岡田斗司夫のオタク日記
2002年12月1日〜12月15日
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12月 その1


1日(日)

 スパワールドの取材予定だったけど、先方と連絡が取れなかったので日本橋へ。オタク専門店「ジャングル」に行く。以前に個々のオープン記念イベントに出演したことがあったので久しぶりに覗いてみた。階段を上ろうとして絶句。蹴込み、つまり階段の奥の板に僕の顔写真が!そういえば大阪では地下鉄階段の蹴込みまで広告スペースにする、という笑い話がよく出る。「キヨーレオピン」とか「キャッシングサービス」など階段の一段ごとに違う広告が入っていて、大阪に慣れない人が見たらめまいしそうな風景、と言われる。で、このジャングルだ。大阪名物・蹴込み広告に僕の写真が使われるとは。感慨もひとしおというかなんというか。とりあえずデジカメで撮影したけど、映っているだろうか?


 その後、日本橋を取材。新しくできたガシャポン博物館をのぞく。最上階は「ガシャポン・カフェ」になっていて、そこでは親子連れが休んだりマニアが交換会を開いたりしていた。本当にめまいがしてきた。


2日(月)

 「オタクの迷い道」文庫版の対談で、海洋堂本社へ。京阪急行線には各車両ごとに成田山のお札があって驚いた。


 海洋堂へ行くのは4年ぶりぐらいか。新社屋が出来てからははじめてである。噂の恐竜、ちゃんとビル屋上にありました。


 対談後、大映から譲り受けた大魔神(実物)を見せてもらう。以前に見たときは経年変化で見るも無惨な姿だったけど、造型スタッフにレストアされて、専用の超巨大ケース(建物、というべきだろうけど、なんか「超巨大ケース」がぴったりくる)に入っているのを見ると、「収まるべきところに収まったなぁ」と感心した。


 宮脇専務と対談後ももにょもにょ話す。「なんかいっしょに仕事しましょうか」という流れになった。
 午後から東京へ移動、新宿ロフトプラスワンでの「第二回オタク大賞」の収録である。楽屋で唐沢さんやロトさん、眠田さんと挨拶。切通さんとは一年ぶりだし、米沢嘉博さんは夏コミケ以来だ。
 収録内容は前年ほど盛り上がれなかった、というのはあんまり景気のいい話が少なかったからだろうね。スタッフから事前に「大賞だけは、できるだけポジティブに」と頼まれていたので、今年オタク業界で一番景気の良かった海洋堂に、と決まる。
 やおい・ボーイズラブを語るおねーちゃんが壇上で張り切っていたので、「あ、これは僕と唐沢さんは『受け』に徹すればいいのか」と配役をその場で決める。以後、壇上では「今のオタク女子はこうなってるんですよ!(決めつけ)」「ええっ、知らなかった〜(大げさなリアクション)」というパターンに終始する。唐沢さんも僕も、こういう演技には慣れているので楽と言えばこれほど楽な進行はない。
 打ち上げは唐沢さんご指名の中華料理店へ。カエルははじめて喰った。まぁ喰える。僕は鶏肉の方がいいけど。


3日(火)

 定例のダイエット会議。どうやら本当に90キロ峠は越したみたいだ。なんとか89キロ前後で安定する。
 海洋堂から「尾黒と尾白」フィギュアが届く。尾白の彩色、具体的には和服の絹の質感が表現されていて驚いた。


4日(水)

 新潟日報の取材。テーマは恋愛と結婚。取材に来た記者がたいへんな美人で驚いた。
 アンアンの取材。テーマはマンガについて、で少女マンガの海外での評価など1時間ほどしゃべる。
 月曜に「オタク大賞」で扶桑社・織田君に「デルプラド・中世の城をいつも日記で取り上げてくださって、ありがとうございます」と礼を言われた。いや、ただ単にはまっているだけだから、というと「お礼に記念品を贈ります」と言われたのが今日届いた完成型のミニチュアモデルである。そうか、完成したらこうなるんか。
 深夜の散歩でとてつもない名案を思いつく。明日以降、ゆっくり考えてみよう。


5日(木)

 マンガ夜話スタッフ・大森さんが自作の「尾黒&尾白」フィギュアを持参してくれる。


これもまた、かわいい。互いのダイエット情報を交換し、励まし合う。ダイエットにはこういう対話が必要なのだ。
 昨夜、思いついたことを確認に、青山まで買い物。数万円を使って資料を購入。うん、これはいけるな。


6日(金)

 市ヶ谷駅の「パク森」でカレーうどんを食べて、そのまま紀尾井町の文藝春秋本社へ。かつてここに企画の持ち込みして「オタクなんてうちの読者は興味ない」とはねられた覚えがある。ざまあみろ、と吠えても意味はないけど、なんとなく「ざまあみろ」な気分。
 文庫本用に唐沢さんと対談、オタクの世代論である。
 唐沢さんはつねづね、唐沢さん本人や僕など昭和30年代の生まれを「第一世代オタク」と定義している。僕にしてみればもっと以前の世代からオタクはいたような気がしていたので、そのあたりをうかがってみると、実に明確な定義だった。
 「オタクとは、岡田斗司夫が自分をオタクです、とメディアで宣言した瞬間に誕生した」
 なるほど。それ以前のオタク達というのは他者から「オタクだ」と決めつけられたり分類されたり、という関係だったのか。これは面白い考え方だ。
 と、これ以後の話は、文庫版で読んでください。
 事務所に帰って、明日の海洋堂専務との話のレジュメを作る。


7日(土)

 午後から秋葉原の海洋堂へ。近所のルノアールで宮脇専務と仕事話。水曜夜に思いついた名案を説明し、「これをいっしょにやろう」と提案した。まだどうなるかはわからないけど、来年の僕は海洋堂と食玩の仕事をすることになりそうだ。
 専務から、江崎グリコの社長とご飯食べた話を聞く。
 「え?ほんだら誘拐の話は…」「聞けなかったんですわ〜!」
 そりゃそうだろうな。
 「ボーメは『あの人はもう死んでる。あれはニセモンや。若王子さんや!』と言いだして、またボーメの妄言が始まったかと…」
 そうか、ボーメ君は妄言を吐く人だったのか。早く僕も聞きたい。楽しみだなぁ。
 電車で移動中にも文庫用のコメント、直接単行本に書き込んで、ほぼ下書きが終わった。すごい早さで仕事が進む。


8日(日)

 文庫用のコメント作業の合間に、ハリウッド版『リング』を観に行く。
 ・・・同じやんけ!
 夕食を西友の近所に出来たオーガニックレストランで。客は僕一人、雰囲気は一流、料理は二流(野菜のソテー、油ギトギトだった)、サービスは三流だった。(ウェイトレスの声が小さすぎて、なに言ってるのか聞こえない。注文したのは「お総菜コース」だけど、ご飯が来たのは主菜のずっと後)


9日(月)

 すっげぇ雪だけど気にせず朝から神保町古書店街へ。いろいろ見て歩くけどヒミツ。
 TVブロスよりマンガ夜話DVDについてコメント依頼だけど面倒で断る。
 深夜、コレクション置き場でゴソゴソ。喉が痛いのは埃か風邪か。


10日(火)

 張り切りすぎで深夜3時半に目が覚めたので、そのまま仕事、
 昼前には眠くなる。低血糖でめまいがする。
 悪巧み企画でT社のO野さんに連絡。
 文庫用のコメント、書き出すけど調子が悪い。明日までお休みにしよう。
 夕方からデルプラド社のパーティーで小笠原伯爵邸へ。昭和二年に建てられたスペイン様式の洋館を借り切っての豪華パーティーである。外観からしてこれ。


 中庭といい、屋上の貴賓室といい、中庭といい、まぁ俺のような薄汚いオタクには似合わない…と僻み根性が出てしまう。途中でフラメンコショーまで始まるしまつ。
 ダメだ、俺のいる場所じゃない、と早々に退散した。


11日(水)

 年に一度の立教大学の講義、今年で最後になる。


今年もまた少し「創造性」について話しをするけど、あとで学生から集めた感想文(リアクションシートというそうだ)を読むと、一番反応がビビッドなのもやはりこの部分。
「今の若者には想像力がない、と言われてずっとコンプレックスだった」「真似をするだけでは想像力は生まれない、と言われて、人まねしかできない私は困っていた」「想像力がある人間だけが本当の人間で、私みたいに独創性のない人間は生きている値打ちもない、と言われてきた」
 …どない思いますか、文部科学省の偉い人。もうそろそろ「創造性を育む」とか「個性重視の教育」はやめたら?いや、別に僕は「個性重視の教育は学力を低下させ」とか、馬鹿な経済学者みたいな事を言うつもりはないですよ。学力低下も結構、その対価としてなにか「いいこと」があるんだったら、学校教育の低レベル化ぐらい、家庭で出費して(塾の費用等)支えてもいいと思います。でも、あなたたちが「創造性」「個性」と騒いでも、子供達に無用なコンプレックスを押しつけているだけ、という結果はもう出てるでしょ?
 「創造性を与える学校」「個性を与える学校」、って無理でしょ?創造性や個性を与える教師、というのが存在するとしたら、その創造的・個性的教師を育成するカリキュラムってあるわけ?
 ないでしょ?
 書店に行けば「こうやって子供の個性を伸ばせ!」「想像力をつけろ」という書籍は氾濫してますよ。でも、本当にそんなことが可能ならば、なぜ「個性や想像力を伸ばす教師のマニュアル」が存在しないのですか?
「偏差値重視時代の反動ではじめただけで、個性を重視した教育、というのは間違いだった」
 素直に認めて、国民も子供も学校も、楽になりましょうよ。ね?


12日(木)

 体重87キロ。体脂肪35%。まだまだ大デブである。体内にも脂肪が30キログラム近くある。しかし7ヶ月前は108キロで体脂肪40・1%、つまり脂肪が43キロ以上あったわけだ。これまでのダイエットで21キロ落としたけど、そのうちの13キロが脂肪である。これがはたしていい数字なのかどうかはわからない。でも風邪はひきにくくなってるし、体力も向上している。
 と思ったら、深夜に体重を量れば再び88・5キロ。うあー。


13日(金)

 ものすごい勢いで文庫用の原稿を書き続ける。俺、働いてるなぁ。
 夕方から南Q太さんと扶桑社本用の対談。夫と別れた直後の南さんは相当に過激で、それ以上にオトコマエな方でした。
 吉祥寺はいたるところクリスマスの飾り付けで、最近出来た激安ふぐ料理店の水槽も満杯であった。



14日(土)

 昨日の対談で「男と別れたいとき、もっともオトコゴコロを傷つける一言とはなんだろう?」という話しになった。で、対談をセッティングしてくれた扶桑社・織田君からメール。

帰る道すがら、ふっと思い出して、「何であの時思い出さなかったのだろう」と悔やんだのですが、 別れ際、付き合っていた男限定ですが、必殺の一言がありました。

「あんたのセックス、実は最低だった」

これ、室井佑月さんが言っていたものです。これはきついです。
「気持ちいいふりしてやってたんだよ」などがオプションでつくと、更に攻撃力倍増です。だめんず○4の対談での名言でした。

 そうか?くらたまや室井さんが軍人なので、セックスに関してどうしても「勝ち・負け」を持ち込んじゃうから、そういう世界観なだけじゃないの?というより僕は彼女と別れるときにそんなこと言われても全然悔しくないけどな。言い返してやればいい。
「じゃあなんで、そんな最低なセックスに感じたふりしたの?そんなに僕が好きだったの?感じるふりしてまで、好かれようと思ったの?…ふーん、可愛いねぇ」
 くらたまみたいなタイプはこう返されると七転八倒して悔しがるから、織田君いちど試してみたら?


15日(日)

 アマゾンから到着した『フロム・ジ・アース・トゥ・ザ・ムーン』のDVDを観る。


 『アポロ13』で主演してから大の宇宙オタクになってしまったトム・ハンクスが企画・総指揮をつとめたTVシリーズで、NHKでも放映されたから見た人も多いだろう。原作のノンフィクション『人類月に立つ』をしばらく前に読了してたので、映像でも確かめたくなったのだ。1時間番組が各ディスクに3話×4枚+特典ディスクにはメイキング。分量も凄いけど中身も凄い。当時の宇宙関係の資料を調べて困るのは「絵としてどうなっているのか?」が分からない場合が多い、と言うこと。しかしこのディスクを観れば、たとえばアームストロング船長の月面第一歩というのがどのような位置関係だったとかがたちどころにわかってしまう。
「それがどうした」と言われればそれまでだけど、史実ものの映画でもこの作品ほど「実際はどうだったか」にこだわった作品などほとんどない。ディティールを描けるTVシリーズだった、ということと、制作指揮がトム・ハンクスだった、という幸運によってできた奇跡なんだよな。
 DVDを観ながら文庫用のコメント、ペースを上げる。


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