岡田斗司夫のオタク日記
2002年9月1日〜9月15日
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9月 その1


1日(日)

 体重がなかなか減らなくなってきた。これまでは順調に毎週1キロづつ減っていたけど、この10日ほど停滞気味。管理栄養士の京須さんにもらった「体重推移表」を見つめてため息の日々である。


 理想的なダイエットは「毎月、体重の3〜4%づつ痩せること」と言われている。つまりこの表の黄色と黒の線の間にあれば大丈夫、ということだ。なんだか宇宙船が地球へ帰還するときの再突入角度表みたい。これ以上浅い角度だと大気層にはじかれてダメ、深すぎると空力加熱で燃え尽きてしまう、というアレのことね。


2日(月)

 大阪の姉から電話。母親が緊急入院したらしい。なんでも黄疸が出て「今度は危ない」と言われているらしい。しかしもともと昨年末に医者から悲痛な声で「持ってもあと三ヶ月です」と言われたのに、退院するわ遺産分けとかでやたら元気だわ、なかなか死なない婆さんなので話半分に聞く。
 夜、あらためて電話したら、いつも気楽そうな姉がやたら心配そう。「帰れるのは再来週になると思う」というと「いや、もっと早いほうがいい」と言う。姉がここまで言うのは珍しいので、仕事のスケジュールを組み替える。


3日(火)

 午後からダイエット会議。今日はバジリコの吉田さんは「火急の用件」で休み。彼女がいないとなんとなく盛り上がらず、淡々と進む。体重が減らない、サイズも減らないという愚痴を聞いてもらった。さすがに昨日ぐらいから歯の痛みはとれたのでダイエットも気楽である。
 和美とロフトをぶらぶら歩き。タイムスリップグリコ第二弾が発売されていたので、さっそく大箱で二つ買う。「おお、それが噂の『大人買い』!」と和美は驚いた。大箱二つ程度では大人とは言えない。大人ならドカ買い(両腕で抱えて頭の高さ以上に買うこと)でなくっちゃ!
 夕方、外資系企業秘書の泉さんとお茶。吉祥寺南口の喫茶店・花仙堂にいく。僕が取材やインタビューで使う喫茶店と言えばだいたいこの花仙堂か、同じく南口駅前のルノアールか、である。この喫茶店の人には、いったい僕はどのように映っているのだろう。年中妙齢の女性、それも毎回違う人と何時間も話して、その内容も相当に突っ込んだものである。デート、という甘い雰囲気ではないし、なにか売りつけてる様子もないし、と不審に思われているのではないだろうか。花仙堂のスタッフの皆さん、すいません、そこ仕事場に使わせてもらってます。
 インタビュー後、もう一度ロフトに戻って台所用品を細々と買う。食器洗いスポンジとふきん(台所用品は青と銀で統一してるので、ずっと探していた)。歯磨き用コップ


の他に、風呂で足をマッサージしながら洗えるリフレステという商品を買う。ちょっと説明が難しいけど、半透明のプラスチックでできた足ツボマッサージ台と思って欲しい。裏一面が吸盤になっているので、浴室でも滑らない。


 この表面を充分に濡らしてからボディソープを振りかけ、両足をのせて前後に動かす。もちろん、猛烈にくすぐったい。しかし、しかしそのまま続けているとどんどん泡立ち、足の裏や指の間が気持ちよくなってくる。3分もやった後で風呂にはいると、足裏がジンジンして何とも言えない気分である。いやぁ、いい買い物をしたなぁ。


4日(水)

 昨日のダイエット会議で京須さんが持ってこれなかった体脂肪計が宅配で届く。さっそく計ったら36・3%。なんと前回よりわずかとはいえ増えている!ショックでぼんやりしているとまた姉から電話。母親が緊急手術をした、という。
 詳しい話はまた夜に電話することにして、次は柳瀬君からCS番組の報告。楽しみにしていた「平成オタク談義」は年内収録はナシということらしい。ルーチン化したパンドレッタよりずっと面白いのになぁ。
 あと、また今年も「オタク大賞」をやるとか。マネーの虎で抱き枕の素晴らしさを語った彼にあげようかな?
 夜、姉に電話。大阪へ帰省の予定を一週間繰り上げて来週の土曜に帰ることにする。


5日(木)

 声優雑誌hm3の鼎談。今回のゲストはアニメ脚本家の首藤氏。山本さんの知り合い、ということで氏が呼んだゲストだけど、どうも僕には山本さんの「ようこそようこ」人脈は理解できない。前回の「かないみか」さんも今回の首藤さんもちょっと話が盛り上がれずに終わってしまった。


6日(金)

 扶桑社の織田さんが来社。今週の「だめんずうぉーかー」に出ていた某有名女流作家というのは林真理子に違いない、と問いつめるが知らないとかわされた。い〜や、お前は知ってるはずだ。アレは林真理子だろう!
 織田さんとはフロンの続編的対談本の話。対談相手や内容を仕切り直して詰める。
 アエラ「現代の肖像」の担当編集者・福山さんより「産休で担当から外れます」とのメール。前回の速水さんとの打ち合わせをあんなに面白がってくれた人だけに残念だ。


7日(土)

 姉に電話。胆管にパイプを入れる手術、無事に成功したらしいが、母親は相変わらず真っ黄色らしい。「お母ちゃん、カレーみたいな色になってるで。早よ帰っておいで」と言われる。口調は相変わらず軽いというか悪いけど、心配そうだ。


8日(日)

 溜まっていたメールの返事を、ようやっと4月分まで書き終える。休憩してタイムスリップグリコを開封。
 あいかわらず鉄人のシリーズが素晴らしい。


 比較のために他社のシリーズと海洋堂のを並べてみる。



 純粋にサイズのみを比べると他社のものが大きいのに、クローズアップで見ると海洋堂の方が大きく見える。鉄人や他のロボットの組み合っている「空気」までいっしょに圧縮してるような出来である。他社のディオラマが台座の上に乗っかっているようなのとは対照的に、海洋堂のは台座からはみ出してこちらの世界に踏み出してきそうな迫力だ。
 正直言って、別に海洋堂が造形力で他を圧しているとは思わない。問題はセンスであって、どんな題材をどういう構図で、というアレンジ力が凄いのだ。あ、あと中国の工場にそれを再現させる「下請けコントロール力」もすごいと言えるな。


9日(月)

 いよいよアエラの取材開始。速水さんに生まれたときからさかのぼって今までの話を、と言われたので語り出す。およそ7時間近く話しっぱなしでようやっとガイナックス設立のあたり。もちろんはしょりながら、というより「なぜか」を説明する時間もないので「とりあえず、こういうことがあった」という事実の羅列ばかりだ。その解釈は速水さんに預けっぱなしになる。
 話していてもビミョーに宮台氏関係へと話が流れる。ちょうど今日、事務所に届いた「噂の真相」に取り上げられているので、ずいぶんとナーバスになっているみたいだ。僕は以前、あの雑誌の19周年記念コメントを求められたときに「西暦2000年で休刊にする、と宣言したんだからちゃんと約束は守ってください。断筆宣言したのに撤回した筒井康隆みたいなうすらみっともない真似はしないでください」というコメントを入れた。
 後に編集者から直に聞いたのだが、それが岡留氏を激怒させて(と編集者に直に聞いた)、当時宅八郎氏と揉めていた件も重なって「オタクは全部ダメだ」という雑誌の方針ができたらしい。以後、あの雑誌が僕を取り上げるときはすべて「あらかじめ書く内容は決まっていて、その方針に合う言質を取るため」に取材されている。
 とまぁ、こういう話を速水さんにして慰めたら、「そんなのジャーナリズムじゃないと思いませんか?」と聞かれた。僕自身は「ジャーナリズム」という宗教には加入していないので、噂の真相もアエラもワシントンポストも同じようなもんでしょ、としか言いようがない。純粋客観報道などあり得ようがないし、作り手がそれを目指すよりずっと大事なことは、読み手が「つねに疑い、検証しつつ読むこと」だと思うからだ。
 僕にとって「優良な・良心的なメディア」というのは、記者が優秀だったり正義を体現しているメディアではない。同じメディア内の他の記事さえも常に疑っている「懐疑の視点」があるメディアなのだ。
 僕が2ちゃんねるを好きな理由は、その辺にあるのだろうな。


10日(火)

 体脂肪率、計ってみたら今日は34・3%に落ちていた。なんで一週間で1%も下がるのか!なんかこの機械が信じられなくなってきたぞ。


11日(水)

 今日も午後からアエラの取材。前回あんなに話したのに、今回もまだまだ5時間近く話しっぱなし。ようやっと「フロン」出版近辺まで話が進む。というより、速水さんの興味が「フロン」周りにあることがはっきりしたので、そのあたりのみを集中的に話したような気がする。
 終わったらさすがに頭が動かない。


12日(木)

 娘の風邪、今回はちょっとひどくてもう一週間近く休んでいる。和美がさすがに落ち込んでいるので、世話を任せてもらうことにした。ベッドに座って、久しぶりに娘とゆっくり話す。


13日(金)

 ダイエット日記を連載しているバジリコの吉田さんが来社。今まで話していなかった原稿料のことや諸々を打ち合わせ。
 明日から大阪なので、なんとなく落ち着かない。夜、事務所にもう一度戻って「オタクの歩き方」の下書きをあげる。これでなんとか大阪へ帰れそうだ。


14日(土)

 朝から和美相手に「オタクの歩き方」を口述して、荷物まとめて三人で東京駅へ。途中で食べるケーキなどを買って、いよいよ新幹線へ。しかし娘は新幹線の臭いに酔って、5個もケーキ買ったのに一個でダウン。「もったいない、って怒らないの?」と和美に聞くと「ケーキは華やかな気分になるために買ってあげる、という約束で買った。そのケーキを食べようが捨てようが、当初の『華やかな気分で新幹線に乗る』という目的は達成したのでいっこうに構わない。いや、むしろ気持ち悪くて食べられない方が身体にはいい」と冷静に返された。こういう時の和美は、本当に論理の申し子で美しいなぁ。
 夕方、堺東の市民病院に到着。母親はあんがい元気そうだった。夜は母親のマンションに泊まり、マンガ夜話用の「子連れ狼」を読む。


15日(日)

 朝から母親の見舞い。母の心配事を聞く。
「不安なので病院には入っていたいけど、これ以上の延命治療はしたくない。しかし病院は『治すところ』なので、治すつもりがないなら退院してくれ、と言われている。どこか良いホスピスはないだろうか?」
 これだけだったら、ホスピスをいろいろ探したらいいだけである。しかし病院の担当医の立場を立てたい。変な患者の入院してるホスピスはイヤだ、などの個人的思い入れなどが混じって相当に混乱していた。一つ一つ話し合って、「じゃあこうすれば?この部分は助けるから、この部分は自分で決めて」と進める。
「斗司夫が言うと、なんでも簡単そうに聞こえるなぁ」と呆れていたけど、人間の悩みなんて子供でも末期ガンの患者でも、あるいは恋愛相談でも、実は驚くほど簡単な構造でできている。問題は「一つの悩み」が「他の迷い・悩み」とリンクして、相互が衝突(コンフリクト)しているから、自分一人で考えていたらどうしても解決不能に思えたり、ひどい場合には「問題の本質・中核」が掴めない気がするだけだ。
 いくつかの問題を預かって東京に帰る。持ってきた「子連れ狼」は全部読んでしまったので、娘の読んでいる「ダレン・シャン」を借りて新幹線で読む。面白い。しかしう〜む、「ハリー・ポッター」よりは人物造型が高級だけど、ハリー〜ほどのケレンみがないなぁ。


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