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ed.mindy.gif眠田直の90年代TVグラフティ 第四回
「はれときどきぶた」
 


 さて今回のお題はただいまノリノリで放映中の「はれときどきぶた」。んじゃま、サクサクっと行きますかぁ!
 とにかく絵の切り替えテンポはムチャクチャ早いし、はれぶたちゃんの鼻はピカピカ光るわで、かわいそうに例のポケモン事件の影響を一番受けちゃったみたいだけど、それでもギャグのテンションは一向に下がってないのがエライ。主人公の部屋の壁にさりげなく「テレビアニメをみるときは部屋を明るくして…」の注意書きが貼ってあったりする遊び心もステキ。
 もともと、小学3年生畠山則安くんが絵日記に「今日は晴れ時々ぶたでした」と書いたら、現実にぶたが空から降ってきたというシュールな原作。それをかの浦沢義雄氏がシナリオ化してるんだから、こりゃもう火に油を注ぐような状態に突入。戦隊モノ(カーレンジャー)とかNHK(忍たま乱太郎)といったシバリの無い分、ストレートに浦沢ワールドが炸裂してるぞ。
 浦沢先生お得意の無機物人格パターン「木枯らしが恋をする話」とか、「隣に引っ越してきた美人女子大生の正体は、地上界に静かにするためやってきたガイコツ大統領!」とか「バレンタインデーに一度もチョコをもらった事が無い記録を守るために戦う男たち」とか、なんかこうやってストーリー説明してもよくわかんないと思うんですけど、毎週観てる私もわかってないのであまり気にしないでくれたまえ。はい吸って吸って。  ちなみにお子さま向けアニメですから「野菜を食べよう」とか「勇気を出そう」とか「争いは何ももたらさない」とか、毎回ちゃんとありがたい教訓が入ってますが、それがまったく印象に残らないのも「はれぶた」のイイところ。
 つまりストーリーやらテーマより、てんこもりのキャラクターのドタバタを見せようっていうのが「はれぶた」というアニメの本質なんですが、これってなかなかできる事ではありませんぜ。単にドタバタをやってるだけでは、決して客にはウケないです。演出の高度な技術と計算と経験があってこそ、初めて可能な離れ業。  ポイントは情報量の多い詰め込み気味のセリフ、音楽とのシンクロ、スピーディなカット割り、卓越したギャグセンスといった辺りなんでしょうが、もちろんこういう技法が一朝一夕に産み出されたワケではありません。
 はい、ここで資料を漁ってみましょう。スタッフの顔ぶれから「赤ずきんチャチャ」→「こどものおもちゃ」→「はれときどきぶた」という演出の系譜が読みとれますね。
 例えば「登場人物がやたら歌ったり踊ったりする」あたりは、「チャチャ」に始まり「こどちゃ」に継承された手法。「解説役が画面にツッコミを入れる」のは「こどちゃのばびっと」から「はれぶたの矢玉アナ」で完成。ちなみに「ばびっと」はあくまでツッコミを入れる役割に留まっていますが、「矢玉アナ」は次第にストーリーを左右するキャラにまで成長しつつあります。
 さて「はれぶた」における新パターンは、登場キャラクター達が「これはアニメなんだ」という事を自覚している事で、「最近出番が少ない」とか「今回はそういう設定かぁ」という楽屋オチ的なセリフがやたら多いです。こういう手はうまく使わないと嫌味になりますが、「はれぶた」では視聴者があまり注目しないつなぎのシーンとかで、サラッと言わせるあたりが絶妙ですね。
 あとは「デジタルワークの円熟」かな? 
「はれぶた」はセル仕上げじゃなくデジタル彩色作品なんだけど、CGの使い方が上手いっす。第1話で使った「空一面に広がるぶたの群れ」は、まぁデジタルテクの基本ですが、その後オープニングや歌のシーンに変な素材(立体造形のはれぶたとか)を合成したりとか、極めつけは次回予告で、毎回矢玉アナの絵を変形させたり潰したり、はては実写のトンカツの写真やら女性の入浴シーンと合成したりとか、コンピューターを手に入れた人間が一番最初にやりそうだけど実際にはやんないようなバカな事ばっかし試しててグーです。こういうのは誰が継承するんでしょうかねー?
 てなわけで今回の教訓は“「チャチャ」→「こどちゃ」→「はれぶた」の演出の系譜に注目しようね”でした。ちなみにこのラインからは「飛べ!イサミ」とか「機動戦艦ナデシコ」とか「魔法陣グルグル」なんかもたどれます。
 えっ。この説、印象に残らなかった? でもこれ90年代のアニメ史をたどる上で重要なポイントだから覚えておいてね。

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