| 田舎騒ぎムラ遊び | 1989年12月徳間書店刊 |
| かくれんぼの森 | 1992年6月創樹社刊 |
| 知恵ある人は山奥に住む | 1995年5月集英社刊 |
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「なしてこだなとこさ来たな」と、土地の人に疑われ、自分でもはっきり答えを口に出せないまま、月山の麓の山形県西川町に古家を買い、田舎暮らしの真似事をはじめて、四年目になる。……中央に火見櫓が立ち、はずれに小学校がある。反対側のはずれに、岩魚が棲む川が流れていて、橋をわたった奥の林の中に、ぼくの家がある。小字をむじな沢といい、狸が多いところだ。(『かくれんぼの森』より) 月山の麓にあるぼくの家は、築百年くらいの筋金入りの古家で、別荘と呼べるようなものではない。以前から屋根に穴があいて、雨もりがするので、応急措置でごまかしていたのだが、しだいに穴が大きくなり、今年の夏の長雨で、とうとう家の中が末期症状を呈してきた。……この間、一ヵ月ぶりにわが古家に帰ったら、家の中がカビくさいのはよいとして、玄関マットにきのこが生えているのには驚いた。……知り合いに訊ねてみたが、誰も玄関マットに生えるきのこなんか知らないという。当然のことである。(『知恵ある人は山奥に住む』より) 鶴部(つるべ)を通り過ぎるたびに、ぼくは無人の分校をのぞくことにしている。小さな木造校舎だ。裏の校庭は草がおいしげり、ブランコの鉄骨が残っている。記念植樹のレリーフもある。ガラス窓から教室をのぞきこむと、机と椅子は片づけられて、片隅に小さなオルガンが置かれている。むかし、わが茅屋の近くの蚕小屋に丸山薫という詩人が疎開して「鶴部」という詩をつくった。(『かくれんぼの森』より) 月山はあまりにも雪が過剰だ。ここでは夏にできるスキーが、冬には雪が深すぎてできない。……「…同じ雪深いのでも、世界一ということになれば、胸を張れるんじゃないの」私は奥山悌二君に言った。悌二君は志津の少し下の弓張平(ゆみはりだいら)という土地で、旅館業を営んでいる。(注:コテージ主体の宿泊施設=ポレポレファーム)……「そんなこと自慢になるんですか」「なるよ生活を便利にするには金を使えばいいが、不便にするのはたいへんなんだから。世界一の雪を降らすなんて、いくら金を使ったってできないんだから」めちゃくちゃな理屈のようだが……(『田舎騒ぎムラ遊び』より) 山形県を離れたくなかった。友人もたくさんできたし、この土地を放っておけないような気もするのである。山形のことには、悪口でも褒め言葉でも、なにかひとこといいたい。これは故郷意識のようなものだろうか。(『知恵ある人は山奥に住む』より) |
((読者の独り言))
○山形県西川町岩根沢の高橋さんの"別荘"がついに自然の中に帰ってしまいました。寂しくも残念ですが、それでも山形に足を止めていただけることは、東北人の誇りと喜びです。 ○今回は、ほんのわずかばかりの著作の紹介にとどまりました。現在も次々と新著をご発表の様子です。「高橋さんこれからも東北をよろしくお願いいたします!」 |