『人生の取り扱い説明書』連載第十五回〜第十八回
ン1997-1998.Toshio OKADA
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15回目 王様タイプ上司とのつきあい方

 今回は、Aさんから聞いた相談を元に、王様タイプの上司に対する対処法を考えてみましょう。
 Aさん(32)は都内の建築デザイン会社に勤めるサラリーマン。貸しビル内での店舗設計が中心で、大手ブランド店からの発注もたくさんあり、会社の規模は小さくても、業界では名前が知られているそうです。
 Aさんも27才までいた建築会社から、あこがれて移籍してきた一人です。前の会社は建て売り住宅中心で、設計も建材からデザインまで制限が多く、とにかく早く数をこなすことを要求され、欲求不満だったそうです。
「このままでは便利屋のまま、終わってしまう。この会社なら、自分の能力を充分に発揮できるし、独立も夢ではない。」そんな思いが、転職のキッカケでした。
 しかし現在の上司とのソリが合わず,Aさんは悩んでいます。
「とにかく上司のやり方がむちゃくちゃなんです。いつもスケジュールがギリギリで、徹夜で仕上げることを強制される。お得意さんから頼まれたのだから、とにかく間に合わせろと言われるので、斬新な試みどころか、考える時間すら取れない状況なんです。残業手当?出ませんよ(笑) しかもですね、これって急に来た仕事じゃないんです。ずいぶん前に勝手に上司が受けた仕事を、これは自分がやるからと抱えていたくせに、どうにも出来なくなってからこちらに回してくる。
 一度や二度のことじゃないです。月に一回はありますよ。管理能力はゼロとしか言いようがありませんね。このままずっと、上司の尻拭いばかりやらされて、自分の能力をアピールするチャンスは廻ってこないのではないかと、暗澹たる気分になってしまいます。しかもこの上司、社内では結構ウケがいいんです。 なぜなんでしょうか?」
 あなたは、会社内で、自分の能力を正当に認めてもらうことに一番喜びを見い出すタイプですね。もちろん、独立して事務所を持つというのは、もっと広い社会であなたの力を認めさせるということです。つまり、あなたは軍人タイプ。それも、自分の能力に自信を持っていて、正々堂々と勝負したいと考える、プラス思考の軍人タイプと言えます。、
 あなたの上司は、頼まれるとイヤと言えないタイプ。それが親しいお得意さんだったりすると、なおさら拍車がかかってしまうのでしょう。これは王様タイプ独特のもの。王様タイプのこういう太っ腹な部分は、良いパターンで出ると頼りがいのある親分に写り、悪く出ると愛想だけいい安請け合いなヤツと思われてしまいます。
 あなたの上司も、頼まれればつい引き受けてしまいがち。多少、スケジュールがつまっていても、その場ではつい、色良い返事をしてしまいます。軍人タイプのあなたは、きちっと考えて、出来る分だけを引き受けてくれれば、と思うでしょうが、そうもいきません。実際、お得意さんや経営者から見れば、そういう頼りがいや親しさがあるからこそ、あなたの会社に発注しているという部分が大きいのです。
 あなたの上司は「何とか自分ががんばれば」と考えて引き受けます。この時には、かわいい部下に無理はさせられないと思っています。ところが、スケジュールの読みが甘かったり、そういう頼まれごとが重なったりで、結果的に困った時に、あなたに頼んできているのでしょう。それも、あなたが憎いわけではなく、逆に信頼し大切に思っているからこその行為です。王様タイプにとって、人間関係の基本は、頼り頼られる、から形成されているからです。
 こういう上司でも、職人タイプの部下なら、さほど苦しみません。軍人タイプのあなたのほど、上司の命令を絶対とは考えないからです。心の中で当然のごとく、仕事に対する自分なりのこだわりが、上司から与えられたスケジュールよりも優先します。もちろん徹夜も辞さずがんばりますが、「プロとしての仕事のレベルを下げてまで間に合わせようとは思わない」というのが職人タイプの言い分です。そんなわがままな部下に対して、上司はイライラしながらも、一生懸命がんばっている姿を見ると怒りきれないといった気分になります。
 これが、同じ王様タイプの部下だと、頼まれて引き受け、出来なくなって困る、という上司と同じパターンになってしまいます。これでは無限の合わせ鏡で、仕事はなかなかあがらず、最悪の事態になることがよくあります。
 これが、学者タイプの部下だと又違います。自分がかかえている仕事をリストアップし、それぞれにかかる日数を算出して、優先順位を聞いていきます。ここで「とにかく全部急ぐ」などと根性論になってしまうと、学者タイプはお手上げになってしまいます。
 軍人タイプのあなたへのお薦めは、あなたの優位にあたる学者タイプの方法をまねることです。今回は優先順位作戦ですね。ただし、根性論になってもあきらめず、もう一押し。根性論は聞いているふりだけして「わかりました。○○さんの為ならがんばりますが」とか適当に答え、その上でやんわりと「ではどれから始めましょう」と話を進めます。これで答えを引き出せれば、部下の1ポイント先取となります。
 あとは、上司の指定した優先順位で、普通に仕事を進めれば大丈夫。間に合いそうにないことが誰の目から見ても明らかになった時点で、実際には後何日必要かのデータも添えて上司に報告します。ただしここで、絶対に批判的なニュアンスが出ないように注意して下さい。かわりに、思いっきり困った顔をするのを忘れずに。そうすれば、今度は上司から得意先に頭を下げてくれるでしょう。
 上司も、あなたが無理をして間に合わせてしまうから懲りないわけです。自分で謝って、目の前で信頼が減っていくのを感じれば、もう少し慎重に仕事を引き受けるようになってくれる筈です。
 是非、お試し下さい。

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16回目 職人タイプ上司とのつきあい方

 今回は、職人タイプの上司についての悩みです。相談者は都内のデザイン会社に勤務しているAさん(30才)。Aさんは、現在アシスタント・デザイナーとして勤務しています。もちろん、デザイナーとして身を立てたいと考えて入社したのですが、実際は雑用と制作補助的な仕事ばかりで、なかなかデザインの仕事はまわってきません。昨年、部署が転属になり、会社の花形・デザイン部門に移籍したので、いよいよと張り切っていたのですが、実際のデザインの仕事は、全部、古株で名前の知られたデザイナーがやってしう、とのことです。
A:自分なりに、チーフ・デザイナーに話しかけたり、打ち合わせの合間に、ちょっと意見を言ってみたりもしているのですが、ちっとも聞いて貰えません。このままでは、僕の実力を知って貰うこともできないんです。
岡田:まず、あなたの上司のやり方では、若手が育ちにくい思うのですが、その辺りを、上司はどう考えているようですか?
A:ええ、なかなか良い跡継ぎが育たないと、嘆いています(笑)。でも僕らに廻ってきた仕事を、結局、ああでもない、こうでもないと手を入れて、自分のデザインにしてしまうのです。だから、上司に気にいられているのは、上司のデザインのモノマネが上手いヤツばかりなんです。
岡田:なるほど。あなたの上司は、典型的な職人タイプですね。つまり、あくまでも自分のこだわりを通すタイプ。このタイプの上司で、一番やっかいなのは、ものすごく才能がある場合です。何もかも自分でできるので、完全なワンマン制を引いてしまうことになります。
A:ええ、確かに才能はすごいんです。僕も、彼にあこがれてこの会社を選んだ程ですから。彼の下で働いていると言うだけで、他の会社の人間は一目置いてくれます。でも、僕はその上司に明らかに気にいられていないんです。若い連中でも、もっと親しげに彼と話しているヤツもいるのに。このままでは現場からはずれた事務職に廻されるような気がします。
岡田:上司に気にいられていない気がする、というのを、上司の態度や表情といった肌の感覚で判断していること、また気にいられていないからデザインの仕事がまわってこない、と考えている事から、あなたは王様タイプのようですね。
A:自分でも王様タイプじゃないかと思ってました(笑)。その場の雰囲気なんかに敏感で、つい盛り上げようとしてしまいますし。
岡田:王様タイプのあなたが、上司に気にいられていない、と言うのですから、その判断はほぼ正解でしょう。王様タイプは、そういう事柄に一番敏感なセンサーを持っていますから。
 あなたは王様タイプ、つまり職人タイプの上司の「優位」にポジションしています。あなたの押しの強さや「任せて下さい!」といった態度が、上司からすれば、何となく扱いにくい部下という印象に映るのでしょう。
 職人タイプの上司にとって、欲しいのは部下ではありません。生き方、価値観まで学ぼうとする「弟子」なのです。それに対して、生粋の親分肌体質のあなたを「弟子」として使うのは、無理のあることです。あなたがついやってしまいがちな「こうしたらいいのでは」と意見する事など、職人タイプの上司にとっては、「百年早いタワゴト」なのです。
 これが、劣位の学者タイプの部下だと、上司の指示に対して、変更を要求したりはしません。同時に隅から隅まで上司の意向通りにできるわけはないと最初からあきらめています。かといって、全部出来てからリテークなどという効率の悪い仕事を嫌う学者タイプとしては、防衛上、作業途中に何度もこれでいいかの確認をとりに行きます。上司の意向がわからない部分は素直に相談します。上司としては、「しょうがないヤツ」と思いながらも、頼りない部下を助けてやる気持ちで、色々と意見することになります。
 職人タイプだと、本当に師匠と弟子の関係で落ちついてしまいます。逆に優秀な弟子の場合は、結果的に破門され、独立して自分の弟子をとるようになりますけど。
 これが、軍人タイプの部下だと、上司の命令は絶対服従ですので、意見をするわけもありません。ただ、その上司からの指示が、具体的になっていないので、途方に暮れてしまいがち。だからといって「もっと具体的に指示を下さい」なんて言ったら「勘の悪いヤツ!」と決めつけられてしまいます。これを避けるには、安直でもいいから、いくつかの具体案を準備して、「どれがいいでしょう?」と尋ねるのがいいでしょう。
 さて、具体的な対処法ですが、王様タイプのあなたは、優位に当たる軍人タイプのやり方をまねる方法をお薦めします。とにかく指示には服従し、、普段から上司のやり方に批判的な物言いは絶対に避けること。話すより、具体的なブツ(写真や書籍)を見せて、交渉しましょう。また、いろいろなデザインに関する情報を積極的に仕入れて、面白いと思ったものは、どんどん上司に見せるようにしましょう。そして、上司が「こんなデザイナーはいかん」と説教を始めたら、とにかく有り難がって拝聴すること。それを繰り返していると、「あいつは新しいものに詳しい」「やる気もある」と、徐々に信頼が得られるようになります。
 そうなればしめたもの。独立してからも何かと師匠風を吹かせ、呼び出されたりもしますが、それは「好かれている証拠」と考えて諦めて下さい。
A:判りました(笑) ありがとうございます。

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17回目 軍人タイプ上司とのつきあい方

 今回の相談者は、警備保証会社にお勤めのSさん(.30才)です。
S:2年前、中堅の警備保障会社に、経理担当として就職しました。それまでは、経理と言っても事務の女の子しかいなかったそうですが、大手の下請けとして仕事が増えたのを期に、社長の意向で採用されました。
 私が入って、帳簿は整ったのですが、私が経営方針の変更を提案しても、社長からは「それはダメだ、できない」という返事しか返ってきません。自分の経験でダメと言っているらしいのですが、どうダメだったのか、どんなまずい事が起きたのか、それはなぜなのか、具体的な話はしてくれません。その為、どう改良すれば良いか、考えようがないのです。そのくせ、もっと別の手は無いかとせかされ、困っています。
岡:今まで、あなたの意見は、全部、受け入れられなかったのですか?
S:いいえ、いくつか小さな変更は受け入れられたのですが、それでは、抜本的な解決にならず、仕事は増えたのに利益は上がっていません。経営方針を変えるというのは、何の被害も無い簡単な変更だけでは不可能です。それなのに、私がいくら説明しようとしても、社長は自分の会社の経営状態を具体的に知ろうともしてくれません。
岡:社長さんは、いわゆる一代で会社を築いたと言うタイプですか?
S:そうです。もともと警備員のバイトから会社を興し、バイタリティだけで会社を今の大きさにまでした人です。その為、自分のやり方にものすごく自信があるようです。「警備会社が食いっぱぐれる筈はない。一番、将来安泰な業種だ」が持論ですが、このままでは大手の下請けで終わりそうなんです。
岡:なるほど、あなたの上司は、自分の実力に自信がある軍人タイプのようです。特に「警備」という仕事に思い入れがあるわけではなく、「食いっぱぐれがない業種」と捉えて評価しているあたりにも、それがよくあらわれています。自分に自信のある軍人タイプの上司の場合、どうしても命令が結論だけになりがちです。「自分の判断に狂いはない」という自信と「部下はオレの言うとおりに行動して当然」という考え方の為でしょう。
S:ええ。でも、せっかく出した改革案も、これは出来ないとだけ言われたのでは、本当に途方に暮れてしまいます。
岡:あなたは、上司の指示に、結論ではなく、目的を求めるタイプですね。その目的への解決法を、いくつか自分で考え出して、比較検討する。その為にできるだけデータを集め、最も効率の良い方法を予測することに喜びを感じるタイプ。つまり、典型的な学者タイプですね。
S:よくお判りで(笑) それぞれの解決案の、可能性や危険性、具体的な予想を予めわかっていてもらえれば、最終的に社長がどれを選択してくれてもいいのです。彼が経営者なのですから。ただ、きちんと理解した上で判断して欲しいのです。その為に自分がいるのだと考えています。
岡:これが、王様タイプの部下の場合は、全然違います。ダメを出されても深くは考えません。相手を尊敬している場合は、自分にはわからない深謀遠慮があるのだろうと思いますし、見切っている場合は、どうせ大した理由ではなかろうと考えるだけです。もちろん、実際に経営が上向きにならなければ、社長の機嫌もうんと悪くなるわけですから、良くなるであろうと予測されるものを考えはしますが、最終的には社長が気にいる案、というのが基準になります。
 軍人タイプ同士の場合は、権限の線引きの問題になります。まずは上司から与えられた権限や情報だけでわかる範囲の改革案を出します。これではダメだと言われれば、では、自分はこの会社のどの部分を変えてもいいのか、権限を明確にしてくれ、という話になります。例えば「集金システムに関しては自分に任せてくれる」というのなら、その部分で経営努力をして見せましょうという事です。
 これが、対角線の職人タイプだと、どうでしょうか。職人タイプの経理にとって、本来あるべき健全な会社の経営状況というのが、まずはっきりと存在します。自己資産と借り入れ金の比率。売上高と資本金の比率・・・こういった数字を理想に近づける事こそが、正しい経営なのです。が、もちろん、この理屈を社長にぶつけるだけでは、社長は「そんなのは無理だ」と言うだけでしょう。
 学者タイプのあなたが真似るべきなのは、あなたの優位、職人タイプです。あなたがつい取りがちな「もちろんどの方法も一長一短ですが」といった合理的態度は、軍人タイプの上司の不信を買うだけです。それよりも「経営というものは、こうやって当然なのに、こんなことをしていたとは、何と非常識な」といった態度の方が、はるかに効き目があります。
S:ああ、たしかにそうですね(笑)
岡:軍人タイプを動かす為には、まず、優位に立つ。これが大原則です。あなたの場合は、豊富な経理の知識で優位に立つわけですね。
 そういった対話の中で、あなたは上司から、なぜ今までこうしてこなかったのかを根堀り葉掘り聞き出しましょう。その上で、あなたが一番妥当だと考えられる改革案を提案します。もちろん、これ以外、考えられないという調子の方が望ましいです。ただし、ずいぶん経営が行き詰まっているので、手遅れかも知れないが、といった逃げを打っておくこともお忘れ無く。あなたの理想の仕事の仕方とは程遠いですが、これが一番お互いに良い結果をもたらすと思われます。

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18回目 学者タイプ上司とのつきあい方

 今回は、38歳のSE(システム・エンジニア)、Mさんの悩みです。
M:一昨年まで、SEとしていくつかの会社を転々として来ました。が、自分ももう歳です。妻の薦めもあり、かつての会社の仕事仲間、Bさんの紹介で中堅メーカーN社に就職しました。自分としては、SEとして採用されたつもりだったのですが、配属されたのは生産管理本部。仕事は、新人の教育・管理という役割でした。Bさんが、直接の上司になりました。
 正直、待遇的な不満はありません。しかしなぜBさんがこんな配属をしたのか、SE一筋だった僕に、何を期待しているのかわからず、不安なのです。Bさんは僕に何を望んでいるのでしょうか?
岡:あなたは、SEとしてのプライドをしっかり持っていらっしゃる。自分の技能に自信のある職人タイプの方ですね。
M:はい、自分でもそう思います。人を管理するより、自分一人で納得できる仕事をしたいタイプだと、自分でも考えています。
岡:新人の教育は、いかがですか?向いていないとお考えですか?
M:それが案外、楽しいのです。確かに仕事自体は大変です。学校を出ただけの何も知らない新人に、一から色々教え込まなければならないのですから。けれど、さすがに大手だけあって、新人と言ってもみな、学歴も高く、粒ぞろいです。ハングリー精神には欠けますが、まじめで、熱心に私の言うことを聞いてくれ、どんどん成長します。自分でも意外なのですが、新人達がかわいくて仕方ないのです。
岡:予想外だけれど、大変適した仕事だったわけですね。職人タイプの人間は、下の者をかわいがる、という特性をそなえています。上司のBさんは、鋭い観察であなたの隠れた適性を見抜いていたのかも知れません(笑)。そう考えると、Bさんは、人材の配置による管理を得意とするタイプ、つまり、学者タイプの優秀な上司でしょう。
M:ええ、僕もそう思っていました。けれど自分としては、やはりSEとして、きちんとやっていくのが本筋ではないか、と思うのです。新人教育がいくら楽しいと言っても、自分が楽しいのと、才能を生かしているかどうかは別物です。その件に関して、上司に話しても「今はこのままで上手く行っているのだから」と言うばかりです。上司が、自分に何を求めているのか、実感できずに不安なのです。
岡:学者タイプの上司としては、むしろ、あなたの悩みがさっぱりわからないでしょう。自分の判断で、あなた自身も気付かなかった能力が引き出せた。その仕事で、会社も助かっている。現実的には、すべてOKに見えます、むしろ絶妙の人事にご満悦、といった所でしょう。結局、あなた自身の不満を具体的にBさんに示さないかぎり、問題は動きません。
 これが、劣位にあたる軍人タイプの部下の場合は、簡単です。部下の不満は、常に具体的で対処しやすい形をとります。その時の給料や地位、あるいは将来性の問題、というわけです。たとえ、最初は給料が安くても、このまま管理職としてやっていけば、やがてはシステム・エンジニアとしてキャリアを積むより出世できるという、Bさんの説得も有効でしょう。
 同じ学者タイプの場合は、むしろ、今までと質の違う仕事ができることは、「新しい自分の可能性を知る」という何よりの喜びになります。こういった意外な仕事には、積極的に取り組む事と思います。この組み合わせの場合、むしろ「意外」の方に気が行きすぎて、実益をとりこぼすことがあるかもしれません。
 これが、対角線にあたる王様タイプの部下の場合は、どうでしょうか。おそらく、システム・エンジニアとしてやっていきたいという情熱をストレートにぶつけてみたり、「このままでは不安だ」と相談してみたり、自分をさらけ出してわかって貰おうとするでしょう。こういう「感情から出た依頼」に弱いのも学者タイプの特徴です。
M:では私は、どうすればいいのでしょう?
岡:あなたには、職人タイプの優位にあたる王様タイプのやり方をとることをお薦めします。学者タイプの上司は、相談にのるのが大好きです。同じ感情的な言葉でも、単なるグチにはたいへん冷たいですが、「自分の知恵を借りに来てくれる」のは、何よりの快感です。
 そこで、あなたはできるだけ具体的に、あなたの悩み、迷いを上司に話してみましょう。自分が教育係として、会社にどれくらい寄与しているのか、という疑問。自分はもう、システム・エンジニアとしての働ける場はないのか。自分のやる気が仕事に反映されない不安。これらの問題を具体的に、上司の意見、判断を聞いてみましょう。
 次に、あなたが自分にとってシステム・エンジニアという仕事がどれほど重要だと考えているのか。一生の仕事と心に決めているほどなのか。仕事の範囲を広げるとしたら、どの方面なら、自分の仕事と考えられそうか。それはなぜか。といったことを、事細かに話してみましょう。そうして、自分は、どうしていけば最終的に幸せな人生を送れるかを、上司に相談してみます。
 ポイントは「自分の幸せは、あなたの判断に委ねました」という感触を相手に持たせることです。そうすれば学者タイプ上司は、会社の損得と同様に、あなたの利益も加味して考えてくれるでしょう。
M:ああ、そういえばあの人はそういう依頼に弱いです(笑)



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