●「仮面ライダー」と呼ばれた男たち(岡謙二/潮11月号)
子供たちのヒーローを演じた11人のその後は−−−。人生の最も「輝いた日々」だったのか。
・・・ 仮面ライダー終了後、藤岡は特捜最前線などに出演し、さらにアメリカに渡り日本人としてはじめてアメリカ・アクターズ・ギルド(俳優組合)に加入するなど国際派俳優を目指すようになる。彼を知る周囲の人間によれば、一時は「仮面ライダーの藤岡」と呼ばれ続けることに反発を感じ、そのイメージを払拭したいともがいていたのではないか、という。
だが、本人はこう語る。
「とんでもありません。仮面ライダーは私の体に染みついている。命を燃焼させた私の青春そのものであり、誇りです」
・・・ 一時は「仮面ライダーの佐々木」としかいわれないことがいやでしようがなかった彼だが、今では日光江戸村で客から「あっ、仮面ライダーだ!」といわれると変身ポーズをとってサービスすることもあるという。「もう一回、生きてやる。そう思ってます。芝居することが俺の生きている証。食えればいい、芝居さえできれば。やっと目覚めたんですよ」
・・・ 東映の最後のニューフェイスとしてデビューした宮内は、今なお映画スターの風貌を垣間見せながらも、仮面ライダーへの想いは熱いものがある。さまざまなライダー関係のイベントに率先して出かけるのも宮内だ。「バーで飲んでいてもね、女の子に、仮面ライダーでしょ、っていわれる。すると思わず風見志郎に戻ってしまい、悪さもできない」
・・・ ライダーマンを演じたのは山口豪久。山口は、平山の自宅に押しかけて「自分を使ってほしい」と懇願したという。だが、彼はもういない。81年4月6日、わずか40代の若さでガンに侵され死去。私は、藤沢にある彼の自宅に妻の千枝夫人を訪ねた。赤いワンピースが似合う美しい女性が、私を待っていてくれた。
「お腹が痛いといって入院して、4日目に亡くなったんです……。遺書がありましてね。私には『お世話になりました』って。普通、書かないですよね、そんなふうには」
・・・ 五代目の仮面ライダーX(役名・神敬介)を演じた速水亮は、当時を振り返って「撮影というより、毎日、汗と泥にまみれて、合宿生活のようだった」と語る。今は「昼メロ」のスターとして多くの女性ファンを獲得している速水だが、「ほら」といって、仮面ライダー人形のついたキーホルダーを見せてくれた。速水はそれをいつも持ち歩いている。夫人はそのとき共演していた女性。彼は、今も仮面ライダーを演じたことを誇りに思う。
・・・ 彼(仮面ライダーアマゾン、山本大介を演じた岡崎徹)は「特捜最前線」に出演中、バイクで事故を起こし、それ以来、九州に帰り芸能界復帰を求める電話にも応じなかったらしい。福岡市内ではじめた店も閉鎖。その後、実家に帰ったが、ふらりと出たまま戻ってこないのだという。「便りのないのが元気な証拠、ですかねえ」 両親は、そう少し悲しそうな表情で笑った。
・・・ この八代目、仮面ライダー〈スカイライダー〉(役名・筑波洋)は、村上弘明である。だが、このシリーズはあまり人気を得るには至らなかった。実はこのシリーズは、「もっとも歴代ライダーが登場した作品」といわれるほど、歴代ライダーの“恩恵”によって回を延ばした作品であった。だが視聴率は、アニメブームの影響も受け、低迷し続けたのだ。
ところで村上のマネージャーである井上は今回の取材を拒否し、「仮面ライダーは通過点にすぎない。何でいまごろ、そんなインタビューを」を電話の向こうで語った。しかも、記念すべきデビュー作品だというのに、彼の経歴書に「仮面ライダー」の文字はない。・・・(後略)