mint.gif 第七回
「クレヨンしんちゃん」



 ねぇねぇ今年の映画「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」観たぁ? いやー、相変わらずレベル高いよねぇ。ことに「お色気」の格闘シーンの演出と作画はスゴイわ。体の線とか肉の付きかたとか、あんなディフォルメされたキャラなのに、いざ動かすとむちゃくちゃリアルだし、色っぽいしぃ。
 それに今回はラストが泣けるよねぇ。あのぶりぶりざえもんが最後にあんな行動を取るなんて、もう涙腺のツボ押されまくり。30過ぎのオタク親は原体験的にこーゆーシーンに弱いから、もー子供ほったらかしで映画館で泣きまくりだよ。
 んん? なんか反応が鈍いなぁ。なに、子供向けアニメとあなどって観に行かなかった? バカモン!

−−−1992年4月13日・月曜夜7時。
 一本の新番組がひっそりとスタートした。5才の小さな男の子がゆかいなイタズラを繰り広げる、たわいもないホームコメディアニメだった。原作もさして有名な作品ではなかった。誰も期待してなかった。制作会社は次の企画までの「つなぎ」だと思っていた。放映予定はわずか2クールだった。

 なんといっても演出陣がうまい人ぞろいだからねぇ。本郷みつる、原恵一、ささきひろゆき、義野利幸、米谷良知、水島努…、最近では池端たかし演出回が要注目かな? ギャグってタイミングとか間の取り方一つで笑えたり笑えなかったりする微妙なものなんだけど、もうこの人たちは「円熟した名人芸」みたいな演出するからねぇ。おかげでオレ、最初はてっきりAプロ時代からいるような超ベテランの人たちだと想像してたんだけど、後で意外と若いと知ってビックリしたよ。
 嘘だと思うんなら、まず週刊アクションに連載中の原作漫画の新しい分を読んで、それがアニメになったとこ想像してみな。で、実際に放映されるアニメは、毎回その想像をはるかに上まわる出来になってるから、参っちゃうよなぁ。

 しかしシンエイ動画の職人たちは、この「流して作ってもまぁそれなり」な企画に命を吹き込みはじめた。ある演出家はやたらとアングルに凝った。小さな男の子の目から見た「見上げた世界」だ。あるアニメーターは動きにこだわった。男の子は元気な動きと、ぷるぷるふるえるような「独特のアクション」を身につけた。監督はこっそりと「毒」や「隠し味」を入れることを忘れなかった。声を吹き込む役者の演技が変わりはじめた。もはやそこにあるのは「たわいもないホームコメディ」なんかじゃ無かった。最高のギャグアニメだった。男の子は子供たちのスターになった。
 「オラは、にんきもの」

 作画? もちろん作画もいいよ。まず小川博司、堤のりゆき、原勝徳といった人たちが安定した画質を支えている上に、ダイナミックな動きの高倉佳彦、崩した表情が絶妙な大塚正美、タイミングの天才・林静香、強烈ディフォルメの湯浅政彦といった個性派の作画監督がたくさん参加してるからねぇ。絵と動きの違いを見てるだけでも飽きないよ。しかし、シンエイ動画のこの層の厚さはなんなんだろうなね。

 わずか4%だった視聴率は常に10%後半をキープするようになり、子供たちは男の子の「しゃべり方」や「動き」を真似しはじめ、ちょっとした社会現象にまでなった。
 92年12月、初の1時間スペシャルが放映された。スペシャルでは男の子の憧れる劇中劇ヒーロー「アクション仮面」がまるまる主役のエピソードもあった。世界が広がった。以後、春・秋に加え年末年始のスペシャル版が恒例となった。

 そーだねー、初めて見るんだったら映画版からってのもいいかもよ。「ブリブリ王国」に「雲黒斎」に「ヘンダーランド」、それに「暗黒タマタマ」・・・。
 おいおい、タイトルだけで引くなよ。アクションにギャグにサービスてんこもり、大人が見たってじゅーぶん面白いんだから。

 93年7月、映画化第一作「アクション仮面VSハイグレ魔王」公開。
 テレビ版を上回る演出・作画・スケール。これこそ映画、これこそ冒険活劇という、期待を裏切らない出来だった。この後、映画版は毎年1本づつGW公開用に制作され、「ドラえもん」と並び、邦画界に安定した配収をもたらしている。

 おっ、さっそく見たって? どうだい面白かったろ。うんうん、その顔を見ればわかるよ。なに映画だけじゃなくテレビ版も全部見たい?

 96年秋。チーフディレクターが本郷みつるから原恵一にバトンタッチ。放映は5年目に入り、ずっと一人っ子だった男の子には妹が誕生した。男の子は少しだけお兄さんになったようだ。

 でもなぁ、テレビ版はもう7年目に突入していて、全部で300本近くあるんだぞ。いやまぁ、オレは全部見てるけどさ(笑)。

 97年春、劇場版第6作「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」公開。
 テレビ版の方も終了の気配無し。OP、EDの主題歌はもう何回変わったかわからない。まさに90年代を代表する長寿アニメーションシリーズである。

 じゃあ、バンダイビジュアルから出てるTV版傑作選のビデオを見てみ。どこのレンタル屋にも置いてあるから大丈夫。おっとっと、いきなり1巻から見るんじゃないよ。初期のエピソードは絵柄も声も今とは全然違うんで、いきなり見ると違和感が大きくてビックリしちゃうから(笑)。
 まー初心者は93年放映分、ビデオで言うと11巻目あたりから見るのが無難だな。

 男の子の名は野原しんのすけ。
 ・・・嵐を呼ぶ園児、クレヨンしんちゃん。



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