chapter4〜システムの崩壊〜
私達の世代にとっては、九州の谷川雁と東北の黒田喜夫は、戦後の詩人を代表する2人だという認識があります。谷川雁は、九州の炭坑の地の底から世の中を呪うアジテーションのような詩を発表し、黒田喜夫は、東北の深い山の中から日本の近代に対する異議申し立てのような詩を発表する。南北の辺境から生まれたトップランナーというのが2人に対する私の青年時代の認識でした。
それなのに故郷では、黒田喜夫はすっかり忘れ去られています。一方、これは夏目漱石なんかもそうですが、短い期間に学校の先生としてその土地にいただけの作家や詩人を記念して、文学資料館がどんどん建設されています。しかも特定の個人が自分の財産で建設するのではなく、地元の人達の税金で建設されるわけです。
もしこの費用をたとえば学術出版に対する助成金にでもまわせば、それこそ1つの地方出版社が何十年にわたって採算に関係なく活動出来るのです。けれども地方行政は、いわゆるすでに評価の定まった箱物にはお金を出しても、そうでないものに対してはお金を出してくれません。
これはなぜ東北でプロのスポーツやエンターテイメント活動が育たないのか、ということと根っこは同じで、自分達でその土地の中から新しい価値を発見していくことが出来ない、いや、そうしたことを可能にするシステムが、すでに壊れてしまっているのです。
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