『美味しんぼ風味』〜第1話1〜 「山形の蕎麦、だと?」

ゆったりとした時間の流れる和室に、山原雄海の声がひびく。

雄海の手元には、『山形の蕎麦 試食会』の案内状が有る。しかし彼は鼻で笑い、案内状を畳の上に投げ捨てた。

「ふん、そんなものが食えるか」

雄海は「料理の善し悪しなど、ひと口食えば理解できる」と豪語する、食通で知られた男だ。実際、試食はいつも、たった一度箸をつけるだけである。

しかしそれは彼の頑固さの表れでもあり、そのために泣かされた料理人も多い。今も、山形が蕎麦どころとして知られていないから、早々に味の判断をつけてしまったのだろう。

と、障子が開き、一人の男が入ってきた。

next