16日(木)
大槻ケンヂさんからいただいた『リンダリンダラバーソール』を一気読み。
いや〜面白い!本当にこの人は才能があるなぁ。僕は全然音楽に詳しくない。だから、物書きとしてやタレントとしてのオーケンのファンでしかない。だけど、この自伝風小説を読んでどんなに彼が「バンド」を信じているかを受け止めてしまうと、ちょっと『特撮』(大槻氏のバンド名)のアルバムでも買おうかなぁ、という気がしてくる。
純粋な読者じゃないので、どうしても興味の半分は技法的な部分にいってしまう。とにかく上手いのはコマコという少女との恋愛みたいな関係と、その終焉をバンドブームに結びつけて語っていること。
「不当に得られたものは、かならず奪われる。しかし心正しき者は、かならず取り返す」というジュブナイル小説の大原則に則って書かれている。ラスト近くまでバンドマンの快感を語らずに、最終章で「すべて現在形で」語り下ろすあたりは圧巻。宮部みゆきもこれぐらいセンスが良ければねぇ。
ラストは気持ちいいくらいの「コンプレックスからの解放」である。この場合のコンプレックスというのは劣等感という意味ではない。ゴルディアスの結び目(ほどこうとすれば絡まる神話)のように。時代や個人の中に絡まってほどけない、伝わらなかった想いや叶えられなかった願望、猜疑や嫉妬や情熱や愛情など、それらの塊・コンプレックス(複合概念)が解きほぐれていくさまに感動しちゃったよ。
17日(金)
誰か、早く宮崎駿さんを叱ってやれ。徳間やジブリに宮崎さんを叱ってやる「漢」はいないのか。
『千と千尋の神隠し』DVDの予約特典は「おにぎりフィギュア」だそうである。「宮崎監督が作画参考用に自ら握ったおにぎりをフィギュアにしました」ということらしいけど、それはフィギュアではないだろう。オモチャだろうが。
正確な定義にこだわってもしかたないが、オモチャっぽい人形はドール、リアルさを求めたらフィギュア、ぐらいの定義はどんなメーカーにもあるだろう。最近は怪獣のガシャポンを怪獣フィギュアと呼ぶ人もいる。まぁマニアックでない人がそんな間違いをするのもかまわない。
しかし、宮崎駿って違うでしょ?あんなに自分の弟子やスタッフを「勉強不足だ」と叱りとばしてるじゃない?そんな自分が「おにぎりフィギュア」とかをオマケにつけて平気なの?
「企画販売したのは別の会社だから」って、そんなイイワケは信じないね。無断で作画参考用の資料を複製なんかできるはずはない。宮崎さんは知っていたはずだよ。「おにぎりフィギュア」が予約者特典になってるのを。
僕は宮崎駿監督、すごく好きだったんだよなぁ。バイトしてベータのデッキ買って『未来少年コナン』を録画したし、『カリオストロの城』の上映館を求めて関西中の名画座をさまよう、いわゆる「カリ城ジプシー」だったこともある。
でも、「となりのトトロ」あたりから、このアニメの神様はちょっとヘンだ。声優に糸井重里や立花隆を使い出した。シロートだろ、彼らは?アニメーターにはあそこまで職人技を求めるくせに、なんで声優は素人芸でも平気なのか。「話題になるから、売れるから」でいいのか?そのことがどんなに「プロの声優」を侮辱し傷つけているのか。その結果、アニメ文化を自分自身で貶めていることが、宮崎さんにはわかっているのだろうか?
そう考えると、どんどん不信感は募る。講演会では「アニメばかり子供に見せるな。自然の中で遊ばせろ」と発言してるけど、じゃあDVDなんか売らなければいいのに。映画とビデオだけでもう充分に関係者は潤っただろうに。いや、収益の20%をユニセフに寄付するでもいい。通常の日本映画じゃなくて、興行収入だけで充分にペイできたんだから、なんであの作品のDVDが4800円もするのか僕には疑問だったけど、そういうふうに使うのなら「宮崎さんらしいなぁ」と納得もできる。
僕は別に宮崎さんに「儲けるな」と言いたいわけではない。でも、言行不一致のあんまりみっともない姿を見せて欲しくないだけなんだよなぁ。
18日(土)
朝から雨で、娘の運動会は中止。しかし昼前には晴れてしまった。弁当で作るはずだった「オムライスおむすび」を昼食に作ったら、これが想像以上に面倒。ああ、こんな面倒なの朝からつくらなくってよかった・・。
午後から事務所でビデオ「アリー」と「ソードフィッシュ」を見る。開幕早々の爆発シーンを見て、もうそれだけでお腹いっぱいになった。
夜中に散歩に出たら、コンビニでサンダーバード食玩が並んでいたのでオトナ買いする。
19日(日)
メールの整理やウィルスチェックなど、久しぶりにパソコンがらみの一日。「これはちゃんと返事を書かねば」というメールが、もう4ヶ月分も溜まっている。どうしたもんだろう。
作業の合間に、人から「これは岡田さん向けですよ」と奨められていた『ザ・ゴール2』を読み始める。長い。明日から大阪へ帰省するので、新幹線で読もう。
レンタルで借りてきた映画「ムーランルージュ」を見る。冒頭30分の面白さは無類だけど、後半は「いわゆるソレっぽい話」になっちゃった。ハリウッドの弊害というか、数人掛かりでシナリオを書くとどうしても可もなく不可もない展開になっちゃうよねぇ。
風呂から出て、昨日買ったサンダーバードの食玩を開ける。初立体化のファイヤーフラッシュ号もいいけど、磁力牽引車が素晴らしい。
この食玩、夏には『謎の円盤UFO』も出るそうだ。楽しみだなぁ。
20日(月)
母親が存命中に不動産処分を、と言い張るので大阪へ。こういう時、長男はイヤだ。不動産屋や銀行屋の前で座ってるだけなんて意味ないのになぁ。
新幹線内で『ザ・ゴール2』を読みふける。面白い!
夜中にラーメン食べに心斎橋を歩いていると、道頓堀のグリコ巨大看板がサッカーユニフォームを着ていて驚いた。向かいのカニ道楽の看板・巨大ロボットカニもサッカー服!そういえば昭和天皇の御崩御のとき、有名な食い倒れ人形は黒い腕章してたそうだからなぁ。いや〜、久々に大阪らしいとこ、見せてもらいました。
21日(火)
明け方までで『ザ・ゴール2』を読了。この思考プロセスで使用されているチャートの組み方は相当に使えそうだ。専用ソフトがあると便利だろうが、まぁインスピレーションでも代用になるだろう。東京へ帰ったら、さっそく試してみよう。
堺市・白鷺の泉州銀行へ。母親はあんがい元気そうだった。驚いたのは母親の家を買った人、実は美少女系イラストレーター村田蓮爾の母親だった。
「息子が『快楽天』という週刊誌の表紙やってる」と言われて、なんかなにも言えなかった。ていうか恥ずかしすぎます!日常会話で『快楽天』なんて!
「同じ業界の方ですか?」と聞かれて、おもわずオオゲサに否定してしまう。向こうは不思議そうだった。まぁ普通の人から見れば、村田氏と僕の客層など同じに見えるんだろうな。
帰りの新幹線では大いびきをかいて寝て、なんとか夕方のダイエット・カウンセリングに間に合った。
22日(水)
「ストーリーアナリスト」読む。ハリウッドでは持ち込みや売り込みシナリオの下読み専門家・ストーリーアナリストがいるという。そのノウハウを徹底的に解説した翻訳書。しかし半分読んで眠くなる。興味深いことは一杯書いてあるんだけど、誰か下読みしてくれないか、と落とすのも芸がないか。
このところ毎日、ウォーキングとアイソメトリック運動で筋肉トレーニングしてる。基礎代謝を上げて「痩せやすい体質」にもっていこうとしてるんだけど、なんかもう「僕じゃない!」ってカンジですか。
23日(木)
午後から文春の田中さんたちと打ち合わせして、ここから先の作業確認。
いちおう、舞台となる1977年から95年までの18年間の年表はできた。これを各年度毎に10〜30枚程度のエピソードカードを作っていく。ファイルメーカープロで作業をはじめるに当たって、まずはカードに書き込む情報の設定とカードデザインの両方、つまり「フィールドの定義」をしなくてはならない。
小一時間ほど苦闘してようやっとカード情報が決まり、いよいよ書き込みをはじめる。記憶違いを防ぐために「和美用」というツッコミ用フィールドも準備した。
夜、散歩しながら考えてしまった。僕は今、かなり綿密な準備をしながら小説を書こうとしている。まず「小説とはなにか」という定義。もちろん誰にも納得してもらえるような定義ではないけど、少なくとも自分にとって小説とはこれだ、という定義は見つかった。次は年表、その次はエピソードカード、おそらくその次はキャラクターシートを作ることになるだろう。
しかし、本当にそこまでの準備が必要なのか?不安だから、自信がないから手間のかかる準備ばかりやって、逃避してるんじゃないのか?
考えれば考えるほど思考はこんがらがる。しかたないので夜道を歩きながら、声に出して問題点を列記した。はたから見るとまるっきり危ない人だけど、「論理的思考」という効率の悪い手段しか知らないんだから仕方有るまい。(世の人は「論理的思考ができる人は頭が良い」と思っているようだけど、大間違い。本当のクレバーさというのは「考えずとも結論に達することができる」というものだ。いわば「無意識領域が論理的だから、意識領域が直感だけ動く」という頭脳が、僕の考える頭の良さである)
〈岡田の思考ルーチン〉
自分には書けない
↓なんで書ける人がいるんだろう?
↓どんな魔法を知ってるのか
↓自分が書き始めても、それは小説ではない気がする
↓方法を知らないから、書き始めることもできない
↓ずっと、これが苦しい
↓とにかく、こういう苦しいのはイヤだ
↓どっかに問題点があるはず
↓「書き方がわからない」だろうか?いや、コラムやエッセイなら書ける
↓コラムと小説の違いは?コラムにはオチ、小説には結末
↓思い出話と自伝小説の違いがわからない
↓自分が書いたら、たんなる思い出話では?
↓小説っていうのは、小説っていうのは、なんかもっと人間観察や人生に深みがあって・・
↓でも、いま本屋で売ってる小説、全然ダメ
↓その全然ダメなやつすら書けない俺は・・
とにかく、こういう思考ループは疲れるし時間の無駄だ。どこかに断ち切るポイントあるはずである。よーく考えてみると、「A:コラムは書けるけど、小説なんて」と「B:いま売ってる小説はダメ」という部分には、あきらかな矛盾が含まれている。Aは書くものの種類やジャンルの話だけど、Bは書いたものの達成レベルの話だ。
つまり僕はいつのまにか「小説」というのを、文字の羅列ではなく、完成度のレベルとして捉えている証拠である。なるほど、これは解決できるはずもない。「自分に書けるだろうか」に対しては「単に完成できるかどうか」のみを目標にすればいい。「そんなのが小説と呼べるのだろうか」に対する答えは「気が済むまで完成度を上げても良い」である。これは二つの問題であって、ごちゃ混ぜに考えていたから混乱したんだな。
24日(金)
昨日からずっと考えている。
コラムは「オチ」、つまり意外な結論や斬新な切り口がウリだ。しかし、小説で提示できる「人生とは」とか「恋とは」なんて、当たり前のことしかいえない(それで正しい)ので、切り口や結論が斬新である必要はない。それより、上のような「ありきたりかも知れない結論にいきつくまでのプロセス」とか「苦しみ」というのが美味しいのだ。
上の思考ルーチンに「自己嫌悪」を入れると、あっというまに純文学とかができるんだろうな。納得。
25日(土)
夜、スパイダーマンの深夜興行に行く。ティム・バートン版のバットマンに近いダークヒーローっぽさがカッコいいけど、やはりバートンみたいな暗さが足りない。でも手首から糸を出しながら(射精のメタファー!)、マンハッタンのビル街を飛び回る映像は最高!
26日(日)
ガンダム専門漫画誌『ガンダムA(エース)』を読む。あとはひたすらカード作りとダイエット。俺ってマジメだなぁ。
27日(月)
大気摩擦について語ってみよう。
とにかくねー、オタク業界の人はみんな、物理が弱すぎ!最新の科学知識とかは好きでも物理というか理科レベルの知識が本当に弱い。
これはオタク業界と物理の関係だけでなく、とにかく日本人は「最新知識」をありがたがりすぎる。哲学とか思想なんて「自分の言葉で語ってナンボ」の世界なのに、日本で思想家というと海外哲学(それもいまどきフランス!)とかの翻訳や紹介の専門家ばっかしで、まったくバカらしくて。
いやいや、今は大気摩擦の話だった。
隕石や宇宙船やスペースコロニーが地球の大気圏に突入すると「大気摩擦」で燃え尽きる。柳田理科雄氏まで、そう書いている。
まぁ柳田さんは「実は物理や理科には弱いけど、作品の揚げ足とるのはうまい」という、編集屋にとっては理想のライターだから、この人を責めても仕方がない。責めるべきは柳田本を読んで信じちゃう人だ。
と学会会長の山本弘氏は柳田さんを「アニメや映画に関しての知識がない、愛がない」と責めるけど、僕に言わせれば責めるべきは「実は科学に弱いライターの柳田理科雄」を祭り上げちゃった出版社たちじゃないの?
あ、また話がそれた。
もちろん「大気摩擦」は間違いである。超高速で大気中を移動する物体が、空気との摩擦熱で何千度にまで過熱される、なんてことはない。
ではなぜ、隕石や宇宙船は大気圏に突入すると燃え出すのか?
隕石や宇宙船の前方にある空気があまりの速度に逃げ場を失い、急速に圧縮される。このような現象を「断熱圧縮」という。外の系と熱のやりとりができずに、圧力が増大している状態、という意味だ。
圧縮された空気中の分子は、激しくぶつかり合い、持っていた分子の運動エネルギーは熱へ変換される。中学校の物理で習う、ボイル・シャルルの法則である。
というわけで、今後ガンダム関係の書籍では「大気摩擦」というの、禁止ねキンシ!富野さんも間違ってたけど、みんなも(柳田理科雄氏も)物理というか理科、弱すぎ!
でも、問題があるぞ。用語としては「大気の断熱圧縮で」って、直感的にわかりにくい。その意味では「大気摩擦」って、間違ってるけどわかりやすくて便利な言葉だったなぁ。う〜ん、「大気加熱」とか、いまいちカッコ悪いしなぁ。
29日(水)
娘が三原順の『はみだしっ子』を読んでいた。をを、いよいよ彼女もオタクになるのか。
30日(木)
事務所で「オタクマンスリー」のビデオ収録。氷川竜介、原えりすん、sawadaspecial、鶴岡法斎、みのうら、という豪華すぎるメンツで馬鹿話。これから来年3月まで毎月一回、これがあるかと思うと楽しい。
収録後、みんなで吉祥寺三越裏の焼き肉屋で打ち上げ。まっさきに「割り勘ですか、オゴリですか?」と問いつめられた。そうか、不安にさせてスマン。オゴリだよ。
31日(金)
静の目が腫れた、と和美から電話。明日、眼科医に連れて行くことにする。
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