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このあいだ、ある知人が上京してきて「どうやったらライターになれるか?」という話題になった。ライターになりたがる人は多い。 「なんでもいいから、モノカキとして喰っていきたい」と考えている人は、少なく見積もってもこの日本に十万人ぐらいはいると思う。 で、ぼくはそういう相談を受けるといつも「じゃあカタログ雑誌や情報雑誌で原稿書けばいい」と答える。 たとえばモノマガジンみたいな情報雑誌では、いつもライターの仕事は余っている。メーカーから送られてくるカタログを元に、商品スペックを87文字、とか、そういうデザイナーが決めた中途半端な文字数に書き直す仕事だ。 周りを見回すと判ると思うけど、実は世の中の文字情報の大半が、そういった「スペックの書き直し」なのだ。 こんな話をすると、大抵のライター志望者はイヤな顔をする。「私がやりたいのは、そういう仕事ではありません!」と怒られてしまうわけだ。 「じゃ、どんな仕事がいいの?」 「そうですねぇ、岡田さんの仕事で言うなら、たとえばTVブロスの連載コラムとか」 だいたい、僕はこの時点でタメイキをつく。すると相手は慌てたように「あっ、最初からそれじゃなきゃイヤだ、って言うんじゃないんです。もちろん、最初はスペック書きみたいな仕事ばかりでしょうけど‥」と取りなす。 う〜ん、違うんだよなぁ。僕がため息をついてしまうのは、彼女(または彼)が持っている「モノカキ」という仕事に対する根本的な誤解、というか解釈の違いなのだ。 具体的に説明しよう。たとえば、雑誌のコラム(千〜千五百文字ていど)の原稿料は、税引き前で2万円ぐらいが相場だ。 もちろん、これで喰えるわけはない。もっと売れている週刊誌だって、コラム一本に十万も出すわけじゃない。どこでもだいたい一万〜三万円ぐらいだろう。こういうコラムの原稿料だけで喰おうとすると、毎月20〜30本もの連載が必要になってしまう。 そんな売れっ子、そりゃ喰えてあたりまえだ。 え?単行本? 冗談言っちゃいけない。いまや単行本はライターにとって出世どころか身を滅ぼすシロモノ。単行本初版部数が五千、定価千五百円として著者印税が二百二十五万円。(これは「初版で五千部も刷ってくれる」「著者印税を10%も払ってくれる」という運のいいケースの話だ) こういう単行本、年に何冊だせるだろうか?相当に筆の早い人でも、毎月一冊は出せない。なにより企画が通らない。まぁ年に二冊出せたら、御の字だろう。つまり単行本収入では、年収五百万にも届かない、というわけだ。 結果として言えることは、大部分のライターにとって主な収入源となる仕事というのは、こういう署名原稿や単行本収入ではない、ということだ。 デザイナーがレイアウトした誌面に埋め草のように使われる、ただそこに文字があればいい、というスペック記事。それがもう少し出世するとインタビューや取材原稿など、いわゆる「体当たり」記事。 こういう仕事をこなすことによって、食い扶持を稼いでいるわけである。 ネガティブなことばかり言ってると思われてはイヤなのでつけ加えるが、このような経済状況であるにも関わらず、ライターは楽しい仕事だ。原稿用紙を埋めたり、キーボードを叩いたりするたびに、身中に快感がジワっと滲む人にとっては、天職だと思う。「喰えない」ことを快感とできたら、もう後は天国だ。 なんかいろいろ書いたけど、世間一般でいう「ライターは甘くないゾ!」みたいな文章と似たり寄ったりになってしまった。『みのり伝説』でも読んだ方が、勉強になったかもな。 すまん、次回は頑張る。 (編集長:岡田斗司夫) |
