TV bros『オタクの迷い道』連載第七十一回〜第七十七回
ン1995-1998.Toshio OKADA all right reserved.
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◆『オタクの迷い道』#71 君はハマジュンを知っているか?!

 SF映画というのはいつもイロモノ扱いされてきた。TVの名画劇場の解説でも、その差別はアカラサマだ。『カサブランカ』や『風と共に去りぬ』だったら、いくらでも熱く語り倒す解説者でも、『SF・惑星からの侵略』とか『恐竜百万年』の解説になると、全然元気がない。僕が解説者だったら、「初期ハリーハウゼンの背景合成型人形アニメの確立」とか「イタリア製SF映画は、ロケット噴射の炎が必ず短い」とか、いくらでも語りたいことがある。が、そんな話はきいたこともない。たいてい、「主演のラクウェル・ウェルチは、あの名作『ひまわり』で…」から始まって、SFとは関係ない名作やスターの話を延々しはじめるのだ。寂しいではないか。

 そんなSF嫌いな映画解説者の中で唯一の例外といえば、関西では有名な浜村淳である。別に彼がSF映画好きというわけではない。浜村淳はどんな映画に対しても差別がないのだ。とにかくSF映画であろうと名画であろうとB級アクションであろうと、常に変わらぬ情熱でハマムラ・ワールドを展開し、大熱弁を繰り広げるのである。

 中学時代、僕は毎週のように浜村淳の深夜放送をベッドの中で聴いていた。親に見つかると「早よ、寝なはれ!」と怒鳴られるので、暑い夏の夜もフトンの中に潜り込んで、トランジスタ・ラジオの音量をめいっぱい下げて耳に押しあてて、『浜村淳のバチョンでいこう!』に聞き入った。

 大人気のハガキ紹介コーナー、暴走族の話やちょっとエッチな初体験告白コーナーも面白かったけど、なんといっても「今度、凄い映画が来るんです!」と浜村淳が叫ぶとき、僕たちの心はアシスタントのおねーさんと一緒に「え?早よ教えて!」とはやりたつのだった。

 ハマムラ・ワールドの特徴といえばまず、JAROも呆れ返る大げさな表現である。映画『ポセイドン・アドベンチャー』は、豪華客船ポセイドン号が津波で横転し、ジーン・ハックマン演じる神父が、みんなを励ましながら船の底まで率いる、というパニック映画だ。神父はみんなの犠牲になって死んでしまうが、おかげでみんなは助かってめでたし、めでたし、となる。

 さて、その映画を紹介するとき、浜村淳は開口一番「今度、ハリウッドからとてつもない映画がきました!」と大声でカマした。僕は親に聞こえなかっただろうかとベッドで飛び上がった。

「高さ何キロメートルという大津波が、ポセイドン号を襲う!」と彼は、畳み掛けるように叫ぶ。波頭の高さが数キロメートル!凄い!もちろんどんな迫力のSFXでも、彼の解説を越えることなどできるはずはない。彼のアオリ文句にダマされて映画館に走った中学生の見た光景では、せいぜい何十メートルの津波だった。

その頃まだ青かった僕は「また浜村淳にしてやられた!」と悔しがり、友人たちも「まぁ浜村淳やから、しょうがないがな」と慰めてくれた。 (続く)

(近況)
おかだとしお おかげさまでコミケで同人誌は完売。ファンの方から差し入れももらってしまった。幸せを噛みしめる僕になんとあのセバスチャンからメールが!えっ、冬コミケに来る、だと!?

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◆『オタクの迷い道』#72 浜村淳の解説でエヴァを聞きたい!

(前回からの続き)関西では誰もが知っている映画解説者・浜村淳。彼が映画を語るとき、独特の語り口で聞くものを魅了する。

 たとえば彼は映画の登場人物すべてに大阪弁でしゃべらせる。『ポセイドン・アドベンチャー』のジーン・ハックマンは「みんな、最後まで希望を捨てたらあかんで!」「希望を捨てへんもんだけが、救われるんや!」と説教する。もちろん実際に見た映画では、ジーン・ハックマンは英語でしゃべっていた。当たり前だけど。当時、まだまだ青かった僕は「浜村淳の解説と、なんか違う…」と不思議がった。

 擬音が多いのも、浜村淳の特徴だ。何百メートルの津波は当然「ドッバ〜ンという勢いで」襲いかかることになる。『燃えよドラゴン』の解説の時など「ウォ〜リャ〜!アチョ〜!」「ヌンチャクの音、ビュンビュンビュン!」と、効果音だけで90分の映画を最後まで語ってしまった。

 しかし浜村淳がそこいらの映画評論家と一線を画しているのは、なんといっても「ストーリーを最初から最後まで話してしまう」という彼独特の解説法である。本来、映画解説とストーリー紹介は別物のはずだが、浜村淳の解説は、ストーリーをきちんと追って、最後の最後まで紹介してしまうのだ。

 『ポセイドンアドベンチャー』でも、主人公が死んでしまったあとも、浜村は語ることをやめない。

「船底にようやくたどりついた一行。こんなとこに来たって、どうせ助からへんわ!絶望する乗客達。けれど一人が励ました。みんな、神父さんの言うたことを忘れたんか!諦めたらアカン!底板を叩いて開けるんや!みんなが船底をガンガン叩く。ちょっと待て!聞こえるか?気がつくと、外からもコンコンたたき返す音がしている。あっ、誰か外におるんや!助かるかもしれへん。それ、がんばれ!するとバチバチバチっと音がして、船底が焼ききられた!やった、青空が見えた!」

「まぁ、どうなるの?」(無責任な女性アナウンサーの合いの手)

「さぁ、それからどうなるでしょう。あとは映画館でのお楽しみ!」

 お楽しみも何も、そのあと映画は1分も残っていない。船底が丸く切断され、乗客は助け出されて、めでたしめでたし、いきなりエンドクレジットが始まるのだ。

 もう万事がこの調子。『スターウォーズ』公開のときも、浜村節は絶好調だった。

「デススターを見事にやっつけたルーク達。一行は、実はお姫さまやったレイア姫から勲章をもらいます。首に勲章をかけられニッコリ笑うルーク。『偉かったねぇ、ルーク。私、ちゃんとあんたの活躍、見てたんよ』(そんなセリフ、もちろん無い)目を開けると、そこには、チューバッカがおる。C3POがおる。さぁ、それからどうなるか。続きは映画館でのお楽しみ!」

 どうなると言われても、この直後にエンド・クレジットが始まるのだ。浜村淳、興奮のあまりラストまでいつも喋ってしまう、大タワケ者なのである。(続く)

(近況)
おかだとしお セバスチャンからのメールによると、冬コミケ目的で来日するらしい。会いたい声優一覧表の後、「岡田サン、ヨロシク」と書いてある。ひょっとしてオレに紹介しろって事?

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◆『オタクの迷い道』#73 日本最高の映画解説者・浜村淳

(前回からの続き)浜村淳の解説は、もちろんSF映画でも暴走する。『スタートレック2・カーンの逆襲』の解説は、ハマジュン史上でも語り継がれる名解説だった。

 まずハマジュン、「特撮シーンは全部、コンピュータ・CG・グラフィックスで製作!」とキメた。これを聞いた当時の僕はすでにハマジュン歴十年のベテランだ。「特撮にCGを使っているシーンもあるんだな」と冷静に受けとめることができた。「コンピュータ・CG・グラフィックス」という、まるで「骨が折れて骨折した」みたいな表現も、一瞬、ヒクっと眉を動かす程度で乗り越えられた。浜村淳・初段である。

 さて、『スタートレック2』の解説をはじめたハマジュン、なんと「今回の映画では、ミスタースポックが死んでしまいます!」と、ラストの秘密を最初からバラして、クライマックスの宇宙戦闘シーンまでテンション上がりっぱなし。

「来たか!それ!そっちや、撃て!ちゃう!敵は上や!下や!それ撃て、いま撃て、ミスタースポック、フェーザー砲、フェーザー砲!あかん、はずれた!また見えへん!上や!下や!ミスタースポック!フェーザー砲!フェーザー砲!」

 4才の子供に、昨日テレビで見たポケモンの話を聞いているようなものだ。何がどうなっているのやら、さっぱりわからない。とにかく、そのシーンでは盛り上がったんだなぁ(浜村淳は)というのだけは、よ〜くわかった。

 番組には、相方としてアナウンサーのお姉さんがいる。しかしハマジュンは、この大熱演。口をはさむ余地などない。当然、お姉さんの発言はすべて、おざなりな合いの手になる。

「しかし、ミスタースポックはその時すでに、死んでたんですわ」「まぁ、たいへん」「船員全員の涙に見送られて、惑星ジェネシスで永遠の眠りにつくミスタースポック」「かわいそうやわぁ」「しかし、惑星ジェネシスは既に再生が始まっている!」「どないなるんやろ」「このあとは、映画を見てのお楽しみ」

 浜村淳の熱弁とセット聞くと、実に「ええ味」なのだ。

 そんな浜村淳の解説も、東京に引っ越してしまってからは聞けなくなってしまった。

 先日、大阪に仕事で帰った時、偶然にもタクシーで浜村淳の番組を聞いた。あれからもう十年、浜村淳もいい年だから、あんなテンションの高い解説はしていないだろうと舐めていたが、浜村淳、健在なり。来週、公開される『ジュラシックパーク』のクライマックスを、語り倒していた。

「ドスン!ドスン!さぁ、ティラノサウルスが追っかけてくる!ドスン!ドスン!かみつく!逃げる!」「いやぁ、こわい〜」

 浜村淳は、僕が中学校の頃と全く同じ熱意で、ラストのヘリコプターが助けに来るところまでを一気にしゃべって、「そのあとどうなるかは映画館へ行ってのお楽しみ!」と締めくくってくれたのである。

(近況)
おかだとしお 10月10日Hはロフトプラスワン(新宿コマ劇場横・03-3205-6864)で19:00よりトーク。浜村淳や映画に関して語りまくりだ。コミケで完売した同人誌も再販するぞ。

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◆『オタクの迷い道』#74 秋はちょっと美味しい話

 映画やアニメに出てきた食物は、なぜか印象に残りやすい。

「ルパン三世・カリオストロの城で、ルパンと次元が取り合いするミートボールスパゲッティ」とか「宇宙戦艦ヤマトの第三話に出てくるヤマト農園特産のトマトジュース」とか、「機動戦士ガンダムで、主人公アムロがホワイトベースから脱走し砂漠の街をうろつく。そこのレストランで、ハモンさんが店のマスターに『何もないのね。できるものでいいわ。それを14人前』と言う。あの14人前って何?」とか、気になる食べ物はいくらでもあるのだ。

 僕にも気になる食べ物があった。小学校4年の時、『ガメラ対大悪獣ギロン』を近所の映画館に見に行った。主人公の男の子二人が空飛ぶ円盤にさらわれる。宇宙人たちは子供の脳みそを食べようと計画、「お腹がすいたでしょ。これでも食べなさい。」とサンドイッチと飲み物を差し出す。もちろん、この食べ物には眠り薬が入っているわけだ。

 さて、そうとも知らない子供たちは、おいしそうにサンドイッチを食べだした。そのサンドイッチ、なんと八角形なのだ。宇宙人のサンドイッチらしくするため、小道具さんが工夫したのだろう。が、僕の心はざわめいた。八角形のサンドイッチ!いったいどんな味がするのだろう!?

 それにあの飲み物は何だ?白い液体だ。牛乳だろうか、カルピスだろうか?サンドイッチとカルピスをいっしょに食べたことがなかった僕は、その組合せが気になってしかたがなかった。思わず一緒にいった友達に「あの白いの、カルピスかな?牛乳かな?」ときいたけど、「映画みろよ!」と怒られただけだった。見終わってからも、そのことがどうしても気になる。とても帰る気がしない。僕が「もう一回見る」と言うと、友達は呆れて帰ってしまった。

 『ガメラ対大悪獣ギロン』は二本立て、もう一本は黛ジュン主演の悲恋もの『夕月』だ。僕は見たくもない『夕月』を最初から最後までじっとがまんして見た。

 ようやく『夕月』が終わって『ガメラ対大悪獣ギロン』が始まった。僕は映画館の一番前の席に座って、目当てのシーンを待った。白い飲み物を飲むカットが始まると、全神経をコップの縁に集中させる。

 もし飲んでいるのなら牛乳なら、チンダル化現象でコップの向こう側は絶対に透けて見えない。が、カルピスなら透けるはずだ。あ、わずかにセットの向こうが透けて見える!こうして僕は、ついにその飲み物をカルピスだと同定することに成功した。

 家に帰ると僕はさっそくサンドイッチを作って八角形に切った。もちろんカルピスも作った。あの瞼に焼き付けたシーンを思い出しながら、まったく同じ濃さになるよう、細心の注意を払った。

 このようにしてサンドイッチとカルピスを美味しく頂き、ようやく僕にとって『ガメラ対大悪獣ギロン』は、見たことになったのだ。そう、オタクとは面倒なのだ。

(近況)
おかだとしお 10月24日(土)に新宿ロフトプラスワンでトークショー。問い合わせは03-3357-1676まで。11月3日(祝)は福岡・西新パレスでもトーク。チケットは福岡市中央区の福家書店天神コア店まで(盛況のうちに無事終了いたしました)

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◆『オタクの迷い道』#75 映画に登場するまずいものベスト10

 今回は映画に登場した「不味そうなもの」だ。わざとまずいのは失格だぞ。

 では第10位!『2001年宇宙の旅』の、宇宙船エアリーズ号の機内食。ストローで飲むタイプの液体宇宙食だった。「科学的なゲロ」の味だろうな。

 第9位!『ブレードランナー』のうどん。ファーストシーンで、ハリソン・フォードが食っているけど、まるでアンカレッジ空港の免税品店のうどんみたいに不味そうだ。 第8位!『バック・トゥー・ザ・フューチャー』のケーキ。主人公マーティのおじさんの刑務所出所祝いにママが作った特製ケーキだ。スポンジケーキ型にしたアルミの四角いバットに入ったまま、飾りつけしてある。あの無神経さからして、味も大バカアメリカン、限度なく甘いと見た!

 第7位!『スターウォーズ』の青い牛乳。主人公ルークが特大のタッパウェアから注いでもらう。あれ、絶対にミント味でおまけに甘いんだぞ。

 第6位!伝説の名画『イントレランス』はサイレント映画の超大作だけど、バビロン編に登場するバカ娘が、腰ヒモに生のネギをさして登場する。ときどきかじるんだけど、生のネギがうまいはずがない!

 第5位!『ライトスタッフ』のステーキ。ジョンソン副大統領のバーベキューパーティで登場する。どうみても焼きすぎ。それをまた、プラスチックのフォークと紙皿で立ったまま食べている。しかもよほど固いらしく、セリフをしゃべっている間中、モゴモゴと噛み続けるぞ。

 第4位!『さよならジュピター』に登場するマクドナルドのハンバーガー。宇宙船のコクピット内で食べているので、発砲スチロールの容器ごと、ふわふわ浮いている。このシーン、役者が死ぬほど大根だぞ!

 さて、いよいよベスト・スリーに突入だ!

 第3位!『エイリアン2』のとうもろこしパン。宇宙戦艦スラコ号の冷凍睡眠から目が覚めた海兵隊員たちが、食堂で久しぶりの食事をとっている。そこでアンドロイドのビショップが、「自分は食べないのでどうぞ」と差し出すのがこれ。アンドロイドなので食べる必要がない、ということなのだが、差し出された主人公リプリーは怒って、皿ごとひっくり返す。アンドロイドにはひどい思い出があるからなのだけど、そんなまずいパンを喰えと言われたので、怒っているように見えるぞ!

 第2位!映画じゃないから反則だけど、アンパンマンの頭はまずそうだぞ!

 では、栄光(?)の第1位!ハリウッド版『ゴジラ』に登場するタヌキそば。日本の漁船がゴジラに襲われるファーストシーンで、レーダーを監視していた船員が食べている。外人が作ると、なぜこうも、うどんやそばがまずそうになるんだろうか。ぶつぶつ切れるし、湯気は出てないし、最低だ。ハリウッドはメン類に偏見があるのか?

 さあ、君もレンタルビデオでさっそく「不味いもの」チェックだ。満腹時に見ると、効果抜群だぞ!

(近況)
おかだとしお 「日本で君は有名」とブロス読者に教えられたセバスチャン、すかさず「ハヤシバラは僕のこと、知ってる?」と聞き返したぞ。今までのセバ情報に関してはhttp://www.NetCity.OR.JP/OTAKU/okada/にアクセス!

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◆『オタクの迷い道』#76 謎の円盤・U.F.O.

 「岡田さんはUFOを信じますか?」などと聞く人がいる。こんな質問をされてどう答えろというのだ。

 UFOという言葉はみんなも知っているように「未確認飛行物体」のことだ。つまり「空に見えているけど、何だか正体がわかんないもの」のこと。それを英語でアンアイデンティファイド・フライング・オブジェクト、略してUFOと言う。

 「ええ、私は見たんです。昨日の夜8時半頃、コンビニまで買い物に出た帰り道。上空の雲の上を、巨大な光が音もなくスーっと通り過ぎていきました。飛行機が飛ぶ時間じゃないし、第一、音が全然しなかったんです。」

 OK!この目撃者にとって、その光は確かにUFOだ。UFOを信じるもクソもない。間違いなく、これはUFOである。

 ところが、だ。その夜、10時半に友達に電話したらこう言われた。「なに言うてんねん。それは国道13号線の向こうのパチンコ大洋のサーチライトやで。雲にあたって光るから、ときどき円盤みたいに見えるねん」

 この時点で、UFOはUFOでなくなり、パチンコ大洋のサーチライトになったわけだ。つまり、この光は、正体がわからなかった8時半から10時半までの2時間だけ、UF0だったのだ。もしこの友達に電話しなかったら、いまだに彼の中ではUFOのままだったかもしれない。

 お判りだろうか?このようにUFOというのは「状態」を表す言葉だ。例えば「容疑者」という言葉がある。ある人が、犯人かもしれないし、無関係かもしれない。どっちかわからない状態の時に使う。これと同じようなものだ。「容疑者と信じる」などという日本語は、ありえないのだ。

 だから、UFOは信じたり信じなかったりするものではない、というわけ。ああ、なんて知的かつ論理的な説明なんでしょ。

 が、こんなこと言ってもムダなんである。

「え〜っ、つまりぃ、岡田さんはUFO、信じてないんですねぇ?」

 もちろん彼女のいうUFOとは「正体がわからない飛行物体」ではない。空飛ぶ円盤のことだ。それもウチュージンが乗って飛んでくるやつ。それならそうと正直に「宇宙人が空飛ぶ円盤に乗って地球にやってきて、麦畑にマル描いたり牛の血を吸ったりしてると思います?」と言えばいいのだ。どうだ、正確に言い換えただけで、ずいぶん信じにくい気分になっただろう?

 それを、UFOなどと英語にしただけでごまかそうとする。そんな根性が、気にくわん!

 浮浪者はダメでホームレスはいい?アニメはイケてなくて、ジャパニメーションはオッケー?そういう、目先を変えただけで言いくるめたり、言いくるめられたりする根性が、そもそもいかんのだぁっ!!

 あぁ、つい年寄り臭い説教になってしまった。この話、次回も続くぞ。

(近況)
おかだとしお この秋は僕もアートに挑戦! ニートニックアートエキシビション−軽やかな未来− 11/25〜12/8(11〜19時)@「共存/CO:EXIST」ギャラリー(渋谷区神宮前5-47-6 問:セイコー広報部 03-3563-2111)

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◆『オタクの迷い道』#77 UFOの次は、ノストラダムス話

 ある調査によると、どうも世の中の8割ぐらしの人が、『ノストラダムスの大予言』を信じているらしい。僕自身は、あんまりこういうヨタ話を信じることができない。というのはその昔、あまりにもこの手の話を信じすぎてしまったため、免疫ができてしまったのだ。そう、オタキングは実は、元ビリーバー(オカルトとかを信じちゃう人)だったのである。恥ずかしいなぁ。

 この世には「思わず信じて」しまうような予言は、いくらでもある。たとえば、クフ王のピラミッドの回廊には、曲がり角ごとにさまざまな予言が書いてあるという。そこにはアレキサンダー大王の大遠征やキリストの受難、原爆の発明、第一次世界大戦まで予言されている。しかもその予言回廊が、1972年をしめす場所で行き止まりになってしまうのだ。つまり!1972年で世界は滅びてしまう、としか考えられない!

 僕が小学生の時、雑誌の付録でこの記事を読んだ。もう完全に信じ切った僕は、目の前が真っ暗になった。ダメだ!僕が高校生になるより前に、世界は滅びるんだ!勉強なんてやっても、どんな意味があるのだ?

 もちろん1972年を過ぎて82年になっても92年になってもそれどころか98年が終わりそうなのに、人類は滅びていない。

 こんな予言を僕は20種以上知っている。 もちろん、こういう予言というのは、後世の三文ライターが無理矢理こじつけて、「当たっている」ことにしてしまうのだ。人間の想像力を甘くみてはいけない。「理屈と膏薬は、どこにでもつく」ということわざ通り、どんな無茶なヘリクツも生み出すのが人間で、それを信じてしまうのもまた、人間なのだ。

 一例を紹介しよう。アメリカのオハイオ州という地名は、日本語のオハヨウと似ている。だからアメリカには昔、日本人が住んでいたのだ、つまりアメリカは本当は日本の土地なのだ、と主張する人がいる。僕はこれを読んで、大笑いした。しかしその人はこの主張を本にして出版し、笑う人より信じる人の方が、圧倒的に多い。こんなボギャブラ天国みたいな話でも、オカルト好きな一般人をだますことが可能なのだ。

 ノストラダムスも、このオハイオ=おはようと同じようなもんだ。「鉄のケモノが河を渡る」という言葉は「ヒットラーの戦車隊がエルベ河を渡ったこと」を指している、と言う人がいる。その論法を使えば、「ジンギスカン率いる騎馬隊が東ヨーロッパに攻め込んだこと」や「ジオン軍が新型モビルスーツで攻めてくること」を予言した、とも言えてしまうのだ。

 僕だって、『ピラミッドの予言』を信じていた頃には、空飛ぶ円盤も信じていた。ノストラダムスだって信じていた。ムー大陸もアトランティス大陸もレムリア大陸も、残らず信じていた。僕が中学校の頃信じていた「沈んだ大陸」の総面積は、地球の表面積の三倍以上、あったぐらいだ。

 そんな僕だからこそ、よくわかるのだ。このペテンの仕掛けが。(まだ続く!)

(近況)
おかだとしお 12月18日に初の絵本『20世紀の最後の夜に』(講談社)を発売する。僕の大好きなロケットや万博やプラモなんかがいっぱい入った、十分で読める本だ。絶対に見てくれ!

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◆『オタクの迷い道』#78 宇宙人への挑戦状

 アヤしげなオカルト話に騙されてしまう人は後を絶たない。ビリーバーにならないためのチェックポイントは、これだ。
(ポイントその1)
「出版社をチェック」
『ノストラダムスの大予言』だって、君の友達が発見したんだったら信じるわけがない。ちゃんとした本に載っているからこそ、信じる気になるわけだ。
 が、ある日、急に気が付いた。僕が好きな予言書や「幻の大陸」やUFOの本は、なぜか必ず、大陸書房や徳間書店や第一書籍から出版されている。朝日新聞社や毎日新聞社からは出版されない。TVでも特番ではやるけど、ニュースでは扱われない。
 もちろんディープな信者の中には「大出版社には、CIAや闇の組織から圧力がかかっている」と主張する。でも徳間書店は大出版社だぞ。それにTVの特番の方が影響力がある。無理のある理屈だよなぁ。
(ポイントその2)
「ムチャな論理の飛躍」
 目撃者は言う。「あの時間、飛行機は飛びません。鳥はあんな速度で飛べません。風船もそうです。北の方向だから、金星でもありえません。人工衛星の反射でもない。だから、あれは絶対に空飛ぶ円盤です」
 考えられるすべての可能性を否定したら、空飛ぶ円盤しか残らないという、粗雑な論理だ。
 それなら、こう言ったらどうだろうか。
 「空を飛ぶ不思議な光を見ました。飛行機でもない。金星でもない。鳥でも風船でもない。人工衛星の反射でもない。だから絶対にあれは、ガメラです」
 え?ガメラはバカらしい?
 じゃあ、ウルトラマンだと言われたら?魔法使いサリーだったら?
 もちろん、みんな信じないだろう。単なるオタクのタワゴトと片づけられるにきまっている。それなのに「全ての可能性が否定された。残るはUFO=宇宙からの使者」という粗雑な論理が通ってしまう。
 たぶん、こういう論理を振り回す人は、何が何でも空飛ぶ円盤を信じたい純粋な人なんだろう。そりゃ僕も、できれば信じたい。空飛ぶ円盤だって、ウルトラマンだって、ガメラだって。
 でも僕はオタクだ。アニメや特撮なんていう「子供の世界」を、大人の理性でバックアップしよう、と決意した生き方なのだ。だからUFOにも、最大限の敬意をはらってアプローチしている。盲目的に「信じたいから、粗雑な論理でもOK!」という姿勢はとれない。そんなものを信じるくらいなら、Dr.中松を信じてジャンピングシューズを履いた方がマシだ。世界平和に一歩近づくことを信じて、洗剤でも売っていた方がマシだ。
 これが僕のUFOやオカルトに対する態度である。もし文句があるUFOまたは宇宙人がいたら、12月25日午後4時、練馬区立野公園に降りてくること!いくらでも相手になってやるぞ。

(近況)
おかだとしお 冬のコミケには「日本のセバスチャンたち」という同人誌を出す。商業誌には書けない、ちょっと電波系の方々の話だ。12/30西れ56aロケット野郎と東ピ24aおたくをおもしろくする会で販売。

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◆『オタクの迷い道』#79 サラ金や英会話教室のパンフの秘密

 ポジ屋さんという商売がある。雑誌の編集や広告業界の人が使う、写真のレンタル屋さんだ。英会話スクールの宣伝用パンフなんかで「パリのカフェで優雅にお茶を飲んでる女性」とか、よく見るよね。ああいった写真っていうのは、別にカメラマンとモデルを雇って、パリでロケして撮ったわけではない。ポジ屋さんからフィルムと一緒に使用権を借りているのだ。実際の話、ポジ屋さんにはパリのカフェ風の写真なんて、何百何千種類もある。
 そんなポジ屋さんに、僕は生まれて初めて行った。講談社から出た『二十世紀の最後の夜に』という絵本の写真選びのためだ。
 今までの僕の本は、とにかく字がぎっしり、情報が詰まりすぎた真っ黒な本ばかりだった。たまには違ったことをやってみたくなる。写真やイラスト満載のカラフルな本。やさしい言葉で、もっと感情に訴える「自分たちのための絵本」を作ってみよう。
 そう考えたのはいいけど、残念ながら僕は絵が描けない。第二次大戦前の科学雑誌から、60年代の絵本、鉄道模型の写真集まで、これだ!という写真を探し続けた。
 その一手段として行ってみたのが、ポジ屋さんだった。実は、あんまり期待していなかった。きっとかっこいい写真、オシャレな写真ばっかりに違いない。僕がその時探していたのは「核爆発」「迷路」「石油コンビナート」「都会の雪景色」の4点。雪景色はともかく、コンビナートなんてさすがに無いだろうと思っていた。
 が、念のためにきいた僕に、店員は顔色一つ変えず、「じゃあ、こちらへ」と案内してくれる。びっしり並んでいる金属製のキャビネットの一つを引き出す。見ると「工場他」と書いてある。隣のキャビネットは「自動車工場」、その隣は「造船所」。キャビネットの中は、分類されたファイルがびっしり。その中から「石炭、石油コンビナート」のファイルをどっさり出してきてくれた。
 凄い。核爆発や迷路も、何百種類もあり、さすがにこんなに大量にあれば、なんとかイメージに近いものも見つかった。
 ただし、怪しげな店もあった。青山のあるポジ屋さんなんか、値段を訊くと、僕たちの身なりを頭のてっぺんから、靴の先、カバンまでジロジロ見て、「社長に相談します」と奥に引っ込んでしまった。で、戻ってきてから「○万円です」とポソっと答える。不安だったので「料金表を見せてくれ」と言うと、「そんなもの、ない」とキッパリ言われてしまった。
 定価というのがなく、相手や場合ごとに決めているらしい。なんか怪しげな風俗店みたいだ。しかしこれがまた素晴らしい写真だったので、ヘンだとは思いながらもお金を払うしかなかった。
 こういう苦労をさんざんして、やっと出した絵本だ。『二十世紀の最後の夜に』、書店で見かけたら、よろしくお願いします。(近況)

(近況)
おかだとしお 最近、原稿を書くのが楽しくて仕方ない。12月に二冊も書き下ろし本を出したし、『人生のとりせつ』の準備も順調だ。しかし「ハシは二本、ペンは一本」と言われるこの業界、原稿書くだけでは喰っていけないんだよな。

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◆『オタクの迷い道』#80 モノカキの幸福と憂鬱

「11冊か。この前から2冊売れたな」
 立ち読み客のいぶかしげな視線を感じながら、平積みの冊数を本屋で数えるのが、僕の日課になってしまった。
 数えているのは、『二十世紀の最後の夜に』という自分の本。作家が自著の売れ行きを気にするのは当たり前だけど、気にするあまり朝晩、近所の本屋を自転車で廻り、こっそり何冊売れたかを調査しているのは、あきらかに「ヘン」だ。自分でもわかっている。わかっているけど、やめられない。
 『二十世紀』は、久しぶりの勝負球だ。一年かけて書き下ろして、自分の本当に書きたい内容という、こだわりまくった作品なのだ。当然、売れ行きも気になる。
 発売日から2日遅れで、R書店に二冊入荷。いつも僕の本をハデに売ってくれるお店なのに、たった二冊だ。思わず店長さんに「二冊?」とさぐりを入れる。「いやぁ、たくさん注文したんですが、問屋から廻ってこないんですよ」との返事。ひょっとして言い訳かもしれないが、僕は即座に講談社に電話した。
「R書店では足りないと言ってますよ。さっそく増刷しましょう!」
 当然、まぁまぁとたしなめられる。
 それから2日後、ようやくP書店にも、K堂にも入荷したらしく、ど〜んと平積みになった。足どりも軽く家に帰ると、感想のメール第一号が届いている。「泣きました!」という素直なメールに、僕は思わず、作者からの返事にしては長すぎる、まるで中学生の文通のような丁寧な返事を書いた。
 翌朝にも、感動のメールが数通。献本を送った知り合いからも、「泣いたよぉ」とかいう連絡が次々に入る。
 僕の心はすっかり舞い上がった。「超大型ヒット!」とか「ミリオンセラー」という言葉がこだまする。
 僕は、相手の迷惑も考えず、また講談社の担当に電話する。「すっごく評判がいいんですよ!ど〜んと増刷しましょう!」と言って、またなだめられた。
「いやぁ、評判が良くても、売れてないから」と担当の言葉に真っ青。
 え?売れてないの?僕の心の中では、既に売り切れの筈だった。が、実際はあんまり売れていないらしい。
 なぜ?僕は、はっと気が付く。そう言えばもらったメールでも、「この感動を大切に胸にしまって」とか「もう泣かないように、この本を本棚の奥に隠した」とか、書いてあった。友達に勧めます、なんていうのは一通もない。みんな、一人で感動して、黙っているのか?が〜ん。
 心配のあまり毎日朝晩、本屋に行っては、「売れた」だの「売れない」だの「通算で○冊」だのばかり騒ぐ僕に、とうとうスタッフや家族もあきれて、「売れないの話題、禁止令」を出されてしまった。もう誰も僕の話を聞いてくれなくなったのだ。
 というわけで、しかたないので、ここに愚痴を書かせてもらいました。
 ご静聴、ありがとうございます。

(近況)
おかだとしお テレビブロス連載の単行本化が文芸春秋社で進行中。3月発売を目指して、書き足しとか作業中だ。次こそは売れる本をつくらないと後がないですよ、と編集者に脅されたぞ。


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