『こんなものが食えるか!作り直せ!』
吾郎の母――雄海の妻――に、雄海が皿を投げつける。たったひとくち食べただけで、である。
押さない吾郎が、その光景を障子の陰から見ている。吾郎は、父である雄海に、恐怖ばかりを感じていた。
『なんでお父さんは、料理のためにこんなに怒るんだろう?なんでお母さんは、なんにも言わないんだろう?』
吾郎には当然の疑問だった。
やがて吾郎の母は、他界した。
正直なところ吾郎には、母の他界した理由がはっきりとは分からない。父に聞いても、なにも答えてくれなかった。だが他界する前、母がノイローゼで倒れたことは、はっきり覚えている。
やがて吾郎は、雄海との縁を切った。