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ed.mindy.gif眠田直の90年代TVグラフティ 第三回
「激走戦隊カーレンジャー」
 


 東映のスーパー戦隊シリーズ第20作目にして、もっとも異色な作品がこの「激走戦隊か〜〜〜〜れんじゃあ!」である。  東映のホームページによると、一応テーマは「チビッ子たちの大好きな“車”をモチーフに、これまでの大義名分から一歩踏み込んだ『等身大の正義』を描く」という事だったらしいが、今まで21年も真面目にコツコツと戦隊モノを作ってきたスタッフの反動からか、全編これギャグの嵐。
 前作オーレンジャーが国際空軍の特殊部隊という割とマトモな設定だったのに対し、こちらは宇宙人ダップの口車にノセられて、宇宙暴走族ボーゾックと戦うハメになった市井の兄ちゃん姉ちゃんたちなので、最初っから使命感とか深刻さの薄い事薄い事。なんせ主役・レッドの陣内恭介からして、劇中で「猿顔の一般市民」呼ばわりされてる通り、本来ならイエロー的なキャラクターなんだもん。対するボーゾックも「悪の組織」というより単なる不良のゴロツキ連中だしね。ちなみにこの作品内では「怪人は芋羊羹を食べると巨大化する」事になっております、はい。

 あ、そこのあなた、もうついてこれない?

 と、いうわけで旧来の戦隊モノファンにはちと評判が悪かったようだが、一度カーレンジャーの明るくてバカで楽しい世界を知ってしまうと、逆に抜けられなくなってしまうのであるな。
 太ってしまったピンクが怒りのあまり無実の怪人をどついたり、敵の女幹部とレッドが交換日記つけたり、途中で別の正義の味方・シグナルマンは登場するし(カーレンジャーはあくまで私的集団で正規のヒーローでは無いのだ)、負けじとボーゾック側も暴走戦隊ゾクレンジャーを作るし、新兵器は宇宙の通販で買ったバズーカや、悪の雑誌「宇宙ランド12月号」の付録のロボットだったし、まぁなんというか1年間遊ぶだけ遊び倒しておったとさ。こんな展開「カーレンジャー」でしか見れません。いわば戦隊モノのご本家自身がセルフパロディをやっちゃったワケだな。
 ちなみに同時期にはこれまた異色のノーテンキラキラ、お軽いヒーロー「超光戦士シャンゼリオン」も製作されていて、1996年は「東映特撮狂い咲きの年」と呼ぶべきかもしれない。
 ただし、この「お遊び」を支えていたのは、やはりマンネリと言われようとなんだろうと、毎年毎年スーパー戦隊シリーズを製作し続けて来た、東映大泉撮影所のノウハウの蓄積があったればこそである。間違えてはいけない。カーレンジャーがどんなにズッコケようとおちゃらけようと、それでもなおかつ力強くカッコいいのは、演出の巧みさ、アクションの熟練度、熱のこもった音楽、そして造形・特撮の技術に支えられているからなのだ。
 まさに「継続は力なり」で、この年には「ウルトラマンティガ」も始まったのだが、初期のティガを見ていると「久しぶりに作ってるのでカンがつかめませ〜ん」という円谷プロの苦しさが画面から伝わってきたもんな。後半は良くなってたけど。

 さて。

 「激走戦隊カーレンジャー」について語る際に、忘れてはならないポイントにメインライター・浦沢義雄氏の存在がある。カーレンジャーのギャグ暴走状態の原因はおそらくこの人。
 脚本家デビューは「新・ルパン三世」だが、当時から「キミは猫ボクはカツオ節」とか「1999年ポップコーンの旅」とか、いい意味でイカれたエピソードばかりであった。
 その後「ロボット8ちゃん」とか「ペットントン」とか「ちゅうかなぱいぱい」とか「ポワトリン」とかいった一連の東映特撮コメディ物を手がけ、いずれもシュールで変な話が多いのは、ほとんどがこの人の仕業。
 ただし浦沢脚本は、単にシュールというだけではなく、その奥に一本筋が通って…、通って? ありゃ、やっぱ通ってないや(笑)。
 この全然筋が通ってないのに説得力はあるのが、凡百の脚本家と違うところであり魅力。だから浦沢脚本の真似は死ぬほど難しい。天才である。
 今さら○○○や×××のヒョーロンやらブンセキなんかするより、一刻も早く浦沢義雄の研究に取りかかる方がオタク的には急務なのだが、現在入手可能の物では、山本弘氏が「映画秘宝/夕焼けTV番長」に書いた5ページの解説文くらいしか良いテキストが無い。この辺が最近のアニメ関連本出版ブームの底の浅いトコである。
 愚痴っても仕方無いので、とりあえずは浦沢パワー爆発中の「はれときどきぶた」を観よう。次回のこのコラムの題材も「はれぶた」の予定。

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