取材後、お土産に新商品の吟醸酒を貰い、吾郎はホクホク顔だった。しかし由希子の頭には、疑問がもたれかかっていた。
と、吾郎がハッとして立ちどまった。
「そういえば昔、親父…いや、山原雄海が言っていた。山形は、山脈などで4つの地方に分かれていて、その地方ごとに気候・風土が大きく違うと。だから酒も、その地方ごとにまったく違ったものが造られると…」
旅館に帰って瓶のラベルを調べてみると、やはり、違う地方の酒だった。
「雄海に、思わぬところでやられたな…」
吾郎がなぜこんなに悔しそうな顔をするのか、由希子には判らなかった。ただ、立ち入ってはいけない壁を感じ取るのが、精一杯だった。
「高岡さん、お土産のお酒、飲んでみませんか?」
由希子が明るい声で言った。