TV bros『オタクの迷い道』連載第五十一回〜第五十五回
ン1995-1998.Toshio OKADA all right reserved.
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◆『オタクの迷い道』#51 「新マン」と言われてわかる?

 普通の人でも、ウルトラマンには、ウルトラセブンやウルトラマンタロウなど、色々いることは、知っている。それでも彼らは、これらを十把ひとからげで「ウルトラマン」と呼ぶ。が、そんな呼称を使うヤツは、絶対にオタクじゃない。
 まず、ウルトラマンを代表作とするこれらの作品群は『ウルトラシリーズ』と呼ばれる。このシリーズ第一作は『ウルトラQ』、ウルトラマンではない。しかし東映制作の『キャプテンウルトラ』はウルトラシリーズに含まれない。気をつけよう。
 次に『ウルトラマン』そのものを呼ぶ時も、ウルトラマンとは呼ばない。この場合は単に「マン」と呼ぶ。これは、『ウルトラセブン』をセブン、『ウルトラマンA』をエースと呼ぶのに合わせているからだが、それだけではない。ウルトラシリーズ5作目の『ウルトラマンA』では、それまでに出てきたマンやセブン、ゾフィー達はみな兄弟で、その5人目の弟がエースだという設定がつけ加えられた。
 といっても、本当の兄弟ではなくヤクザの義兄弟みたいなものらしい。シリーズ6作目の『ウルトラマンタロウ』のタロウだけが、ウルトラの母から生まれた実子だ。相続問題、ややこしいぞ。その時、明らかになった設定によると、ウルトラ6兄弟は、マン、セブン、エース、タロウの他に、ゾフィー、新マンがいる。ゾフィーとは、『ウルトラマン』最終回に、単にウルトラマンの同僚として出てきたヤツだが、なぜか義兄弟の長男になっている。知らない星で手柄でも立て、臭いメシでも喰って男を上げたのだろう。
 問題は、新マンだ。『ウルトラセブン』の次に放映されたのは、『帰ってきたウルトラマン』。これに登場するウルトラマンは、作品内では「ウルトラマン」と呼ばれているが、別人だ。前のウルトラマンが帰ってきたわけではない。デザインも似てるけどちょっと違う。ファンも最初は「いったいこいつは誰なんだ」「何と呼べばいいんだ?」という問題に悩んだりもした。『帰りマン』とか呼んでみたりもしていたが、結局『新マン』で落ちついたようだ。無理のある名前だが、仕方がない。円谷プロでは彼のことを「ウルトラマンジャック」と名付けたけど、これは定着しなかった。
 さて、たしか『ウルトラマンA』の中でのこと。ウルトラマン達が久しぶりに懐かしの地球で野外パーティーを開いていた。もちろん、変身前の姿なのでハヤタ隊員、モロボシ・ダン、郷秀樹、北斗星児なんかが岩山でカクテルパーティーやってるわけだ。ここまでで充分ヘンなのだが、問題はお互いの名前を呼び合うシーン。「よう、ひさしぶりだなセブン」「マンじゃないか」旧交を暖め合う中で、帰ってきたウルトラマンこと郷秀樹は、誰からも名前を呼んで貰えなかった。
 たしかに「おう、新マン」「帰りマン、久しぶり」というわけにはいかないからなぁ。悲しい男である。

(近況) 
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◆『オタクの迷い道』#52 コレクター、それはゴミと暮らす者

 コレクターに関して、誤解は多い。
 ものすごい数のコレクションを見ると、たいていの人は思わず「全部で幾つあるんですか?」と訊く。が、そんな事を一々数えているコレクターはいない。その時コレクターに見えているのは「これがあると、この系列が揃う。だからこれが必要だ」という「今これが欲しい」欲望だけだ。
 「よほどお好きなんですね」という言葉もよく聞く。愚問である。
 麻雀で「中」牌を待っている人に、よほど「中」がお好きなんですね、と言うマヌケはいないと思うが、コレクションも同じ事なのだ。集め始めた当初は、マッチ箱に何か思い入れが合ったかも知れないが、普通そんなことはとうに忘れているもんだ。
 もちろん普段は「ブリキのオモチャは暖かく」なんて世迷い言を吐くかも知れない。が、悪酔いすると「なんでオレは苦労して、ゴミ集めているんだ?」とグチが出る。これこそがコレクターの偽らざる心情である。
 先日、特撮小道具コレクターとして有名な、なべやかんさんを取材した。映画やTV番組で実際に使用された小道具や衣装をプロップという。特撮プロップの場合は、怪獣の着ぐるみや、宇宙船のミニチュア、ウルトラ警備隊の制服といったものが中心で、当然ものすごくレアな為、貴重品である。
 見せて貰ったやかんさんの豊富なコレクションの中に、ジェットジャガーのミニチュア人形があった。これは又、とびきり貴重なアイテムだ。やかんさんは、僕に胸を張って「ジェットジャガーのミニチュア人形ですよ」と見せてくれた。僕も「おお、これは!」とうなってしまった。
 ブロス読者99%の人達に説明しよう。ジェットジャガーは、『ゴジラ対メガロ』という、ゴジラ映画の中でも、最低最悪と定評のある作品の中に出てきた、寒気がするほどダサいロボットだ。「ゴジラとジャガーでパンチ!パンチ!パンチ!」という子門真人のやたら元気な歌声が、映画館の中で薄ら寒く響くほどの出来映えだった。
 現在怪獣ファンの中では、ジェットジャガーは、情けないものの代名詞として使われている。ヒットラーは独裁者の代名詞、ダイアナ妃は悲劇の王族の代名詞と同様、ジェットジャガーは情けないものの代名詞なのだ。
 もちろん、僕もやかんさんも、ジェットジャガーが好きかと訊かれたら、「オレをからかってんのか?」と返すしかない。
 でも、やかんさんは、特撮プロップのコレクターだ。ジェットジャガーの、しかも飛びポーズ・ミニチュア人形というレアなアイテムが手に入るとなれば、ありがたく入手するしかない。そんなものを見せられた日には、僕も「おお、これはスゴイ!」と感心するしかないではないか。
 この引き返せない心を、みんなわかってほしい。そして、なべやかんさんに取材に行った薄い人達が、「このロボット、お好きなんですよね!?」などと心ない質問をしないように、是非お願いしたい。

(近況)
おかだとしお  絶版オモチャコレクターのオレ様。先月はパリとロンドン、今月は福井、大阪とオモチャを探しての旅だ。もう気が遠くなるほど投資したので、値切るのは上手くなったぞ。

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◆『オタクの迷い道』#53 アンティークオモチャの憂鬱

 古いオモチャが好きだ。いわゆる「アンティーク・トイ」というやつ。大阪に住んでいた頃から、しょっちゅう奈良や和歌山のオモチャ屋に遠征しては「サザエさんのフィギュア」だの「ゼロテスター巨弾基地」だの、棚の上でほこりをかぶっているオモチャを見つけては喜んでいた。
 しかし、最近の「お宝鑑定ブーム」で、僕の好きな懐かしオモチャもめっきり高くなってしまった。先日、取材で東京都内の懐かしオモチャ専門店をまわった時の話。「マジンガーZ」の超合金ロボットが、一万円。腕についていたロケットパンチも無いのにこの値段だ。反対に、新品同様の箱に入った巨大な『ダルタニアス合体セット』が四千円。これなどは、発売当時と同じじゃないかというカンジがする価格帯で、高いとも安いとも言えない微妙な印象だ。そんな中、『高速エスパー』の光線銃プラモデルは、箱付きで12万円。やっぱりアンティーク、バカにしていけない、と身がひきしまる。
 こういう、どんな法則があるのかもよくわからない値札を見ていると、どんどん不安になる。ここに売られているのが、よその店に比べて安いのか高いのか、さっぱり見当がつかないからだ。単に欲しいからというだけで買ったりすると、あとで友達から「そんなの、埼玉に行けば半額だよ」とか言われそうだし、欲しいのに高い気がして買わなかったら、「ええぇっ、それ安いよぉ。下北で買ったら倍はするよ」と言われたりしそうだし・・・
 いっしょに行った知人に、「ここのお店、どうです?」と小声で聞いてみる。彼はショーウインドウの中のいくつかの商品をみて、「まぁまぁですね。高くないですよ」と即答してくれた。どうも示準化石のような目安が存在するらしい。
 示準化石というのは、ある時代にしか存在しなかった生き物の化石だ。その化石が見つかった地層は、必ず○○期のものと特定できる便利な存在である。同様に、アンティーク・トイにも、そういう示準になるようなオモチャが存在するらしい。
 たとえばブレードランナーのポリススピナー・ミニカー(プリスターパック・未開封)の相場は一万五千円〜二万円。これは日本国内だけではなく、パリでもロンドンでもアンティーク・トイショップの国際相場である。これを調べるだけでも、どんなにコイツに無駄金払わされたか(泣)
 まぁしかし、もともと投機対象ではないオモチャである。自分が「こいつは十万円払っても欲しい!」と思えば、そのオモチャの価値は十万円なのだ。本当に欲しいなら、気長にじっくり探せばいい。
 でも先日、カルチェラタンのオモチャ屋で「マジンガーZの初代超合金、肩に発射ボタンついてるのありますか?」と聞いたら、血相を変えて「バカなこと言うな!そんなのあったら、5万フラン以上するぞ!」と怒鳴られてしまった。とほほ。
 古オモチャ道もきびしいのだ。

(近況)
おかだとしお ブリキのオモチャだけには手を出さない、と決意していたのに、とうとう買ってしまった。あの分野は底なしである。もう僕の銀行通帳は、破滅への道を歩み出してしまったぞ。

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◆『オタクの迷い道』#54 自宅が本屋でもオタクは本を買う

 島本和彦というマンガ家がいる。『炎の転校生』『逆境ナイン』を始め、熱い主人公が活躍するマンガで、マニアに圧倒的な人気を誇っているマンガ家だ。
 その彼は、同時に札幌で大手チェーン店を経営する実業家でもある。ビデオやCDのレンタル業と書籍販売業を兼ねる店舗で、その品揃えの豊富さでは、ウルサ方のオタク達からも定評がある店だ。
 そうきくと、オタクならみんな、心底うらやましそうな顔をする。何しろ、オタク型エンゲル係数は平均60%、すなわち年収の半分以上は、本代、ビデオ代、CD代に使ってしまっている奴が多いからだ。取材と称して、海外のオタク・ショップ巡りを他人の金でやっている僕ですら、羨ましい。
 特に、マンガ家の場合は、切実に羨ましいようだ。あまり知られていないことだが、マンガを描くには、大量に資料が要る。資料用の本代も相当な金額にのぼる。探すのも大変だ。その上、マンガ家はみんな、ずっとCDを聞きながら仕事をする。ついでに言うなら、マンガ家はたいてい、ビデオを見るのが好きだ。レーザーディスクのコレクションに大枚をはたくマンガ家も少なくない。
 それが彼の場合、仕事場の真隣・50メートル四方二階建ての広大な敷地にぎっちり本、ビデオ、CDが詰まっているのだ。しかも、身分は経営者。閉店後は、ほとんど自分専用になるに違いない。
 彼に訊いてみたら、案の定「たしかにお客が帰った後は、立ち読みしまくる時もあります」と嬉しそうに教えてくれた。
「でも、ビデオはダメですね。店員の手前、店長自らそんな態度では示しがつかない。だから、見た後は必ず、店長のお薦め文を書いているんですよ。こう見えても、けっこう気を使ってるんです」
 そんなこと言ったって、羨ましいことに何ら変わりはない。ちなみに、店にない本やビデオは、当然、店長の権限で取り寄せられることを、つけ加えておこう。
 しかも最近、仕事場のすぐ隣りに、カラオケボックスとサウナができたそうだ。これも、おたくにとっては欠かせないアイテムだ。さすがにここはタダではないが、普通、そんなに近くにあるものではない。やっぱり、羨ましいのだ。
 「いい本をたくさん読み、いいビデオをたくさん見る!そうして、いい影響を受けた後、がんがんマンガを描く!気分が高揚した後、サウナやカラオケに行って、一日のストレスをば〜っと開放する。まさに正のフィードバックですよ!」
 島本和彦は、彼のマンガの主人公のような熱い口調で、語ってくれた。
 そんな天国に一番近い生活をしている島本和彦だが、先日、パーフェクTVの申し込みをしたという。理由は、『魔人ハンター・ミツルギ』のオンエアを見たいからだそうだ。人間の欲望の底なしさ加減に、めまいがした僕だった。

(近況)
おかだとしお 70年代以前の絶版SF&ロケット模型を集めだしたけど、都内のマニアショップではバカ高くて手が出ない。安く売ってる店&譲ってくれる人の情報、知ってたら教えてくれ。

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◆『オタクの迷い道』#55 なんでコレがこの場所に…

 こんなところにあるはずがない、あってはいけないものを、見つけてしまった経験はないだろうか。

 例えば、友達に貸したCD。「早く返してくれ」と言うと「返した」と言う。「ウソつけ」と大喧嘩の末、部屋にもどって机の上を見ると、CDが!ぎょっとしてあふれでる冷や汗。なぜ?しまった、という思いが頭を駆けめぐる。「あるはずがない」という思いこみが、人間の記憶・認識を歪めてしまうのだ。今回はオタク界に伝わる、こんなコワい話をお届けしよう。

 発端は、テレビ埼玉だった。テレビ埼玉はローカル局だが、なぜかオタク番組の再放送に熱心だ。しょっちゅう『機動戦士ガンダム』だの『キカイダー01』だのを再放送してくれる、オタクのためにあるような素晴らしいTV局だ。「あのビデオ持ってない?」「おととし、テレビ埼玉で再放送したならあるけど」というのが、日常会話になる位、テレビ埼玉のブランドは確立している。

 そのテレビ埼玉で、10年ほど前に『アイアンキング』という特撮番組が再放送された。全26話で打ち切られたマニアしか知らないマイナー番組だ。その再放送の際に、なぜか最終話・26話だけ放映されなかったのだ。しかも、その前の25話はハッピーエンドではない。25話で、アイアンキングは敵に操られてしまい、人類の敵になってしまう。このまま地球は滅びるのか?と、盛り上げて、25話は終了する。もちろん次の26話で主人公は、正義の味方に返り咲き、敵をやっつけめでたし、めでたし、となるわけだ。

 しかし、肝心の26話が未放映だったので、当時の子供たち、生まれて初めてその番組を見た人間などは、ずいぶん寝覚めの悪い思いをしただろう。大人になってからも「あの最終回は、どんな話だったんですか」と、先輩のオタクたちにわざわざ訊ねるやつが度々いるくらい、物議をかもしたものだった。

 さて数年後、ある超有名オタクの事務所で、たまたまその話題が出たと思ってくれ。大人になったオタク達は、さすがに地球の滅亡を心配したりはしなくなっていたが、そのかわりTV局のいい加減さに腹を立てていた。「あれはひどい。一体なぜ、26話だけ放映しなかったんだろう」「何を考えているのかわっぱりわからん」と盛り上がっていたら、いきなり、その有名オタクの顔色が変わった。走り出して、がっと開けたロッカーの底には、『アイアンキング・第26話』と書かれた16mmフィルムが!

「しまった!フィルム借りたまま、忘れていた!」

 彼の頭の中は、まさにパニック状態。あるはずのないCDが机の上にあった、と同様、いやその数億倍の恐怖が彼を襲ったのであった。

 この話が実話であるかどうかは、僕は知らない。しかしこれは誰にでも起こり得る話なのだ。ところで僕のロッカーあるロビーの腕(実物)、これは何?

(近況)
おかだとしお 模型オタクの祭典・1月25日のワンダーフェスティバル(東京ビッグサイト)では、僕は「フィギュア王」のブースにいる予定。差し入れ等はご遠慮なくどうぞ。


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