『人生の取り扱い説明書』連載第二十七回〜第三十一回
ン1997-1998.Toshio OKADA
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27回目 軍人タイプ上司についての悩み相談1

 今回の相談者は、TV番組制作会社に勤めるH美さん(33歳)です。H美:実は今、地方局のドキュメント番組制作を任されているのですが、そこの女性プロデューサー、Tさんがバカで困っています。
岡:T女史のどんなところがバカなんですか(笑)?
H美:とにかく作品作りに関してバカなんです。前と同じやり方で、の一点張りで。それも時間がないから、とか、前のは局の評判が良かったからとか、内容と関係ない理由ばかりなんです。
岡:でも評判のいい番組はそのままで、評判の良くない番組は改良するという考え方は、作品作りの基本的でしょ?
H美:でもそれにも限度がありますよ。今回、私がやったノンフィクションシリーズは、色々な方法を試してみようというのが、企画の中心なんですよ。それは稟議でもOKが出たんです。ところがシリーズの第一弾がたまたま評判よかったんですよ。すると彼女、ずっと同じように作れって言いだしたんです。もう本当に何を考えているのか、判りません。
岡:なるほど、あなたは色々試してみたかったのに、できなかったんだ。
H美:だからそれが今回の企画の目玉だったんですよ。今、ドキュメントなんてオジサンしか見ないんです。意外な題材を、これまでと違う角度、手法で作って放映してみないことには、もっと広い層を開拓できないじゃないですか。色々な作品の中から、これは評判は良かった、これは今一つだった、とかを観察すれば、ヒットするドキュメント番組のあり方も見えてくるんじゃないですか。
岡:で、そういう「いろんな実験をする」っていうのは、OKが出ていた?
H美;そうです。ダメならダメと会議の時に言ってくれれば、そのつもりで段取ったのにと思うと、腹が立って、腹が立って・・・
岡:(笑)あなたは、典型的な学者タイプですね。段取りを狂わされてそんなに怒るのは学者タイプだけですよ。あなたの作品作りに対する考え方もパターンです。まるで実験のように考えている点。実験結果から何かを知ろうとする態度。その何かを知りさえしたら、全てうまくいくと考えている基本姿勢。どれもが、あなたは学者タイプと教えてくれます。
H美:そうです、そうです。毎回、人生のトリセツを読みながら、自分は絶対に学者タイプだなと思っていました。(笑)
岡:ありがとうございます。(笑)この連載のファンって、学者タイプが多いそうです。他のタイプの人たちは、このコーナーが自分に役に立って初めて認めてくれますが、学者タイプだけは、例え他人事であっても、興味を持って読んでくれるのです。
H美:ますます、私は典型的ですね。 自分のまわりの人間を、4つのタイプに当てはめて遊んだりするのも好きで、よくやってますよ。
岡:学者タイプは、観察が好きで、得意ですからね。では『トリセツ』の優秀な読者であるH美さんの目から見て、T女史は何タイプですか?
H美:間違えるとみっともないなぁ(笑)でも絶対軍人タイプです。
岡:では、学者タイプの鋭い観察眼で捉えた根拠を具体的に教えて下さい。
H美:はい。とにかく、彼女は自分が局のプロデューサーで、私が下請けの制作だというのをいつも態度にあらわします。会議の決定を勝手に変更するのも、言うことをきいて当然だと考えているからです。変更の伝え方も「相談があるから」と呼び出すのではなく、電話一本、反論を許さない高圧的な態度で「こうしてちょうだい」と指示を出すのです。
岡:それは誰に対してもですか。
H美:相手が私でなくても、うちみたいな会社に対してはそうみたいです。特に男性には評判が悪く、本人はキャリアを気取っていますが、影ではお局サマ扱いですよ。
岡:プロデューサーとして、局の上からの評価はどうですか?
H美:局での評価は高いようです。地方局だから人材もロクなのはいませんし、あれだけ上のことしか考えていなかったら当たり前でしょう。
岡:上のことしか考えていないと言うと?
H美:彼女の頭にあるのは、上司の指示だけなんです、それも、予算はいくら、スケジュールはいつまで、視聴率は5%以上といったことです。で、私たちの方から新企画を出しても、少しでもリスクがあるといやがります。新しいことをすれば失敗する可能性も増え、段取りが悪くてスケジュールが押すかも知れません。またそれをお金で巻きなおすことも必要になるかも知れません。そういうことすべてを排除して、番組を作りたいらしいのです。
岡:なるほど。そうやっていれば、大ヒットも出ないかわり、ミスもない。 絶対に負けないシフトですね。実に軍人的な発想ですねぇ(笑)。
H美:ああ、やっぱりそうだったんだ。そうやってキャリアを積んでいけば、確かに評価はあがりますよね。でもTV番組って工場製品じゃないんです。毎回、同じようなものを作っていれば、すぐ飽きられるに決まっています。彼女は、人気がないのは私たちの責任にして、また新しい会社に発注すればすむでしょうが、使い捨てられるこちらはたまりません。でもクリエイティブな欲求なんてほんのひとかけらもない軍人タイプには、こんな簡単なこともわからないのでしょうか?
岡:いえいえ、軍人タイプにもクリエイティブな欲求はありますよ。


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28回目 軍人タイプ上司についての悩み相談2

 H美さんはTV番組の製作会社に勤める制作ディレクター。彼女の悩みは、局の女性プロデューサーT女史。作品の質を気にせず、会議で決めたことも無視して、とにかくスケジュールや予算優先の制作態勢を取ろうとするT女史に、学者タイプのH美さんは不満いっぱいです。
H美:軍人タイプって、クリエイティブな仕事には向いてないですよね?
岡:それは、おもしろい着眼点ですね。僕も多くのクリエイターたちと仕事をしてきましたので、いろんなタイプを見てきました。確かに、人数の比率で言うと、軍人タイプのクリエイターは少ないですね。
H美:多いのは?
岡:その対角線にあたる職人タイプですね。
H美:やっぱりそうだと思った!前の連載で、岡田さんはアニメスタジオは2種類あるけど、どちらも職人タイプだと言ってましたよね。
岡:ええ、会社を4タイプに分類するのは少し無理があるけど、あえて言えばそうだと思いますよ。
H美:つまり、クリエイターには職人タイプが向いている、軍人タイプは向いていない、ということになりますよね?
岡:確かにクリエイティブな作業と職人タイプの欲求は相性がよいようです。まず、職人タイプのプリミティブな快感は「できた!」です。この「できた!」は、自分で実際に思い通りにできたことの喜びです。
 こんな風に絵が描きたい→できた!、こんな番組が作りたい→できた!といったものですね。本人にとってクリエイティブな作業は、いかに自分のイメージ通りのものを作るかという挑戦になります。
H美:う〜ん、私とは全然違うなぁ。私には「こんなものを作りたい」という強固なイメージがあるわけではないんです。それより、いろいろな手法を組み合わせることによって、意外な結果やおもしろいものが生まれるというやり方が好きです。
岡:それはもちろん、多分こんな仕上がりになるのだろうな、と予想しながら、ということですよね。
H美:そうです。予想があたるとうれしいですね。でもはずれたからと言って、悔しくはないです。なぜ外れたかを考えて、次の予想に役立てますから。
岡:本当に科学者の実験ですね。学者タイプの基本的な快感は「わかった!」ですから、自然とそうなるんでしょうが。
H美;やっぱりこういう作り方は邪道なんでしょうか?
岡:いえいえ。クリエイティブには「こうでなくちゃならない」、という決まりなんかありませんよ。あなたのような学者タイプのクリエイティブも立派なクリエイティブです。職人タイプのクリエイターが聞いたら、魂がこもっていないと怒るでしょうが(笑)
 気にすることはありません。たとえば小室哲哉は、学者タイプのクリエイターです。彼自身、新人を売り出すのは、自分にとっては市場実験だと明言してます。
H美:コムロといっしょなら、ちょっと安心です(笑)
岡:実は、王様タイプのクリエイティブもまた、違うんですよ。
H美:確か岡田さんは王様タイプでしたよね。
岡:そうです。王様タイプの快感を無理に一言で言うなら「もてた!」です。性的な意味でなく、好かれたり、かまわれたり、頼られたりした時に感じる快感です。「嫌われた!」という不快感と反対のものと思ってくれればいいです。そういう「もてたい」僕のクリエイティブは、やっぱり「もてる」手段になります。
H美;自分の作品を、みんなが好きだと言ってくれるのがうれしい、ということですか。
岡:そうです。そう言ってもらう為だけに作っているようなものです。 あわよくば「こんな作品を書く岡田さんってステキ!」とも言ってもらいたいと考えていますね。(笑)だから僕は、自分が作りたいという理由だけでは、絶対作品が作れません。みんなが喜んでくれそうな作品しか作れない。エンターティメントの王道を行っているわけです。が、職人タイプの目から見れば、他人に媚びた作品ばかりを作っているということになりますね。
H美:そう考えると、クリエイティブにも色々あるんだと実感できます。職人タイプの批判も気にならなくなりますね。
岡:そうです。自信を持って下さい、僕も自信を持って、もっと人気が出そうな本とか、もっと賢そうに見えてほめられそうな本とか、考えてますから、(笑)
H美:では、軍人タイプはどうなんでしょうか。
岡:もちろん、軍人タイプにも軍人タイプなりのクリエイティブがあります。ただ、さすが職人タイプの対角線に位置するだけあって、王様タイプや学者タイプ以上に、日本では理解されにくいようですが。
H美:軍人タイプのプリミティブな快感は「勝った!」でしたよね。
岡:よくできました!(笑) 当然、軍人タイプはクリエイティブな活動も、勝つ為です。では、勝つためのクリエイティブを考えてみましょう。


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29回目 軍人タイプ上司についての悩み相談3

 相談者・H美さんの悩みは、地方局の女性プロデューサーTさん。作品の質を気にせず、会議で決めたことも無視して、とにかくスケジュールや予算優先の制作態勢を取ろうとするTさんは明らかに軍人タイプ。軍人タイプは「作家=クリエイター」には向かない、というのがH美さんの疑問です。
岡:サラリーマンの世界なら課長、部長といった役職や、勤めている会社自身の格で、自分が他の人と比較してどのあたりにいるか良くわかります。実業家なら、自分の試算を数字で把握できますね。
H美:そうなんです。Tさんも、そういうことには敏感です。作品内容なんかどうでもいいけど。失敗して上司からからにらまれるのは絶対イヤなんです。そんなのTV屋じゃありません。やっぱり軍人タイプって、クリエイターになれない人ばっかしなんですね。
岡:う〜ん、では具体的にTさんの仕事ぶりはどうですか? 上司の評価が高いのは、失敗していないからだけですか?
H美:いいえ、それだけではありません。Tさんは他の人より多くの本数の番組を抱えています。それをそつなく確実にこなしているというのが、最大のポイントのようです。
岡:なるほど。軍人らしいがんばり方ですね。それで思い出したのですが、僕の古くからの知人で小説家の女性がいます。彼女は典型的な軍人タイプです。彼女がまだプロデビューする前、編集社に売り込むための原稿を一生懸命書いていた頃の話をしましょう。
 その頃の彼女のごきげんは、その日、原稿用紙に何枚分書けたかで決まるようでした。
「今日は40枚も書けたから嬉しい」「今日は5枚しか進まなかったから、がっかり」と、よく周囲にも語っていました。
 うまく書けたとか、いい表現ができたとか、いいストーリーが思いついたとかではないのです。当時、僕にはその気持ちがさっぱりわかりませんでした。なんで「何枚、書けた」というのが、励みになるんだろう?そんな気持ちで本当に小説家になんかなれるんだろうかと思ったこともありました。ところが今や彼女は立派な小説家、それも権威ある賞を受賞した、大変な売れっ子です。
H美:そう言えばTさんも、自分が最盛期は15本もまわしていて大変だったと、自慢します。
岡:そういう大変な状況でも、弱音を吐かずがんばるのが、軍人タイプですね。それに、数をこなす、とにかく完成させるということは、クリエイティブにはとても大切なことなのですよ。僕の知っている限り、作家になりたいと言う人間の99%までが、実際に最後まで小説を書けないであきらめてしまうのです。
H美:言っているだけで、実際には書かないということですか?
岡:そういう人が90%ですね。残りの10%の人は、小説を書き始めます。が、完成できる人はその中のたった一割です。みんな嬉しそうに、これからこういう風におもしろくなるのだ、と口だけは元気なのですが、けっきょく挫折してしまうのです。
 編集者の人もよく、実際に長編小説の分量の文章さえ書ければ、たいていの人はデビューすることができる。実は、それができる人が、本当にいないんだ、というグチをこぼしています。
H美:そんなに小説を書くのは大変な作業なのですか?
岡:例えば職人タイプだと、自分の思うような文章でないと、書くのを断念する場合が多いのです。途中で筆が止まってしまうんですね。
H美:職人タイプも。いいところばかりではないのですね。
岡:そりゃそうですよ。それに、職人タイプは書き直しに弱いんです。せっかく編集者がプロの目で、商品にするためにアドバイスしているのに、反発したり、納得しているのかと思うと急に書かなくなってしまったりします。書き直そうとしたら、また違う話になったとか言って、まるまる違う小説を書いてしまい、また編集者と揉めたり…。
H美:私の業界でそういうリテーク指示に逆らったら、生きていけませんよ。う〜ん、職人タイプって、あんがいプロには向いていないんですね。
岡:でも王様タイプだって、いろんな人が注目してほめてくれないと、書き続けるのが難しいという欠点がありますしね。
H美:みんな、一長一短なんですねぇ…。
岡:そうです。特に共同作業の場合、あらゆる理由で作業は滞りがちになります。学者はすぐに新しいことをしたがるし、職人は自分のやりかたにこだわる…
H美:王様は気分屋ですぐに気がそれる(笑)
岡:(笑)そのとおりです。こんな集団にモノを作らせるなんて、不可能に思えるでしょう?しかしそこで頼りになるのが軍人タイプ、彼がみんなの進行役、すなわち強力なエンジンの役目を果たしてくれるんです。
H美:なるほど。でもそれなら彼女は、なんで会議で決定したことをいつもひっくり返すんですか?
岡:さて、その「会議」が、クセモノなんですよね…


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30回目 軍人タイプ上司についての悩み相談4

 学者タイプのH美さんの悩みは、女性プロデューサーTさん。彼女はせっかく会議で決めた結論を、現場で勝手に変えてしまいます。H美:もう絶対にイヤです。反射的に頭にきちゃう。仕事自体のヤル気までダウンするぐらいです。
岡:なるほど。でも、その「会議」っていうのも、4つのタイプによってニュアンスが違うんですよ。
H美:軍人タイプは、会議で決めたことを破るとか?
岡:まさか(笑) ただ僕の経験ですが、軍人タイプには「会議なんかする暇があったら、少しでも作業を進めろ」と考えている人が多いんです。
H美:でも、話し合ってニュアンスを確認を取ったり、部署ごとの作業を割り振ったり、バランスを調整したりということは必要でしょう?
岡: 学者タイプの人にとっての会議は、後でトラブルが起きたり、やり直しにならないための、「作業手順の確認」という意味があるようですね。
H美:ええ。まちがったやり方で作って、ムダになるのだけはイヤですから。たとえ自分が全然やりたくない企画内容に決まってしまっても、キチンと決まって、それを変更されないことが一番安心できます。
岡:ところが、王様タイプの会議の場合は、みんなのやる気をあげることが、一番の目的なんです。僕が会社を経営していた時代のやり方ですが。
H美:えっ、そうなんですか。
岡:まず関係ありそうな人は、みんな呼びます。そこでみんなが常日頃、不満に思っていることを全部、出してもらいます。でも、実はこれを具体的に解決するのが目的ではありません。第一、簡単に解決案が見つかるはずもないし、そんな会議で言われるまで、誰も気付かなかったなんてことは、まずありませんからね。そうではなくて、一人一人の不満をみんなで聞いてあげることによって、連帯感を高め、結果的にスムースに進行するようにしたい、というのが王様タイプの考え方なのです。
H美:う〜ん、意外です。あんまり違うのでびっくりしてしまいました。それは、会議というより、接待に近いんじゃないですか?
岡:まぁ、そうかもしれませんね(笑) ごはんを食べながらという会議も多かったですし。みんなの間でストレスがたまってきた気配を感じると、会議を開いてみようか、というふうに自然と考えていました。その結果、みんなの顔が明るくなると、そろそろ会議は終わりです。具体的な解決策なんて気になりませんでした。王様タイプにとって会議とは、「みんなが楽しく作業できるための儀式」みたいなもんですよ。
H美:軍人タイプの人にとって、会議はどういう意味を持つのですか?
岡:僕がアニメスタジオをやっていた時、僕といっしょに経営者をやってくれていたIさんが、軍人タイプでした。
H美:Iさんも、会議で決めたことを無視しましたか?
岡:いや、なにしろ僕は、会議では何も決めませんでしたから(笑)。とにかくIさんは僕が開く会議は、本当に無駄だと考えていたようです。よく、会議中に居眠りしていましたから。
H美:それはヒドい。
岡:Iさんは僕に、会議に時間を使いすぎるといつも文句を言ってました。今思えば、何も決まらない会議が延々と続くのです。軍人タイプや学者タイプの人には向かない会議だったと思いますよ。
H美:Iさんの開く会議はどうですか?
岡:Iさんは会議を開かないんです。決める必要があることは、直接、関わる人一人一人と簡単に話し合います。その場で反対されたり不満が出ると、即座に変更し決定します。それでおしまい。だから決断が早くて、チャンスを逃がしません。軍人タイプにとって大切なのは、過程や理由でもなく、やる気でも意義でもない。素早い解答と実行だけが大切なのです。ですから当然、最短距離で正しい結論に行き着く方法を選ぶんです。
H美:話し合いにも、説明にも、価値を見いださないということですか。
岡:それ自体にはあまり価値を感じないようですね。もう一つ面白いのは、軍人タイプとの会議では、無意識に相手を言い負かそうとするんです。だから、会議として成立しにくい。
H美:えっ、どういう意味ですか?
岡:例えば、僕が会議で「みんな今の問題点を出してくれ」と言います。僕としては、みんなが不平不満を吐き出してほしいと思って言っているのです。が、Iさんは、今スケジュールがどれくらい遅れているかとか、外注のスタッフがこんな理由で足りないとか、具体的な数字や名前を挙げてバンバン並べ立てます。そして、勝ち誇ったように「どうすんだよ」と発言をしめくくるんです。
H美:それじゃぁ、岡田さん、困りますよね。
岡:そうなんですよ。みんなの顔は一気に真っ暗、最低のムードになってしまうんです。そこで、僕はあの手この手を使ってムードを盛り上げます。僕としては、みんなの顔が明るくなるまで会議をやめれらない。当然、会議は長引きます。ところが、その頃には僕の苦労の元を作ってくれたIさんは、居眠りをしてるんですね。(笑)
H美:あっ、そう言えば、Tさんの上司は王様だ!
岡:ではそれについて詳しく聞かせて下さい。


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31回目 軍人タイプ上司についての悩み相談5

 学者タイプのH美さんは、軍人タイプの女性プロデューサーTさんに悩まされっぱなし。問題は、会議中に存在するようです。
岡:では、会議の様子を具体的に話していただけますか。
H美:いつもの会議は、Tさんと彼女の上司とが出席します。Tさんは、私の企画案の不安な部分を指摘するばかりですが、その上司は私の話をずっと熱心に聞いてくれます。いろんなアイデアを出してフォローもしてくれます。彼がいるだけで会議は和やかなんですよね。
岡:ふーん、その上司の、他の人の評判はどうですか?
H美:同僚なんかは「調子だけよくて頼りない」と言います。確かにその時は面白がってくれるのですが、次には忘れてることもよくあるし…。
岡:でも、それに関しては気にならない?
H美:もちろん!前に決めたことを変えられるよりは、ずっとマシです。
岡:その上司のタイプは何でしょうね。
H美:確実に王様タイプですよ。会議でも明るくて、企画を面白がってくれたり、今までうまくいっているところを指摘してほめてくれたりしますし、何よりもいつも雰囲気を盛り上げようとしています。
岡:わかりました。今回の悩みを解決する鍵は、その上司にあるようですね。何しろ彼は軍人タイプTさんの上司です。少なくとも彼女は彼からの直接の命令には逆らえません。
H美:じゃ、彼に直接、言いつければ…
岡:いやぁ、Tさんにとって、自分の頭越しという印象になり、ものすごく心象を悪くしてしまいますよ。それより狙い目は、会議の場です。
H美:でもその人っていつも「それはもうちょっと考えてから」とか「社内で意見をきいてみて」というふうに、結論を延ばすんですよね。
岡:彼にとって、会議は不満を聞き、やる気をあげる場ですからね。会議の席上で約束を取り付けようとしても無意味ですよ。
H美:では、どうしたらいいのでしょう?
岡:大切なのは、彼があなたの企画をおもしろがって、どんどんやりたいという気持ちにさせることです。
H美:いつもそれなりに面白がってくれていると思うのですが。
岡:まだまだ足りないんですよ。王様タイプが企画に対してやる気を出すためには、その企画に自分のアイデアが入っていないとダメなんですよ。アイデアの内容は何でもいいのです。「この部分のここをこう変えた方がいい」とか「あの場所を使おう」とか。
H美:ああ、なるほど。
岡:とにかく彼が会議で「ここはこうしたら」と意見を言ったらチャンス。それをまず、しっかり面白がること。で「そのアイデア頂きます!」と実際の作品に必ず反映させること。そうすると彼にとってあなたの企画が自分の企画に思えるようになります。王様タイプにとって、他人の作品ほど、どうでもいいものはなく、自分の作品ほど大切なものはないのです。ポイントはいかに自分の作品だと思わせるかだけなのです。
H美:それくらいなら出来ると思います。
岡:彼が「これは自分の企画だ」と思い込みさえしたら、Tさんが勝手に変えないように見張ってくれますよ。それどころか、予算やスケジュールも有利になるよう、社内に働きかけてくれます。Tさんも「これは上司の采配だから」ということで、自然と手を出さなくなります。
H美:そんないいことづくめなら、何が何でもがんばります。でも、まず彼がおもし
ろがってくれなくては、話が始まりませんよね。
岡:そこで、もう少し積極的に彼の好みを知るために、できるだけいっしょに飲みに行きましょう。そこで、どんな映画好きかとか、今まででどんな仕事が気に入っているかとか、いろいろ聞き出すのです。
H美:わかりました。単に飲みに行くだけだと、つい時間の無駄のような気がして億
劫なのですが、それなら積極的にできそうです。
岡:相手を観察したり、相手の話を興味を持ってきくのは、学者タイプの人の得意技ですからね。ここで注意ですが、その時Tさんも忘れずに誘って下さい、決して仲間外れという印象を持たれないように。そうでないと、Tさんは上司に自分の悪口をいっているのでは、と勘ぐりますよ。
H美:わ〜、こわい。(笑)これ以上嫌われてはたまんないです。
岡:そうやって聞き出した好みを、次の企画に反映させます。といっても、別にまるまる彼の好みにする必要はありません。基本はあなたのやりたいようでいいのです。ただ、ところどころのディティールに、その上司が入り込みやすい、いわば「スキ」を作ってあげるわけです。
H美:気がついてくれるといいのですが。
岡:気がつかない時は、口で言っちゃえばいいのです。「この前のお話、お借りしてみました」とか。
H美:すると喜んでくれるんですね。
岡:いえいえ。「これは、こういう意味じゃないんだよね。こうした方がいいよ」と得意げに改良案をいってくれます(笑)
H美:(笑)で、それをまた、ありがたく頂くわけですね。
岡:その通り!これであなたの幸せは保障されますよ。
H美:本当かなぁ(笑)。でもありがとうございました。



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