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ed.mindy.gif眠田直の90年代TVグラフティ 第一回
「ビーストウォーズ」
 


 最近「なつかしの○○」的な、昔のアニメや特撮やTVドラマを扱った本をよく書店で見かけるようになった。一時期の「資料まったく無し。頼りは己の記憶のみ」といった「オタク原始時代」を思い起こすと、なんていい世の中になったもんだろうと思うが、一つだけ気になる事がある。
 それはこの手の本に「昔のアニメや特撮物は良かった。それに比べて今の作品はダメだ」的な論調が多い事である。

 そうか?

 人は記憶を美化しがちである。幼少期や青年期に観た作品に対して、過度の思い入れをしたくなる気持ちはわからんでもない。
 しかし冷静に考えてみれば、今も昔も「傑作」というのはごく一部で、ほぼ9割はどーしようもないクズばっかしなのだ。嘘だと思うんなら、一度ケーブルTVのキッズステーションかファミリー劇場を朝から晩まで観てみるといい。
 60年代でも70年代でも80年代でも、面白い作品というのはやっぱし全体の1割くらいしか無いのだ。(別にコレは悪い事でもなんでもなく、9割の試行錯誤と習作と失敗作の山を受け入れる市場の無いところには、逆に傑作も出現しないのである)
 てなワケでオタクたる者、過去の傑作に思いを馳せつつも、現行作品も決して無視してはならんのだな。「昔は良かった」しか言わないジジイなんかになりたくないしね。
 いささか前置きが長くなったが、このコラムは、ワシのような30過ぎの老オタクが、あえて不得意な90年代以降の作品を語ろうという、無謀な企画なのである。どこまでやれるかわからんが、まぁ応援してくれぃ。



 さて第1回目は、この秋の新番組の中から「ビーストウォーズ」を取り上げてみよう。かつて一世を風靡した、日米合作変形ロボット大量出演アニメ「トランスフォーマー」のフルCGリニューアルバージョンである。
 あえて老オタクかつ旧TFシリーズのファンの立場から言わせてもらうならば、こと「ビーストウォーズ」ほど許せない作品もないだろう。
 なんせ「オレのコンボイ司令官をこともあろーにゴリラに!」「声が玄田哲章じゃなぁああああい」「その“へんし〜ん”っつうマヌケなかけ声はやめんかい!」などなど、文句つけたくなる箇所が山程あるのだ。
 しかし、このコラムのコンセプトは過去の思い入れに囚われず、現行作品を冷静に評価しよう、というモノなので、ここでちょっと頭を冷やして「ビーストウォーズ」の魅力を探ってみよう。

 さて「ビーストウォーズ」の優れているところはどこか? それはなんと言っても「CGの使い方の上手さ」にある。CGという技法の長所・短所をわきまえた映像作りをしている点を私は高く評価したい。
 例えば、フルCGアニメの代表作である「トイストーリー」と比較してみよう。アレもオモチャ同士が会話したり、アクションしたりしてる分には問題無いのだが、人間の子供が絡むシーンになるとどうも良くない。CGで描かれた人間特有の不自然感が出てしまうからだ。
 CGで人間キャラクターを作る場合、リアル方向を目指すと、どうしても実写で撮った場合に比べて違和感が残るし(話がややこしくなるので、実写映像にCG合成とかCG修正したモノ等はこの際含めない)、デフォルメ方向に持っていっても、まだまだ人形劇や人形アニメ特有の「質感」とか「色気」の境地にまで達したモノは少ない。
 この「違和感」は「Dの食卓」も伊達杏子(笑)も、未だ解消できないポイントであった。
 ところが「ビーストウォーズ」の場合、なんと「宇宙の果ての遠い惑星」で「動物に変形するロボット」たちがどつき合うだけ、という「CGが不得意な事は一切やらんぞ」というポリシーに貫かれている。
 「人間は出さない」「見慣れた風景も出さない」、視聴者である子供の共感を得るには、非常に不利な設定なのだが、おかげで映像的な違和感は最低限に抑えられている。「動物」の描写はややギクシャクしているが、これも「ロボットが変形している状態」という設定のうまさから、かえって「トランスフォーマー」という、現実には存在しえないキャラクターの「らしさ」を醸し出す効果となっているのだ。
 つまり「ビーストウォーズ」とは、初めて「オールCG映像」が違和感を払拭して、逆にその利点や特性を最大限に発揮した記念碑的作品と言えよう。
 これは「ジュラシックパーク」や「ロストワールド」が唯一ハリーハウゼンの恐竜に負けていた「映像の味わい」というモノを、ついにCGが獲得した、という事を意味しているのだな。
 フルCGアニメというのはまだまだ歴史が浅い。今後さらに進化して、セルアニメとは違う独自の世界を切り開くのか、はたまた一時の流行で終わるのか、しっかり見定めなくてはと思う今日この頃…。

 でもなんでワスピーターが加藤賢崇なんだよぅ(涙)。


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