mint.gif 第8回
セクシーコマンドー外伝/すごいよ!!マサルさん



<コマンドー1 マサルとカントクの父>
 「グッドモーニングエブリワン!」
 さーて今回は連載第5回 「こどものおもちゃ」で予告した、大地丙太郎監督の「すごいよ!!マサルさん」について語ってみよう。
 最近流行りの深夜アニメ作品の中でも、1日1話10分という新しい放映フォーマットを確立したのがこの作品。この形式、なかなかギャグアニメ向きだったようで、その後も「浦安鉄筋家族」や「ももいろシスターズ」などに受け継がれ…、ってな事を書こうと思ったら、「マサルさん」OP冒頭でカントクの父から、いきなり「批評は断る!」って言われちゃってるじゃないか! あー、やめやめ。

<コマンドー2 マサルとそのルーツ>
 「クリナップクリンミセス!」
 しかたないので、原作漫画の方についていっちょう分析でもしてみましょう。少年ジャンプ連載のメジャー漫画にしては、今までちゃんと論評されてないようだし。(ちなみにアニメ版は原作に非常に忠実。だからといって漫画のコマを、単にフィルムに置き換えただけのモノなんかではなく、大地監督ならではの小技があちこちに散りばめられています。注意して見るべし)
 まず「マサルさん」の基本パターンは、奇矯な人物(マサル)の行動に、読者視点の常識的人物(フーミン)が翻弄されるというもの。これは「がきデカ」あたりに始まって、「マカロニほうれん荘」「すすめ!パイレーツ」で完成された、近代ギャグ漫画の王道。
 さらに「マサルの家はなぜか布で覆われている」とか「メソの背中のチャック」などの、「不条理」「変」「ちょっと嫌な感じ」といったテイストは、もちろん吉田戦車「伝染るんです」の正当な後継者。
 一見、非常に斬新に見えるが、実はなかなか手堅いギャグ漫画だったりするのだ、「マサルさん」って。

<コマンドー3 マサルの優しい世界>
 「笑う時、歯グキを出すな〜♪」
 さて前項で「マサルに翻弄されるフーミン」と書いたが、どんなにマサルさんに振り回されようとも、極端に登場人物が不幸になる事が無いのが、破壊的な赤塚ギャグ漫画などに比べて、マサルさんワールドの優しいところ。
 この世界で起きる不幸は、「留年」くらいであって、冷静に見てみるとフーミンは強くて頼りがいのある(?)マサルさんや、理解のある校長に外界の脅威から守られている上に、美人のマネージャー「もえもえ」や、可愛いマスコット(?)の「めそ」もいる、「セクシーコマンドー部」で仲間たちと毎日楽しい学園生活をおくっているのだ。
 「オレもセクシーメイト(注)になりたいよぅ」と思わせるくらいに幸せじゃないか、フーミン。
 そういった「居心地の良い世界」を描いている点では、「マサルさん」は「マカロニほうれん荘」や「伝染るんです」より、むしろゆうきまさみの「究極超人あ〜る」に近いのかもしれない。

(注)セクシーメイト:セクシーコマンドーをやる人

<コマンドー4 マサルとモラトリアム>
 「パンダー的にもやったぜグッって感じだね」
 更にこの論を続けるなら、「すごいよ!!マサルさん」とは、男子中高生の「幸せだったあの頃」を描いている作品なのだ。(「マサルさん」を読んでいると、なんだか笑うより心が癒されるような気がするんですけど、コレって私だけでしょうか?)  作中よく「落書きっぽい絵」が挿入されるのだが、これがまた「教室内で回し読みされる中学生が描いた漫画」っぽくて、ひどく懐かしい感覚にとらわれるのだ。作者うすた京介氏の計算なのか、無意識の産物なのかよくわからないけど。
 また、花中島マサルというキャラクターが持っている「子供っぽさ」も興味深い。  教科書の写真に描くヒゲ、TVのヒーロー物(よろしく仮面)やキテレツ大百科やNHK教育の番組が大好き、母親の作ってくれる弁当への妙なこだわり。そして最大の特徴は、他のマチャ彦やアフロ君といったキャラクターと違って、マサルはもえもえや保健室の先生の「女の色香」には決して惑わされたりしないという点だ。逆にそういうものを嫌っているかのような描写さえある。マサルのメンタリティはおそらくまだ「思春期前」なのだ。
 つまり「マサルさん」の世界とは、中学生くらいの馬鹿なアタマのままでいていいユートピアなのである。考えてみればヒロイン(?)のもえもえも、かなり馬鹿だ。ヒゲの事とケーキの事ぐらいしか考えてなさそうだし。たぶん、マサルかもえもえが思春期を迎えて誰かに恋愛感情を持った時、このユートピアは崩壊するのだろう。
 「留年」すらも決して不幸ではなく、この楽しい世界に居続けられるという意味では幸せな事なのかもしれない。
 しかし「すごいよ!!マサルさん」は「永遠に子供のままでいろ」とも「いつかは大人になれ」とも主張しない。原作もアニメもあっけないぐらい「唐突な最終回」を迎えるのである。

 たぶん、それでいいのだ。

 一部には続編を望む声もあるらしいが、私は「マサルさんのユートピア」の崩壊も継続も、あまり見たくない。

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