『美味しんぼ風味』〜第3話3〜 「山原雄海!なぜここに!?」

吾郎が叫んだ。喧騒のなかでも十分に響く大きさだ。何人かがこちらを振り返る。由希子も雄海のことは知っている。吾郎の父親、しかし、今はいがみ合う者同士である。

「ふん、私の弟子が郷里の山形で店を出すというので、来てやったのだ。それにしても吾郎、山形の保存食が漬物しかないというのは、まったく笑わせる…」

「違うぞ、たとえば米沢の辺りでは、押し寿司が保存食として作られている。漬物は保存食の基本だと言っただけだ!」

雄海は、笑みを浮かべて言った。

「ならば、久持良餅(くじらもち)を知っているか」

と、吾郎の表情が変化しだした。狼狽しているのが、由希子にもわかった。

「狭い知識しか無いくせに、一人前にものを語らんことだな」

笑いながら雄海は、立ち去った。吾郎は怒ったような情けないような表情をしたまま、雄海の後ろ姿を見ていた。

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