酒蔵土産の吟醸酒を眺めながら、吾郎がつぶやいた。
「酒が旨けりゃ、麹も旨い。麹が旨けりゃ、漬物も、か…」
吾郎の表情は、悔しさなど見えない。由希子にしてみれば、酒を前にしてニヤける酒のみ猿、という感じである。さっきまでの顔は、何だったんだろう?
「そう言や、山形の漬物って、食べたこと無いなあ…」
「あ、私もです」
由希子が吾郎に、調子を合わせた。
「山形の漬物ってのも、良いネタになりそうだよなあ…」
「そうですねぇ」
また、由希子が調子を合わせた。
「よしっ、部長に電話だ。ついでに漬物も取材するから、帰りは明日以降だってな!」
「ええっ!?ちょ、ちょっと高岡さん!」
由希子は「あきれた」という顔をして、大きな声をあげてしまった。