以上のように、縄文文化を巡り、現在は様々な論が展開されている。それは、21世紀を目前にして、社会全体が、ミクロな意味での変化ではなく、根源的な価値観、或いはそれに伴う社会システムの変革といった、より大きな流れを求めているためだと言えよう。
この報告書は、以上のような論を踏まえた上で、東北地方と縄文文化について整理していこうとするものである。東北地方は、亀が岡を始めとする縄文文化が花開いた地域であり、その文化的影響が大きいと言われている。これを現代に活かすとすれば、大きくは2つの方向性が考えられる。ひとつは、これらの遺跡や遺物を地域活性化のための資源(観光等)として活用しようとするものである。事実、縄文時代に思いをはせ、そこから新しい町づくりを行っていこうという試みは、次ページ以降に見るように、枚挙に暇がないほどである。
しかし、この報告書は、もうひとつのアプローチ、つまり、東北地方の基盤文化を知り、そこに見られる価値観を今後の地域活性化に活かしていくための材料として縄文時代に学ぼうとするものである。我々が通常「地域を知る」という時には、まずは経済規模、人口規模などによって把握しようとする。しかし、今後の社会においては、これまでのように経済効率だけが地域を表す軸になるとは思えない。人々が価値観、或いは社会システムの変革を求めている今日、東北地方においても、21世紀に向けての新たな独自のシステムの構築が求められるであろう。従って、その基本的な資料として、数値には現れなくても人々の心に影響を与えている部分をしっかりと認識していくことが、まず重要になってくると思われるためである。
この報告書は、以上のような考え方に則って進めている。
まず、第2章〜第3章では、考古学的アプローチで客観的な縄文時代論を展開している。これは、1.従来の縄文文化の位置づけが実際以上に低かったため、新たに判明したことが過剰に語られがちであった、2.語る人の多くが研究者のため、基礎的な縄文知識を前提として論が進むことが多かった 等の現状を受けて、基礎的な知識を整理しようとしたものである。