皆さんこんにちは、獅子児です。 遅くなりましたが、6/5の水曜日に行われた「オタク文化論」の模様を レポートさせていただきます。 ************************************** 6月5日 獅子児は、意気揚々と井の頭線に乗り込み、駒場の東大教養学部へと到着した。 久しぶりの大学キャンパスの雰囲気を懐かしみつつ会場へと移動。「駒場寮の 取り壊し反対!」と書かれた立て看板を横目に、12号館2階の1222教室の 前にたどり着いた獅子児が見たものは・・・・・教室に収まりきれずに、前後の入り口 からあふれでた聴講者の塊だった。 取りあえず後ろ側の入り口から中を覗くと、中は通路まで立ち見、座り見の聴 講者が詰め込まれており、到底入り込む余地はなさそう(でも入り込んでいった 学生さん達も何人かいた)仕方がないので入り口のすぐ脇にぴったりと張り付い て待つことにする。 *この後の報告は主に聞き取りが出来た音声と、わずかに入り口から のぞけた映像を元に、獅子児自身の推測と意見を加えてお送りする 事をあらかじめお断りしておく。 やがて岡田さん登場。開口一番「今鬱期に入ったので、ゲストとの交渉が予定 通りに行かず、講義内容が変わってしまいました」とお詫び。 次に黒板の書き込みを見て「ところでこれは何?」と問いかける。獅子児の角 度からはハッキリとわからなかったが、聞こえた内容から推測すると「ときメモ 本を作ったが、コミケに落ちたので委託先を探しています。」と言うことが書い てあったらしい。岡田さん、書いた本人である東大?学部3回生の秋葉君を起立 させる。年齢を聞くと20歳との返事に「若いなあ」と感慨深げな声。 ひとしきり盛り上がった後でいよいよ今回のゲスト、竹熊健太郎氏登場。今回 の講義は漫画界の状況や、漫画家になるには何をどうすればいいか、等について 「サルでも描ける漫画教室」(以下『サルまん』とする)を教材に解説する・・・・ 予定だったようだが、話がすぐに脇道にそれて、雑談になってしまう。まあそれ はそれで漫画界の状況の解説ではあるのだが。 さらに鬱状態の岡田さんが調子が悪くて、話題の暴走を押さえきれない。途中 でいきなり胃がさしこんできて、竹熊さんが心配しつつも場を持たせるために喋 り続ける、と言う場面も何度か見受けられた。 まず初めは「漫画家の収入の光と影」(これは獅子児が勝手に付けたタイトル) 長者番付に名前ののる売れっ子から、まだ単行本が出ていない新人まで、実例を 挙げつつ紹介していく筈だったようだが、景気のいい方の実例が殆どであった。 聞く方にしてもそっちの方が面白い。 *スライド「とんち番長大人気、初版280万部」の新聞記事のページ (いきなり雑談になる(^^;) 竹熊「とんち番長のためにとんち話の本を一山買って読んだが、思わず途中で 投げつけた。みんなだじゃれだ!日本人にとんち話は書けないのか?」 岡田「ジョジョは唯一まともなとんち話なのでは?」 一同納得 ・長者番付について 売れている人は皆会社とか作って税金対策をしているため出てこないが、そう でなければもっと大勢長者番付に載っている。 相原コージがコージ苑と勝手にシロクマを当てたとき、最初の年と次の年で税 理士を代えただけで納税額が10分の1になった(^^;)。しかもそれでも中ヒット くらいだから、大ヒットの場合は、税金がとてつもない額になりかねない。 ・Dr.スランプ12巻、初めて初版200万部を突破 鳥山明がDr.スランプを当てたとき、彼の住んでいた町の税収が前年の倍に なった。その後やはり不便なので関東に引っ越そうと考えたら、何処から聞きつ けたか町の重役がやってきて、思いとどまるように説得して、ついには家の前か ら名古屋空港まで直通の道路が出来た(原稿を航空便で送るため)。 ・単行本のべ1億部突破を最初にやった作家はあだち充。 ・池沢さとしの家、ファミレスみたいに1階が全部駐車場になっている。 実際にファミレスと間違えて入ってくる車もある・・・・と言う噂。 ・竹内直子が宝石を買いに行って、同行した母親に向かって一言 「お母さま、まだ私に買えない宝石がありましたわ。」 これはオタクアミーゴス会議室でも話題になっていた。 ここで余談:少女漫画家のファッションについて 少女漫画家の場合、アシスタントは先生と同じ系統の服を着る。ある パーティーで、右から○○のドレス軍団が来たかと思うと、左からは× ×の民族衣装軍団がやってきて、和服の人がいるなと思うと宗教にはま った○×だった(ひえーっ)等という風景もあり得るという。 ・ヒットを飛ばして家を建てた漫画家の大邸宅の中には、デッサンルームが存在 する。これは手塚治虫以来の、漫画家のデッサンに対するコンプレックスの為 と思われる。 (ここから話題は一転、漫画としての絵と絵画との違いについて竹熊流の 解釈が語られていく。) 絵画がそこにある物を書き写すことを主眼に置いているのに対し、漫画の絵は パターン化を特徴としている。それ故デッサンの上手い人に「車を描け」と言っ ても描けるとは限らない。彼らに言わせれば「車と言ってもカローラもあればポ ルシェもある。どれを描けば良いんだ?」と言うことになる。対して漫画描きは 箱に円を付け、ライトとタイヤを円で表せば、それで車である、と言う約束の下 に描いている。 絵描きは基本的にそこにある物しか描けないが、漫画描きは逆に、何処にもな い物を描いている。 漫画のキャラが記号である、と言うのは昔から言われていたことだが、自分 (竹熊さん)はさらに進めて「漫画は言語であり、キャラや効果は文字である」 と言う説を唱えたい。 「漫画の練習にはまず模写をしろ」と言われているが、この場合の模写とは、 いわば習字の書き取りに当たる行為ではないか。「あ」と言う文字は、誰が書 いても同じ「あ」として認識される。しかし、書く人一人一人の「筆跡」は、 皆違っている。記号化の進んだ漫画の絵の「個性」とは、この筆跡に近いもの だと思われる。 現在の殆どの漫画のルーツは手塚治虫である。トキワ荘グループの初期の絵柄 は、皆手塚そっくりだった。手塚漫画と言う共通の言葉と文法を基に、それぞれ が少しづつ変更を加えていき、それぞれの作家の「方言」となる。そしてその方 言が優れていたりインパクトがあると、他の作家にも取り入れられ、全体に拡がっ ていく。 岡田さん「例えば昔の漫画の光線は、稲妻形してたよね。それを松本零士が 『真っ直ぐな線の先にぼやけた光球』の表現を発明したら、それ 以降の光線の表現は、みな松本調になったと言うことだよね。」 そしてこの言語としての漫画の訓練は、当然ながら描く側だけでなく、読む側 にも必要である。 その為日本語と言うべき日本漫画をそのまま外国人に読ませても、理解されな い表現が多々ある。 かって、ニンテンドーパワー(ニンテンドーアメリカがアメリカで発行してい る雑誌)に、桜玉吉と組んで漫画を描いたときの話。マリオの漫画で、いわゆる ドラえもんの笑ったときの目(白目は丸いままで、黒目だけが笑っている)を描 いたところ、外国人の編集者はそれをただの変な目だと思っていた、と言う。 この目のルーツをたどっていくと、恐らくのらくろに行き着くのではないか。 のらくろの作者の田河水泡が、なぜこのような【目】を発明したかと言うと、 のらくろの顔は黒いので、白目ごと笑うと目が見えなくなってしまうからだろう。 笑った目を白い線で表現することも考えられるが、当時の印刷事情ではつぶれて しまって見えなかったため、黒目だけが笑う、と言う表現が発明されたのではな いか。 その発明が、そのままコピーされて現在まで受け継がれ、今では単なる「笑った 目」と言う記号として一般的に使われている。 アメリカではその様な表現や、いわゆる【漫符】の歴史はない。それ故池上遼一 的な劇画は理解しやすいし、カートゥーン(スヌーピー等)の歴史があるので、い わゆる子供向け作品も理解できるだろうが、例えば高橋留美子等の(彼らにとって) 中途半端な絵柄は受け入れられないのではないか。 これを打破するにはやはり幼い頃から日本製の漫画を見せて育てて、文法と単語 を染み込ませるしかない。 また、アニメは動きと音という取っ掛かりがあるので、まだ漫画より受け入れら れやすい。従って、アニメによって興味を持たせ、それから漫画へとステップアッ プさせるのがよいだろう。 ************************************** これだけの内容が一気に語られたわけではなく、途中雑談やチャチャ入れが多々 あった中から、一応テーマと思われる部分を抜き出して繋げたものである事をお断 りしておきます。実際の講義は、これより遥かに生き生きとして、毒を含み、楽し いものでした。以下Bパートに続きますが、Bパートも同様に一応の本筋だけを抜 粋したものです。 あるいはここには書けないオフレコ話や、何気ない雑談の中に込められた情報こ そが、この講義の本質なのかも知れません。 それではBパートをどうぞ