ABCD−ROM掲載原稿
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CD−ROM版「TIME」評
 1987年の春、私の初めてのアニメーション映画『オネアミスの翼・王立宇宙軍』が公開された。この映画には大変、苦労させられた。
 舞台は地球そっくりの完全な異世界。つまり作品中に登場する全ての建築物、小道具、衣装、食べ物等を全て「今まで見たこともないが、リアルなもの」としてデザインしなければいけないからだ。
 アニメーターの想像力には限界がある。「見たことのないロボット」なら、今までさんざん描いてきたのだが、「見たことのない朝食風景」や「見たことのない盛り場」なんて、今までだれも描いたことがなかったのだ。
 そんな時、TIMEを利用することを誰かが思いついた。完全な異世界でありながら、リアルな世界。実現不可能に思えたそれは、TIMEに今まで掲載された膨大な写真資料の一部をフォトレタッチするように改造することで簡単に作成できた。
 戦争、家庭、職場、人種差別、事故。
 あらゆる事は全てTIMEの中に入っている。使える写真をハイエナのように探しながらも、そんな雑誌を産み出したアメリカという国の基礎力には驚愕させられた。
 初代大統領ジョージ・ワシントンは、その就任演説で、「知識は大衆に幸せをもたらす基盤である」と述べ、歴代大統領も「知識を伝播させ、人々にアメリカ国民としての『統一感』をもたらす雑誌の力」を高く評価した。このため米国では雑誌・新聞を扱う第二種郵便料は大幅に割り引かれていた。
 しかしこれによって連邦の赤字は膨れ上がり、1949年には五億ドル、66年には十億ドルになってしまった。
 1971年、ジョンソン大統領の命を受けて誕生した郵政公社は第二種郵便料金の142%値上げを宣言、大パニックとともに多くの雑誌が廃刊・縮小した。
 さらにCBSのクロンカイトらニュースキャスターによる「TVでニュースを観る時代」が到来、TIME他のニュース週刊誌は、その歴史的使命は終わったと考えられた。
 しかしマルチメディア、デジタルネットワークと騒がれている今、その価値は完全に逆転した。
 インターネット・ホームページは雑誌に宣伝を載せないと誰も読んでくれないし、一番売れるソフトウェアとは一番多く記事の出ているソフトなのだ。
 今こそ我々は、もう一度ワシントンの言葉に戻って「出版の力」を再評価する時代にいるのかも知れない。

解題
 TIMEのCD−ROMを郵便で送りつけられて、「とにかくなんでもいいから書いてくれ」と頼まれた。しかし送られてきたのはWINDOWS版。
 結局、ミズテンで完成させた。95年の年末に執筆。(96/06/30)



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