トップをねらえ!
あれはほとんど一人で準備したんですよ。もともと「ビデオアニメとして絶対に売れる企画はなんだ?」と聞かれて「そんなもんロボットと女の子だ」って答えて始まった。当時ビデオアニメの雑誌があったんですが、そこにスチール1枚しか紹介されない時に、絶対にウケる絵を使える。紹介が3行しかない時にスゴイ台詞が入るように。で設定で“宇宙怪獣”“ロボット”“女子高生”この3つが出てきたら大丈夫。というように逆算的に作っていったんです。
いちばん始めにラストシーン考えて、ラストシーンから逆算して1話つくって、メカ設定頼んでキャラクター設定頼んで、シナリオも準備して、全部で来たところで監督である庵野秀明を呼んで「庵野くんコレやらない?」って脚本見せたら泣くんです「クワァー」。王立宇宙軍の後だから頭の悪い主人公を求めてたんですよ。
戦争の場面を見ると罪の意識って出てくるじゃないですか。ロボットと女の子が戦闘やっている場面を、罪の意識なく見ることができるように、宇宙怪獣にするしかない。あの作品では宇宙人の台詞が作れない。悪役にドラマがあると、悪役側に対する罪の意識が発生しちゃって、みんなが求めている痛快ロボットアニメにならない。だから天然災害みたいにしちゃう。すごく演繹的に作った作品ですよ。
そこに庵野の浪速節が入る。「わたしたちは戦わなくちゃいけないのよ」とコンテに黒々と書いて「クー!泣けるー!」って、みんな大笑い。試写の時には全員が大爆笑するんです。普通アニメの試写ってストーリー観ないで、自分の絵を観る。あと人のいい所を観る。でも『トップ』だけは作ってるみんなの心の琴線に触れてる作品ですから、ガンガンウケるんですよ。感動的な台詞が「やらなくちゃ…」とかいうと、みんなワッハッハッハッハッ!と大笑い。
映画館でかけた反応もいいんですよ。感動のシーンで怒る人と笑う人に分かれて、「あの感動のシーンで笑うなんて許せない!ドラマとして見るべきだ」という人と「あれは笑うのが正しい。ただ単にパロディだ」という人がいる。真実はその微妙な狭間にあって、「なんでオレってこんなので感動しちゃうんだろう。オレっておバカさん」っていう自分を笑う楽しみ方をする作品なのです。
これは岡田斗司夫に対する悪意の作品なんですよ。出てくるアイデアのスミに「どーせ岡田さんはこーいうのが好きなんでしょ」って書いてある。「そーだよ、どーせオレはこーいうのが好きだー(笑)クラクラクラクラ…」
あとオリジナルがない。コンテ切る(書く)時にできるだけ、昔見たことがある絵にするんです。しかも、見たような気がする絵じゃなくて「これは『日本沈没』のこのシーンにある絵を丸々持って来た」って。全巻これでしようとしたんです。でもなかなか集まらなくて、所々オリジナルが出てみんなで悔しい思いをするんです。その時机の前に「トップにオリジナルなし!」と書いてあって…。
作り手に対するダメージとしては、単にあの様な作品を作れなくなりますよね。あれ以降アニメの表現の中から、パロディの手法が消えたはずなんですよ。良く昔あったミサイルの中にバドワイザーの缶が混ざっているとか、他の作品にルパンやラムちゃんが出てくるものは全部なくなりました。一掃しちゃった「こんなにおまえらのやっているパロディっていうのはカッコ悪いものなんだ」ってのを形にしちゃった作品ですから。実は始めて作品として出てきたアニパロですから(笑)。
ほんとにアニメ誌から無視されましたよ。特に1巻の時にはすごい攻撃されました。「こんなのつくっちゃだめだ」とか説教されたことあります。「こんなのつくっていたらあんたの会社だめになるし、スタッフに対しても申し訳ないだろう」って「見ていて下さい。良くなりますから」って答えると「良くなるはずがない!」って…。6話にまで向かっていくとどんどん盛り上がって行くんだけど、「盛り上がるのはいいんだけど、時々出てくる変なパロディみたいなのはやめたほうがいい」…あれはああいうもんなんですから(笑)。
それでも4話のガンバスターが足の裏から火を噴くシーンがあるんですけど、そこがガメラの映画をチョコチョコ切って、マッハ文朱主演の再編集して作った『宇宙怪獣ガメラ』っていう映画の、ガメラが情けない火を噴くシーンと全く同じなんですよ。それは作画の増尾くんが「岡田さん、これ宇宙ガメラの火です」って言われて、ちょっとやりすぎたかなぁ…誰がどう見てもカッコ悪い物を出しちゃった…スタッフノリ過ぎ。このタイミングで宇宙ガメラの火を噴く、マニアック過ぎる視点はどうにかなんない…(笑)。初稿で観たらさすがにそこはみんな息を飲むほどカッコ悪い。音楽が盛り上がって一番カッコイイシーンで火が後ろの方が上に上がってるんですよ。増尾くんはさらにブラシ(スプレー)で煙を上に入れると言っていて、さすがにそれはみんなで止めました。
サンプリングっていうことでつくっていたんですが、それは伝わらないですよ。監督の庵野くんはもともと宮崎(駿)さんの弟子だったからオリジナル志向が強い。後半の方は割り切って「こういうアニメの作り方してもいいんだ!」ってブレイクしてたけど、それまではオドオドしてやっていて…オレの口車に乗って苦労したヤツは数知れぬ(笑)。
4話がドカーンと盛り上がったので、5、6話で何をやっても許されるということになって、だったらって6話を全部モノクロのシネスコで作ったんです(笑)。予算が尽きるぐらい頑張ったんだって思われるかな?って…金掛かりましたよモノクロ。モノクロのフィルムって高いんですよ。色指定大変だし…スゴク苦労しました。
『トップ』は監督がいない作品なんですよ。庵野が早く帰った日は誰が撮出ししているかわからない。誰か一人のコンセプトで統一しちゃうと、サンプリングによる作品にならなくなっちゃうんですよ。それよりスタッフのノリの方が大切なんですよ。その日の夜遅くまで残っていたヤツが監督なんですよ。庵野が先に帰った日はオレが指示出してたりするんですよ。庵野が先に出社したら、前の日に出したオレの指示を取り消したりしてるんですよ。そういった意味では相当アナーキーな作り方ですよね。監督システムを信用しなかった頂点の作品ですからね。カルチャーなんか全てサンプリングでできてるのを認めりゃいいのに。オリジナルなんか無いと思っていても、それでも出てしまうものがオリジナリティーなんだよなぁ。チラッと見えちゃったオリジナリティー、はずかしー(笑)。だってオレ小さい時から個性が豊富で困ってたから…、いるじゃないですか、個性を伸ばしたいってヤツ。ウソつけ!個性は伸びるもんじゃなくて、出ちゃうもんだ。こんなに普通に生きよう生きようとしてるのに「変わってますね」って言われて…、ここが個性というヤツ(笑)。
巨大ロボットのウソ
基本的に質量とサイズの関係っていうのがありまして、人間っていうのは哺乳類の中でも例外的に大きい。哺乳類というのは本来ネズミからウサギぐらいの間の大きさであるのが適した生物である。イヌは哺乳類の中では大型生物に入っていて、その大型生物の限界ぐらいが人間。そこから超大型生物としてサイズが肥大化して生態系に合わないのがクマとかゾウとかそういうものです。恐竜もウルトラサウルスとかブロキオザウルスなどは王者といわれつつも進化の過程では袋小路に入っちゃった失敗作なんです。おそらくゾウなんかも進化の袋小路に入っちゃった哺乳類としては失敗なんです。
力学や解剖学をやっている人に言わせると、人間のサイズというのはだいたい身長が1.5メートルぐらいで最も安定している。身長2メートルを超えると骨折の率が高くなり、転んでも普通のケガじゃ済まない。2メートル10センチぐらいがあたりまえのヨーロッパ北部の人達は骨がポキポキ折れる。ミネラルウォーターは鉱水ですからカルシウムがいっぱい含まれているのに、それでもポキポキ骨がおれる。なぜかっていうと簡単な話で、身長が倍になると体積は3乗倍ですので体重が8倍になってしまう。それに比べ骨の断面積というのは4倍にしかならない。骨の強度が持たないわけです。実は人間というのはサイズの限界がある。大きい男の人は保険で査定を受ける時、非常に不利な立場になるんです。小さい人間の方が生き残る確率が高い。海洋生物はデカく生まれた方が有利です。重力がある所に住む生物は本来の大きさに近くないと不利です。
で、巨大ロボットの話なんですけど、人型兵器が巨大なのは不利なんですよ。『トップをねらえ』の時に200メートル弱のロボットを設定した時に、指の先っぽが動くと、光の速度を超えてしまう。銃を取り出すとか、ちょっとした動きで音速を超えソニックブームがバッキンバッキン起きてしまう。そのころから巨大なロボットの設定が無理だろうとわかってきた「巨大ロボットってのはウソなんだよな」。で『トップをねらえ』ではガンバスターという巨大ロボの腰に宇宙空間航行するエンジンをつけた。ローレンツ力で指先の質量が無限大になっちゃうので、それを殺すために亜空間エンジンがいるんですけど、それぐらい設定しないと巨大ロボットのウソっていうのが小学生にでもバレてしまう。見てる人はオメデタイですから気にしませんけど(笑)。
『ジュラシックパーク』の恐竜もウソです。オレ子供が生まれて毎日、井の頭動物園に行ってたんですけど。そこでゾウの動きなんか見てると、すごく特殊なんですよ。体を動かすときに、まず鼻から動くんですよ。鼻をムチのように動かして、体全体に振動を与えて1歩目がドンと出る。踊るように動くんですね。野性生物の動きってすごくリズミカルでしょ。あれには理由があって体重が100キロ200キロ超えている生物というのはリズミカルに動かないと体中の筋肉の動きと骨の動きにストレスが生じてしまって体痛めちゃう。スポーツ選手も瞬発力のあるスポーツの場合無理なスタートはしないんです。本来人間はあまり無理できる生物ではないので、肉離れが起きちゃう。ジュラシックパークの体重が10トンあるような恐竜がドンドンドンと歩くのはいいんです。ピタッと止まって草を食べてしまう…その瞬間に「ウソだよな」と動物マニアは分かるわけです。でもSF映画マニアや恐竜マニアは絶対分かんない。今までアメリカのストップモーションアニメの『恐竜百万年』とかしか観てないので、それと動きを比べて「あぁリアルだ」と思うんですよ。音消してジュラシックパークのビデオ観ると分かるんですけど、脚が地面に着いてない。
映画っていうのはゴマカシですからジュラシックパークはあれでいいんです。見事に観客をだましている良い映画なんです。だけど、恐竜学者みたいな人があれを観て「リアルだ」って感心しているのは、科学者ってバカなんだな…って思いますよね。
恐竜もゾウも巨大ロボットも止まる時に少しずつスピードを殺しながら止まっていって、質量の重心位置をだんだんだんだん変える運動をして止まってるんですよ。ゾウの主な質量って体の上の方にあって、横幅がなくて前から見ると平べったくて、転びやすい構造を持った動物なんです。だから垂直に歩いて垂直に止まるんです。少しでも体をひねった状態で止まろうとすると転んじゃう。人間は運動量に比べると体重が軽いので意識していないですけど。巨大ロボットものをちゃんとやろうとしたら、動く時の運動方法と、止まる時の運動方法があるはずですよね。ビルとか作ってる工作機械なんかもあきれるぐらいゆっくりした動きだし、動く部分の反対側にカウンターウエイト(おもり)付けてるぐらいでしょ。
逆に「宇宙空間でのロボットには手足がいらない」っていう話がウソなんですよ。かえって手足がいるんですよ。NASAの資料があるんですけど、スペースラボという宇宙空間における宇宙ステーション的な実験があったんですけど、その中は直径5〜6メートルあって途中で人間が方向を変える必要があった時に手を延ばして回転すると、無重力空間で回転するんですよ。回転を止めるときにも手足を使うんですよ。慣性力を利用した姿勢制御です。宇宙空間でロボットが方向を変えるのにいちいちロケット点火していたら機動時間短すぎますよ。ガンダムは後付けで理論武装でAMBACシステムということを言ってます。
MS少女
モビルスーツのパーツを付けた女の子なんだけど、あれってモデラーの中では当然のものとして流れているんですよね。でも外から見ると特殊でしょ?なんで女の子があんなの付けてなきゃいけないのか?ストーリーないのにやたら設定だけ過剰でしょ。あれは現代アートと通じるものがある。一時期モデラーの間でモビルスーツのデティールの解釈で、モビルスーツは戦車か航空機かという論争が交されたんだけれど、その後女の子は戦車か航空機かという論争になって続いている(笑)。
巨大ロボットのメタファー
ロボットというものがない以上、何かのメタファーでしか在りえないですよね。航空機であるとか、戦車であるとか、もしくは鎧であるとか、今の主流でいうとポリゴンを意識したコスチュームでしょ。昔のロボットのデザインはシルエット勝負でした(大河原邦男さんのデザインとか)。あとロボットは船なのかっていうのは、まだ誰も成功していないですね。アイアンギア(ザブングル)もマクロスも失敗ですね。超巨大なロボットの成功例はあまりないです。オレが知ってる中でいちばん大きなロボットは『トランスフォーマー』に出てきた惑星がトランスフォームするロボット。声優をオーソン・ウェルズがやってて、『市民ケーン』のオーソン・ウェルズの死ぬ前の最後の仕事がトランスフォーマーとは…。
玩具メーカーとの闘い
一時期のテレビアニメの歴史は、おもちゃ屋との駆け引きで、制作スタッフが苦労するという時代がありました。バンダイのある取締の方が「あれは我が社の30分コマーシャルです」と公言してスタッフがパニックになったという…古き恐ろしい時代があった(戦隊ものの合体メカはその取締がデザインしている)。そのころスタッフがスポンサーの裏をかいて作品を制作するようになりました。例えばガンダムの場合、スポンサーはゲッターロボみたいな合体メカを発売したかった。それを富野さんはAパーツBパーツコアファイターという意地悪な展開にしちゃったわけです「3つ合体すればいいんでしょ」(笑)。ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクっているし…。でその合体するパーツを運ぶ輸送機みたいなのを出したいとスポンサーが思う、スポンサーが考えたのは当時サンバルカンにで出てきたジャガーバルカンという宇宙空母みたいなやつなんだけど、ガンペリーという情けないただの輸送ヘリ「確かに出ているけど話が違う…」。
合体メカとして奇形的に膨れたのが御存じ『ダイラガーXV』15体合体、15人乗り込むわけでしょ。ものすごく箱がでかいんですよ。15人のキャラが箱の横に描いてあるんですよ。覚えれるように5人(5台)で1組合体するんですよ。3つの種族に別れているんですよ。
等身大のロボットの行方
ロボコンやアトムやドラえもんという等身大のロボットは、巨大ロボのブームによって地下に潜っちゃうんです。同人誌で女の子の形をしてご主人様に飼われて「目玉焼が焦げちゃったけど、私がんばる」の世界に入っていっちゃう。U-ガイムというのがその典型的な例です。永野護の『ファイブスターストーリーズ』に出てくるファティマもその発想が成長したものです。おたくのおもちゃにされちゃったんですよ。…それとキカイダーみたいな東映系が発展して宇宙刑事シリーズは、『ロボコップ』にまでいっちゃって、アメリカに取られる。もともと浮世絵をパクってアールヌーボーとか言い出すパクリのうまい白人ですから。
アメリカにいっちゃう
次の『スターウォーズ』では、ルーカスフィルム自体が、ヤマトやガンダムの日本のアニメーターをいっぱい雇って、CGでロボット的なアクションで飛行機飛ばすような技術、いわゆるジュラシックパークで行けると確信した技術を使って、再来年公開予定の作品(最初にあったスターウォーズの特撮シーンを全部CGに代える)を作る。それで噂されているのが「次のスターウォーズでは、あいつらどうやらロボット出すらしい」って「ガンダムだ」って。スノーウォーカーのシーンをロボットものとして評価させるなら、感情移入しやすい人型にするでしょう。もともとスターウォーズは剣の世界の話だから、ロボットがビームサーベルでバキンバキンやるんだろうな。Xウイングが変形してロボットになるとか。観たいよね単純に。監督決まってないのなら「日本人(オレ)にやらせろよ」って。
スターウォーズは楽しみですよ。「日本のオリジナルの流出をこれ以上許しちゃいかん」とかあんまり思わないんですよ。基本的にファンですから、いいものが観れれば。エクシードラフトとかジャンパーソンよりロボコップの方がカッコいいですよ。パクリでもモドキでもうまいほうがカッコいい。
(岡田斗司夫氏談 取材・文=PEPPER SHOP編集部)
interviwed 1995年 月 日@吉祥寺東急ホテル |