15日(火)
まだ咳が止まらない。柳瀬君に「いいかげんに医者に行ってください」と説教されてしまう。僕は医者&薬嫌いなのでたとえ40度の熱が出ようとも自然治癒を狙う、と言う馬鹿者だからだ。あああ、医者かぁ。待合室で待ったり、あの無駄な時間がイヤなんだよなぁ。そういえば俺は「国際線の飛行機」「歯医者」「散髪」「入浴」など、とにかく待ったり無為な時間を強要されるようなことが全部嫌いだよなぁ。大学を追い出されたときに本当に嬉しかったのは、「もうこれで生涯、決まった時間を同じ座席で過ごさなくてもいい」ということだった。
能だか狂言だかの嫁を巡って、ワイドショーで騒いでいるようだ。僕自身の立場は前々回の日記でも書いたけど以下の通り。「世襲制の伝統芸能は、中身ではなく形式が全てに優先する。自由恋愛・結婚なんてとんでもない。そういう贅沢はオレたちみたいに働いて食い扶持稼いでる奴だけの権利。したがって今回の件は、もう全面的にお姑さんが正しい。才能もなければ面白みもない代わりに国家保護を受けている伝統芸能なんだから、その当主はせめて伝統維持だけには全力を注ぐべき」
とまぁこう思うんだけど、あのお姑さん、全国オーディションで探しても見つからないような「悪役顔」だからねぇ・・。
16日(水)
朝から『課長 島耕作』を読む。来月末のBSマンガ夜話用の下読みである。読みながら、番組内で語る切り口を探すけど、なかなか見つからない。特別な個性や画力を持っている作家ではないからなぁ。巻末に載っている「このシーンはこんな意図で描いた」というのも相当に蛇足で、「感動的なシーンに仕上がって自分でも満足」と描いてるけど、自分で書くなよ!とツッコミ入れてしまう。
午後から森本医院へ。待つこと30分、若い医師が「熱は?」「鼻水は?」「咳は?」と何を聞かれても「はぁ、もう治まってきました」と答えるのが、なんか申し訳ない。先方もやりにくそうだ。抗生物質や熱冷ましなど5日間で二千円分もの薬を受け取る。
事務所に帰り着くと「今日中に」と言われたhm3単行本の前書きを忘れていたことに気づき、ひたすら書く。しかし気分が乗らないので、あるゲストへの悪口が中心になってしまった。ああ、まずいかなぁ・・でも事実だもんなぁ。
夕方、和美宅で豚肉の野菜巻を作る。サイドはもやし味噌汁&キャベツと人参のコールスロー。
17日(木)
午前中、新宿のTUTAYAにビデオ借りにいったら、身体が重たいことに気がつく。これは疲れてる、それも相当だろう。午後からは休むことに決めて、借りてきた『花神』の2巻を見る。せっかく主演の中村梅之介演じる村田蔵六を見たいと思っても、1巻ではひたすら吉田松陰ばかりにスポットが当たって欲求不満。さて2巻では、というと今回は中村雅俊演じる高杉晋作ばかり。
午後に紀伊国屋隣の鳥源で博多風水炊き。白菜さえ脂っこく感じる白いスープは、ちょっと体力が落ちているときにはきつかった。
明日はいよいよパイプカットなので、暗くなってからは絶食。早い目に寝る。
19日(金)
朝から準備を始めて、午後よりいよいよパイプカット手術。ネットで見つけたS医院で手術台に乗る。下半身裸なので、とにかく落ち着かないし何をされるのか不安。ちょうどお腹の上あたりでカーテンを引かれているので、睾丸周辺を殺菌してるのはわかるけど、他に何が起きてるのかもわからない。
「じゃあ今から麻酔を打ちますよ」と言われて、あわてて「どこに打つんですか?」と聞くと「手術する場所です」と言われる。え!?ということはキ○タマ?ちょ、ちょっとそれは・・「痛いですか?」「そりゃ注射ですから、チクっと痛いです」
チクっと、って言われても、それは主観的な基準であって、僕にとっては七転八倒な痛みでも先生にとってはチクっかも。とか考えているうちに、本当に睾丸部にチクッとする痛み。なんだ、たいしたことない、と思ったら、その針がどんどん睾丸内部に入ってくる。いててててててててて・・いや、これは前頭葉の痛み、想像上の痛みだ。そんなに痛くない、と思えば不思議なことに痛くない。もう麻酔が効いてきたのだろうか。
あらかじめ説明を受けていた手術手順は、以下の通りだ。
○1睾丸中央部を切開する。
○2片側の精送管を引っ張り出し、5ミリ程度を切除する。
○3切断した両側の端を折り畳んで縫合する。
○4もう片側の精送管に同じ処置をする。
○5睾丸を縫い合わせる。
で、この○2の「精送管を引っ張り出す」というのが痛くて苦しい。痛みというのは男性なら誰でも知っている睾丸をぐりぐりやられる痛さ、これにプラスして「内臓を引っ張り出されるような不快感」が数分続く。途中で先生に「写真、撮りましょうか?」と聞かれたのでお願いする。まずは余裕のピースサイン。
そして本音のイタタタ写真である。

この先生、患者の質問を電子メールで受け付けたり、自治体から補助金をせしめて老患者宅との間にTV電話システムを自力で結んで、それを検診に応用したり(糖尿病患者に「その紙をオシッコに浸してください。…はい、色が変わりましたね」とかやってるらしい。すごい)と、とにかくハイテク好きなのである。写真をお願いすると急にカーテンの向こうから看護婦と撮影アングルを打ち合わせる声が。「そうそう、そっちから一枚」「僕がこれ持ち上げてるから、そう」とかいう声に合わせて、撮影に邪魔なペニスを右へ左へ持ち上げて、その都度ピカッとフラッシュが光る。
なんというか・・情けない・・
手術は一時間ほどで終了して、患部を縫い合わせて強い目にバンテージでガーゼを固定された。立ち上がると股間が突っ張っているのがわかる。これ、麻酔が切れたら痛いぞぉ。待合室で一休みして、先生から手術後の注意を受ける。
「シャワーは明日、お風呂は明後日になれば大丈夫です」
「はぁ、先生。それで…」
「ガーゼは夜になったら取っても大丈夫。あとは絆創膏かなにかで保護してください」
「はぁ、先生。それでセックスはいつから…」
「性行為ですか。一ヶ月は控えてください」
「一ヶ月!なんとか2週間ぐらいになりませんか?」
「岡田さん確か…(カルテを覗いて)43才でしたよね?」
「いや先生、じゃあオナニーは?」
「やはり一ヶ月は控えたほうが」
「でも先生!先週に聞いたときは『オナニーは2週間禁止』って言ってましたよね?2週間でいいじゃないですか!?」
「岡田さん確か…(カルテを覗いて)43才でしたよね?」
後ろで看護婦さんが笑っている気配がする。かまうものか。必死の交渉の結果、それでもやはりセックスは一ヶ月禁止、オナニーも2週間禁止ということに。
その他の注意事項を説明された後、先生が嬉しそうに「さっきの写真、見ますか?」と手術中の写真を見せてくれる。患部アップはさすがにモノマガという誌面上、お見せできないのが残念だ。「じゃあ岡田さんにはCD―ROMを焼いてあげましょう」と特製CDをプレゼントされてしまった。なんか不思議なサービス感覚の先生だけど、今は上機嫌みたいだから…。
「それでセックスはいつから…」
「岡田さん確か…(カルテを覗いて)43才でしたよね?」
こうなるともう、シチュエーションコメディーである。ADの合図で笑うサクラの声まで聞こえるようだ。
手術後、近くの喫茶店で一休み。麻酔が覚めてきて、さっきのバンテージがきつくて痛い。タクシーを飛ばして事務所に帰り、柳瀬君に事情を説明してベッドで休ませてもらう。あ〜、痛い〜。
19日(土)
昨夜遅くに絆創膏に貼り替えたけど、朝になったら股間が血まみれ、というのは大げさにしても痛い。別に経過として別状ないのはわかっているが、やはり「股間が血まみれ」というのはココロ穏やかではない。おまけに痛い。手術部分が痛い、というより睾丸全体が腫れている。
しかしただ痛いだけ、というのはいかにも悔しい。思わずモノマガ編集の額田さんに携帯メールで「パイプカットしたぞ!」と教えてしまうと「ぜひ日記に!」と返された。ああ、どうしよう。先生ではないけど「岡田さん、43才ですよね?」だからなぁ。
20日(日)
痛い痛い痛い。鈍痛というか疼痛というか、あの例の「股間を強く打ったあとの、いつまでも続くゴロゴロした痛み」が続く。気晴らしに映画を見に行くが、席に座ろうとしたら痛くて座れない。肘掛けで太股が内側に押されて、股間を圧迫するのだ。映画館の人に事情を説明して再入場券をもらって帰る。
床暖房の上で仰向けに寝たり転がったりして少しでも痛くない姿勢を探す。こうなると本も読めないしビデオも見れない。原稿を書こうにも椅子に座って前屈みの姿勢になれない。激痛ではないので医者に行く気にもなれないけど、とにかくストレスが溜まるなぁ。
21日(月)
吉祥寺・聘珍楼で『プチタンファン』誌の対談、お相手はまついなつきさん。「フロン」の出版元・海拓舎の原田さんも来ていただいて、近況などを聞いた。なんでも原田家では、というより原田さんの奥様が「フロン」を大いに気に入り、会社に持っていってまわし読みしてるという。素晴らしい、というか内心「買えよな、立場として」と思わぬわけではないけど、女性市場というのはそこまでシビアなわけだ。男性性向け書籍というのははっきりいって教養コンプレックス産業でもある。「本を買う」という行為だけで自分が偉くなった、なにか成し遂げた気がするから財布の紐がゆるい。しかし女性読者というのは。「面白い」「役に立つ」だけでは買ってくれない。ほんとシビアだよなぁ。
面白かったのは原田さん、いまや夫婦関係も年に一度の契約制度になったそうだ。カッコいいなぁ。
股間の痛みについて医者に電話。敏感な体質の人は半年ぐらい痛むこともある、と聞いてびびる。半年!今は昨日に比べてマシだから。おそらく一週間もしたら異物感程度になるだろうけど、半年はイヤだなぁ。
22日(火)
まだ股間が痛いけど、仕事は休めない。渋谷のNHKで「トーク 三人の部屋」の収録。アニメの可能性や海外での状況に関して監督のりんたろう氏と大学教授の濱野保樹氏との鼎談。スタジオに入って三人で座らされて、あとは一時間以上しゃべらされっぱなし。司会もいないからお互いに間合いを計って話すしかない。いきおい、話はどんどん濃い方向になってしまう。大丈夫か?
23日(水)
昨日に続いて今日も股間をかばいながらお出かけ。hm3誌の鼎談で、銀座に行く。ゲストは海洋堂の宮脇専務。もう専務、とばすとばす。今回、たもとを分かつことになったフルタ製菓の悪口や他の造形作家への批判はともかくとして、すごかったのは今や誰も批判できない世界模型界の至宝、タミヤ模型へ大批判。今年発表予定の食玩(オモチャのおまけフィギュア)で「戦車シリーズ」というのがある。この戦車の模型を担当してるのが海洋堂で、そのために正確無比な戦車の資料を調べて模型の原型づくりをしたら、タミヤの戦車がいかに「全然、本物と違う(専務)」かを発見したという。
「だいたいの模型ファン、岡田さんなんかもタミヤのプラモデルを正確やと思てるでしょ?」
「え、違うんですか?」
「タミヤ自身が『どこそこまで行って撮影した』とか『模型は上から見下ろすものだ。だから多少のデフォルメは必要』とか言うてるから、みんな信じてしまう。タイガー戦車の装甲板なんか全然違いますやん。どんな目してたらあんな角度になるねん。せやのに世界中の模型ファン、みんな自分で資料も調べへんとタミヤの模型は正確やの言うてんねん」
おそらくこの発言、掲載されないだろうからここに記録しときます。
24日(木)
自分のホームページ近況欄に「体調が悪い」と書いたら、「鬱ですか」と心配したメールを何通ももらってしまった。まさかパイプカットで股間が痛い、とは書けないので「心配しないでも大丈夫。でも痛い」と書き直したら、今度は「痛風ですね?」というメールが山ほど来た。ちくしょう。
「真相はモノマガの日記で!」と書いたので、この号が発売されたらいろんな人に聞かれるだろうなぁ。ああ、これで俺も大橋巨泉・松方弘樹の仲間入りか。
ライコスの恋愛相談、書き出すと止まらないほど面白い。
25日(金)
海洋堂から『タイムスリップグリコ』のおまけコンプリートセットが届く。めちゃくちゃ嬉しい!
26日(土)
まだ股間が痛いけど、午後から事務所でガンダム上映会。昨年末のガンダム合コンに参加したメンバーで、PS2ソフト『ジオニック・フロント』の特典映像であるオールCGガンダムを見よう、というイベントだ。僕は午後まで休んで、遅れての参加で女性のみなさんに「サンダーバード」「ジョー90」などITCの素晴らしさを堪能していただく。
柳瀬君と松原きょーじゅの三人で南口の餃子専門店で夕食。なんかいろいろ盛り上がったり語ったりだけど、股間が痛くて早引けする。
27日(日)
外出できないので一日、ビデオを見て過ごす。まずは劇場で見逃した『パールハーバー』。ネットの噂ほどひどくない。中には「二股かけていたイヤな女を懲らしめるために日本軍襲来」とか書いてた人もいたけど、そのヒロインがイヤな女に見えない、ということは俺のオカマエンジンも本物か。「だって、女だったら当たり前よネ!」とか考えちゃうもんなぁ。
期待の真珠湾攻撃シーンは「これどうやって撮ったの!?」という感動の嵐。さてどこまでがCGかとDVD同封のメイキングを見たら、面白いことに印象に残っているシーンはほとんどが非CG。たとえば被弾した零戦が無線塔に衝突するシーン、あれは実物大の零戦を高さ100メートルの巨大ワイヤーから吊して、本当に無線塔にブチ当ててる。衝突のタイミングに合わせて爆発エフェクトを作動させ、手前では軍人役の俳優が逃げている。よくこんなカット、一発で撮れたなぁ、と感動してしまう。180度回転して沈没する戦艦は、艦首部分のみが本物で、それが巨大なジンバルで監督の指示通りに何度も回転するリハーサル風景は、CG合成後の完成映像より感動的だ。米軍の協力を得るために、撮影前に作った「簡単なCG映像」は描き込みこそ少ないけど「なにを作りたいのか」がはっきりわかる秀逸なコンテになっている。
その他、東映の倉庫から発見されたフィルムのビデオ化『ファイトだ!ピュー太』や今まで気になっていた『D.O.R.犯罪者』を見る。たしかに凄いラストだ。見てない人はぜひレンタル屋で探してください。
29日(火)
銀座の居酒屋じゃぽねで『平成オタク談義』の収録。NHKの『BSマンガ夜話』の同系列番組である。僕と唐沢俊一氏がホストで、毎回濃いゲストを呼んで、一つのアイテムや番組に関して徹底的に話し込む、という内容。今日は二本撮りでまずは怪獣映画の名作『サンダ対ガイラ』を語る。ゲストはライターの氷川竜介氏とウェイン町山氏。あまりに漢くさい語らいだけど、この日の僕のセリフはひたすら「いや人生、40才を過ぎても学ぶことは多いなぁ」であった。「ドイツでは怪獣のことをなんでも『フランケンシュタイン』と呼ぶ」など有意義かつ無意味な知識などを得られてうれしい。
後半の収録テーマは『ガンプラ』。ゲストは元ストリームベースで現自動車雑誌編集長の高橋昌也氏と、ガンダム好き女子の総本山・アナハイム女子部のことねさん。さすがにガンプラは唐沢さんの専門外で、なにかというとアニメに流れそうになる話題をプラモに限定するのに苦労した。
収録後、また股間が痛み出し、そのことを唐沢さんに話したかったけど額田さんに「日記で初発表ですよ!」と念を押されていたのであきらめる。
事務所に帰ると別冊『ポポロ』編集部から『30独身女、どうよ!?』の取材申し込み。と、それに続いて『クローズアップ現代』のM氏より取材申し込み。『30独身女、どうよ!?』をテーマに番組制作を考えている、とのこと。ようやく動きがあったか、と喜んでいると次はSPA!から取材依頼。
30日(水)
現代書林の武藤さんと次回作の打ち合わせ。「男の考え方、発想法を女性に教える」という企画が出るが、なんか2万部止まりの予感が・・。
TVドラマで『30独身女、どうよ!?』のセリフを使えないか、という打診。いきなりどうしたの?
31日(木)
『鉄腕アトム』の番組を企画しているという(知らない)人からメールが来る。
「アトムオタクを探しています。アトムのコスプレしてしまう人や、アトム料理をつくってしまう人、自分の子供にアトムという名前をつけてしまった人など。お心あたりありましたら、情報いただけますでしょうか??」
いや、そう言われてもねぇ。
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