東北地方の文化振興
●人々が文化に親しむために



高原の祈り
(栗駒山)


日本現代
詩歌文学館
(北上市)

chapter1〜行政による文化振興〜

 昭和62年に一関商工会議所が40周年を迎えた際、記念誌にエッセイを頼まれました。そこで私が書いたのは、一関を文化のある町にするためには、商工会議所が商工業の振興に貢献したように、文化の振興に力を注ぐ「文化会議所」を作ってはどうかという提案だったのです。

 最初に呼応してきたのは一関市の音楽愛好者グループのリーダーだという人です。ちょうど「ふるさと創生1億円」の計画が発表されたころで、彼が市側と交渉したところ、1億円を預金した利子で運営しようという返答があったそうです。それで文化会議所は出来たようですが、まもなく彼が市長選挙に出馬したという話を耳にしました。その後、文化会議所は残念ながら、ほとんど拡大しない状態にあるようです。もしかすると、彼は私の提案を選挙運動に利用したにすぎなかったのではないかと、いまでは考えております。現在の一関文化会議所は1億円の利子で補助事業を行なっているだけで、文化的な事業はほとんどやっていないと聞いております。

 岩手県の北上市では、1億円を使って詩歌博物館を建設し、また詩歌の文学賞という他にあまり例のない賞をつくって表彰事業を行っていて、これが非常に好評なのです。こうした文化事業を一関でも行えないでしょうか。

 例えば、日本で最初に作られた国語辞典『大言海』を編集した大槻文彦は一関出身ですから、それにちなんで世界の様々な辞書を集めて辞書博物館を建設するとか、あるいは言語に関するあらゆる資料を集めて(印刷物だけでなく音も含めて)言葉の殿堂を作るという案はあるのですが、行政指導者には理解してもらえません。北上市の詩歌博物館がなぜ成功したかというと、行政指導者に理解があったからです。市長と助役は俳句をたしなむ人で、それが理解につながったのでしょう。

 ちなみに隣の平泉でも文化会議所が設立されて、中尊寺僧侶の佐々木邦生が中心となり活動を行っています。特に最近始めた「セミナー東方」は、機関誌『東方に在り』を発行したり、講演を行ったりして、かなり評価されるべきものと言えるでしょう。また、金色堂が国宝に指定されて100年経つにあたって、全く同じ時期に国宝に指定された法隆寺と提携した形の企画も考えているようです。この活動が一関にも影響を与えるといいのですが…。

 

談話音声:chapter1-行政による文化振興

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