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オタク爺がお小言カマす
#1


 最近の若い者に説教してくれ?
 年寄りをからかうもんじゃない。今の若い者はみんな恵まれとる。こんな爺の説教なんか聞く耳もたんじゃろ。そんなことより秋葉でもいってエヴァ予約して来なされ。それでみんな幸せなんじゃから。
 え?違う?
 ほほう、今の幸せに疑問が出てきたか。このままオタクとして生きることに、迷いが出てしまったわけじゃの。よろしい、老骨に鞭撃って諸君に渇を入れて差し上げよう。

 そうさの、君たちなにがイカンかといって、作品を疑わんとこじゃな。完成度の高い作品しか、見ておらんために「疑いの目」っつーのをハナっから捨てて見ておるんじゃ。そりゃ、「ショーヒシャ」の態度じゃよ。そんなことでは立派なオタクにはなれんわいな。オタクになりたくない?喝!そんなこと誰が訊いたか?お前らはオタクになるんじゃ。当たり前のこと訊くな。
 なんの話じゃった?そうそう、「疑いの目」じゃ。放映・発表されたアニメやマンガ、ゲームはあくまで素材に過ぎん。それをお前さん方が受け取って、自分の中で受け入れるときに初めて「作品」となる。わからん?とりあえず丸覚えしときなされ。


(図1)
 図1、わかるかな?『機動戦士ガンダム』第一シリーズよりの映像じゃ。「初代ガンダム」とか「ファースト・ガンダム」と呼ぶのが通であるな。見てのとおり、ガンダムが空中にジャンプしているシーンじゃ。このガンダム、なんでガンダムシールドを構えてるか、わかるかな?敵の弾避け?あ〜、君はモデルグラフィックとかの読みすぎじゃな。
 正解は「ガンダムの作画が下手だから、手前にシールドのセルを置いてゴマかした」に決まっておる。
 お前さん、このシーンの担当演出になったつもりで考えてみなされ。一月も前に作打ち(作画打ち合わせ)は済ませたはずのこのシーン、セルもUPしたので、さあ撮影に廻そう、とカット袋を開いてみると、キムチ臭〜いガタガタ作画のガンダムが空中に舞っている。納品は来週じゃ。今さらリテイクなんか出来るはずはない。
 どうする?
 有能な演出なら、ここでガンダムシールドのセルを一枚用意して、韓国ガンダムの上に被せると、アーラ不思議。へなちょこ作画の大部分は隠れてしまうし、オマケに何やらカッコいいシーンになってしまったぞ。
 これがTVシリーズの演出じゃよ。カッコいい作画なんか、金と時間があったらバカでもできる。そんなもの両方ないから、手抜きしながら効果を出す。それがプロじゃ。


(図2)

(図3)
 もう図2、3はわかるじゃろう。ハイパーバズーカを構えるガンダム、ビームライフルを構えるガンダム。目の辺りをよーく観察してご覧。作画がガタガタじゃろ?左右の目の大きさまで違う。こんなのシールドなしで画面に出して見ろ、「人類の覚醒」なんちゅう深〜いテーマに夢中の視聴者でも一発で冷めてしまうわ。ここでもシールドのセルは大活躍じゃ。目しか見えなんだら、なんとかゴマかせる。バズーカもビームライフルも、パース(遠近感)ミスがないように、思いっきり手抜きして真っ正面の構図。これでいい。これが正しいプロの手抜きなんじゃ。



(図4)

(図5)
 では次の問題。図4、5は重モビルスーツ・ドムじゃ。ジェットストリーム・アタックはカッコええのう。ホビージャパンのストリームベースによる作例を思い出すわい。さて、このドム、なんで空中に浮きながら移動しているのか?
 まさか、「地上戦での機動性を増すために、ミノフスキー・イヨネスコ反応炉からの開式ジェット噴射でホバー移動している」なんて答えたトンチキはおらんじゃろうな?答えはもちろん「シリーズ中盤に入って作画スタッフの負担が限界に達した。もう『ロボットの歩き』なんて枚数の多い作画なんか出来ない。よっしゃ、今度の新型モビルスーツは地面の上を滑らしてしまえ!」である。だいたい二足歩行するロボット同士の肉弾戦なんて、どう描いてもマヌケになってしまう。片方をスライド移動にすれば移動速度のメリハリもつくし、作画の負担もチョー助かるわい。



(図6)
 では最後に応用問題を出そう。図6のガルマ・ザビ、なにか少しヘンじゃろう?これは両手をよく見るとわかるのじゃが、左右の手が逆なのじゃ。オマケに首が180度、後ろを向いておる。なんでこんなことになったのか?
 よーく考えてご覧。答えは後で。


 わかるかな?オタク道とは「よく見て、よく考える」じゃ。個々の情報を集めても、そりゃインフォメーションに過ぎん。オタクの成り損ないどもが間違えてるとこじゃな。いくらたくさんの作品を見ようが、昔のことを知ってようが、最新の事情に通じてようが、そんなのはタダのインフォメーションじゃ。インフォメーションは、分析・統合されて初めてインテリジェントとなる。インフォメーションからインテリジェントへ。なんか竹村健一か高城剛みたいになったけど、これが今回のお説教じゃ。ではまたな。




(解答編)
 おそらく作打ちの時には「ガルマ、椅子から立ち上がって振り返る」というシーンだった。しかし時間がないので立ち上がるところまでしか動画が出来なかった。
 ここで担当演出がした処理は以下の通り。
1. 原画は最後まで完成しているので「後ろ向きになった首」「ファイルを持つ手」のみは別セルでセル仕上げする。
2. 立ち上がったガルマの胴体セルに、「後ろ向きになった首」「ファイルを持つ手」をムリヤリ位置合わせして、エイヤっと撮影送りする。
 この結果、かようにヘンなシーンが出来上がった。




#2
 新しいモノばかり追いかけるのは若者の悪い癖じゃ。アートのあらゆるジャンルには「古典」「スタンダード」「コンテンポラリー」の区分がある。その区分を意識せずに、ただ新作のアニメや特撮を追いかける、なんてのはただの「ファン(思いっきりバカにした口調で『ファ〜〜〜ン』と発音)」じゃわい。30才越えた男が好きなアニメ一つ持たないのも恥じゃが、いつまでも新作のケツ追いかけてるなんてハナタレの若造ファンみたいな事してはいかんぞ。もしお前さんが若造なら、早く心だけでも老け込むことじゃ。オタクの心は侘びの心じゃからな。

 「古典」っつーのは「まぁ、たいして面白くなくても教養として押さえる。これが面白く感じられるようになったら一人前のオタクになったということ」みたいな作品群じゃ。初心者は無理して手を出さなくてよろしい。
 アニメでいうと白黒時代の作品群じゃな。マジンガーZなんかも、もう古典の仲間じゃろう。初代ゴジラとかジョージ・パル版「宇宙戦争」なんかも古典じゃ。まだ「2001年」見とらん輩はおらんじゃろうな?
 ゲームでいうとインベーダーとかATARIの「PON」とか、PET2000版のSTAR-TREKなんかが古典と言える。秋葉行ったらPC8000とカセットテープ入りのゲームでも買うんじゃな。マンガでは手塚・石森のあたり。ジョージ秋山の「ザ・ムーン」を知らずしてロボット物を語る不届きモノが横行しておる世の中じゃ。君は半可通なんて野暮天にはならんようにな。

 「スタンダード」ちゅうのは、現在の作品群に直接影響を与えている「定番」の作品群じゃ。「機動戦士ガンダム」とか「空手バカ一代」とか「ナウシカ」とか「ドラクエ」みたいな作品のこと。古ければいい、というのではない。例えば「サイコアーマー・ゴーバリアン」は時代的にはスタンダードじゃが、分類上は「下手物(ゲテモノ)」に属する。
 このスタンダードをちゃんと押さえる、っつー訓練が若い諸君には必要じゃな。三鷹市役所水道局に「綾波レイのポスター、くれ〜」とか電話かけてる暇あったら、レンタル屋行ってスタンダード作品類を見なさい。東京だったら新宿のTUTAYAに行けばかなりのアニメ類が揃っている。マンガ喫茶行くのもいいじゃろう。例えば本誌編集長の古賀君が好きな「ガンダム」を評価しようと思うのなら「ロボット」の流れでいうと「勇者ライディーン」、メカ描写の流れでは「超電磁ロボコンバトラーV」、冨野由悠季の作家性としては「ザンボット3」とか「トリトン」などを研究せねばならんはずじゃ。石川賢のマンガも必読書である。
スタンダード作品の学習が、君のオタクとしての基礎力を決めるぞ。

 「コンテンポラリー」ちゅうのは、文字どおり現代風作品のことじゃ。君の好きな「エヴァンゲリオン」とか「こどものおもちゃ」とか「スクウェアのRPG」とか「覚悟のススメ」とか、90年代に入ってからの作品はまだ歴史的評価が定まっておらん。このような作品を「コンテンポラリー」と呼ぶわけじゃな。これはまぁ、自分の趣味・嗜好に応じて嗜めばよい。しかし常に「これは歴史的評価として、どのような位置づけになるだろうか?」という疑問を心の隅に置いて見ること。
 「激走戦隊カーレンジャー」を見るために押さえるべきスタンダードはまず東映戦隊モノ。ゴレンジャー、サンバルカン(スタイル確立)、バトルフィーバー(戦隊+ロボット)辺りまでは当然。浦沢脚本の流れとして「勝手にカミタマン」「忍たま乱太郎」も押さえるべきだし、コロコロとボンボンという二大幼年マンガ誌がミニ四駆というブームをどのように捉えてるかの考察も必要じゃ。
 オタクとは「自分で見て、自分で考え、自分で決める人」の別名でもある。頑張って精進してくれたまえ。



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