『美味しんぼ風味』〜第2話1〜 「うーん…」

高岡吾郎は、茶碗に口をつけながら唸っている。隣にいる栗原由希子が「あきれた」という顔をしている。

南北新聞社の企画『全国日本酒名鑑1996』のため、吾郎と由希子は山形を訪れていた。明日、山形市内のとある酒蔵を取材する予定である。

山形に着くと吾郎は「ネタ仕入れ」の名目で、いちばん売れている地元酒蔵の吟醸酒を買ってきた。そして旅館に落ち着くと、まだ夕方にもかかわらず、由希子の部屋に押しかけて飲み始めてしまったのだ。

「高岡さん、そのお酒、そんなにダメなんですか?」

あきれ顔を残したまま、由希子が吾郎に聞いた。吾郎が渋い顔で答えた。

「いや、けっこう旨いんだけど…なんか違うんだよな。由希子も飲んでみろよ」

勧められ、由希子も備え付けの茶碗を手にとり、その酒を飲んでみる。

「…そうですか?私はこれで良いと思いますけど。あんまり辛くなくて、香も良いですし…」

「うーん…」

それでも吾郎は、唸っていた。

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