部屋一面に、図書館以上の密度で、作りつけの本棚を配置してもらった。空いているのは、通路とベッドの部分だけ。業務用のエアコンを据えつけ、うっかりスイッチを入れたまま寝た次の朝には、前に置いたコップの水が凍っていた。
 そんな本棚も、わずか3年程で一杯になった。その時の蔵書量・約一万七千冊。20才のオタクとしてはけっこう立派なものだと思う。後に姉が結婚して家を出たとき、隣の姉の部屋(やはり45畳で、天井からブランコが下がっていた)と合体したが、やはりそこも数年で本で埋まった。どんなにスペースがあっても、そこに本は無限に詰まっていくものなのだ。
 しかしこの世の中、上には上がいる。高名なオタク・Aさんが「同人誌コレクション専用の保管部屋」を引越した際の話を聞いて驚いた。フツーの人には、専用保管部屋があるだけでも驚きだろうが、本の保管用にもう一室借りるケースはオタクでは珍しくない。問題は分量だ。
 その引越の時おおまかに数えたら、同人誌の数が二万六千冊あったという。ピンこない僕に、Aさんは「4トンあります」と教えてくれた。同人誌が4トン!もちろん、普通の本は、別にしての話だ。
 これまで本の量を表すのに、様々な表現を聞いた。全部で何冊だの、段ボール箱で何箱だの、本棚何本分だの、何畳の部屋いっぱいだの。しかし、同人誌をトンで語られてはかなわない。脱帽である。
 上には上がいるものだ。

(近況) 
おかだとしお 「東大オタク学講座」講談社から9月26日発売予定.オタクアミーゴスin札幌は10月4日,かでる2.7大会議場(中央区北2条西7丁目)にて.14時開場,15時開演.当日券1900円

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◆『オタクの迷い道』#50 たかがガンダムの話をするだけで…

 オタクの話にはついていけない、とよく言われる。それは「テクニカルターム」と「ジャーゴン」だらけの会話だからだ。
 「テクニカル・ターム」とは技術的専門熟語だ。例えば「必要なデータを通信回線からとりよせる」ことを「ダウンロードする」という。これがテクニカル・タームだ。
 同じ意味を「通信でデータを落とす」と言ったりもする。別に大切な書類を、どこかに落としたわけではない。ダウンロードの「ダウン」という語感から派生したのが「落とす」という隠語、すなわちジャーゴンなのだ。もちろん、パソコン通信をしない人間には何のことかわからない。ジャーゴンとは、こんな専門家同士が使う隠語・符丁のことだ。
 先日、作家の今野敏さんと対談したら、編集者が目を丸くした。「何の話をしてるのか、さっぱりわからない」と言うのだ。僕たちはフツーの「ガンダム」の話をしているつもりだった。しかしそれは「ジャーゴン」だらけの会話だったのである。
 ガンダムにも種類がある。『機動戦士ガンダム』『機動戦士Z(ゼータ)ガンダム』『機動戦士ガンダムZZ(ダブルゼータ)』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』『機動戦士Vガンダム』『機動戦士ガンダムW(ウイング)』・・・。それぞれの作品はゼータ、ダブルゼータ、逆シャアなど略称で呼ぶ。これもジャーゴン。
 『機動戦士ガンダム』という作品は、シリーズ最初の作品なので「ファースト」と呼んだり、ガンダムに何もつかない、という意味で「無印」と呼んだりもする。これまたジャーゴン。
 さて複雑なのは、ガンダムという主役ロボットに対する呼び方だ。ファーストに登場する主役ロボットは、作品内でガンダムと呼ばれている。しかし続編のゼータガンダムでも、主役メカは作品内で普通、ガンダムと呼ばれている。正確にはガンダム・マーク2。ではゼータガンダムとは何かというと、作品内で開発中のロボットで、作品の後半でようやく登場する。ダブルゼータでも、やはり作品内ではガンダムと呼ばれている。だからガンダム世界のロボットを正確に特定したい場合は、形式番号で表現する。ファーストのガンダムは、RX-78。敵ロボットのザクはMS-06。ビデオ版のガンダムはRX-78GP01。
 おまけに複雑な世界設定を持つガンダムでは、何十年にもわたる架空の歴史が存在する。例えば最初の『機動戦士ガンダム』は、ジオン独立戦争、通称「一年戦争」の後半、半年間の出来事。ゼータではグリプス戦争、ダブルゼータはアクシズ戦争が舞台だ。この歴史が完全に頭に入っているオタクたちは、「グリプス戦争では、まだハンマ・ハンマは実戦投入されていない」なんて話し合う。まるでお爺ちゃんの太平洋戦争話みたいだ。
 これらのジャーゴンが自由自在に使えたとき、君は「一人前のオタク」という烙印を押されるのである。

(近況)
おかだとしお 11/2,3に東京六本木の旅館を借り切って「魁!おたく塾」という合宿イベントをするぞ。アニメ、特撮の超レア映像もいっぱい。僕と徹夜でオタ話したい奴は****まで


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