4syuuron2.html 「伝統民族文化の継承と支援」―日本文化の創造と地域の創造―  目次  前項  次項
終論 伝統民俗文化の創造的継承のための支援の方法論の提起
 
2 自治体文化行政の問題

 文化財保護法に代表される文化庁の文化への施策に対して、地方自治体の独自行政と しての文化行政が存在する。これは『地方の時代』といわれた1970年代に、それぞれの 地域の個性を創り地域を活性化するには、固有の文化を振興することが必要であるとの 認識から展開されたものである。『文化に行政を、行政に文化を』という合言葉と『文 化はチャージではなく、ディスチャージ』という発想から、従来の文化担当セクション である教育委員会から首長部局に新しい文化担当セクションを設ける自治体が増えた。
 このような自治体の文化行政は、地域固有の文化や地域の一人ひとりが支える文化の 振興を目標としながらも、その政策は大きく2つの問題を抱えていた。
 第1は施設整備中心の発想である。ホールや劇場といったハコモノづくりが先行し、 そこでどのような活動をするかは二の次となっていた。
 第2は西欧文化への傾斜である。多くの自治体でわが町には文化がないと嘆き、クラ シック専用ホールを建設し、地方オーケストラやアマチュアオーケストラなどへの支援 などは積極的にすすめている。
 このような文化行政のなかでは、地域の生活者一人ひとりが支える地域固有の文化と しての伝統民俗文化が取り上げられることは殆ど無かった。それは、伝統民俗文化が文 化財保護法の下、文化庁の所管であり、その地方自治体での窓口である教育委員会の仕 事であるという認識が、あえてその地域で選挙で選出される首長の所管部門では手を出 さなかったということもある。
 したがって、文化行政という文化振興のための自治体行政は大きく成長したにも関わ らず、伝統民俗文化などはその対象とならず、不十分な文化財保護法の枠組みのなかで 社会教育の一環として支援がなされている。むしろ、実態的には制度的には不十分であ るために、社会教育部門の自治体職員の献身的な活動によって支援がなされているとい うものも多い。
 文化行政が真に地域の個性ある文化を振興しようとするなら、地域の歴史と風土のな かで息づく伝統民俗文化の振興を取り上げずにはいられない筈である。しかし、残念な がら、そのような方向には向かっていない。伝統文化は古い日本を保存するもので、民 俗文化は都市化に反するものといった感覚が行政においても存在するようである。  しかし、何度となく繰り返すように、伝統文化は過去を保存するものではなく、歴史 を継承しつつも、その時代時代に応じた創造を行うものであり、地域に根ざした固有の 創造性を発揮するものである。それこそが地域から発信する文化であり、他地域に誇り 得る物であるはずである。自治体の文化行政はまさに伝統民俗文化に向けられる必要が あろう。


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