『美味しんぼ風味』〜第1話4〜 「ありがとうございました、雄海先生!」

7時前、会場から退出する雄海に、主催者が声をかける。結局、雄海は出された蕎麦をすべて食べてしまったのだ。

エレベーターの前に立つ雄海に、再び声がかけられた。

「料理をひとくち食っただけで判断するなんて、そんな安易なことはもう止めとくんだな」

高岡吾郎である。雄海は、後ろを振り向こうともしない。吾郎はさらに続ける。

「たとえば山形の蕎麦のように、ひとくちじゃ判断できないものもある」

エレベーターが到着し、雄海が乗り込む。振り向くと同時に、雄海は扉を閉めた。そのとき、雄海が口元を歪めるように笑っているのを、吾郎は見て取った。

「あ、高岡さん!珍しいじゃないですか、時間より早く現場に到着するなんて」

吾郎の同僚の女性記者が、声をかけてきた。

「おいおい、珍しいはないだろう。よし、蕎麦を食いに行こう、蕎麦!」

「ちょっと高岡さん、これ、取材ですからね!」

ふたりは、試食会の会場へと入っていった。

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