『人生の取り扱い説明書』連載第三十八回〜第四十三回
ン1997-1998.Toshio OKADA
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38回目 人を動かす方法1 総論

 企画のプレゼンテーションや企業の交渉といった大きな事から、ちょっとした頼み事や合コンのナンパまで、人生の様々な場面で必要なのが人を動かすこと。世の中には、あの人に頼まれるとついつい応じてしまうという頼み上手な人と、つい断りたくなる頼み下手な人がいます。反対に、自分にとって頼みやすい相手と、頼みにくい相手もいます。
 自分では、一生懸命気を使って、相手の機嫌をとり、丁寧に頼んでいるつもりなのに、なぜかうまくいかない。こういう場合、あなたの気遣いが空回りしている可能性が大ですね。
 なぜ、空回りしてしまうのでしょうか?
 それは普通、自分がされて嬉しい気遣いやサービスが、相手にとっても嬉しいものと、ついつい無意識のうちに考えてしまっているからです。
 が、ここで「とりせつ式思考法」を導入して考えてみれば、王様タイプの人が喜ぶ気遣いと、学者タイプの人が喜ぶ気遣いが同じはずがないことは、すぐわかります。
 例えば僕は王様タイプ。ものを頼まれるときは、FAXや電話より、顔を見て世間話でも交えながら楽しい雰囲気で迫られた方が弱いタチです。つまり接待やご機嫌とりに弱いわけです。
 反対にうちの嫁さんは学者タイプ。顔を合わせての保険だの新聞だの子供の教材だののセールスにすごく強いです。聞きたくないときは剣もほろろに追い返します。ちょっとシステムや内容に興味がある場合、いろいろと話をさせて相手に期待させておいてから、平気でにっこり断るという大技も使います。彼女にいわせれば、「徒労に終わる説明も、相手が支払うべき経費」だそうです。僕には一生マネが出来そうもありません。
 つまり、相手のタイプによって、攻め方を変えるべきだというのが、基本原則です。
 それぞれのタイプでどうすべきかは、次回から詳しく説明しましょう。その前にちょっと注意していただきたいのは、目の前にいる人の心をいくら動かせても、それだけではダメだということです。
 異性に交際を申し込む場合でも、みんな自分自身だけで判断する人なんてほとんどいません。誰もが相談する相手、自分の考えを確認する友達が何人もいるものです。
 会社にプレゼンする場合などは、担当の人がいくらやる気でも、決定権は上司にある場合が多いのです。それどころか取締役会に諮ってからということも珍しくありません。大きな企画であればあるほど、多人数の人間の心を動かさなければならないのです。僕のまわりでも「担当があんなに乗り気だから、てっきりいけると考えていたのに、結局ダメだった」という話をよく耳にします。これは、本人と担当のタイプが同じだったり、担当のタイプが劣位だったりする場合におこりがちのようです。
 こういうことを防ぐ為には、企画立案やプレゼン資料製作段階から、誰もが気に入るような企画を作る事が大切になります。
「そんなこと、わかっているよ!でもそれが難しいんだよ」とお考えならご安心下さい。岡田式で考えると問題は実に簡単になります。各タイプ用に、それぞれ魅力的な部分を作成しておけばいいというだけのことですから。
 では、次回からは具体例でご説明しましょう。

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39回目 人を動かす方法2 対王様タイプ

 自分では、一生懸命気を使って頼んでいるつもりなのに、なぜかうまくいかない場合があります。それはあなたの気遣いが相手のタイプに合っていないからです。
 それぞれ4つのタイプには、こう頼まれると弱い、というポイントがあります。各タイプのコツさえつかんでしまえば、あなたの人生が非常に運営しやすくなるでしょう。
 まずは王様タイプ。このタイプの基本的欲求は、「好かれたい」「嫌われたくない」です。当然、王様タイプへの頼み事は、本人への好意を積極的に表すことが基本になります。ちょっとした頼み事も、まずは楽しい世間話からが基本となります。
 企画を売り込みたい、契約を取りたいといった場合も、相手先の担当が王様タイプと考えられる場合は、担当のもとへ足繁く通うことが大切です。ただし、ごり押しは禁物。長居も禁物です。企画を通したくて来ているというより、その担当の人に会うのが楽しくて来ているというムードを演出すること。ちょっとしたおみやげや、最近仕入れたおもしろいうわさ話等を用意していくことも演出の助けとなります。肝心の話を出して、相手が乗り気でないようならすぐ切り上げ、相手の機嫌を損なわないうちに引き上げます。
 これを何度も繰り返すと、やがて相手の方から気を使って、仕事の話に水を向けてくれるようになる時があります。その時が押しのチャンス。情熱的に押してみましょう。王様タイプにとって、目の前の相手がいきなり不機嫌になって、自分への敵意をむき出しにすることほどイヤなものはありません。あなたのサービスがうまくいっていればいるほど、王様タイプはあなたの好意が敵意に変わることを避けたいと考えます。その為についつい、欲しくないものを買ったりしてくれるわけです。
 僕の嫁さんが勤めている会社にも保険勧誘のおばさんたちが足繁く通ってくるそうです。王様タイプの女性が「あんまり悪いから、入ろうかしら」などと言いだしました。さすが王様タイプです。(学者タイプの妻は無情にも「通うのが仕事なんだから気にするな」と止めたそうです)
 この他にも、王様タイプの特徴をつかんだ売り込み方がいくつかあります。
 例えば自動車のセールスでも「土日には御家族そろって試乗会」といった売り込みが、王様タイプには効果大です。家族みんなで遠足気分。メーカー側でもコーヒーを用意したり、アットホームな雰囲気を演出します。こうした雰囲気の中、奥さんや子供達の楽しそうな顔を見て、つい買ってしまうということが多いのは王様タイプです。それは自分が欲しいから買うのとは違います。王様タイプは「じゃ、これを買おう」といった時の、家族の嬉しそうな顔と、「買わない」と言ったときの、家族のがっかりした顔を思い比べて、つい買ってしまうのです。その時、欲しいのは、家族からの感謝や信頼、好意なだからなのです。
 企画や仕事の中に、華やかで楽しげなことが入っていると、ついやりたくなってしまうというのも王様タイプです。僕自身も、取材旅行や、合宿や飲み会でのブレーストーミングに弱いです。こういう楽しそうな仕事はつい、多少条件が悪くても引き受けてしまいます。いやぁ、タイプとは恐ろしいですね。次回は軍人タイプの攻略法です。

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40回目 人を動かす方法3 対軍人タイプ

 岡田斗司夫式「人生の取扱説明書」、今回は「人を動かす方法」の第3回目です。
 自分では、一生懸命、頼んでいるつもりなのに、どうしてもうまくいかない相手というのは、誰しもいるものです。
 でもそれは、あなたの頼み方が相手のタイプに合っていないからではないでしょうか?4つのタイプに対する頼み方のコツさえつかんでしまえば、あなたの人生が運営しやすくなること請け合いです。
 王様タイプに続き、今回は軍人タイプに対するプレゼンの方法です。
 軍人タイプの基本的欲求は「正々堂々と戦いたい」「でも負けたくない」です。
 軍人タイプにとって普段の頼み事、頼まれごとは、「借りになる」「貸しにする」とにカウントされます。つまり軍人タイプに頼み事をするということは、借りを作ることなのです。借りを作りっぱなしにすると、軍人タイプに対する信頼ががた落ちになります。やってくれた事柄の規模に応じたお礼の品物を返しておくことを忘れないようにしましょう。缶コーヒー1本から高価な品まで、金額や客観的価値をチキンと考慮したお礼が大切になります。金額的に妥当であれば、相手の好みにあうかどうか、センスがいいかどうかといったことには、あまり気を使わなくても大丈夫でしょう。また、たとえ、どんなに心を込めたお礼の言葉も、それだけでは意味を持たないことを忘れないように。
 同様に、普段から軍人タイプに貸しを作っておくと、貯金と同じでいざという時、たいへん役にたって重宝します。ただし、無意味な借りを作りたがる軍人タイプはいませんので、チャンスがあれば逃さないように心掛けましょう。ちょっと大きな頼み事の場合は、予めお礼を明確に提示しておく方がスムーズにことが進むと思われます。これをしてくれたら、かわりにこのチケットあげるから、といった具合です。
 極論すれば軍人タイプの人間関係とは、こういう「貸し借り関係」「上下関係」で出来ていると言えましょう。これを応用して、いい関係を保ってさえいると、自分が多少損をしても頼み事を聞いてくれるし頼りになるのが軍人タイプなのです。
 セールスの場合、何と言っても効果があるのが、「お得感」「安値感」です。定価の何割引きといった割引率にとても敏感です。安売り店にも詳しく、同じ商品を少しでも安く買うことが「勝ち」につながります。同じビデオデッキでも「秋葉原のどこそこでいくらで見つけた」といったことを一番誇りに思うのも、軍人タイプです。
 セールスの場合も、今なら安いとか、○○がついてくる、とか、といった責め方が効果的です。なぜ安いかという理由も、例えば量販店だからとか、簡易パッケージだからとか、はっきりしている方が喜ばれます。
 企画のプレゼンの場合も、他社に比べてうちの企画は、「ここがお得」「ここが優れている」ということが、明解であることがポイントです。同時に、その企画を採用することによって、担当の軍人タイプの利益が明解であること。その利益が見つけられない場合、どんなに情熱を持って売り込んでも、全く意味を持たないので、注意しましょう。
 では次回、学者タイプの動かし方です。

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41回目 人を動かす方法4 対学者タイプ

 岡田斗司夫式「人生のトリセツ」。今回は「人を動かす方法」の第4回目です。
 自分では、一生懸命、頼んでいるつもりなのに、どうしてもうまくいかない相手というのは、誰しもいるものです。でもそれは、あなたの頼み方が相手のタイプに合っていないから。それぞれ4つのタイプに対する頼み方のコツさえつかんでしまえば、あなたの人生が非常に運営しやすくなること請け合いです。
 王様、軍人タイプにひき続き、今回は学者タイプに対するものの頼み方、操縦法です。
 学者の基本的欲求は「知りたい」、不安は「わからない」です。
 従って、学者タイプへの頼み事は、「何をどうしてほしいか」「なぜ、そうしてほしいか」「そうしてもらえると、どうなるのか」といった事項を明解に伝えることが肝心となります。できるだけ具体的に、明解に伝えさえすれば、極力応えようとしてくれます。また、無理な場合も代案を考えてくれます。
 例えば、「ちょっと待って」といった簡単な頼みも、「何分、待って欲しいのか」「何をしたいから待ってほしいのか」「待ってもらったあと、どうしたいのか」といったことも具体的に伝えると、気持ちよく応じてくれる場合が多いです。無理な場合も、「何分なら待てる」とか、「○○さんならあいてるはずだ」といった代案も考えてくれます。
 反対に、細かいことはともかく、オレの頼みをきいてくれ、といった頼み方は一番効果が期待できません。「オレを信用して、何も聞かずに○万円貸してくれ」と言っても、呆れるだけなのが、学者タイプです。
 このタイプは、買い物にも慎重です。ほとんどアウトドアもしないのに、アウトドア・グッズだけは豊富に持っていたり、ジョギングするからと高いジョギングシューズを買って、3日坊主だったりということは、学者タイプの場合、あまりありません。もし不要な買い物をしてしまったら、本当に後悔し恥じ入るのが学者タイプなのです。
 学者タイプにとって魅力的なのは、自分の生活にとっていかに必要か、便利か、という理由が明解なことです。商品を捜すときも、このスペースに入る大きさであるとか、音響にこだわるから音だけはいいヤツとか、要求スペックが最初からはっきりしています。それよりいい商品を、大して値段が変わらないからと勧めても、必要ないからと断るのが学者タイプです。
 企画のプレゼンの場合は、特に具体性、計画性が大切になります。実際にそのプロジェクトを進めるための、資金、人材、スケジュール調整、発注先、販売ルート、など、いかに現実的に考えているかが、重要ポイントになります。どんなに魅力的な内容で、提案者がやる気をもっていても、このような具体的な事例に言及していない限り、それは企画ではなく夢物語だ、というのが学者タイプの考え方です。
 同時に、その企画が他の企画と比べて優れている点を、具体的に強調することも大切になります。たとえば「系列会社にこういう部門があるから」とか「今まで培った、このノウハウを生かし、生産ラインはこの会社と提携して」といった具体的な特徴を生かした発想が喜ばれます。
 次回は、職人タイプです。

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42回目 人を動かす方法5 対職人タイプ

 今回は職人タイプに対するものの頼み方&操縦法です。
 職人タイプに対するものの頼み方のポイントは、まず相手のこだわりを理解すること。職人タイプとは、例えば資料やビデオを借りる時も、自分が気に入ったものなら頼まなくても貸してくれる人です。これが気に入らない資料だと「あんなの見なくてもいいですよ」とか言って、ある場所すら教えてくれません。
 と言っても、何かを頼んだり誘ったりする時に、必ず全部を職人タイプの好みに合わせないとダメ、というわけではありません。
 職人タイプの場合、例えばみんなで旅行に行く時も、その旅行の中に一つでも自分の気に入った部分が見つけられればOKなのです。みんなでスキューバするのがメインの旅行でも、途中で見たかった水族館に寄れる、とか、前々から行きたかった風俗街に繰り出せる、という事が一つでも含まれているだけでいいわけです。
 例えば自動車のセールスの時も、安いとかステータスシンボルになる、といった売り込みは、職人タイプにはさっぱり功を奏しません。彼の心を動かすには、本人が自動車に対してどんなイメージをもっているを把握することが、大切なのです。
 それは、単なる「自動車の好み」とはちょっと違います。彼にとって「本来、自動車はこうあるべきだ」といった確固としたイメージがあるのです。そしてそれに近いものが「正しい自動車」となるわけです。
「メカニックを自分の手で調整し、動かす快感こそが、本当の喜びだ!」と思っている人の場合、どんなにエンストしやすく、クーラーがきかなくて、乗り心地が悪くても、そういう車を選ぶことになります。
 企画プレゼンの場合も、職人タイプを本気にさせるには、この「本来、こうあるべき」というイメージに企画が近いことが、原動力になります。
 とはいえ、企画を好みに合わせて変更することは難しいし、現実的とは言えません。そこで、小さなディティールの部分だけでも、職人タイプの好みにあったものをはめ込んでみましょう。
 例えば宣伝用ポスターの隅っこに、職人タイプのこだわっている小道具を入れる、といった一見つまらないことでも全然かまいません。
 そういう配慮をいくつか積み上げることで、職人タイプの人は驚くほど乗り気になってくれるはずです。
 なぜならそういう心遣いは彼にとって「企画の中に自分の好きな部分がある」という意味だけではないからです。それは彼が最も求めている「自分が好きだと言うことを相手が認めて、それを取り入れてくれた」「自分のことを判ってくれた」という意味になるのです。これにより、あなたに対する信頼や好意がグッとUPするでしょう。
 さて、今までで4つのタイプに対する「効果的なアプローチ」は説明しました。次回はこのまとめ、多様なタイプや多人数に対するプレゼンの場合の注意点です。

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43回目 人を動かす方法6 複数のタイプに対して

 自分では一生懸命、頼んでいるつもりなのに、どうしてもうまくいかない相手。でもそれは、あなたの頼み方が相手のタイプに合っていないから。4つのタイプそれぞれに対する頼み方のコツをつかめば、そんな悩みもたちどころに解決するでしょう。

 今回は、それをふまえた上で、多人数に対する依頼方法をお話ししましょう。
 企画のプレゼンなどは、大きなお金が動き、大勢の人が関わります。いくら担当者がやる気になっていても、その部や会社全体としてOKサインが出ない限り、安心できませんね。例えば、あなたが企画の売り込みをする場合を考えてみましょう。
 最初に会える担当の人(もちろん下っ端です)が、その企画のGOサインを出す権限をもっていることなど、まずありません。担当者は上司に報告し、支持を仰ぎます。その上司は会議にかけたり、取締役会で稟議書を回したりします。企画が大きければ大きいほど、その企画は大勢の人に審査されることになります。
 上層部の会議では、それなりの発言権を持つ人には必ず、4タイプがバランスよく含まれている事でしょう。意志決定集団とは、そのようなバランスを自動的に持っているものです。ですから、あなたが大きいプロジェクトを動かしたい場合、必ずその企画書の中に、4タイプが気に入りそうな要素を意識的に入れておく必要があるわけです。
 ではまず、4つのタイプに対する注意点を思い出してみましょう。
1)王様タイプ
 みんなに喜ばれたり、感謝されたりしそうなことが、含まれていること。(「みんな」がお客さんの場合も、スタッフの場合もある)
2)軍人タイプ
 他社の企画に比べてのメリット、優秀性がはっきりしていること。
3)学者タイプ
 計画が具体的で、明らかに実行可能であること。同時に新しい工夫や、実験性が含まれていること。
4)職人タイプ
 そのプロジェクトの社会的意義や、目的がはっきりしていること。
 以上、4つの要素をはっきりさせることが大切です。しかし人間というのは、どうしても自分一人で考えると、自分のタイプのみの視点の企画になりがちです。できれば、他のタイプの人といっしょに、企画を練り上げることお薦めします。
 もう一つ大切なことは、この4つの要素が企画書や仕様書の状態で、明らかに読みとれるようになっている必要があるということです。
 と言うのも、あなたが直接フォローできるのは、目の前にいる担当だけです。どんなにその担当にあなたのヤル気や具体例を伝えても、彼は「自分の気に入った部分しか」聞いていません。(この点、最重要です!)当然、彼から上司へのプレゼンでは、伝わるのは彼のヤル気と企画書だけなのです。
 おわかりでしょうか?4つの要素を、企画書で意図的に強調すること。こういったことに気をつければ、あなたの企画はグンと採用されやすくなることでしょう。
 もちろん私も、SPA!編集部にこの方法でプレゼンし、今回の連載をはじめたことは言うまでもありません。



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